高分子論文集
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55 巻, 7 号
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  • 山内 健, 王 楠, 下村 雅人, 宮内 信之助
    1998 年 55 巻 7 号 p. 373-377
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    官能基としてそれぞれカルボキシル基およびアミノ基を有するイオン交換樹脂にグルコースオキシダーゼ (以下GODと略す) を縮合試薬を用いて固定化し, 固定化酵素の性質を酵素活性, 酵素活性のpH依存性, および反応速度の見地から検討した. 酵素固定化量は樹脂1g当たり陽イオン交換樹脂には55.2μg, 陰イオン交換樹脂には42.3μgとイオン交換樹脂の種類にかかわらず同程度で, 酵素比活性はそれぞれ30℃, pH7において, 290U/mgおよび44U/mgであった. 陽イオン交換樹脂へ固定したGODの比活性は陰イオン交換樹脂へ固定したGODの比活性の値に比べて著しく大きくなり, イオン交換樹脂の官能基が異なることで, 酵素活性の値が大きく変化することがわかった. 酵素活性のpH依存性は, 陽イオン交換樹脂に固定化したGODの場合は遊離の酵素のpH-活性曲線と同様の傾向を示し, 陰イオン交換樹脂では至適pH値が6に移動し, アルカリ側で活性が低いことが明らかとなった. さらに固定化GODの反応速度について検討したところ, 陽イオン交換樹脂に固定化したGODでは, Michaelis定数Kmは2.1mM, 最大反応速度Vmaxは90μM/minとなり, 陰イオン交換樹脂に固定化したものでは, それぞれ, 0.9mM, 14μM/minで, どちらの固定化酵素も遊離酵素のKm値9.1mMよりも小さい値となり, 基質との親和性が増大していることが明らかとなった.
  • 宣 響, 金 東華, 北野 武, 馬 錫一
    1998 年 55 巻 7 号 p. 378-384
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレン (HDPE) 中空糸分離膜の微細孔サイズを制御するための熱誘導相分離法について検討した. HDPEと溶媒として用いた流動パラフィン (LP) を種々の混合比で溶融混合し, これらの平衡溶融温度, 結晶化温度などを調べるとともにFlory-Huggins相互作用パラメーターを混合系の組成比の関数として調べた. 多孔質中空糸膜は混合系を溶融紡糸した後, 溶媒 (LP) を抽出し, 延伸することにより調製した. これらの中空糸膜としての性能は水の透過実験により評価した. Hoffman-Weekプロットから相互作用パラメーターまたは相溶性パラメーターとして0.36なる値が得られた. また中空糸膜内部のモルホロジー観察から微細孔のサイズは溶融紡糸条件, 延伸比, および混合系の相溶状態を選択することにより制御が可能であることがわかった.
  • 上遠野 浩樹, 阪上 輝夫, 庄司 益宏, 荻原 武男
    1998 年 55 巻 7 号 p. 385-392
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    リン酸メタクリロイルオキシエチル (PMOE) -銅イオン錯体のポリメチルメタクリレート中での近赤外光吸収特性と配位状態の関連性をモル比法によって考察し, この錯体を含有する樹脂板の吸収波長域の調整がモル比の調節によって可能であることを示した. ポリマー中の銅錯体の吸収ピーク波長 (λmax) は, モル比 [リン酸エステル中リン酸基のOH] / [Cu2+] が2から6の範囲で800から840nmヘシフトし, 6以上では一定値840nm付近を示した. [OH] / [Cu2+] =2ではメタクリロイル基中のCOO基も配位しているが, 2から6の間でのλmaxが変化することと6以上で一定であることから, POH基濃度増大に従いCOO基からPOH基への逐次配位置換反応が起きたと推測された. 6以上では置換反応は起こっておらず, POH基6配位状態で安定化していることがわかった. また, 上述のモル比とλmaxの関係を用いることによりこの錯体を含有する近赤外線カットフィルターの可視光透過域/近赤外線カット域の境界波長のコントロールが可能となった.
  • 桑野 一幸, 村松 正隆, 岩田 直樹, 永澤 満
    1998 年 55 巻 7 号 p. 393-400
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    近年, 地球環境保護の見地から, 溶剤排出量低減のための塗料のハイソリッド化が研究されている. 我々も, 別報においてマクロモノマーのラジカル重合で合成した分岐ポリマーがハイソリッド塗料用樹脂として有望であることを報告した. 本論文では, 現在工業的に行われているラジカル重合法によるアクリル系塗料合成中に二官能性モノマーを添加することによって, 分岐ポリマーを合成する方法について研究した. 二官能性モノマーとしては, エチレングリコールジメタクリレート, 1, 6-ヘキサンジオールジメタクリレート, およびジビニルベンゼンを用いた. その結果, ジビニルベンゼンを用いた合成法において, 分岐ポリマー化を比較的高収率にて行うことができ, かつ, この分岐ポリマーを用いることにより40%溶液粘度を大幅に減少させることができることを示した.
