高分子論文集
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54 巻, 8 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 恵谷 浩, 尾辻 幸枝, 永井 達夫, 服部 公治
    1997 年 54 巻 8 号 p. 463-470
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (3-ヒドロキシブチラート-co-3-ヒドロキシバレラート) [P (3HB-co-3HV)] フィルムを試料として日本各地の11種類の土壌と1種類の熟成コンポストにより, 温度25℃, 水分調整し, シャーレ埋設試験を行った. 分解速度は土壌の土性で大きく異なり, 最も速い土壌では, 50日での重量減少率は100%, 最も遅い土壌では3カ月での重量減少率は20%であった. 9カ所の土壌採取地でのフィールドテストなどを含めて検討した結果, 土質, 自然環境によっては1年以上分解中のフィルムが残存する場合があることがわかった. またP (3HB-co-3HV) 製生ごみ収集袋を生ごみコンポスト化実証試験プラントに3%混入し, コンポスト化できることを検証した. 破砕されたP (3HB-co-3HV) 製生ごみ収集袋は生ごみの好気性発酵への阻害にならず, 約10~20日で目視で認められなくなる程度に分解し, 好気性コンポスト化処理されることが確かめられた.
  • 草薙 浩
    1997 年 54 巻 8 号 p. 471-476
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    極性原子を含まない無極性ポリエチレン (PE) オリゴマーを用いた凝縮系モデルの赤外基準振動計算をab initio分子軌道法を適用して行い以下の結論を得た. (1) PE凝縮系モデルでは水分子-PEオリゴマー分子間相互作用エネルギーはΔE=-2.2kcal/molと小さく, ポリフッ化ビニル (PVF) 凝縮系モデルのΔE=-15.5kcal/molの約1/7の値である. このことは, 無極性のPEでは極性ポリマーであるPVFのような水素結合力が作用しないことの反映と考えられる. (2) PE凝縮系モデルでは水分子のνa=4116cm-1・νs=3959cm-1はPVF凝縮系モデルの水分子のνs=4074cm-1・νs=3932cm1と比べ高波数であった. しかし, 気体水のνs=4124cm-1・νs=3969cm-1と比較すると, 小さな値ながらも低波数側へのシフトが見られ赤外スペクトルの関係を再現できることが示された.
  • 寺本 彰, 河野 通人, 阿部 康次
    1997 年 54 巻 8 号 p. 477-482
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    カチオン性もしくはアニオン性電解質モノマーとN-イソプロピルアクリルアミド (NIPAAM) の共重合体から作製した高分子電解質錯体 (PEC) は, pH, 塩濃度に加え温度の変化に応答してその構造を変化させることが期待される. 本研究ではこの熱応答性PEC水溶液の熱転移挙動について検討を行い, 以下の結果を得た. 電解質モノマーを導入した共重合体水溶液の転移温度は, 電解質モノマーの導入率, 溶液のpHにより変化した. PECを形成させた場合, 転移温度は単独系に比べ大きく低下した. これは, PECを形成することにより. ポリマーに脱水和を伴う自由度の低下が生ずるため全体として疎水性が増加し, その結果として熱による相転移が起こりやすくなったためと考えられる. また, 少量の塩を添加すると, 静電遮蔽効果によりPECの形成が妨げられ転移温度が上昇したが, さらに塩を添加すると塩析効果により逆に転移温度の低下が観察された.
  • 林 貞男, 山中 拓也, 服部 剛志
    1997 年 54 巻 8 号 p. 483-490
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリメタクリル酸メチルを素材とした2枚の球面上の微小口径 (0.20mm) の凸レンズアレイ (SMLA) 間の光学を調べた. 凸面側を物体に向け, 凹面側からSMLAに映る物体の映像を観察した. 対物のSMLA (第一面) の倒立像は中央のレンズではきちっとレンズに収まって観察されたが, 中央から左右上下に離れたレンズほどレンズの中で左右上下に移動した状態で観察された. それらの無数の倒立像は, 接眼のSMLA (第二面) を重ねるだけで, 第二面のレンズの一部が輝いて1個の映像を形成した. その映像は, 第一面のレンズの倒立像のピッチが第二面のレンズピッチよりも大きい場合は直立で, 二つのピッチの関係がその逆の場合は倒立で発現した. これらの映像の発現は二つのピッチ間のモアレ縞の発現機構から解明できた. 映像の倍率はSMLAの曲率半径が小さければ近似的に曲率半径に比例し, SMLAから物体までの距離に反比例することが明らかになった.
