高分子論文集
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58 巻, 10 号
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  • 堀 久男, Christian SIX, Walter LEITNER
    2001 年 58 巻 10 号 p. 489-494
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ロジウム錯体触媒を用いて超臨界および液体二酸化炭素中でポリフェニルアセチレン (PPA) を合成した. 触媒 [(nbd) Rh (acac)] (nbd=2, 5-ノルボルナジエン, acac=アセチルアセトナト) はこれらの媒体にほとんど不溶であるにもかかわらず, 重合速度はこの触媒が高い溶解性を示すテトラヒドロフラン (THF) 中よりも大きくなった. 得られたポリマーはシスートランスオイドPPAとシスーシスオイドPPAの2種類から構成されており, ほとんどシスートランスオイドPPAのみが生成するTHFの場合とは対照的であった. 二酸化炭素に対する親和性が高いパーフルオロアルキル基が結合したホスフィン配位子 {4-F (CF2) 6 (CH2) 2C6H4} 3Pを添加した場合, ロジウム触媒の超臨界および液体二酸化炭素への溶解度は飛躍的に増加し, それとともにシスートランスオイドPPAの生成割合が増加した. 得られたシスートランスオイドPPAのシス量 (立体規則性を表すパラメータ) は最高で90%となり, 汎用の有機溶媒から得た試料のそれらと遜色なかった.
  • 椿 範立, 吉井 清隆, 道木 啓介, 藤元 薫
    2001 年 58 巻 10 号 p. 495-501
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    同一反応装置を用いて気相, 液相, 超臨界相の3相のフィッシャー・トロプシュ (F-T) 合成反応を行い, その特性を比較するとともに物質移動の観点から理論的な検討を行った. 超臨界相反応では, 触媒内部における原料と生成物の高速拡散, 優れた熱伝導性, ワックスの速やかな抽出による失活問題の克服などの特徴がある. 1つの応用例として, 超臨界相F-T反応によるワックスの選択的な合成プロセスを紹介する.
  • 覚知 豊次, 三浦 雄樹, 高橋 憲司, 井戸川 清, 加我 晴生, 佐々木 皇美
    2001 年 58 巻 10 号 p. 502-506
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    超臨界二酸化炭素 (scCO2) を反応溶媒としたセルロースのカーバメート化反応をフェニルイソシアナートおよびシクロヘキシルイソシアナートを用いて検討した. セルロース0.5g (グルコース単位で3.1mmol) とフェニルイソシアナート2.0mL (18.4mmol) の反応1こおいて, 約50mLのscCO2に対してピリジンの添加量が1mL前後で著しいセルローストリス (フェニルカーバメート) (CTPC) の収量の増加が見られた. また, 収量は臨界圧力付近 (7.5MPa) で最大となり, 8MPa以上では急激に減少した. セルロースとシクロヘキシルイソシアナートのscCO2中での反応はピリジンの添加では進行しなかったが, セルロースを塩化リチウム (LiCl) /ジメチルアセトアミド (DMAc) 溶液とするとscCO2中で反応しトリス (シクロヘキシルカーバメート) (CTCC) を生成した. LiCl/DMAcの使用量は3mL以下では低収量であったが, 4mLでは十分な収量が得られた. 圧力の変化による影響を調べた結果, CTPCの場合とは異なり, 臨界圧力近傍の反応と高圧力の反応の間で収量に大きな変化は見られなかった. 以上のように, セルロースのカーバメート化においてscCO2を反応溶媒とすることで, 従来法と比較しピリジンの使用量をCTPC合成においては1/10に削減することが, CTCC合成においてはまったく使用せずに反応を行うことが可能であった.
  • 自己組織化の可逆的制御をめざして
    吉田 絵里, Sharon L. WELLS, Joseph M. DESIMONE
    2001 年 58 巻 10 号 p. 507-513
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    二酸化炭素に両親媒性のブロック腫合体であるポリメタクリル酸tert-ブチル-block-ポリ (メタクリル酸1, 1-ジヒドロパーフルオロオクチル) ジブロック共重合体 (P' BMA-block-PFOMA) の, 液体および超臨界二酸化炭素中でのミセル形成について光散乱解析を用いて検討を行った. 動的光散乱解析の結果, P' BMAセグメントの分子量が4000以上のプロック共重合体は, 超臨界二酸化炭素中で分子量分布の狭いミセルを形成することがわかった. 特に, 半径が13~21nmの範囲にあるミセルを形成するP' BMA-block-PFOMAは, CO2密度0.87~1.04g/cm3にミセルから単量体への転移をもつことが見いだされた. その転移は温度およびジブロック共重合体備成する両方のポリマー鎖長に依存した. 本研究は, CO2中におけるブロック共重合体のミセルから単量体への転移が, ジブロック共重合体のセグメント鎖長によって制御されることを初めて実証したものである. このことは, CO2の溶媒特性だけでなくジブロック共重合体のセグメント鎖長の選択によっても, 共重合体の自己組織化の制御が可能であることを示している.
