高分子論文集
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54 巻, 3 号
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  • 西本 右子, 永田 浩之, 永井 靖隆, 大石 不二夫
    1997 年 54 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    代表的な加硫ゴムであるstyrene-butadiene rubber (SBR) の明色配合試料をモデル試料としてとりあげ, 新しいウェザリング解析の手法を検討する目的で, いくつかの分析手法の適用を試みた. その結果, 表面・界面物性解析装置による深さ方向の「比切削抵抗」による評価法が加硫ゴムの劣化解析法として適用可能であること, また圧縮方向の振動荷重によるTMA測定は, 引張り方式やねじり方式での粘弾性の測定が困難な, 劣化の進行した試料に有効であること, さらに表面の変色が少ない試料では, 第1種相関PAS法によっても劣化解析が行えることがわかった. 暴露条件の影響に関しては, 1年以上の宮古島暴露試料では, 0.5年までの宮古島暴露試料や銚子暴露試料と異なり, 暴露により表面部分に生成した酸化層により, 内部への劣化の進行が抑制されていることが示唆された.
  • 大村 博
    1997 年 54 巻 3 号 p. 125-131
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリメリックペルオキシドを用い, 脂肪族炭化水素系溶剤に溶解分散するブロックポリマータイプの非水分散ポリマーを合成した. 常温で造膜する熱可塑性塗料への応用を考慮し, 不溶ポリマー組成の異なる非水分散ポリマーを合成し, 得られた非水分散液 (NAD) の粘度, 分散安定性, およびポリマーの分子量, 粒径を測定した. さらに造膜したNADフィルムの光学特性や表面平滑性がポリマー組成によりどう違うか検討した. その結果, 不溶ポリマーの溶解度パラメーター (SP), ガラス転移点 (Tg), 屈折率がこれらの性質に大きな影響を及ぼすことがわかり, 低粘度で分散安定性が良く, かつ常温で造膜性のよいNADを合成することが可能となった. また動的粘弾性測定により, NADフィルムは可溶ポリマー部分と不溶ポリマー部分からなるブロックポリマータイプのミクロ相分離構造を有するポリマーであると推察された.
  • 大村 博
    1997 年 54 巻 3 号 p. 132-137
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ブロックポリマータイプの非水分散ポリマー〔NAD〕からなる熱可塑性塗膜の性能について検討した. 不溶ポリマー部分のモノマー組成, Tgの異なる4種類のNADについて促進耐候性試験を測定し, Tgが56℃のNADをべースポリマーとする塗膜はほぼ初期の光沢を保持するが, Tgが37℃, 19℃と低くなるにつれ光沢保持率が低下する傾向を示した. Tgが85℃の場合も光沢保持率が低かった. 不溶ポリマー部分のTgが低い場合, ポリマー組成に三級水素を有するアクリル酸ブチルが多く, またポリマーの分子量も低いため, 紫外線によるポリマー分子鎖切断により劣化に至るまでの時間が短くなると推定された. また不溶ポリマー部分のTgが高すぎると塗膜の抗張力が低く密着性も劣り, 環境変化によりクラックの発生, 塗膜の剥離が生じることがわかった. またNADポリマーフィルムのガラス側界面の水に対する接触角の測定から, 不溶ポリマー部分が極性の高い被塗面に配向しやすく, ぬれ性が高く密着性に寄与するが, 不溶ポリマー部分のTgが85℃まで高くなると十分に流動せず, ぬれ性が低く密着性が低下することがわかった.
  • 前田 拓也, 元吉 治雄
    1997 年 54 巻 3 号 p. 138-143
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分子量の異なるポリエチレングリコール (PEG) を添加したゼラチンゲルを乾燥した後, ホルムアルデヒド (FA) 蒸気と反応させて架橋した膜の物理的・化学的特性および生分解性を研究した. PEGの添加により柔軟性と靭性が付与された. 正常な膜を得るためのPEG添加量の上限や膜の外観がPEGの分子量により変化した. 架橋時間が長くなると, FA蒸気が膜表面から内部に浸透して架橋結合を形成し, 水への溶解性を低下させた. PEGがFA蒸気の浸透媒体として膜内部の架橋反応を促進する作用はその分子量によって異なるため, 膜の溶解挙動に差異が観察された. PEGの分子量が大きいほど膜の耐熱性が高く, また湿度を変化させたときの吸湿度の差が小さかった. 引張強さは, PEGの添加により低下し, 添加量が多くなると低下の傾向は顕著になった. 延伸率と引裂強さは, 高湿条件において, 分子量と添加量および架橋時間により差異が認められた.