  • 寺田 貴彦, 大西 宏, 山縣 芳和
    1997 年 54 巻 8 号 p. 491-498
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究は, 硬化により3次元架橋構造を形成して不溶不融化するため分解処理困難である熱硬化性樹脂に, 分解性を付与することを目的としている. 従来の物性を維持しつつ分解性を付与するため, 本研究では熱硬化性樹脂に生分解性プラスチックをブレンドすることを検討した. その結果, 不飽和ポリエステル樹脂にポリカプロラクトンを制御してブレンドすることによって, 室温での分解性を付加できることがわかった. この分解は水酸化ナトリウム水溶液とエタノールの混合溶液によって発現する選択的な分解性である. また, ポリカプロラクトンのブレンドによって分解性を付与するためには, 少なくとも不飽和ポリエステル樹脂から相分離した結晶相を形成する必要があることが推測された. 以上の結果は, 熱硬化性樹脂と生分解性プラスチックのブレンドにより, 物性と分解性を兼ね備えた樹脂を形成することの可能性を示唆するものである.
  • 白浜 博幸, 坂根 正憲, 安田 源
    1997 年 54 巻 8 号 p. 499-511
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究ではまず, 環状エーテル {エチレンオキサイド (EO), オキセタン (OX), テトラヒドロフラン (THF) } とラクトン類 {ε-カプロラクトン (CL), δ-バレロラクトン (VL) } とからone-potでポリエステルエーテルを合成した. そして, これらコポリマーのコレステロールエステラーゼによる酵素分解性に及ぼすエーテルユニットの影響について調べた. NMRおよび熱的特性の測定から, EO/ラクトンコポリマーはブロック性が, THF/ラクトンおよびOX/VLコポリマーではランダム性が強いことが判明した. なお, OXとCLとの共重合においてはone-potでは各ホモポリマーが生成してしまうため, two-potでブロックコポリマーを合成した. 脂肪族ポリエステル (ポリラクトン) 鎖に親水性のエーテルユニットを導入することにより, いずれのコポリマーにおいても酵素分解性 (重量減少) は向上した. また, これらコポリマーの酵素分解性の比較から, ランダムコポリマーの方がブロックコポリマーよりも大きな分解性を示すことがわかった. このことは, EOとβ-プロピオラクトン (PL) との交互ユニットに相当する1,5-ジオキセパン-2-オン (DXO) のコポリマーの酵素分解性により確認された. すなわち, よりランダム性の強いDXO/PLコポリマーの方がEO/PLコポリマーよりも分解性が大であった. しかし, DXO/PL (ランダム) コポリマーの熱的特性はPLホモポリマーに比べかなり低下した. そこで, DXOとラクトン (VL, CL) とのジブロックおよびトリブロックコポリマーを調製し, それらの酵素分解性を検討した. その結果, 特にトリブロックコポリマーにおいては熱的特性があまり低下することなく, 良好な分解性を示すことが判明した.
  • 桑野 一幸, 村松 正隆, 児野 智, 永澤 満
    1997 年 54 巻 8 号 p. 512-518
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    自動車用上塗り塗料では, 通常官能性モノマーを含む数種のアクリル系モノマーのラジカル共重合によって線状のプレポリマーを合成し, それにさらに架橋剤を加えて三次元網目構造を形成させる. ラジカル重合は確率的に進行するため, プレポリマーは広い分子量分布をもつのみならず, 架橋剤と反応して三次元網目構造を形成するための官能性モノマーの分子内含有率もある分布をもつ. このようなプレポリマーの化学組成分布, 分子量分布は塗膜の耐久性と密接な関係をもつと予想される. 塗膜の耐久性に関する一つの目安として, 一般に架橋密度が用いられてきた. しかし, 塗膜の劣化の際に三次元網目構造を維持できるかどうかの考察には, 架橋密度だけでは十分でなく, プレポリマー1分子当たりの架橋点の数が重要であると考える. 本論文ではプレポリマー中において1分子当たり3個未満の官能性モノマー単位をもつ分子の重量分率を重合理論に基づいて計算し, 劣化しやすさの指標として提案する. そして, この劣化しやすさの指標が塗膜の耐久性において一つの実用的な尺度であることを示す.
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