高分子論文集
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55 巻, 6 号
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  • 小谷野 智江, 箕浦 憲彦, 奈倉 正宣
    1998 年 55 巻 6 号 p. 305-313
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコール (PVA) にポリエチレングリコール (PEG) あるいはポリアクリルアミド (PAAm) をブレンドすることにより, 細胞付着抑制効果をもつ新規なハイドロゲル膜を調製し, それらの膜のビタミンB12および溶存酸素の透過性を研究した. PVA/PEGおよびPVA/PAAmブレンド膜は, オートクレープ中で溶解された10wt%高分子濃度の水溶液をガラス板上にキャストし, 乾燥することにより得た. 得られた膜を水中で膨潤させる過程で, PEGおよびPAAm成分が膜から一部溶出した. PEG系およびPAAm系ハイドロゲルはいずれもPVA単独ゲルに比べて培養細胞を付着させなかった. DSC測定から求めた自由水および不凍水はPEGあるいはPAAm分率とともに増加した. ビタミンB12の透過係数はPEGあるいはPAAm分率の増加とともに増加し, PAAm系ゲルの方がPEG系ゲルよりも高いビタミンB12透過性をもっていた. 溶存酸素の透過係数はPEGあるいはPAAm分率の増加とともに増加し, PEG系ゲルの方がPAAm系ゲルよりも高い溶存酸素透過性をもっていた. これらの結果をゲルの物理的構造およびゲル中の水の状態と関連づけて考察した.
  • 土屋 利江
    1998 年 55 巻 6 号 p. 314-322
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子材料の発癌性評価方法を確立するために, in vitro試験系を導入して, 材料に接着した細胞の癌化過程を明らかにすることができた. ポリウレタンをモデル材料として検討した結果, 弱い発癌イニシエーション作用と, 比較的強い発癌プロモーション作用が存在することを明らかにした. さらに, この発癌プロモーション作用には細胞間連絡に重要なコネキシンの機能阻害が密接に関わっていること, また, この機能を阻害する強度が, 材料の腫瘍原性強度と高い相関性があることを示した. したがって, 使用したポリウレタンの場合には, コネキシンの機能阻害が発癌強度を決定づける重要なステップであるといえる. さらに, 高分子材料に含まれる可能性のある各種添加剤と触媒およびオリゴマーが, 材料表面特性とともに, コネキシン機能を阻害する因子となりうることを一連の研究から明らかにした. 高分子材料の発癌性を評価する短期検索法として, 細胞間連絡阻害試験 (例V79代謝協同阻害試験) およびBalb 3T3 2段階細胞形質転換試験が現在最も有望な方法である.
  • 水野 慎一, 中島 直喜, 堤 定美, 玄 丞烋
    1998 年 55 巻 6 号 p. 323-327
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    2, 2-ジメチルトリメチレンカーボネート (DMTMC) をオクチル酸スズの存在下でバルク重合させ, その諸物性を評価した. DMTMCとD, L-ラクチドの重合の活性化エネルギーを調べたところ, それぞれ約100, 90kJ/molであった. DMTMCポリマーのTm, Tgはそれぞれ120, 33℃であり, ポリ-L-乳酸 (PLLA) やポリグリコール酸 (PGA) よりも低い値であった. またDMTMCとLLAとの共重合体は, 融点を示さず, 非晶性であることがわかった.
    破断強度, ヤング率は, 非晶性のポリ-D, L-乳酸 (PDLLA) よりも低く, 結晶性高分子であるにも関わらず, 軟らかい高分子であることが示された. 共重合体の力学的性質は, 組成比に依存して変化した. 加水分解速度はPLLAよりも低く, 組成比を変えることによりコントロールできることがわかった.
