高分子論文集
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56 巻, 1 号
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  • 林 静恵, 渡辺 智也
    1999 年 56 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    コアシェル型ラテックスに化学構造の異なる種々の成膜助剤を添加してラテックス塗膜を成膜した. このラテックス塗膜に対する動的粘弾性測定から, ラテックス異相構造への成膜助剤の影響を検討した. 成膜助剤として2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート (TPIB), グルタル酸ジイソプロピル (GIP), ブチルカルビトールアセテート (BCA) を用いた. その結果, BCAやTPIBはハードシェル由来のハードセグメントを優先的に可塑化し, GIPはソフトコア由来のソフトセグメントを優先的に可塑化する傾向があることが明らかとなった. さらに最低成膜温度ならびに動的粘弾性の測定結果より, GIPは本研究で用いた成膜助剤の中で最もラテックスの異相構造を維持したままラテックスのTgを低下させ, 成膜性を促進していることが明らかとなった. これらの結果は, 成膜助剤の化学的性質と高分子中での拡散性の違いに起因すると考察した.
  • 加瀬 光雄, 栗原 建二, 立川 豊
    1999 年 56 巻 1 号 p. 8-17
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    脂肪族ジイソシアナートの一つであるヘキサメチレンジイソシアナート (HDI) の第四級アンモニウムカルボキシレート触媒による環化三量化およびHDIとイソフォロンジイソシアナート (IPDI), 2,4-トリレンジイソシアナート (2,4-TDI) との共環化三量化によって生成するプレポリマーを高速液体クロマトグラム (HPLC) およびマススペクトルにより調査した. HDIは触媒の存在下で環化三量化を生じ, HDIの三量体および五量体などのプレポリマーを生成することが認められた. また, HDIとIPDIとの共環化三量化によって生成するプレポリマーは, 4種類の三量体を含むことが確かめられた. HDIと2,4-TDIとの共環化三量化により生成するプレポリマーは, 2,4-TDIの反応性が高いため2,4-TDIを多く含む共三量体が生成しやすく, 五量体以上の高共重合体を生成しやすい傾向が認められた.
  • 白坂 仁, 橋目 淳生, 遠藤 敏郎, 井上 眞一, 岡本 弘
    1999 年 56 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    モデル化合物にポリ (ε-カプロラクトン) (PCL) を用い, 高結晶性オリゴユニットを保持したポリマー鎖から構成される架橋エラストマーの結晶性について検討を行った. 種々の平均連鎖数 (n) および分子量分布 (Mw/Mn) をもつヒドロキシル基末端PCLオリゴマーを合成したのち, 比較的かさ高い置換基を有す4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート (MDI) と反応させた. ついで, 得られたオリゴユニット重付加体を過酸化物架橋させ, エラストマーを得た. このエラストマーの結晶性は, nの減少により低下し, またMw/Mnを狭くすることによっても低下した. これはエラストマーはその構成成分であるオリゴユニットの性状に大きく影響されることを示唆しており, オリゴユニットの結晶性を制御することにより, エラストマーの微妙な結晶性の制御が可能であることが明らかとなった. Mw/Mnを狭くしたうえでnを制御することにより, 優れた伸長結晶性と良好なエントロピー弾性を両立させるエラストマーの設計が可能となった. 得られたエラストマーは補強充てん剤を添加しない純ゴム過酸化物架橋系においても20MPa以上の強度を示した.
  • 佐古 猛, 岡島 いづみ, 菅田 孟, 大竹 勝人, 竹林 良浩, 神澤 千代志, 友永 文昭
    1999 年 56 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ナイロン-6とポリエチレンから構成される多層フィルムの分解・リサイクルプロセスを確立するために, 300~350℃の高温・高圧水を用いてナイロン-6成分からモノマーのε-カプロラクタムを分解・回収し, ポリエチレン成分は単一ポリエチレンとして分離・回収することを検討した. まず初めに, 無触媒下で単一のナイロン-6をε-カプロラクタムにモノマー化するたあの最適な加水分解条件を検討したところ, 反応温度330℃, 反応圧力12.9MPa, 反応時間30分であった. 次に, 同一の反応条件で多層フィルムの加水分解を行ったところ, ナイロン-6成分は水溶性のε-カプロラクタムに分解して順次水相中に溶解していくこと, 一方, 残ったポリエチレン成分は水に不溶な純固体として回収できることがわかった. このとき, ε-カプロラクタムとポリエチレンの収率は各々94%, 95%であった.
