高分子論文集
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56 巻, 12 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 宮田 貴章, 片岡 勝成, 延藤 浩一
    1999 年 56 巻 12 号 p. 753-761
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    直線偏光に対して高選択性を示す化学反応の利用により, ポリマーブレンドの相分離を誘起した. 光反応として, アントラセンの分子間二量化による架橋反応とスチルベンの異性化反応を用いた. これらの光反応性分子を別々にラベルしたポリスチレンとポリビニルメチルエーテルのブレンドに直線偏光を照射した. 偏光に対する反応の選択性を利用して濃度ゆらぎの空間的対称性を破り, 発現した異方性の相分離動力学とモルホロジーを観測・解析した. さらに, 得られた結果を無偏光照射の場合と比較して, 空間的に非一様な相分離過程における濃度ゆらぎの干渉の役割を明らかにした.
  • 本田 隆, 浦下 真治, 森田 裕史, 長谷川 龍一, 川勝 年洋, 土井 正男
    1999 年 56 巻 12 号 p. 762-771
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    動的平均場法を用いてメソ領域における高分子の組織形成過程をシミュレーションした結果をいくつか報告する. (1) 2種類のセグメントA, Bからなる種々の構造の高分子の相分離の計算をし, 高分子の構造と相分離の結果現れるモルホロジーとの関係を明らかにした. (2) 現実的な系としてPE/PP/PSのブレンド系の相分離の計算を行い, 実験で観測されるのと同様なコアシェル構造を再現した. (3) 壁面の効果を取り入れて高分子フィルムのシミュレーションを行い, わずかな相互作用エネルギーの差により壁面とフィルム表面に層が形成されるのを確認した. (4) 壁面近傍の多分散性高分子の平衡状態を計算し, 壁面近くには低分子量成分が集まりやすいことを確認した. (5) ミクロ領域とメソ領域をつなぐ方法として, 動的平均場法を導入したRouseダイナミックスを提案しブロック共重合体とグラフト共重合体のミセル化を計算した. 最後に本シミュレーションをミクロなモデルまたはマクロなモデルと関係づける方法を考察した.
  • 山崎 裕一, 吉川 研一
    1999 年 56 巻 12 号 p. 772-785
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本論文では, 長鎖Deoxyribonucleic Acid (DNA) の単一分子鎖の折りたたみ転移 (コイル-グロビュール転移) について焦点をあてて議論する. 具体的には, 蛍光顕微鏡法による単分子直接観察および電子顕微鏡観察などを用いて, その転移様式を解明するとともに, 転移に伴って生じる凝縮構造に見いだされた多様性について紹介する. 一般的に長鎖DNAの折りたたみ転移はall-or-none的な一次相転移となる. このような転移挙動について, 鎖の硬さや低分子イオンの並進エントロピーの及ぼす影響を考慮することにより, 転移様式や転移点の変化を理論的に予測することが可能となる. 新規な転移形態として単一高分子鎖上に膨潤相と凝縮相とが共存する分子内相分離構造をとる経路や, 鎖の硬さにより低分子の液体, 固体のそれぞれに対応する相の存在などが, 単分子直接観察やシミュレーションなどから明らかとなっている. これらの知見は高分子電解質の希薄溶液物性のみならず, DNAの高次構造変化と遺伝子発現機構との関連など, 生命現象の本質的な理解を深める上でも意義のあるものと思われる.
  • 藤田 雅弘, 印 教鎭, 辻 正樹, 〓谷 信三
    1999 年 56 巻 12 号 p. 786-796
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリエチレン (PE), ポリオキシメチレン (POM), ならびにポリオレフィンケトンの一つであるポリ-3-オキソトリメチレン (POK) を, それぞれの溶液からアルカリハライドの (001) へき開面上にエピタキシー結晶化させ, それらのモルホロジーを透過型電子顕微鏡 (TEM) で観察した. 基板上には, 各高分子ともに一般的には棒状結晶が生長し, それらの棒状結晶は, 基板結晶に対してある特定の軸方位関係 (配向) をとる. 明視野, 暗視野TEM観察, ならびに制限視野電子線回折実験により, これらの棒状結晶がいずれもedge-onラメラ晶であることが明らかになった. さらに, いずれの高分子においても, 1枚のedge-onラメラ晶内で高結晶性の領域 (結晶芯) の厚さが, ラメラ厚さに対して6割程度であることがわかった. このことから, これらの高分子の折りたたみ鎖単結晶は, 結晶芯と, その両側に分子鎖の折りたたみ部分を含む“やや乱れた”表面層からなると結論された. また, このような構造モデルは, POKのedge-onラメラ晶の高分解能TEM観察により分子レベルですでに可視化されている.