  • 田代 孝二, 塙坂 真
    2001 年 58 巻 10 号 p. 514-520
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    超臨界流体クロマトグラフィーとフーリエ変換型赤外分光器を結合させたシステムを用い, n-パラフィンの混合物を分離, 同定および定量解析することができた. 可視紫外分光器を検出器として用いてもパラフィンはまったくモニターできず, 赤外検出器の有用性が確かめられた. また, 極めて類似した化学構造式を有し, ただ炭素数の異なる一連のn-パラフィン成分をいかに同定するか, その手法を確立することができた. すなわち, メチレン基とメチル基のCH伸縮振動バンド強度比およびCC結合伸縮バンドの振動数は炭素数に依存して系統的に変化することがわかり, 同定手段として利用できることが判明した. また, 赤外バンド強度を利用し, 移動相中のn-パラフィン成分の定量解析の可能なことを示した.
  • 田畑 功, 宮川 しのぶ, 柳 鎭夏, 趙 盛美, 堀 照夫
    2001 年 58 巻 10 号 p. 521-526
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    2種の分散染料を用いてポリエチレンテレフタレート (PET) とポリプロピレン (PP) 繊維を超臨界二酸化炭素 (scCO2) 中で染色し, 飽和平衡染着量とscCO2中での染料の溶解度から分配係数を求めた. 種々の温度, 圧力条件下で得られた各染料の分配係数の対数を流体密度の対数に対してプロットした結果, 広い密度範囲で直線関係が認められた. 各染料での直線の傾きは, 繊維の種類によらず, 超臨界流体中での染料分子の溶媒和数に依存することがわかった. 飽和系での超臨界染色の平衡挙動を流体密度で単純化できたことで, 平衡染着量などの染色挙動を限られた情報から予測可能となり, 染料の選択や染色装置の設計, 染色諸条件の最適化などに極めて重要な知見が得られた.
  • 佐々木 満, 岩崎 恵子, 浜谷 徹, 阿尻 雅文, 新井 邦夫
    2001 年 58 巻 10 号 p. 527-532
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    セルロースの超臨界水処理実験を, 流通式反応装置を用いて温度360-400℃, 圧力25-33MPa, 処理時間0.1-0.4秒で行った. 温度380℃, 圧力30MPaの超臨界水中では, きわめて短時間 (0.18-0.28秒) の処理でセルロースを高重合度セルロースおよびセロオリゴ糖・単糖へ変換できた. 可溶化セルロースおよびその再結晶化物 (セルロースII型結晶) に対する酵素活性を調べた結果, 未処理セルロースと比較して, 可溶化セルロースでは約13倍, 再結晶化物でも約4倍の酵素活性を示すことを見いだした. 本手法により, 可溶化したセルロースおよびセロオリゴ糖を高効率, かつ短時間の酵素反応 (0.5-24時間) でグルコースおよびセロビオースへ変換しえることを見いだした.
  • 佐藤 修, 生島 豊
    2001 年 58 巻 10 号 p. 533-540
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    超臨界状態になると水の水素結合強度が特異的に減少することから, 筆者らはプロトン生成の可能性を提案し, 超臨界水中でε-カプロラクタムの合成反応を試みた. 筆者らが独自に開発した高温・高圧FT-IRにより, 超臨界水中では無触媒でもシクロヘキサノンオキシムからε-カプロラクタムが生成し, とりわけ臨界点付近ではその収率が増大することを確認した. さらに, 超臨界水中でナイロン6の分解特性を検討した. 流通式反応装置を用いて, 658K, 30MPaの条件でナイロン6の連続処理を試みたところ, 6-7分間という短い反応時間でナイロン6は完全に分解し, ε-カプロラクタムの収率は91%に達した. 本システムは, 環境に優しく経済性にも優れているうえ, 超臨界水反応場でシクロヘキサノンオキシムおよびナイロン6からε-カプロラクタムを同時に生成することができるので, 新たなケミカルリサイクルシステムとして期待される.
  • 島田 かより, 佐藤 圭祐, Marina A. LUSENKOVA, 衣笠 晋一, 工藤 憲一, 山内 芳雄
    2001 年 58 巻 10 号 p. 541-547
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    超臨界流体クロマトグラフィー (SFC) は, 単一の重合度を有する均一オリゴマーを作製する方法として極めて有効な手段であるが, 1回の分離で得られる試料量が少ないことから効率的な分離条件の設定が必要である. 本研究では, ポリスチレンとポリエチレングリコールを例に取り, SFC分離における4つの実験パラメータ, カラムの温度とそのグラジエント, モディファイヤーの流速およびそのグラジエントについて, これらの値を変えたときの分離度の変化ならびに分析時間の増減を調べた. さらに, 得られたデータから最適分離条件を決定するためにクロマトグラム応答関数 (CRF: chorematographi cresponse function) を利用し, 必要分離度と分析時間の重み付けを変化させたときの最適条件の変動について検討を行った.
