本研究ではまず, 環状エーテル {エチレンオキサイド (EO), オキセタン (OX), テトラヒドロフラン (THF) } とラクトン類 {ε-カプロラクトン (CL), δ-バレロラクトン (VL) } とからone-potでポリエステルエーテルを合成した. そして, これらコポリマーのコレステロールエステラーゼによる酵素分解性に及ぼすエーテルユニットの影響について調べた. NMRおよび熱的特性の測定から, EO/ラクトンコポリマーはブロック性が, THF/ラクトンおよびOX/VLコポリマーではランダム性が強いことが判明した. なお, OXとCLとの共重合においてはone-potでは各ホモポリマーが生成してしまうため, two-potでブロックコポリマーを合成した. 脂肪族ポリエステル (ポリラクトン) 鎖に親水性のエーテルユニットを導入することにより, いずれのコポリマーにおいても酵素分解性 (重量減少) は向上した. また, これらコポリマーの酵素分解性の比較から, ランダムコポリマーの方がブロックコポリマーよりも大きな分解性を示すことがわかった. このことは, EOとβ-プロピオラクトン (PL) との交互ユニットに相当する1,5-ジオキセパン-2-オン (DXO) のコポリマーの酵素分解性により確認された. すなわち, よりランダム性の強いDXO/PLコポリマーの方がEO/PLコポリマーよりも分解性が大であった. しかし, DXO/PL (ランダム) コポリマーの熱的特性はPLホモポリマーに比べかなり低下した. そこで, DXOとラクトン (VL, CL) とのジブロックおよびトリブロックコポリマーを調製し, それらの酵素分解性を検討した. その結果, 特にトリブロックコポリマーにおいては熱的特性があまり低下することなく, 良好な分解性を示すことが判明した.
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