化学増幅ポジ型電子線レジストの高感度・高解像度化を目的に, レジストの化学構造と感度, 解像度との関係を検討した. レジストは, ベース樹脂, 溶解抑制剤および酸発生剤の3成分より構成し, それぞれに役割分担を負わせることにより, 材料設計を容易にした. ベース樹脂に, 新規高分子の
tBOC-PVP (PVPのOH基の一部を
tBOC基で置換した高分子) を開発し, レジスト溶解性の制御を図った.
tBOC-PVPの
tBOC化率は高いほど感度が悪化するのに対して, 解像度が向上するため, 感度と解像度の両者を満足する最適値 (24%) を決定した. 溶解抑制剤は, 未露光部の溶解速度の低下のみならず, 露光部の溶解速度の向上にも寄与した. 溶解抑制剤には, 露光後に酸性度が高くなるジカルボン酸エステルを選択し, 露光部の溶解速度の向上を図った. 酸発生剤として, オニウム塩のカチオン部および対アニオン部の種類を系統的に変化させた結果, カチオン部には電子線の吸収量が大きくなる原子量の大きい原子を, アニオン部には高酸性度の化合物を用いると, レジスト感度は向上し, このためジフェニルヨードニウムトリフレートを選択した. 開発した化学増幅ポジ型3成分系電子線レジストにより, 0.10μmのホールパターン (11.0μC/cm
2照射) および0.14μmのL & Sパターン (17.5μC/cm
2照射) が得られ, 本レジストを256MDRAM (1995年) および1GDRAM (1996年) の開発に適用した.
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