高分子論文集
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55 巻, 8 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 塚目 孝裕, 沓澤 道雄, 齋藤 英樹, 柴崎 芳夫
    1998 年 55 巻 8 号 p. 433-439
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ジカル機構により注型重合したポリスチレン (PS), ポリメチルメタクリレート (PMMA), およびこれらの共重合体試料にγ線を照射し, 重合率の増加の様子を調べた. γ線照射により注型重合における重合率の上昇に効果があることが確認された. 一方, γ線の照射はポリマー鎖に対し, 架橋反応や分解反応を生じさせることが知られている. そこで, γ線の照射がPS, PMMA, およびその共重合体のポリマー鎖にどのような効果を及ぼすかをサイズ排除クロマトグラフィー (SEC) を用いて検討した. その結果, γ線照射前後で分子量分布に変化が認められ, MMAユニットは主鎖の切断による低分子量化に寄与し, Stユニットは架橋・分岐反応による高分子量化およびβ切断による低分子量化に寄与していることが確認された. さらに適当な組成のSt-MMA共重合体はγ線照射に対して優れた耐久性を示す高分子材料となるものと推定された.
  • 松田 文彦, 松野 直樹, 飯澤 孝司
    1998 年 55 巻 8 号 p. 440-447
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    新規の徐放材料である外部が疎水性, 内部が親水性のコアーシェル型のハイドロゲルを合成する目的から, アクリル酸ゲルの1, 8-ジアザビシクロ [5. 4. 0] -7-ウンデセン塩 (DAA) とアルキルクロリドのエステル化反応について詳細に検討を行った. DAAをヘキシルクロリドのDMF溶液中で反応を行ったところ, 少量のカルボン酸を副生するもののゲルの外側からほぼ定量的にエステル化し, コアーシェル型のゲルを経て最終的にはポリ (アクリル酸ヘキシル) ゲルが生成した. さらに, この反応の基礎的な知見を得るため, 種々の条件下でDAAのエステル化を行った. この結果を均一反応モデルを用いて速度論的に解析したところ, 見かけのエステル化反応は純粋なエステル化速度ばかりかゲル内のアルキルクロリドの拡散速度に依存し, アルキルクロリドの構造により反応挙動が大きく変化することを明らかにした.
  • 李 洪玲, 伊藤 賢志, 氏平 祐輔, 七沢 淳, 岩元 隆志
    1998 年 55 巻 8 号 p. 448-455
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    スチレン-ブタジエン共重合体熱可塑性形状記憶ポリマー (旭化成工業 (株) 製, 商品名: アスマー) の温度依存性を陽電子消滅寿命測定を用いて追跡し, 自由体積の平均サイズ, 数濃度の温度特性から形状記憶メカニズムを議論した. スチレン-ブタジエン共重合体における形状記憶は, ポリスチレンマトリックス中にミクロ相分散されたポリブタジェン相の結晶化に基づくことが自由体積の解析から示唆される. 300K付近で温度とともに自由体積の数濃度はいったん減少し, 約323K付近で再び増加した. これは形状記憶・回復する機能の発現に直接関わった現象と推定され, 形状記憶・回復が行われる際に構造再配列が起こったためと考えられる. TmPB以上の温度で応力を解除されたポリブタジェン分子鎖が平衡を保ちながら冷却されるとき, ポリブタジエンの結晶融点付近で見られる自由体積の数濃度のクリックを通過する時点が分子鎖の再配列と対応し, ここを過ぎるためにもとの形状に復帰すると考えられる.
  • 李 洪玲, 氏平 祐輔, 七沢 淳
    1998 年 55 巻 8 号 p. 456-464
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ブタジエンの分子量を一定とし, スチレン部分の分子量を変化させたスチレン (S) -ブタジエン (B) ブロック共重合体の自由体積の大きさ, 数濃度の変化, 大きさの分布を陽電子消滅寿命法を用い観察した. 室温における自由体積の大きさは, ブロック中のポリスチレン (PS) の分子量分率が増加すると直線的に減少した. また数濃度は, PSの分子量分率が12%までは減少し, その後あまり変化しなかった. PSの分子量分率が増えると自由体積が小さな部分が増えた. また, 自由体積の大きさと数濃度の積-見かけの自由体積分率-を比容と対比すると, 極めてよい相関性が見られた. 180 Kから200 Kに観察されるポリブタジエン (PB), のガラス転移温度以外に, 120 Kから150 Kに自由体積の大きさと数が不連続に変化する温度が見いだされた.
  • 相川 覚, 田坂 茂, 稲垣 訓宏, 浅野 勉
    1998 年 55 巻 8 号 p. 465-469
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1, 2-シンヂオタクチックポリブタジエン (SPB) と乾性油混合物の空気酸化架橋物の構造を, 結晶性高分子の表面反応の見地から検討した. 乾性油 (大豆油, ボイル油) と, SPBは部分相溶性がある. したがって, その固体混合試料は, SPBの結晶相と混合物の非晶相から構成されている. このような混合物ィルムを空気中に放置すると, 表面から酸素が拡散し, 乾性油部分にペルオキシドが生成して分解し, これと同時にSPBが架橋する. 力学的には, ゴム状から硬いタフなプラスチック状に変化する. この架橋反応は, 主に酸素の拡散に有利な非晶域で進行するが, 表面で硬化が起こると酸素の拡散が制約され内部の架橋反応が制限される. この架橋生成物は, 表面付近部分のみが硬化し内部が柔軟な, 耐摩耗性と耐汚染性のある床材となる可能性がある.
