高分子論文集
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57 巻, 7 号
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  • 堀邊 英夫, 馬場 文明
    2000 年 57 巻 7 号 p. 403-411
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリフッ化ビニリデン/ポリメタクリル酸メチル (PVDF/PMMA) ブレンドの紫外線透過率 (265nm) は, 混合比, 溶融状態からの冷却速度 (徐冷, 急冷) により大きく変化する. 徐冷試料は, 急冷試料に比較し, すべての混合比において, 結晶化度が高いため, 紫外線透過率が低かった. これら試料を熱処理 (120℃) すると, 徐冷試料は, 結晶化度が増大した結果, 透過率が低下するのに対し, 急冷試料は, すべての混合比で結晶化度は増大するにもかかわらず, PVDF70, 80Wt%の混合比で, 透過率が低下しなかった. X線回折より, この領域ではPVDF (I型) の結晶構造を形成し, ほかの領域ではPVDF (II型) を形成することがわかった. PVDF (I型) の結晶構造をとる場合, PVDF (II型) に比較し, 紫外線透過率が高くなる理由は, ブレンド物の結晶相 (PVDF) と非晶相 (PMMA) との屈折率の差がPVDF (I型) の結晶構造をとるが小さく, 密度のゆらぎが少なくなり, 紫外光の散乱, 反射が減少したためと考えられる. また, 混合比によりPVDF (I型), PVDF (II型) の異なる結晶構造をとるのは, そのときのブレンド物のモルフォロジーが混合比により異なるため, その結果PVDF結晶時の結晶化速度に影響を与えることが原因と考えられる.
  • 龍田 成人, 佐藤 紀夫, 福森 健三, 太田 隆, 高橋 直是, 池田 貞雄, 鬼頭 誠, 岩井 久幸
    2000 年 57 巻 7 号 p. 412-418
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    塗装バンパをリサイクルする際に, バンパを単に粉砕して溶融混練すると, 再生材の物性, 特に衝撃特性が低下する. これは, 再生材中に比較的大きな塗膜片が混入し, この塗膜片が破壊の起点となるためである. 本研究では, 2軸反応押出機内の溶融樹脂に水を高圧注入することで, 樹脂中に分散したメラミン硬化型塗膜と水蒸気とを接触させて塗膜を加水分解し, 分解した塗膜成分を樹脂中に微細に分散させる手法を検討した. この処理により, 再生材の力学物性は大幅に向上し, 新材とほぼ同等となり, バンパ材としての使用が可能となった.
  • 龍田 成人, 佐藤 紀夫, 福森 健三, 高橋 直是, 池田 貞雄, 鬼頭 誠, 岩井 久幸
    2000 年 57 巻 7 号 p. 419-424
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    先の研究において, 塗装バンパのリサイクル技術として, 2軸反応押出機内で溶融した塗装バンパに水を注入して塗膜を加水分解し, 樹脂中に微細に分散させる技術を検討した. この技術により工場内で排出されるメラミン硬化型塗料で塗装されたバンパのリサイクルを実用化した. しかし, 市場から回収されたバンパには, 加水分解では分解困難なウレタン塗膜やパテで補修されたバンパが含まれているため, 分解剤として水を使用するプロセスでは処理が困難であった. そこで, 本研究では, ウレタン塗膜やパテの架橋部に位置するウレタン結合やエステル結合などを短時間に分解できるアミンを主成分とした分解剤を調製し, 2軸反応押出機内の溶融樹脂に分解剤を高圧注入することで, 樹脂中に分散した塗膜やパテに分解剤の蒸気を接触させて分解し, 塗膜やパテの分解成分を樹脂中に微細に分散させる手法を検討した. この処理により, 再生材の力学物性は大幅に向上し, 新材とほぼ同等となり, 市場から回収されたバンパをバンパ用材料としてリサイクルすることが可能となった.
  • 澤本 健之, 池田 進
    2000 年 57 巻 7 号 p. 425-432
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    新規な光学用接着剤を得るため, 非相溶の疎水性成分ジメタクリロキシプロピルオリゴジメチルシロキサン (SiMA) と親水性成分ヒドロキシエチルメタクリレート (HEMA) に, 両成分に相溶するアクリル酸トリシクロ [5, 2, 1, 02.6] デカン (Acrylate) 配合した一連の光重合性組成物を調製した. の透過率はHEMA 15wt%の条件下Acrylate組成比の増加に伴い増大し70wt%で最大になった. 透過率ロスはHEMAが凝集した相分離に基づく. Acrylate組成比の調整で相構造は巨視的相分離構造から光学的均質構造まで変化した. ガラスの圧縮せん断接着強度はAcrylateが30~70wt%で著しく増大した. これはSiMAの良好な濡れ性による効果と思われた. Acrylate 70wt%の組成物は良好な透明性とガラスに対する高い接着強度を兼備し, 光学部品を数μmの厚みと非常に小さな傾斜角で接合した.
  • 藤本 康治, 吉川 昌毅, 片平 新一郎, 安江 健治
    2000 年 57 巻 7 号 p. 433-439
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ナイロン6と合成層状ケイ酸塩とからなるナノコンポジット (NCN6) の未延伸フィルムを調製し, その結晶構造を偏光全反射吸収 (ATR) 法IR分析, 等温結晶化挙動のAvrami解析, 小角X線散乱および広角X線回折を用いて解析した. IR測定の結果は, 層状ケイ酸塩の構成単位であるシリケート層がフィルム面に平行方向となる大きな面配向を示し, またAvrami解析からは結晶の成長が2次元的であることが示された. さらにX線解析により, 微結晶の大きさ, 結晶の分子鎖配向および面配向を調べたところ, ナイロン6フィルム単独の場合と比べてNCN6では微結晶の成長方向に異方性が認められ, シリケート層を核として層表面に垂直方向に優先的に結晶化した構造が示された. 以上の結果より, NCN6フィルムではシリケート層を核とした2次元的な球晶がフィルム面と平行方向に面配向した構造が考えられ, NCN6フィルムが示す高いガスバリア性を定性的によく説明できる.