  • 戴 小満, 後藤 博正, 赤木 和夫, 白川 英樹
    1999 年 56 巻 12 号 p. 797-806
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    強誘電性液晶は電場に対して通常の液晶より高速に応答する. この性質をポリアセチレンの側鎖に導入することができれば, 液晶側鎖の自発配向性と電場応答性を利用して, 主鎖の巨視的配向や導電性の制御を高速に行うことができる. 本研究では強誘電液晶性共役系高分子を開発するため, フッ素不斉骨格をもつ光学活性な液晶基をポリアセチレンの側鎖に導入した. 液晶相の同定は偏光顕微鏡, 示差走査熱量計, およびX線回折により行った. 合成したすべてのポリマーは液晶性を示した. そのうちの二つのポリマーは昇温過程と降温過程においてキラルスメチックC (S*c) 相を示した. S*c相を示す当該ポリマーは強誘電液晶性共役系高分子になりうると期待される.
  • 志水 徹, 李 洪珍, 早野 達也, 山本 隆
    1999 年 56 巻 12 号 p. 807-813
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    脂質分子などの長鎖分子は, 結晶, 単分子膜, ミセル, などさまざまな構造を形成する. 本報では, 自由表面をもつ系における構造形成過程, 特に結晶の融解, 結晶化, 表面単分子膜形成などの分子過程を分子動力学シミュレーションによって究明する. 長鎖分子では分子鎖端を自由表面に排出しようとする傾向が顕著で, 構造形成や結晶の安定性に大きく影響する. まず, 分子側面を表面にだしている結晶は高温では不安定で融解再結晶などの大規模な構造再編を行うことを明らかにする. また, 融液からの結晶化ではまず自由表面において単分子膜が形成され, それにつづいて残りの分子が結晶化し三次元的な単結晶が形成されることを示す. さらに, 融液表面の単分子膜は極めて安定に存在するが, その平衡は液体相と単分子膜との間の頻繁な分子交換を伴う動的平衡であることを明らかにする.
  • 古川 千津子, 櫻井 伸一, 一階 文良, 野村 春治
    1999 年 56 巻 12 号 p. 814-820
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ラメラ状ミクロ相分離構造を形成するスチレン-ブタジエン-スチレン (SBS) トリブロック共重合体をトルエン溶液からキャストする際に温度勾配を与えると, 特異的な同心円状表面凹凸パターンが巨視的なスケールで発現する. このパターン形成に与える気流の影響を調べた. その結果, 同心円の中心が気流方向に規則的に配列した. 画像を定量的に解析し, 同心円の中心の分布の相関関数を求めた. 気流のない場合 (あるいは弱い場合) には近距離にのみ相関が現れたのに対して, 気流を与えた場合にはそれに加えて長距離にも相関が現れた. 近距離の相関は最近接の同心円の中心間距離に相当するのに対して, 長距離の相関は気流に対してほぼ垂直な方向の同心円の中心間距離に相当する. また, 同心円の中心が気流方向に規則的に配列している度合を定量化するために, 同心円群が密着して隣接する場合に同心円の中心間ベクトルを定義した. このベクトルの大きさの平均値と分散さらには気流方向に対する配向係数を求めて, それらの風速依存性を検討した. 結論として, 気流は温度勾配とは独立した自己組織化因子として効果を発揮することがわかった.
