高分子論文集
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57 巻, 4 号
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  • 岸田 晶夫, 田口 哲志, 柳 正和, 愛甲 孝, 明石 満
    2000 年 57 巻 4 号 p. 159-166
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子-ヒドロキシアパタイト複合体について, 生体内における石灰化および複合体の生物的機能の双方の点から検討した. ヒドロゲルはその優れた物性から生体内埋植用材料として期待されながらアパタイト沈着, いわゆる石灰化のために臨床応用は非常に困難である. この石灰化の機構を明らかにするために親水基として水酸基を有する種々の高分子のヒドロゲルを基材とし, 生体模倣反応を用いてアパタイト形成を検討した. その結果, ヒドロゲル内へのアパタイトの沈着は, ヒドロゲルを構成している分子鎖周辺の水の状態と, イオンの供給能力が影響していることが明らかとなった. また, 生体模倣反応によって高分子基材上に形成されたアパタイト層の生物的機能として軟組織接着性に着目し, ラット皮下への埋植実験によって評価した, その結果, アパタイト層は種々の接着性タンパク質と同等の活性を示すことが明らかとなった. アパタイトは適当な分子設計を行った高分子を用いることで高度な複合化あるいは沈着量の減少が図れることが示され, また複合化されたアパタイトは硬組織だけでなく軟組織適合性材料としても有用であることが示された.
  • 大畑 奈弓, 増田 秀樹, 山内 脩
    2000 年 57 巻 4 号 p. 167-179
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    必須アミノ酸の一種であるL-アルギニン (L-Arg) を配位子に用いた金属錯体 [Cu (L-Arg) 2] 2+に対し, 特異な水素結合性カウンターアニオンを用いることにより二重らせん構造, 一重らせん構造, シート構造といった自己組織化構造を発現させた. 得られた結晶について固体状態の吸収スペクトル, ESRスペクトルを測定したところ, おのおの金属の配位様式, および秩序構造をよく反映していることが示された. 二重らせん構造を形成する [Cu (L-Arg) 2] (isophthalate) について, これに対応する [Pd (L-Arg) 2] 2+- (isophthalate) 系の溶液中のCD, NMRスペクトル挙動から, 組織構造化の形成過程についての知見を得た. 以上の結果をあわせて, 自己組織化構造を制御する因子について考察した.
  • 荒川 源臣, 島田 雅之, 上利 泰幸, 須方 一明
    2000 年 57 巻 4 号 p. 180-187
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    近年, 有機・無機ハイブリッド材料が盛んに研究されているが, 高性能・高機能が要求されるエンジニアリングプラスチック (エンプラ) を用いた例は少ない. 筆者らは代表的なエンプラであるポリカーボネート (PC) を用いて検討し, 更なる特性の向上を目指した. まず, ビスフェノールA系PCの両末端にトリエトキシシリル基を有するPCオリゴマー (PCS) を合成した. 次にPCSのゾルーゲル反応を行い, 有機・無機ハイブリッドPCフィルム (PCS-F) を作製した. このPCS-Fの耐熱特性, 表面硬度および機械的特性を従来のPCと比較した. PCS-FはTgがPCより高温側にシフトし, 広いTg領域を示した. また, Tg以上の温度域で昇温に伴う貯蔵弾性率の低下がPCより緩やかであり, 優れた耐熱性を有していた. さらに表面硬度や機械的特性もPCより向上していた. これらの結果より, PCS-F中のPCセグメントはシリカ成分と共有結合していると判断した.
  • 北村 英樹, 安藤 幸一, 小澤 智宏, 実川 浩一郎, 増田 秀樹, 永長 久彦
    2000 年 57 巻 4 号 p. 188-197
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    水素結合により自己組織化した錯体超構造の機能発現を検討した. 相補的な水素結合部位を有するビグアニダド配位子 (BG) とビオルル酸配位子 (VA) を用いた [Co (bg) 3 ] 錯体と [Co (va) 3 ] 錯体の1: 1の反応により, 配位子間プロトン移動を伴う三重水素結合が形成された. この水素結合系は中心金属から3方向に展開した3次元的な錯体ネットワーク構造を形成し, その内部空孔に水を強く捕捉した. また, エチレンジビグアニダド (ENBG) を配位子とする [Mn (enbg) (OH) (H2O)] 錯体と, これと相補的三重水素結合を形成する [Cu (va) 2 ] 錯体が自己組織化した系では, Cu (II) +Mn (III) →Cu (I) +Mn (IV) の酸化還元反応が確認できた. Mn錯体とCu錯体は配位子間三重水素結合によってテープ状構造を形成し, このテープ間でマンガンと銅が架橋したMn-O-Cuを経由して電子が移動したと考えられる. これは錯体の自己組織化構造で電子移動を発現した非常に興味深い結果である.