  • 佐々木 英幸, 小林 伊智郎, 斎 聖一, 於本 立也, 森 邦夫
    1998 年 55 巻 8 号 p. 470-476
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール-6-ナトリウムチオレート (TTN) 水溶液中で電解重合処理し, その表面にトリアジントリチオールポリマー (TTP) を被膜形成したステンレス鋼板は, 射出成形で6-ナイロン樹脂と直接接着し6MPa以上のせん断接着強度を示す. この接着機構をXPS分析および化学的酸化重合で合成したTTPとアミン化合物, ナイロンオリゴマーとのモデル反応から検討した. TTP被膜のXPS分析結果は, ステンレス鋼板との界面でFeあるいはCrメルカプチドが形成されていることを示した. 酸化重合のTTPはアミン化合物と反応しトリアジンチオールアミノ誘導体を与え, またこのTTPを溶融混練したナイロンオリゴマーのNMRスペクトルでは末端アミノ基に隣接するメチレンのシグナルが消失した. 接着機構は, ステンレス鋼と化学結合したTTP被膜上のトリアジン環とナイロン分子末端アミノ基の求核置換反応による化学結合の形成であることが明らかになった.
  • 片平 新一郎, 安江 健治, 稲垣 道夫
    1998 年 55 巻 8 号 p. 477-482
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    合成フッ素雲母/ε-カプロラクタム (ε-CL) のインターカレーション化合物 (MIC) をε-CLと混合し重合させて, 雲母層をポリアミド6中にへき開させたポリアミド6ナノコンポジットを作製した. これまでの研究結果とあわせて, 膨潤性合成フッ素雲母がε-CL中にへき開したナノコンポジットの生成機構を考察した. 生成過程は3段階, すなわち (1) ε-CLのプロトン化, (2) MICの生成, および (3) MIC中へのε-CLのさらなるインターカレーションと重合の3段階に分けて説明することができた.
  • 野村 孝夫, 松田 雅敏, 西尾 武純, 林 晃誠, 若林 秀哲, 藤田 祐二, 土岐 重之
    1998 年 55 巻 8 号 p. 483-489
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン (PP) /エチレン-プロピレンラバー (EPR) /タルクからなる三元系ポリマーブレンドにおけるPP結晶の配向状態を, 広角X線回折および透過型電子顕微鏡観察によりブレンド組成および各成分の分子構造との関係において調べた. PPの結晶b軸は射出成形品の表面に対して垂直に配向する傾向が強く, EPRやタルクの添加に伴いその配向度は増加した. PPとして高メルトフローレート (MFR) かつ高規則性のものをEPR, タルクとともに用いた系では極端に高い配向度が得られたが, 低MFRのPPを用いた場合はEPRやタルク添加によりほとんど配向は増加しなかった. 高配向を示す系では, PPの微結晶が不連続性を伴いながらb軸方向に多数積み重なった四角柱構造をとることが明らかとなった.
  • 飯澤 孝司, 藤本 高志
    1998 年 55 巻 8 号 p. 490-496
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    可溶性のポリ (アクリル酸t-ブチル) (PBA) およびその円柱形と微粒子のゲル (GBA) を合成した. PBAの脱エステル化反応は, 代表的な有機酸であるp-トルエンスルホン酸 (TS) と熱により酸触媒を発生する3種類のスルホニウム塩型の熱酸発生剤 (TGA) を用いて検討を行った. 脱エステル化率は, IRの特性吸収の吸光度および重量変化から求めた. PBAにTGAを添加したポリマーフィルムはTSを添加したものと同様に110℃で加熱すると反応が円滑に進行した. この反応は, TGAからプロトン酸が生成するまでの誘導期間が認あられるものの, 定常状態においてTGAとPBAのそれぞれの濃度に一次の二次反応であることが明らかとなった. 形状が大きい円柱形のGBAは, TGA存在下100℃以上で加熱すると副生したイソブテンのために発泡してしまった. しかしながら, 形状の小さい微粒子を用いることにより, 気泡のない均一なゲルを合成することに成功した.
  • 今田 安紀, 梶川 泰照, 谷口 正幸, 河本 憲治, 高橋 郁夫, 増田 隆志
    1998 年 55 巻 8 号 p. 497-499
    発行日: 1998/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    コハク酸ジメチルと炭素鎖数2から10のジオール類から重縮合により数平均分子量が15000以上の高分子量脂肪族ポリエステルを合成した. またそれらの生分解性をリパーゼにより評価したところ, 比較的融解熱が高い結晶性のポリマーの酵素分解性は低く, 結晶性の悪いポリマーのそれは高いことがわかった.
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