  • 橋本 雅人, 尼崎 匡, 伊藤 孝
    1999 年 56 巻 12 号 p. 821-827
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    イソタクチックポリスチレンの薄膜中のaxialite (軸晶) を光学顕微鏡, 走査型電子顕微鏡, 原子間力顕微鏡を用いて観察し, そのモルホロジーの詳細を調べた. ラメラ結晶が, らせん転位によって幾層にも積み重なったモルホロジーであることがわかった. 光学顕微鏡観察による外形輪郭のデータから画像処理によって形状を定量的に評価する新しい手法を導入した. その結果, 連続的にみえていた成長温度によるモルホロジー変化が, ある温度で不連続に変化することがわかった. らせん転位によりaxialiteを構成する単結晶が, 元の成長方向から回転して成長方向がずれ, その乱れの分布が正規分布に従うという非常に単純なモデルにより, 生成するaxialiteの成長温度による外形変化が説明できることを示した.
  • 村上 昌三, 〓谷 信三, 内田 哲也, 島村 薫
    1999 年 56 巻 12 号 p. 828-832
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレンのインフレーション膜は板状晶 (ラメラ) が成形方向に垂直に積み重なった構造になっている. 走査プローブ顕微鏡位相差モ-ドで観察した結果, 走査型電子顕微鏡で観察されるラメラ状物は約6枚のラメラ (厚さ20nm) の集合体であることが判明した. なぜこのように約6枚のラメラの集合体が基本単位になるかについては, フィルム成形時のせん断力により分子鎖が配向し, 同時に口金との摩擦によって自励振動による周期構造の発生の可能性を提案する.
  • 奥村 泰志, 伊藤 耕三, 早川 禮之助, 西 敏夫
    1999 年 56 巻 12 号 p. 833-836
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    分子ナノチューブはシクロデキストリンを一次元状に架橋して合成される内径が最小の管状分子である. 本研究では走査型トンネル顕微鏡 (STM) を用いて, 分子ナノチューブがスターポリマーを包接して形成する種々の超分子集合体の構造観察を試みた. 初めにナノチューブとスターポリマーからなる分岐した超分子を観察し, ナノチューブが合成条件から予想されるサイズと一致することを確認した. 次に炭素基板のステップに線状高分子を固定し, この高分子にナノチューブを包接させSTM観察を行ったところ, ナノチューブがステップに沿って整列することを確認した. さらに, スターポリマーを用いて樹枝状の分岐した超分子集合体を基板上で形成した.
  • 界面に着目した構造解析
    陣内 浩司, 西川 幸宏, 長谷川 博一
    1999 年 56 巻 12 号 p. 837-844
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    (2成分) ブロック共重合体において, その分子内組成が34~38%程度であるときに出現すると報告されている規則的共連続ミクロドメイン構造に注目する. 規則的共連続構造は, 周期的極小曲面を基礎として議論されることが多く, また, 観察手法として透過型電子顕微鏡がよく用いられる. しかし, 構造の複雑さのために, 得られた顕微鏡像が多数ある周期的極小曲面のどれに帰属するかを判断することは困難を極める. 筆者らは, いくつかの異なる周期的極小曲面に基づく共連続構造のモデルについて, その界面曲率 (分布) を測定した. その結果, 界面曲率は各モデルに特徴的な分布形状を示すことがわかった. このことは, 実験によりブロック共重合体の規則的共連続構造の界面曲率分布を求めることができれば, もととなる周期的極小曲面の同定が可能であることを示唆している.
  • 藤井 友和, 高原 淳, 梶山 千里
    1999 年 56 巻 12 号 p. 845-849
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    種々の分子量の高密度ポリエチレン (HDPE) 単結晶表面の分子鎖折りたたみ部分の構造を評価するため, HDPE単結晶表面の水平力顕微鏡 (Lateral Force Microscope: LFM) 測定を行った. Self-seeeding法により調製したHDPE単結晶表面の水平力は, 分子量に依存することなく (110) に対する探針の走査角度依存性を示し, 単結晶表面で規則的な折りたたみ構造を形成していることが示唆された. 一方, 通常のsporadicな核生成による等温結晶化法によって調製した高分子量のHDPE単結晶表面の水平力は, 探針の走査角度依存性が観測されず, 結晶化方法によりHDPE単結晶表面の分子鎖折りたたみ部分の構造が変化することが明らかとなった.
