高分子論文集
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55 巻, 5 号
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  • 堀邊 英夫, 熊田 輝彦, 藤野 毅, 木村 良佳, 久保田 繁
    1998 年 55 巻 5 号 p. 231-242
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    化学増幅ポジ型電子線レジストの高感度・高解像度化を目的に, レジストの化学構造と感度, 解像度との関係を検討した. レジストは, ベース樹脂, 溶解抑制剤および酸発生剤の3成分より構成し, それぞれに役割分担を負わせることにより, 材料設計を容易にした. ベース樹脂に, 新規高分子のtBOC-PVP (PVPのOH基の一部をtBOC基で置換した高分子) を開発し, レジスト溶解性の制御を図った. tBOC-PVPのtBOC化率は高いほど感度が悪化するのに対して, 解像度が向上するため, 感度と解像度の両者を満足する最適値 (24%) を決定した. 溶解抑制剤は, 未露光部の溶解速度の低下のみならず, 露光部の溶解速度の向上にも寄与した. 溶解抑制剤には, 露光後に酸性度が高くなるジカルボン酸エステルを選択し, 露光部の溶解速度の向上を図った. 酸発生剤として, オニウム塩のカチオン部および対アニオン部の種類を系統的に変化させた結果, カチオン部には電子線の吸収量が大きくなる原子量の大きい原子を, アニオン部には高酸性度の化合物を用いると, レジスト感度は向上し, このためジフェニルヨードニウムトリフレートを選択した. 開発した化学増幅ポジ型3成分系電子線レジストにより, 0.10μmのホールパターン (11.0μC/cm2照射) および0.14μmのL & Sパターン (17.5μC/cm2照射) が得られ, 本レジストを256MDRAM (1995年) および1GDRAM (1996年) の開発に適用した.
  • 大崎 知恵
    1998 年 55 巻 5 号 p. 243-247
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリアクリルアミド含水ゲルが形成される過程を, 屈折率の測定および295 nmにおける光透過率の測定により追跡した. 開始剤を加えてからある時間を経過したのちに屈折率および近紫外光の透過率が急に上昇することが見いだされた. 屈折率の変化は重合反応が進行して三次元網目が発達し水の配向性に変化が起こる過程に対応し, 透過率の変化は重合によってモノマーがほとんど消費されつくすゲル化の最終段階に対応していると考えられる.
  • 八谷 広志, 高旗 達也, 佐藤 ふみ, 武田 邦彦
    1998 年 55 巻 5 号 p. 248-254
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    コーンカロリメーターによるポリフェニレンエーテル (PPE) とポリスチレン (PS) アロイを中心として高分子燃焼の研究を行い, 燃焼時の高分子の分解および表面状態について考察を行った. PPEの含有量が増大するに従って発熱速度, 最大発熱速度が減少し, PPEの含有量が50 wt%以上ではPPEの含有量の影響が少なかった. コーンカロリメーターの結果と熱重量分析, UL燃焼試験, およびPPEとベンゼン環の相互作用のコンピューター・シミュレーションの研究により, PPEの含有量の少ないときにはPPEとコンプレックスをつくらないPSが材料全体の燃焼を支配し, PPEの含有量がPSに対して1/2以上になるとPSの高分子鎖はPPEとコンプレックスをつくりPPEの燃焼挙動が材料全体を支配すると考えられた.
  • 折原 勝男, 土屋 和尋, 野内 健太郎, 青木 勝博, 中野 正博, 丹野 裕司, 菅野 榮一
    1998 年 55 巻 5 号 p. 255-260
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ニッケル (Ni) とフタロシアニン (Pc) ならびにパラフィン (Pa) を, 通常の高真空蒸着装置を用いて, 異なる蒸着源から同時に蒸着し混合膜 (Ni*Pc*Pa) を作製した. そのNi*Pc*Pa試料の希薄溶液について可視吸収スペクトルを測定し, 前報のNi*Pcの場合と比較した. その結果Ni*Pc*Paでは蒸着したPc成分の約70%がNiPcに変化し, Ni*Pcの場合の50%に比べ錯化収率が向上することがわかった. また, Ni*Pc*Paの反射X線回折測定および電子線回折測定ならびに透過型電子顕微鏡観察により, 混合膜中のPc成分の結晶性および結晶サイズがPcの単独蒸着膜および前報のNi*Pcに比べて大幅に減少することがわかった. 上の二つの結果から, Paの添加による混合膜中のPc成分の凝集性の低下が, 錯化反応の収率向上をもたらすことがわかった.
  • 渋佐 義博, J.S. ANDRADE, 池ノ上 芳章
    1998 年 55 巻 5 号 p. 261-268
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    導電性高分子の分子構造と導電特性との関係を明らかにするため, 高分子鎖を格子でモデル化したランダムネットワークシミュレーションを実施した. その結果ドーパント濃度による導電率の温度依存性挙動は実験での結果と良い一致を示した. また分子鎖の長さ, 分子配向などの因子が導電特性に与える影響を明らかにした. さらに導電性を発現する転移領域での分子量分布および格子モデルの大きさと導電特性との関係について検討し, 導電特性に与える分子構造の重要性を指摘した.