  • 片平 新一郎, 安江 健治, 稲垣 道夫
    1998 年 55 巻 7 号 p. 401-406
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    イプシロン-カプロラクタム (以下ε-CL) とそのプロトン化剤であるリン酸の存在下でε-CL/合成フッ素雲母インターカレーション化合物が生成することを示した. このインターカレーション反応は2段階で進行し, まず層間にNa+イオンのみが存在する雲母がプロトン化したε-CLとイオン交換し, その後層間にNa+イオンと水が共存している雲母のイオン交換反応が進行した. 1段目のイオン交換反応は, 20℃においても急速に進行するが2段目は遅い. しかし, 反応温度を60℃に上げるとイオン交換反応は加速された. イオン交換後得られた雲母インターカレーション化合物は, XRDを用いた構造解析から層間隔が14.7Åであり, 007回折線まで同定することができた.
  • 三瓶 純, 亀山 敦, 西久保 忠臣
    1998 年 55 巻 7 号 p. 407-414
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    2, 5-ノルボルナジェン-2, 3-ジカノレボン酸ジグリシジルエステル (NDGE) とテレフタル酸クロリドとの重付加反応により主鎖にノルボルナジエン (NBD) 残基と側鎖にクロロメチル基を有するポリマー (P-1) を合成し, 得られたP-1の側鎖クロロメチル基の化学修飾による自己増感型NBDポリマーの合成について検討を行った. ポリエステル (P-1) とカリウム4-ベンゾイルフェノキシド, カリウム4-ニトロフェノキシド, およびカリウム4-ニトロ-1-ナフトキシドとの反応を, 相間移動触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド (10 mol%) を用いて, N-メチル-2-ピロリドン中で48時間行った. その結果, 側鎖に種々の増感基を有する自己増感型のNBDポリマー (P-2~P-4) が高収率で得られた. 次に, 得られたポリマーの光異性化反応および光増感異性化反応について検討を行った. フィルム状態での光反応ではP-1の光反応速度は低分子増感剤 [1-メトキシ-4-二トロナフタレン (NN)] の添加により著しく促進されたが, THF溶液中では反応の促進効果は認められなかった. 一方, 自己増感型NBDポリマー (P-2~P-4) の光反応はフィルム状態およびTHF溶液中においても, P-1に対応する低分子増感剤を添加した系に比べて, 速やかに進行することが判明した. さらに, 光照射後の自己増感型NBDポリマーの蓄熱量は84kJ/molと, P-1と同等の蓄熱量 (88kJ/mol) を有することも判明した.
  • 矢倉 昇, 柏田 達範, 平井 英史
    1998 年 55 巻 7 号 p. 415-422
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (N-ビニル-2-ピロリドン) (PVP) に保護されたパラジウムナノ粒子 (PVP-Pdナノ粒子) を分散液 [水-メタノール (1: 1, v/v)] 中でポリアクリルアミドゲルおよびその誘導体に吸着させることを試みた. PVP-Pdナノ粒子は, ポリアクリルアミドゲルおよびカルボキシル化ポリアクリルアミドゲルに吸着されず, アミノエチル化ポリアクリルアミドゲル [G (PAA-AE)] に吸着された. PVP-Pdナノ粒子の全量をG (PAA-AE) に吸着させる方法により, フリーの状態で分散媒中に溶解しているPVPを分離できることを見いだした. これにより, 分散液中のPdナノ粒子を保護しているPVPおよびフリーのPVPの定量に成功した. G (PAA-AE) に吸着されたPVP-Pdナノ粒子は, 1, 3-シクロオクタジエンのシクロオクテンへの水素化に触媒として高活性および高選択性を示し, 反応系から回収・再使用が容易であった.
  • 矢倉 昇, 尾崎 貴志, 平井 英史
    1998 年 55 巻 7 号 p. 423-429
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (N-ビニル-2-ピロリドン) (PVP) に保護されたパラジウムナノ粒子 (PVP-Pdナノ粒子) をメタノール分散液中からトリメチルアンモニウム基を有するポリスチレンゲル (PSt-TA) に吸着させることを試みた. PVP-Pdナノ粒子は, ゲル型のPSt-TAに吸着されず, 多孔型のPSt-TA (PSt-HPA) (平均細孔径140nm) に吸着された. PVPの平均分子量 (Mw: 6000, 25000, 175000, および574000) が増加するにつれ, PVP-Pdナノ粒子のPSt-HPAへの吸着量は減少した. 超遠心法によりPVPの吸着層を含めたPVP-Pdナノ粒子の粒径を測定した結果, Mwが増加するにつれ, この粒径は増加した. PSt-HPAに吸着されたPVP-Pdナノ粒子は, 1, 3-シクロオクタジエンの水素化反応の触媒として. 10回以上の繰り返し使用においても最初の活性および選択性を保持した.
  • 椿原 啓, 櫻井 伸一郎, 藤澤 勢起
    1998 年 55 巻 7 号 p. 430-432
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1-チル-2-ピロリドン溶液からキャスト製膜したポリアニリンフィルムを70~290℃で熱処理した. 熱処理膜の引張強度は190℃までは増加し, 210℃を過ぎると大きく減少した. 190℃までは熱処理温度の上昇に伴い溶媒が蒸散するとともに若干の分子鎖間結合が生じ, 強度が増加する. 210℃以上の熱処理は高度に発達した酸化反応, 分子鎖間架橋のため, 脆くなり, 引張強度が大きく低下したものと考えられる.
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