  • 劉 源, 坂本 雄二, 日比 貞雄, 吉見 博, 山野 直樹, 高橋 清久
    2000 年 57 巻 7 号 p. 440-448
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    本研究はエッセンシャルワークの方法を用いて幅拘束1軸延伸ポリエチレンテレフタラート (PET) フィルムの伸張破壊エネルギーのOff-axis angle依存性を研究したものである. 総破壊エネルギーを初期に起こるリガメント域の局所変形により消費されるエネルギーとその後の正味の破壊エネルギーの分離をするために, 降伏後除荷を行い, その後再度負荷を行った. 負荷-除過-再負荷のプロセスにより, 局所変形によるフィルム厚の変化も考慮できた. エッセンシャルワークの方法は面積性のエネルギーと体積性のエネルギーを分離評価する簡便な方法という観点から, 局所変形エネルギーについてもこの方法を適応し, 有効な結果を得ることができた. 延伸フィルムは延伸方向に著しい異方性を示す. 延伸方向から幅方向まで異なったOff-axis angleで切り出した試料について, ヤング率と降伏応力の異方性曲線解析の結果と開口変位の観察の結果から, エッセンシャルワーク (EWF) の方法によるエネルギー評価値を相互に比較できることがわかった. そこで, 破壊エネルギーのOff-axis angle依存性を検討した. その結果, 総破壊エネルギーが延伸方向で最大の235.1±50.1kJ/m2, 幅方向で最小の30.3±53kJ/m2の異方性破壊エネルギーを示した. また, 総Non-essential workの値についても同様に最大値38.1±8.3MJ/m3, 最小値2.1±1.9MJ/m3の異方性を示した.
  • 呉 馳飛, 新田 晃平
    2000 年 57 巻 7 号 p. 449-456
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    塩素化ポリエチレン (CPE) とヒンダードフェノール系低分子化合物 (AO-60) からなる有機ハイブリッドについて, 熱処理過程における低分子の等温結晶化と動的粘弾性を調べた. 熱処理によりCPE内のAO-60の結晶は斜方体から, 板状, 針状, 不規則の結晶までいろいろな形を示した. これらのAO-60結晶の中にはCPEの分子鎖が取り込まれている. 一方, CPEのガラス転移より高い温度で現れた緩和は熱処理により低下し, 主に試料内部にあるAO-60分子の結晶化に伴うCPEとAO-60の間の水素結合の減少と帰結できる.
  • 猪俣 克巳, 川崎 重郎, 亀山 敦, 西久保 忠臣
    2000 年 57 巻 7 号 p. 457-466
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    側鎖にフェナシルエステル残基とビニルエーテル残基を有する新規な複合機能型の光機能性高分子の合成とその光反応特性について検討を行った. 光機能性高分子は, 1, 8-ジアザビシクロ- [5. 4. 0] -ウンデセン-7 (DBU) を塩基として用い, ポリメタクリル酸 (PMA) に2-クロロエチルビニルエーテル (CEVE) を反応させ, さらに種々のフェナシルブロミド類を反応させるワンポット反応によって合成した. この反応は, 温和な条件下で副反応を伴わず定量的に進行し, 目的とする光機能性高分子が得られた. また, 得られたポリマーの光反応特性は, UVスペクトルおよびIRスペクトルによって検討した. その結果, はじめに側鎖のフェナシルエステル残基が光照射により開裂して相当するカルボキシル基が生成し, そのカルボキシル基がビニルエーテル残基と反応し, アセタール化結合による架橋反応が進行することが判明した. また, この架橋反応の反応性は, ポリマー中のフェナシルエステル残基とビニルエーテル残基の組成比率やフェナシルエステル残基の構造によって著しく影響されることも明らかとなった.
  • 荒木 修, 青木 雄二, 升田 利史郎
    2000 年 57 巻 7 号 p. 467-471
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ランダム共重合体であり無定形高分子でもあるα-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体 (αMSAN: Tg = 124℃) を用いて, 高分子ガラスの動的粘弾性関数の温度分散の経時平衡化過程 (physical aging) を調べた. αMSANを溶融状態から急冷固化した試料とそれを室温および80℃で熱処理した試料の動的粘弾性関数の温度分散曲線は高温側で合一し, 合一する温度 (TH) は熱処理時間の増加とともに上昇した. この実験結果は熱処理試料には急冷された記憶が残っていること, 熱処理試料は時間とともにその記憶を失いながら熱処理温度での平衡状態に向かって構造を変化していることを示している. 熱運動できる高分子鎖セグメントのスケールは温度が高いほど大きいので, 熱処理時間の増加とともにTHが高温側に移動したことは高分子鎖構造は高分子鎖セグメントスケールが小さいものから緩和していくことを表していると結論した.
  • 山口 勲, イスマイル ヌルラ, 山本 隆一
    2000 年 57 巻 7 号 p. 472-473
    発行日: 2000/07/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリ (ピリジンー2,5-ジイル) あるいはポリ (チオフェンーalt-チオフェンー1,1-ジオキ東京工業大学資源化学研究所シド) をβ-CDの飽和水溶液中でかくはんすることにより, 水溶性のポリロタキサンが得られた. 得られたポリロタキサンの最大吸収波長や蛍光強度はCD未包接の原料ポリマーとは異なった.
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