  • 高橋 雅江, 島崎 昌子, 山本 潤
    1998 年 55 巻 5 号 p. 269-276
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    メチルセルロース水溶液を高温でゲル化する水溶性セルロース水溶液の一つのモデルとして考え, μ-DSCおよび目視を用い, ゾル-ゲル相転移曲線相分離曲線を含んだ相図の作製を試みた. ゾル-ゲル相転移曲線, 相分離曲線の分子量依存性を調べ, 架橋領域の構造の検討を試みた. その結果, 理論的に提案されている相図と定性的に一致している相図が得られた. 相分離曲線, ゾル-ゲル相転移曲線ともに, 分子量の増加とともに低温, 低濃度側にシフトすることが認められた. また, 今回用いた分子量範囲では, 両曲線の競合点が臨界点より高温側に位置することが予測された. 分子量の大きいMC-4の相分離領域の臨界点近傍でゲル-ゲル相分離が視覚的に認められたとから, 相分離領域にはゾル-ゲル相分離とゲル-ゲル相分離の二つの領域が存在することが示唆された. さらに, ゾル-ゲル相転移曲線の分子量依存性の理論的解析の結果, 架橋構造は比較的細長い微結晶構造を形成していると予想された.
  • 田村 裕, 山中 晋, 松田 浩二, 小西 徹
    1998 年 55 巻 5 号 p. 277-283
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    チエノピラジンの2, 3位に種々なアルキル基やフェニル基を導入したポリマーを, 塩化銅 (II) を用いた酸化重合により合成した. メチル基を有するモノマーからは, チオフェンのα位とメチル基が連結した不規則構造を含むため, 主鎖の共役系の発達は不十分であった. それ以外のモノマーからはチオフェン環で連結したポリマーが得られ, 分子量はモノマーの立体的因子や置換基の種類に影響されることがわかった. また, VIS-NIRスペクトルやサイクリックボルタモグラムの測定から, 0.5eV程度の非常に小さいバンドギャップを示し, 共役系が高度に発達していることが示唆された. 本ポリマーは通常のポリマーに比べて高い電子親和力を有しており, ヨウ素によるp型ドーピング (4×10-7~3×10-3Scm-1) に比べ, ナトリウムナフタレンによるn型ドーピング (2×10-2~3×10-2Scm-1) において, より高い導電率を示した.
  • 江口 勝, 浅野 敦志, 黒津 卓三
    1998 年 55 巻 5 号 p. 284-291
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    固体高分解能13CNMR法を用いて, ポリ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリメタクリル酸 (PHEMA/PMAA) ブレンドの相溶性と脱水反応機構について検討した. 13CNMRスペクトルのカルボニル基領域における化学シフト値の変化から, ブレンドの構成ポリマー間で水素結合の存在が示唆された. また, 13C核から間接的に測定した, 1H核のスピン-格子緩和時間と温度変調DSCの測定から, PHEMA/PMAAブレンドは5~10nmの領域内において相溶していることが明らかとなった. PMAAは, 熱処理することにより分子内脱水反応を起こして六員環無水物となるが, ブレンド中においてその側鎖はPHEMAの側鎖と分子間で脱水反応を起こすことが示された.
  • 李 洪玲, 氏平 祐輔, 七沢 淳
    1998 年 55 巻 5 号 p. 292-295
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリル (AN) 含有率の異なるアクリロニトリル・スチレンランダム共重合体 (AS共重合体) の自由体積の大きさ, 数濃度の組成比依存性を, 陽電子消滅寿命法を用い観察した. 自由体積の大きさはAN含有率の増加に伴いほぼ直線的に減少し, 数濃度も減少した. ポリスチレン (PS) とポリフェニレンエーテル (PPE) の相溶系ブレンドの場合は, PPEの含有率増加に伴い自由体積が大きくなることが観察されており, 両者の間で自由体積の組成比依存性の差異が観察された.
  • 橋本 保, 相澤 英昭, 小平 俊之
    1998 年 55 巻 5 号 p. 296-299
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    スチレンおよびp-メトキシスチレンのリビングカチオン重合を塩化1-フェニルエチル/SnCl4/nBu4NCl開始剤およびHCl/ZnCl2/nBu4NCl開始剤をそれぞれ用いて塩化メチレン中, -15℃で行い, 水で重合を停止した. 生成したポリ (スチレン) およびポリ (p-メトキシスチレン) の停止末端には成長末端と同じ構造のクロリド単位がほぼ定量的に存在し, スチリル型のリビング成長種の水に対する高い安定性が示唆された.
  • 藤本 悦子
    1998 年 55 巻 5 号 p. 300-303
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    脂肪族ポリエステル (ポリブチレンサクシネート (PBSU)) と芳香族ポリエステル (ポリエチレンテレフタレート (PET)) について, フィルム内部の紫外線による光分解の様子を照射面および照射面から約10, 25, 50, 80μmの面につき, FT-IR-ATRの測定を行うことによって考察した. PBSUの場合, 紫外線照射により, 照射面から約80μmの深さに至るまで, 未照射フィルムのものとは異なるスペクトルが観測された. PETの場合には, 照射面から約10μmの深さまでは, 光分解生成物によるIRバンドが出現したが, それ以上の深さでは紫外線照射による影響がもはや観測されなかった. PBSUとPETのフィルム内部における紫外線照射による光分解の様子の違いの一因は, 両者の光分解機構の違いに存する.
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