  • ビニルトリメトキシシランからのポリマ-ハイブリッドの合成とその性質
    高村 徳宏, 小此木 浩史, 郡司 天博, 阿部 芳首
    2000 年 57 巻 4 号 p. 198-207
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    過酸化ジ-t-ブチルを開始剤とするビニルトリメトキシシランのラジカル付加重合により合成した有機鎖重合度46~74のポリビニルトリメトキシシランを加水分解重縮合することにより重量平均分子量50000~170000およびシロキサン縮合度7~13%のポリビニルポリシルセスキオキサンを合成した. さらに, これらを前駆体として無色透明なはく離膜およびディップコーティング膜を調製した. また, 3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランからも同様にしてポリマーハイブリッドのコーティング膜を調製した. はく離膜の引張強度および伸び率やコーティング膜の鉛筆硬度および付着力は, 前駆体のポリマーの構造に依存して変化し, 分子量やシロキサン縮合度の増加に伴い引張強度および鉛筆硬度は増加し, 伸び率や付着力は減少した. 一方, 有機鎖重合度の増加に伴い引張強度や鉛筆硬度は減少したが, 伸び率や付着力は増加した.
  • 手島 健次郎, 狩野 聡, 陸川 政弘, 讃井 浩平
    2000 年 57 巻 4 号 p. 208-213
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    有機カチオン種にジラウリルジメチルアンモニウムカチオン, およびハロゲン化金属種に臭化鉛を用いて, 新規自己組織性有機/無機ハイブリッド化合物の合成を試み, それに関して構造解析および光学測定を行った. 粉末X線回折から, 合成された化合物は層状構造に特有の回折パターンを示し, 新規2次元層状構造が構築されたことを確認した. また, この化合物はスピンコート法により容易に薄膜を作製できることがわかった. このスピンコート膜は化合物のもつ高い自己組織性のために, 薄膜作製後も自己組織化が進行し, 粉末試料と同様の回折パターンをもつ多結晶薄膜を形成することが明らかとなった. この薄膜の吸収スペクトルからは自己組織化により形成された無機領域に帰属される吸収が352.5nm付近に観察され, 粉末試料の蛍光測定からはその吸収帯からであると考えられる発光が認められた. これらは, 新規量子閉じ込め構造の構築を示唆する結果と考えられる.
  • 藤田 一孝, 多賀谷 英幸, 門川 淳一
    2000 年 57 巻 4 号 p. 214-219
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    水酸化亜鉛と4位にカルボン酸を有するイソニコチン酸との反応によって, 無機層中に有機化合物が配列した新規のインターカレーション化合物が得られた. この化合物は層間距離が, 10.7Åの繊維状化合物であることが走査型電子顕微鏡 (SEM) 像により明らかになった. この繊維状化合物を, ジカルボン酸などの二官能性有機化合物と処理することにより, 繊維状化合物が束状になった組織体が得られた.
  • 高橋 龍史, 脇田 麻奈美, 越智 光一
    2000 年 57 巻 4 号 p. 220-227
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂に数種類のシランアルコキシドをin-situ重合させて得られたシリカ含有量の異なるエポキシ/シリカハイブリッド体の相構造と熱的・力学的性質について検討した. 分子内に有機相との反応点をもつシランアルコキシドを用いたハイブリッド体では, シリカを含む微細な分散相がエポキシマトリックス中に均一に分布している様子が透過型電子顕微鏡 (TEM) により観察された. このようなハイブリッド体では, 少量のシリカの添加でエポキシ樹脂のtanδピークの高温への移動および面積の減少が観察され, 高温域での弾性率が大幅に改善された. これはハイブリッド化によりエポキシ網目鎖の可動性が抑制されたためであると考えられる. また, 力学物性においてこの網目鎖の拘束が室温では試料の脆化をひき起こしたが, 高温域では試料の耐熱性を向上させた.
