高分子論文集
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58 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 水野 渡, 前田 芳子, 小島 佳奈子, 高道 智美, 宮部 寛志, 竹内 茂彌
    2001 年 58 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    4種の市販生分解性プラスチックについて, 環境による分解性を評価するため, 土壌, 河川水, 海水や, 下水処理施設の活性汚泥処理槽における分解性を比較した. 分解の進行状態は材料の組成により異なった. 土壌, 河川水, 海水の試験において, 試験環境が畑である場合, 微生物が増殖し分解が進んだ. 下水処理施設の活性汚泥中では, 微生物生産脂肪族ポリエステル, デンプンをブレンドしたポリビニルアルコール (PVA) で分解が起きた. 特に, 前者は微生物密度の影響を強く受け, 密度が高い活性汚泥槽で分解が速くなった. 下水処理施設のエアレーションタンクで生分解性プラスチック廃棄物の処理能力は投入量の50%/年と見積もられた. これについては, 安全性の確認など課題はあるものの, 下水処理施設における廃棄物処理は効果的な手段となり得るものと考えられる.
  • 真下 成彦, 深堀 美英
    2001 年 58 巻 2 号 p. 66-72
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    混合組成比率が約10重量%の結晶性水添スチレンーブタジエンラバー (H-SBR) と約90重量%のアスファルトからなる非水系物理ゲルの力学特性とその制振材への応用について詳細な知見が得られたので報告する. 本ゲルはポリマーとアスファルトが共連続な相分離構造を有している. そのため連続なアスファルト相に由来した大きなTan δを微少変形から大変形に至るまで発現し, 一方, 引張特性はもう1つの連続相のポリマー相に由来するゴム的な応力ーひずみ特性をもち, 大変形になると応力が急上昇する. さらに, ポリマー相がポリエチレン結晶を擬似架橋点として内包しているため, 高温 (80℃) においてもアスファルト相の流動を抑制しており, 優れた熱安定性 (高温下での形状保持性) をもっている. つまり, 本系はまったく異なった性質をもつ2相が相互に連続な構造を形成することによって, 両相が必要な機能を分担した新しい材料である. なお, その粘弾性的性質を利用して優れた制振材となり得ることも実際の振動実験によって確認されている.
  • 松浦 明, 林 隆紀, 古田 雅一, 林 壽郎
    2001 年 58 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    酵素の水溶性を維持させながら, 酵素活性を低下することなく高い安定性を付与するために水溶性高分子による酵素の修飾を試みた. ここでは, 微生物由来トランスグルタミナーゼ (MTG) に活性化ポリエチレングリコール (PEG) を共有結合させて水溶性のPEG-MTGを調製した. MTGの酵素活性は低分子基質としてN-カルボベンゾキシ-L-グルタミニルグリシン (CGG) を選び, ヒドロオキサメイト比色法により求めた. PEG-MTGの酵素活性は遊離MTGの活性に対する相対値 (RA) から比較評価した. その結果, PEG-MTGは遊離MTGに比べて, RAの低下がほとんど認められない高い値を維持したが, 修飾酵素中におけるMTGの相対量が小さくなるとRA値がより小さくなった. 一方, PEG-MTGは遊離MTGに比較して熱および保存安定性の顕著な改善が認められた. pH依存性は, 基本的には両者間で大きな相違が認められなかったが, PEG-MTG至適pH領域が遊離MTGよりわずかに塩基性側にシフトした.
  • 小川 俊夫, 尾張 純夫, 大澤 敏
    2001 年 58 巻 2 号 p. 78-85
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニルフィルムについて屋外暴露試験を行い, 一定期間ごとに採取をして引張破断強度, 引張弾性率および破断伸びを測定した. そして, それらの力学物性値とその暴露試験期間中の気象データ (月平均気温, 月間降水量, 月間日照時間および月間紫外線量) から統計学的手法の1つである多変量解析の重回帰分析法を用いて, 重回帰式を求めた. 得られた重回帰式を異なる気象条件下での実験結果に適用した. その結果, 対応する気象データを用いて得られた予測曲線は実験値と一致した. したがって, 本方法はプラスチックフィルムの耐候性予測に使用できることが明らかとなった.
  • 木村 隆夫, 宮田 裕幸, 田中 麻子, 西川 誠司
    2001 年 58 巻 2 号 p. 86-91
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    ジアミン成分に1, 6-ヘキサンジアミンを用いて, 種々の仕込み比のもとで (2R*, 4S*) -4-クロロホルミル-2-クロロホルミルメチル-2, 4-ジメチル-4-ブタノリド (BC) とリグニンから誘導した4, 6-ジクロロホルミル-2H-ピラン-2-オン (PC) の共重縮合を行った. 得られた一連のポリアミドの溶解性およびフィルム形成能は, PCユニットの組み込みにより低下する傾向を示したが, BC: PC= 50: 50の仕込み比で調製したコポリアミドの含水率は, いずれのホモポリアミドよりも高かった. また, 一連のポリアミドのガラス転移温度はPCユニットの組み込み率の増加に伴い上昇し, PCユニットを含むポリアミドに共通して200~250℃付近に発熱を伴う重量損失が見られ, その重量減少はPCユニットの組み込み率が高いほど大きかった.
  • 畦地 利夫, 半坂 征則, 御船 直人, 大原 利一郎
    2001 年 58 巻 2 号 p. 92-98
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2010/11/22
    ジャーナル フリー
    近年, 鉄道車両メンテナンスの省力化のニーズが増大しており, 鉄道車両部材に関しても耐久性評価に基づき, 長寿命化や使用期限管理の適正化を行うことが求められている. このため, 車両防振のために重要な部材である空気ばねゴムベローズの耐久性評価を行った. その結果, 最大16年間の使用に対してばね定数などの実用性能は良好な耐久性を示したが, ベローズの材質の物性では明確な低下が認められた. そして, 空気ばねベローズは現車使用の初期段階では酸化劣化による材質硬化を示したが, 長期間の使用に伴いゴムの分子運動性が増大するなど, 疲労劣化が進展することを明らかとした. また, ベローズ中央部ではすべての方位で大きく繰返し変形するため, 試験したすべての箇所で著しい劣化が認められるのに対し, 上部では空気ばねの水平方向, 下部では車両進行方向で劣化の度合いが小さいなど, 車両振動状況を反映した劣化特性を明らかにした.
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