高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
60 巻, 10 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 村瀬 清一郎, 堀江 一之
    2003 年 60 巻 10 号 p. 517-530
    発行日: 2003/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    光反応を用いたポリマーフィルムの, 屈折率および蛍光特性の制御について報告する. 光反応による屈折率制御では, さまざまな光脱離反応化合物をドープしたポリメタクリル酸メチル (PMMA) フィルムにおいて, 光照射により高い透明性を維持したまま, 0.01を超える大きな屈折率変化 (最大0.06) が得られた. この大きな屈折率変化には, PMMAフィルムの分子屈折変化と密度変化が加成的に寄与していることが明らかになった. 実用的観点を重視した系の検討では, 高い耐熱性の付与と光照射した部分の屈折率が増加するような系が実現された. 一方, 光反応による蛍光制御においては, 蛍光分子とフォトクロミック化合物間の分子間エネルギー移動を利用した蛍光のon-offについて述べた. 蛍光分子とフォトクロミック化合物が共存したPMMAフィルムにおいて, 光照射による可逆的かつ完全な蛍光制御が実現された.
  • 中川 勝, 名輪 希
    2003 年 60 巻 10 号 p. 531-538
    発行日: 2003/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ピリジニウム基を吸着部位として有する多価カチオン性分子が, 負に帯電したシリカ基板表面に静電的に吸着し, 脱イオン水に対し脱着耐性を示す吸着単分子膜を形成した. 吸着した多価カチオン性分子の光二量化反応や光分解反応により, 吸着膜の脱着耐性の向上や低下が起こることが, 紫外可視吸収スペクトル測定, 接触角測定, ゼータ電位測定の結果から明らかとなった. このようなカチオン性吸着膜の光照射による脱着の抑制や促進は, 光照射による吸着分子1分子当たりの吸着作用点の数の増加や減少に基づくことが示唆された. 光照射による脱着挙動の抑制現象と促進現象を利用して, カチオン性吸着単分子膜のネガ型とポジ型光パターン形成法を提案した. カチオン性吸着膜のパターン形状に従って, 帯電したポリスチレン微粒子を位置選択的に吸着させることができること, さらには, 無電解めっきによる基板表面の選択的金属化を行えることを明示した.
  • マイクロパターン偏光素子の作製
    松永 代作, 橋本 昌典, 秋山 陽久, ルスリム クリスティアン, 玉置 敬, 市村 國宏
    2003 年 60 巻 10 号 p. 539-547
    発行日: 2003/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    コマンドサーフェス研究の一環として, ポリアミド骨格にアゾベンゼン基を導入しリオトロピック液晶性を有するC.I. Direct Blue 67 (B67) の二次元光配向をコーティング法により検討した. 併せてB67のリオトロピック液晶性をX線回折, 偏光顕微鏡観察から詳細に検討し色素膜の構造との相関を検討した. X線回折からこの色素水溶液は等方相である低濃度の段階から色素分子がスタッキングしたカラム構造をとっていることが予測され, 塗布後水分が蒸発する過程でネマチック液晶相を形成し配向することが偏光顕微鏡で観察されている. この塗布工程を最適化することで, 高い二色性比を有するパターンサイズ70μm幅の光軸の異なったマイクロパターン偏光素子を簡便な手法で作製することが可能となった.
  • 安 明星, 酒井 丈也, 山本 統平, 川月 喜弘
    2003 年 60 巻 10 号 p. 548-554
    発行日: 2003/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    光架橋性高分子液晶とビフェニル基を有する低分子化合物からなる複合体フィルムに直線偏光紫外 (LPUV) 光を照射しfその後の熱処理によって誘起される1軸分子配向挙動について調べた. フィルムは高分子液晶部の軸選択的光反応をトリガーにして, 低分子化合物の配向を誘起するだけでなく高分子液晶メソゲンの配向も協調的に増幅した. 作製された複合体フィルムは可視光域において透明であり, 膜厚が1μm以上の光学位相差フィルムが作製できた. さらに, 斜めLPUV光照射により傾斜配向を実現した.
  • 古海 誓一, 横山 士吉, 大友 明, 益子 信郎
    2003 年 60 巻 10 号 p. 555-560
    発行日: 2003/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    コレステリック液晶をラビング処理した基板の間に挟むと, 基板に対して垂直に配向した超分子らせん構造を示し, 一次元フォトニック結晶と見なすことができる. 本研究では, コレステリック液晶に蛍光性色素を添加し, パルスレーザー光照射による発光挙動について検討した. グランジェン配向した液晶セルを直線偏光のパルスレーザーで光励起すると, 比較的低しきい値の光励起エネルギーで円偏光レーザー発光に変化した. 発光波長はコレステリック液晶の反射バンド端に一致しており, そのスペクトル線幅は0.8nmであった. その円偏光発光のらせん方向は, ネマチック液晶に添加したわずか2mol%のキラル剤の光学活性部位に依存していた. さらに, 光励起しながらコレステリック液晶セルに交流電場を印加すると, コレステリック液晶の超分子らせん構造の変化に伴ったレーザー発振の可逆制御に成功した.