  • 後藤 元信, 梅田 慈, 児玉 昭雄, 広瀬 勉, 永岡 昭二
    2001 年 58 巻 10 号 p. 548-551
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ε-カプロラクタムの開環重合で合成される, ナイロン6を亜臨界・超臨界水で加水分解することで単量体化を図った. 回分式の反応器にナイロン6と脱気水を仕込み, 圧力を30MPaとし, 反応温度573-673K, 反応時間5-60分の条件において反応をさせた. 高速液体クロマトグラフ分析の結果, 分解後の内容液にはε-カプロラクタムと, その加水分解物であるε-アミノカプロン酸が検出された. 収率は573Kで60分と, 603Kで30分の分解のとき最大となり, 二成分合計収率はほぼ100%となった. しかし, 長時間の分解においてはε-アミノカプロン酸は収率が急激に減少する. これよりナイロン6はまず亜臨界・超臨界水中でε-アミノカプロン酸に分解された後, 2次反応によりε-カプロラクタムに脱水環化されたり, さらに低分子に分解されたりすることがわかった.
  • 松山 清, 三島 健司, 平原 卓司, 高橋 慶治
    2001 年 58 巻 10 号 p. 552-556
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    超臨界二酸化炭素中でのメタクリル酸グリシジル (GMA) の重合反応について検討した. まず, 超臨界二酸化炭素中での高分子重合法を検討するための基礎的な知見として, 高圧二酸化炭素とGMAの相分離挙動を観察した. さらに, 重合開始剤として2,2-アゾビス (2,4-ジメチルバレロニトリル) を用い, 温度338K, 圧力9.1~20.3MPaの条件にてGMAの重合実験を行った. 重合圧力, 単量体仕込濃度, 重合開始剤濃度が生成される高分子の分子量へ及ぼす影響について検討した. その結果, 単量体濃度, 開剤濃度, 圧力を操作することにより生成される高分子の分子量の制御が可能であることがわかった. さらに, 生成される高分子の形態に及ぼすフッ素系界面活性剤およびメタクリル酸 (MAA) の添加効果について検討した. その結果, 超臨界二酸化炭素中にMAAまたはフッ素系界面活性剤を添加することで生成された高分子を微粒化することができた. 特に超臨界二酸化炭素中にMAAを添加し, GMAと共重合することにより, 球状の数μmオーダーの高分子微粒子を生成することができた.
  • 菅田 孟, 永岡 昭二, 大竹 勝人, 佐古 猛
    2001 年 58 巻 10 号 p. 557-563
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    もっとも処理困難なプラスチック廃棄物の1つである繊維強化プラスチック (FRP) の, 超臨界水あるいは高温高圧のアルコール+アルカリ水溶液による分解を検討した. その結果, 繊維強化プラスチックを高速で分解し, 有機物質および強化繊維材料を回収できることが確認された. 不飽和ポリエステル系繊維強化プラスチックは, 380℃の超臨界水により5分の反応時間でほぼ分解された. 主な分解生成物としては, 気相中に二酸化炭素と微量の低沸点炭化水素類, 液相中にはマトリクスの構成成分であるポリスチレンおよび不飽和ポリエステルに由来するスチレンオリゴマー, 芳香族炭化水素類とフタル酸誘導体が含まれているのが確認された. 5分間の反応で回収されたガラス繊維の外観は, 元の繊維とほぼ同様であった. 加水分解を受ける結合をもたないフェノール樹脂系FRPは超臨界水ではほとんど分解されず, 超臨界水に酸化剤を併用した部分酸化によっても分解困難であった. しかし, 超臨界水にアルカリを添加することにより, 分解率を向上することができ, さらに, アルコールを加えることによりほぼ分解することができた.
  • 超臨界フルオロフォルム中での脂質修飾リパーゼを用いた不斉選択的エステル化反応
    森 俊明, 舟崎 真理子, 小林 厚志, 岡畑 恵雄
    2001 年 58 巻 10 号 p. 564-568
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    脂質修飾リパーゼは超臨界フルオロフォルム中に可溶化し, R-1-フェニルエタノールを不斉選択的にエステル化する. 超臨界フルオロフォルムの圧量と温度を変化させると, 系内の誘電率を可逆的に変化でき, それにより反応収率は変化しないが, 反応速度を可逆的に制御できることがわかった.
  • 水本 智裕, 杉村 紀夫, 森谷 雅彦, 佐藤 善之, 舛岡 弘勝
    2001 年 58 巻 10 号 p. 569-571
    発行日: 2001/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    超臨界二酸化炭素により非晶性のアイソタクチックポリ (メタクリル酸メチル) (it-PMMA) とシンジオタクチックポリ (メタクリル酸メチル) (st-PMMA) の混合物から結晶性のステレオコンプレックスポリ (メタクリル酸メチル) (SC-PMMA) が形成した. st-PMMAから得られる非晶性PMMAの微細発泡体 (MCF) と比較して, it-PMMAとst-PMMAの混合物から得られるMCFは, 形成したSC-PMMAにより発泡セル数密度が大きく, 発泡セル径が小さい優れた構造であった.
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