  • 山岡 哲二, 竹部 義之, 木村 良晴
    1998 年 55 巻 6 号 p. 328-333
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    組織再建術におけるスキャホールドの特性としては, 細胞との良好な付着, 増殖, さらには分化誘導などが要求される. 本研究では, スキャホールドとして最も多く研究されているポリ-L-乳酸 (PLLA) の表面改質を目的として, PLLA表面へのゼラチンの固定化法について検討した. ラジカル開始剤を用いたPLLA-ゼラチン結合反応では十分な固定化量が得られなかったが, アルカリ条件下におけるPLLA-ゼラチン直接固定化法では2μg/cm2のゼラチンの化学的固定化が達成された. 得られたゼラチン固定化PLLAフィルム上において3T3細胞の良好な初期接着が観察され, この直接固定化法がポリ乳酸のバルク特性を変化させることなく, また, 生体埋入時に毒性が懸念されるカップリング試薬も用いない安全な手法であることが明らかとなった.
  • 河野 秀之, 栗田 公夫, 岩崎 泰彦, 石原 一彦, 中林 宣男
    1998 年 55 巻 6 号 p. 334-343
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    セルロース血液透析膜の血液に対する生体反応を抑制するための基礎的な研究として, セルロース膜表面にさまざまな水溶性ポリマーをグラフト化し, 化学構造と生体反応との相関を検討した. グラフト化反応は対応するモノマーを水系でセルロース膜と共存させ, セリウムイオンを開始剤として行った. モノマーとしてリン脂質極性基を有する2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン (MPC), アクリルアミド, N-ビニル-2-ピロリドン (VPy), およびメタクリロイルポリエチレングリコール (MPEG) を用いた. いずれのモノマーもセルロース膜表面で重合し, グラフト化されることが赤外分光, X線光電子分光, および表面電位の測定からわかった. 修飾したセルロース膜の血液適合性を血小板の粘着挙動, 血漿タンパク質の吸着, および補体系の活性化の観点より評価した. タンパク質吸着は緩衝溶液からと血漿からでは膜の化学構造により異なった挙動を取ったが, MPCをグラフト重合した膜では有意に吸着量の低下が認あられた. MPCとVPyをグラフト重合した膜は全補体消費率を抑えることができ, 補体のC3aフラグメントの生成もグラフト化膜では未処理膜よりも低くなった. 膜を血液と接触させた場合, 未処理膜に比べいずれのグラフト化膜でも血小板粘着を抑制したが, MPEGをグラフト重合した膜では血小板の粘着に時間依存性があることもわかった. MPCをグラフト重合したセルロース膜は他の膜に比べて, 血液との接触時間が長くなっても血小板粘着を効果的に抑制していた. 以上の結果, セルロース膜の表面を水溶性ポリマー鎖で修飾することは血液の表面での反応を一部抑制することに有効であるものの, その化学構造が大きく影響することが明らかとなった. 中でもリン脂質極性基を有するMPCをグラフト重合したセルロース膜はいずれの評価においても生体反応を抑制できることが認められた.
  • 小椎尾 謙, 戈 守仁, 高原 淳, 梶山 千里
    1998 年 55 巻 6 号 p. 344-352
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    n-オクタデシルトリクロロシラン (OTS), [2- (パーフルオロオクチル) エチルトリクロロシラン (FOETS) 単分子膜, および (OTS/FRETS) (50/50) 混合単分子膜は水和環境下などにおいて非常に安定な表面構造を有するため, タンパク吸着挙動の研究のモデル表面として用いた. 多重全反射赤外吸収分光 (ATR-FT-IR) フローセル法および原子問力顕微鏡 (AFM) 観察により, pH=7.5の溶液の場合, 相分離構造を有する (OTS/FOETS) 混合単分子膜では, FOETS相への牛血清アルブミン (BSA) の選択吸着が明らかになった. また, -SH基を末端にもつ (3-メルカプトプロピル) トリメトキシシラン (MTS) をドメインに有する (MTS/FOETS) 混合単分子膜において, BSAは選択的にMTS相に固定化された.