  • 土田 隆樹, 島崎 智恵美, 幡野 健, 松岡 浩司, 青木 良夫, 野平 博之, 江角 保明, 照沼 大陽
    2003 年 60 巻 10 号 p. 561-568
    発行日: 2003/10/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    3種類の末端にシアノビフェニル基を有する分岐数が異なる第2世代カルボシランデンドリマー (MenG2-Mesogen, n=1, 2, 3) を合成した. また, 中心から外に向かって炭素鎖数が2, 3, 4と増加する傾斜型第2世代カルボシランデンドリマー (GradientG2-Mesogen) を合成した. それぞれのシアノビフェニル基担持カルボシランデンドリマーについて示差走査熱量分析 (DSC) および偏光顕微鏡観察を行った. 合成した四つのシアノビフェニル基担持第2世代カルボシランデンドリマーはすべてスメクチックA相を示し, デンドリマーの構造が相転移温度および液晶ドメインサイズに対し強く影響することがわかった. また, 液晶性傾斜型デンドリマーは相転移温度および液晶ドメインサイズともにデンドリマーを形成する炭素数がすべて3個のもの (G2-Mesogen)とほぼ同じであった.
  • 小林 徹, 関 隆広
    2003 年 60 巻 10 号 p. 569-574
    発行日: 2003/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    尿素を有したアゾベンゼン誘導体の尿素部位とアゾベンゼン部位をつなぐスペーサー長を系統的に変化させた化合物 (n-3, 4, 5, 6, 7) を新規に合成した. これら誘導体のLangmuir-Blodgett単分子膜を作製し, 紫外可視吸収スペクトル測定により, その湿度応答性について, 基板特性および化合物の構造を変化させて評価を行った. 親水性基板ではスペーサー長の長い化合物の膜は規則的な湿度応答を示し, 短くなるに従いその応答は不規則になるか, まったく応答を示さなくなった. 親水基板と疎水基板を用いた際の比較から, 基板表面への水分子の吸脱着が, 膜分子の会合状態を可逆的に変化させるものと解釈できる.
  • 秋山 陽久, 玉置 信之
    2003 年 60 巻 10 号 p. 575-580
    発行日: 2003/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フルカラー表示が可能な中分子液晶材料用の光反応性高分子添加剤の添加効果について検討した. 長鎖アルキル基をもつアゾベンゼン誘導体からなる重合性モノマーを新たに合成し, コレステリル基をもつモノマーと共重合した. またメチルアクリレートおよびヘキシルアクリレートなども加え共重合体を合成した. これらのポリマーは, いずれも中分子液晶との相溶性が低く相分離構造を呈するために添加剤としては適さないことがわかった. コレステリック液晶相中でこれらのモノマーを光重合した場合, ポリマーの生成が確認され, 液晶相に均一に分散していた. また低温下では相分離が起こることがわかった. 光重合で調製したサンプルは光による反射バンドのシフトがみられた.
  • 斎藤 雅子, 武捨 清, 池島 哲也, 小澤 信, 横山 弥生, 横山 泰
    2003 年 60 巻 10 号 p. 581-589
    発行日: 2003/10/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では, 熱不可逆性フォトクロミック化合物であるジアリールエテン類を, DNA-第四級アンモニウム塩コンプレックス (DNA-QAIC) 中に導入することで, DNAをフォトクロミック反応の透明な媒体として利用できることを明らかにした. 導入するジアリールエテンの極性置換基の有無や芳香環の相違といった構造の違いにより, 取り込まれ方が異なることがわかった. ジアリールエテンはDNA-QAIC中に取り込まれると光反応性が低下し, 置換基の有無が光反応性に影響を及ぼした. ヒドロキシル基の置換位置によっては, DNA-QAICとの混合溶液中でもDNA-QAICと強い相互作用をするために, 光環化反応が起こらなくなった. ジアリールエテン類がDNA-QAICフィルム中にどのような取り込まれ方をしているのかは不明であるが, 核酸塩基対間へのπ-πスタッキングにより部分的にインターカレートされている可能性がある.
feedback
Top