  • 岩元 隆志, 木下 尚志, 正本 順三
    1999 年 56 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    反応蒸留重縮合法というポリアリレートの合成法に効率的なプロセスを発明した. ここでの反応蒸留重縮合のコンセプトは低分子量化合物のエステル化などの合成に用いられる反応蒸留の形式を重縮合反応に適用したものである. 原料としてテレフタル酸/イソフタル酸混合物, ビスフェノールA, 無水酢酸を用い, 高沸点溶剤であるビフェニル/ジフェニルエーテル存在下でワンポット反応によるポリアリレートの合成法に反応蒸留重縮合法を適用することにより, ポリアリレートのシンプルな製造方式を開発した. このワンポット反応によるポリアリレートの合成は次の4工程より成り立っている; 無水酢酸によるビスフェノールAのアセチル化: ビフェニル/ジフェニルエーテルの存在下でのビスフェノールAジアセテートとテレフタル酸/イソフタル酸の脱酢酸による重縮合: ビフェニル/ジフェニルエーテル混合溶媒の沸騰下で反応系に混合溶媒を供給しながら混合溶媒の蒸気と酢酸とを反応系から除去することによりなるさらなる重縮合: セルフクリーニング型の二軸押出機を用いて溶融ポリアリレートからビフェニル/ジフェニルエーテル混合溶媒の脱揮. このワンポット反応により得られたポリアリレートは市販のポリアリレートと同等の機械的物性を示した. この物性データは溶融重縮合法で得られたポリアリレートとしては, 筆者らの知る限り世界で最初の報告である. 本報の新プロセスは現時点でポリアリレートの合成法として, 最もシンプルでかつ効率的な製法を提供している.
  • 宇田川 昂, 瀬口 忠男
    1999 年 56 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    γ線照射した低密度ポリエチレンシートの酸化層の厚さを走査型超音波顕微鏡を用いて観察し, 画像化した. シート断面の超音波画像は, 線量率が低下するにつれてポリエチレンの表面からの酸化層が増大することを明瞭に映し出した. その値は理論値に一致しており, 10kGy/hの線量率では0.11mmであった.
  • 寺内 文子, 岩下 寛之, 田中 厚夫, 森田 俊一
    1999 年 56 巻 1 号 p. 45-47
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    二軸配向した共重合ポリエチレンテレフタレート/イソフタレートフィルムに160℃から220℃の温度範囲の熱処理を施した. 熱処理時間が長くなるにつれて分子量の低下および結晶化の進行が認められ, これらの変化によって引張強さが低下した. また, このような熱処理が施された場合のポリエステルフィルムの耐熱寿命を予測し, さらに, 耐熱寿命に及ぼすイソフタル酸のモル濃度の影響について検討した. 固定した熱処理温度ではイソフタル酸モル濃度が高くなると耐熱寿命は短くなったが, 各々のフィルムの融点より5℃低い温度ではイソフタル酸モル濃度が高くなると耐熱寿命は長くなった.
  • 林 光澤, 吉岡 誠二, 椿原 啓
    1999 年 56 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 1999/01/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    イオン性のローダミン6G色素の添加前と後のフッ化ビニリデン-3フッ化エチレン (VDF-TrFE) 共重合体の電流を測定した. TEA CO2レーザを照射して誘起される無添加試料の電流は0.4MV/cm以上のポーリング電界で急増し, そして色素添加後の電流の電界に対する急増点は0.4MV/cmより低電界側にシフトし, 電流値も大きくなる. これはX線回折と熱刺激電流の結果より, 色素が双極子の回転に影響を与え, β成分の増大で説明された.
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