  • 加藤 功一, 古川 学, 神崎 吉夫, Allan S. HOFFMAN, 中前 勝彦
    1998 年 55 巻 6 号 p. 353-358
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    タンパク質を高密度で安定に固定化することのできる高分子担体の設計を目的として, リン酸基含有モノマーとN-イソプロピルアクリルアミドからなるヒドロゲルを作製した. リン酸基含有モノマーには, 側鎖に種々の分子量をもつポリエチレングリコール鎖を介してリン酸基の結合したメタクリル酸エステルモノマーを用いた. 作製したゲル中に, ポリイオンコンプレックス形成反応を利用して塩基性タンパク質であるリゾチームを固定化した. 側鎖のエチレングリコールユニット数が5および8のモノマーを高い含有率で含むヒドロゲル中には, 最も高密度にリゾチームが固定化された. リゾチームーヒドロゲル複合体は, pH7.4の媒体中でリゾチームをゲル外に放出し, その初期速度は, ポリエチレングリコール側鎖長およびその含有率によって変化した. 放出されたリゾチームは, エチレングリコール鎖長にかかわらず, 溶液中に存在していたリゾチームと同等の残存酵素活性を示した.
  • アミノ酸ユニットの影響
    白浜 博幸, 長澤 誠, 梅本 浩一, 安田 源
    1998 年 55 巻 6 号 p. 359-366
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    最初に, 環状デプシペプチドをアミノ酸とオキシ酸誘導体 (DL-2-プロモプロピオニルブロミド) とから合成した. アミノ酸としてレアラニン, L- (DL- または D-) バリン, およびL-ロイシンを用いた. 得られたデプシペプチドをこれらアミノ酸の順に従い, それぞれDMO, PMOそしてBMOと略称した. つづいて, 各デプシベプチドのホモポリマーならびにそれらとε-カプロラクトン (CL) とのコポリマーを, 触媒にオクチル酸スズ (II) を用いて調製した. これらポリマーの熱的特性およびNMRスペクトル測定の結果から, 得られたデプシペプチドホモポリマーはいずれも非晶性であること, 一方, デプシペプチド/CLコポリマーは組成に依存して結晶性または非晶性で, ランダムシークエンスを有することが明らかとなった. そして, これらポリマーの酵素 (プロテイナーゼK, コレステロールエステラーゼ) および活性汚泥による生分解性を検討した. まず, プロテイナーゼKを用いて酵素分解性を調べた. その結果, PMOホモポリマーの分解性はPoly (L-PMO)≫Poly (DL-PMO) >Poly (D-PMO) の順となり, この酵素が天然由来のL-アミノ酸ユニットに対して基質特異性が高いことが示唆された. 一方, コポリマーの場合は, プロテイナーゼKによる分解ではCopoly (L-DMO/CL)≫Copoly (L-PMO/CL) ≧Copoly (L-BMO/CL) の順で, コレステロールエステラーゼではCopoly (L-PMO/CL) >Copoly (L-BMO/CL) ≧Copoly (L-DMO/CL) の順となった. これらの結果にはコポリマーの親・疎水性バランスが影響しているように思われる. また, これらポリマーは活性汚泥によっても速やかな分解を受けた.
  • 藤本 啓二, 佐々木 純, 富田 芳宏, 若林 良之, 川口 春馬
    1998 年 55 巻 6 号 p. 367-371
    発行日: 1998/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    表面性状の異なる高分子表面上で好中球の受ける刺激についての研究を行った. 試料としてスルホン化ポリスチレンおよび表面グラフト化ポリウレタンを作製した. 刺激を受けた細胞の活性化状態を活性酸素産生を経時的に測定することにより評価した. その結果, 前者の表面に対しては一過性の産生を示した. 後者の表面では活性酸素が継続して産生される結果となった. さらに, 30分間材料と接触させた細胞に, 刺激物質を加えて再び産生量の測定を行った. 一次刺激の程度とその作用時間により, 二次刺激時の活性化の程度が異なることがわかった.
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