  • 半田 浩一, 加藤 淳, 成澤 郁夫
    1997 年 54 巻 3 号 p. 144-147
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ガラス繊維強化ポリアミドの応力制御疲労過程における試験片表面の発熱温度を各種温度, 周波数, 応力条件下で測定した. 試験片表面の発熱温度は, 疲労初期と後期のごく短い時間で急激に上昇するが, それを除く疲労中期では比較的安定した温度状態を示すことが観察された. 疲労過程のほとんどの期間を占めるこの疲労中期の発熱温度は疲労寿命を決める重要な因子の一つであると考えられる. 本研究では, この疲労中期の発熱温度について, 梶山, 高原らのひずみ制御疲労における発熱温度の提案式をもとに, 疲労条件と材料の粘弾性特性値から計算により予測するための実験式を導いた. 発熱温度△Tは, 次の関係式で表わされる. △T=φ (L, κ) Pfatここで, φ (L, κ) は放熱や試験片形状に関する係数項, Pfatは粘弾性特性と疲労条件に関する関数項である. 前者はガラス転移温度を境に異なる値をとるため, △Tの周囲温度依存性は2領域に分割される. 両域ともに, 計算値と実測値が良く一致することを確認した.
  • 井川 清, 阪野 元, 玉井 清二, 高橋 和則, 小島 洋
    1997 年 54 巻 3 号 p. 148-155
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ゲル量を変えたポリブタジエンラテックスに, 乳化重合によりグラフト率を変えて重合したモデルABSサンプルを作成し, 動的粘弾性とパルスNMRによる横緩和挙動を測定した. これらの測定により得られた架橋構造パラメーターと衝撃強度の関係について検討した. アイゾット衝撃強度は, ゲル量50%, 70%ではグラフト率とともに上昇したが, ゲル量80%ではグラフト率に依らず低い値となった. ゲル量80%のポリブタジエンは, グラフト重合時の開始剤ラジカルによって架橋しやすいことが, 動的粘弾性とパルスNMR, 電子顕微鏡観察の結果から示唆された. さらに, GPC. LALLSにより, ゲル80%のポリブタジエンに分岐が多いことが明らかになった. したがって, 衝撃強度にはポリブタジェンの架橋構造 (架橋度, 分岐) の影響があることが明らかになった.
  • 草薙 浩
    1997 年 54 巻 3 号 p. 156-162
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリマー収着水に対する一つの凝縮 (多分子) 系モデルとしてポリフッ化ビニル (PVF) オリゴマー4分子に囲まれた一つの水分子からなる系について, Ab Initio分子軌道法を用いて赤外基準振動計算を行って以下の結論を得た. (1) 凝縮系になると, PVFオリゴマー1分子と水分子からなる孤立 (単分子) 系モデルと比べて, 水分子のOH伸縮振動ν (OH) は28-32cm-1低波数側にシフトし, PVFの実測赤外スペクトルをうまく説明する計算結果を得た. (2) 水分子の赤外スペクトルのOH伸縮振動ν (OH) が低波数シフトを起こすドライビングフォースはポリマーとの相互作用により, 水分子中に対応する構造変化が起きたためであると結論された. また, 多分子系では分子間相互作用が性質の異なる2種類の相互作用からなることが示唆された.
  • 大谷 規隆, 古谷 泰士, 塚田 亜由子, 堀 貴浩
    1997 年 54 巻 3 号 p. 163-167
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    塩化ビニルベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム (VBHDAC) の重合をベンゼン中w/o形ミクロエマルション形成下で行った. 重合収率は水添加量, モノマー濃度にほとんど依存しないが, 非重合性界面活性剤の塩化ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム (BHDAC) を加えることにより変化した. また, w/oミクロエマルション形成下では, 収率は低いが開始剤がなくとも重合した. 生成ポリマーの種々の条件下での溶液粘度挙動を調べることにより, VBHDACのw/oミクロエマルション形成下での重合挙動について考察した.
  • 倉持 智宏, 藤田 茂男, 橋本 和彦
    1997 年 54 巻 3 号 p. 168-170
    発行日: 1997/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリブチレンテレフタラート (PBT) に溶融粘度低下剤として微量のアミノ安息香酸を添加して押出成形機で溶融混練を行った. 成形物の固有粘度, 機械的強度および熱的性質をほとんど変化することなく, 溶融粘度を軽減させることができた.
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