  • 上山 憲一, 山田 裕介, 上月 秀一, 岡村 高明
    2000 年 57 巻 4 号 p. 228-232
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリアクリル酸 (分子量450000) をポリアクリル酸無水物にし, n-ブチルアミンと反応させて, 近接するアミド基からカルボキシラート酸素へNH…O水素結合しうるポリ (1-カルボン酸-3-n-BuNHCOテトラメチレン) 配位子を合成した. この高分子配位子のカルボキシラートNa塩あるいはカルボン酸の存在下, 炭酸ストロンチウムを結晶化させて, 水およびメタノール洗浄でも高分子配位子が脱離しない無機結晶-有機配位子ハイブリッドを合成した. 固体13C NMRスペクトルによってカルシウムイオンに強固に結合したカルボキシラート基を検出し, IRスペクトルでは, この炭酸ストロンチウム結晶-有機配位子複合体はストロンチアナイト晶であることを示し, 走査型電子顕微鏡 (SEM) 映像では, 針状晶が束になったミクロ結晶を形成していることがわかった.
  • 三木 規彦, 高原 淳, 梶山 千里
    2000 年 57 巻 4 号 p. 233-243
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    数種の調製法により得られた (ポリイミド/銅) 2層基板界面における銅マイグレーション現象を, 動的2次イオン質量分析法 (D-SIMS) により解析した. D-SIMS測定により得られたプロファイルからは, ポリイミド層への銅マイグレーションの発生の有無が明らかに確認することができた. 銅のマイグレーション状態は, 界面形成時にポリマー成分のカルボキシル基含有の有無と, 前駆体溶媒の特性に大きく依存した. D-SIMS測定の結果から, (ポリイミド/銅) 界面における銅マイグレーション状態のモデルが考案された. このモデルは両層の相互貫入により形成される「界面層」と, 銅と錯体を形成したポリイミド前駆体の拡散により形成された「拡散層」よりなり, 拡散層の検知をもって銅マイグレーションの発生とみなすことができた. カルボキシル基をもたないすでにイミド化されたポリイミドフィルムへの銅蒸着により得られた (ポリイミド/銅) 2層基板においても銅マイグレーションは見られなかったが, 溶媒の極性が低い場合にも銅マイグレーションは発生しなかった. 従来の非プロトン系極性溶媒を用いた系では銅マイグレーションが発生したのに対し, 近年見いだされたプロトン系非極性溶媒を用いた系では銅マイグレーションは見られなかった. これはポリマー成分の銅との錯体形成能が, 0ないしは低い場合には界面からのポリマーの拡散が起こっても, 銅がそれに伴ってマイグレートしないことによるものと考えられる.
  • 吉永 耕二, 小林 恒定, 辛川 弘行
    2000 年 57 巻 4 号 p. 244-250
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    単分散コロイダルシリカの2段修飾法によるポリマー電解質を表面に結合した複合粒子の調製と, ゼータ電位の制御について調べた. そのシリカ複合粒子はコロイダルシリカをポリ (無水マレイン酸-スチレン) で1次修飾し, 次いでトリフェニルポスホニウム基またはトリメチルアンモニウム基をもつアミノ基末端-ポリスチレンの結合によって調製した. このコロイダルシリカの2段修飾法によって, エタノールまたはアセトニトリル中で負から正にわたるゼータ電位 (-110~+72mV) の制御が可能であった. エタノール中でのポリマー修飾シリカコロイド粒子のゼータ電位は, 塩の添加によって極大値を示すという特異的な現象が現れた. この現象は, 塩添加による表面電解質ポリマー鎖の収縮に基づく表面電荷密度の増大とデバイ長減少作用の加成効果として説明された.
  • 有賀 克彦, 片桐 清文, 菊地 純一
    2000 年 57 巻 4 号 p. 251-253
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    筆者らは, シリカのような無機表面と細胞膜類似の二分子膜構造を有する有機・無機ハイブリッド型の細胞モデルセラソーム (Cerasome) を新たに開発した. トリエトキシシリル基を頭部に有するジアルキル型化合物をさまざまなpH条件下の水中に分散したところ, pH3の条件がCerasome作製に適当な条件であることが明らかとなった. これは, この条件下でトリエトキシシリル基の加水分解が段階的かつ適当な速度で起こり, 部分的な加水分解のあとのべシクル形成を経てからその表面でのさらなる加水分解の進行とシリカ骨格の形成が起こるためであると考えられた. また, これらのCerasomeが集積した多細胞型の構造も確認された.
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