  • 櫻井 有治, 佐藤 信浩, 伊藤 紳三郎, 山本 雅英
    1999 年 56 巻 12 号 p. 850-854
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリイソブチルメタクリレート (PiBMA) とポリオクタデシルメタクリレート (PODMA) が形成する混合単分子膜の相分離構造をBrewster角顕微鏡 (BAM), 原子間力顕微鏡 (AFM) を用いて観察した. 下層水温20℃で混合単分子膜を作製すると, PODMAの結晶性のため, 展開時の相分離構造が微小な網目構造として保持されることがわかった. また, 40℃でアニーリングを行うことによって, PODMAが融解して相分離が進行し, 二次元平面内で完全に分離したドメイン構造をとることがわかった.
  • 米澤 徹, 尾上 慎弥, 國武 豊喜
    1999 年 56 巻 12 号 p. 855-859
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    直鎖状アニオン性高分子としてDNAを用いて, 新規に調製したカチオン性金ナノ粒子をそれに沿って密に一次元配列させることに成功した. このカチオン性金ナノ粒子は, その表面に高密度なカチオン電荷を有しているため, DNA分子に強く吸着し, 吸着粒子間隙も非常に小さく, 一定であった. この粒子の吸着機構についても考察した.
  • 黒田 敬之, 鳥飼 圭吾, 大山 秀子, 扇澤 敏明, 井上 隆, Martin WEBER
    1999 年 56 巻 12 号 p. 860-864
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    非相溶な非晶性ポリアミド (aPA) /ポリスノレホン (PSU) の二層フィルムを用いて, その界面構造をエリプソメトリー, 原子間力顕微鏡 (AFM), 透過型電子顕微鏡 (TEM) により考察した. 熱処理したaPA/PSUの界面はエリプソメトリーで測定できるほどの厚み (2nm以上) を有していなかったが, PSUに無水マレイン酸 (MAH) の反応基を少量導入することにより界面厚みは200℃で40nmにまで増大した. またAFMにより波打ち構造が界面で起こっていることがわかった. これは界面でaPAの末端アミノ基とPSUに導入されたMAH基とが反応して共重合体を形成する際, 共重合体が高密度に界面に存在してくると界面が熱力学的に不安定化され, それを解消するために界面の波打ちが生じたものと思われる. エリプソメトリーで測定された界面の厚みにはその波打ちの振幅の寄与も含まれていると考えられる.
  • 光岡 拓哉, 村瀬 篤, 杉浦 元保
    1999 年 56 巻 12 号 p. 865-868
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    電子線プローブマイクロアナリシス (EPMA) に高感度な標識元素をもつ反応試薬で官能基を誘導体化した後, この標識元素の分布をEPMAで測定し, 元の官能基の分布を得る“誘導体化EPMA法”を開発し, 高分子中に存在する微量官能基のμmオーダーの面分解能での分布測定を可能にした. 本法によって, インパネ材に用いられるポリ塩化ビニル (PVC) の劣化により生じるC=Cおよびリサイクルポリプロピレン (PP) 樹脂中におけるエステル架橋切断により生じたOHの分布状態を評価したところ, それらのミクロンオーダーでの分布状態を視覚的に捉えることができ, 高分子の劣化状態や高分子複合材料の混合状態の解析に有効であることが確認された.
  • 吉田 博次, 山内 健司, 松井 俊満
    1999 年 56 巻 12 号 p. 869-872
    発行日: 1999/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレン (HDPE) とチーグラー線状低密度ポリエチレン (LLDPE), HDPEとメタロセン線状低密度ポリエチレン (mLLDPE), およびHDPEと高圧法低密度ポリエチレン (LDPE) の融着界面モルホロジーを電子顕微鏡を用いて観察した. HDPE-LLDPEの融着界面では, 両相間で切れ目なく続いているラメラ構造, および両相にまたがった球晶が観察された. 一方, HDPE-LDPEではそのようなモルホロジーは見られなかった. HDPE-mLLDPEは両相のラメラが連続しているモルホロジーを示したが, 両相にまたがった球晶は示さなかった.
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