高分子論文集
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60 巻, 12 号
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  • 松井 淳, 三ツ石 方也, 宮下 徳治
    2003 年 60 巻 12 号 p. 673-681
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    優れた高分子Langmuir-Blodget (LB) 膜形成能を有するアクリルアミドポリマー, poly (N-dodecylacrylamide) [P (DDA) ], poly (tert-pentylacryiamide) [P (tPA) ] に光機能性分子としてピレン分子 (PyMA) を共重合により導入し, 高分子LB膜界面における光機能性分子のふるまいについて検討した. 水面上における単分子膜挙動および累積膜のUV吸収スペクトルよりアルキル側鎖の違いによりピレン分子の配向が異なることが明らかになった. 共重合体LB膜1層の蛍光スペクトル, 時間分解蛍光スペクトルの測定よりLB膜中のピレン分子の運動性は制限されており, そのためエキシマーの相対発光強度はテトラヒドロフラン溶液と比較して減少し, その最大発光波長も10nmブルーシフトした. さらにピレン分子が界面に存在しているP (tPA/PyMA) では積層構造がピレン発光に大きな影響を与えた. これは積層に伴いピレンの配向や周辺環境が変化したためと考えられる.
  • 木村 龍実, 福田 隆史, 松田 宏雄, 加藤 政雄, 中西 八郎
    2003 年 60 巻 12 号 p. 682-692
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    可視光領域で透明な芳香族エステルオリゴマーを新規な二次非線形光学活性分子として開発した. 芳香族エステルオリゴマーを高分子に対して混合した高分子混合系では, 混合した芳香族エステルオリゴマーの結合ユニット数に比例して二次非線形光学係数が向上し, かつ透明性は結合数によらず一定であることを明らかにした. このような透明性と性能の関係は従来材料では達成が困難であった. 芳香族工ステルオリゴマーを側鎖に結合した側鎖修飾型高分子においても同様の関係を見いだし, 芳香族エステルオリゴマー構造を最適化することにより, 透明な高分子としては比較的大きな二次非線形光学活性 (二次非線形光学係数=~10pm/V) を有することを明らかにした.
  • 新規π電子共役系オリゴマーの合成と分子配向制御および光学特性
    堀田 収, 吉田 郵司, 八瀬 清志, 玉置 敬, 柳 久雄, 市川 結, 谷口 彬雄
    2003 年 60 巻 12 号 p. 693-704
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    (チオフェン/フェニレン) コオリゴマーは, チオフェン環およびフェニレン (ベンゼン) 環からなるユニットが一次元的に連なった化合物であり, 分子長とユニットの配列をいろいろ変えることによって多様な化合物群を産み出す. シンプルな分子設計指針に従って, 直線状分子だけでなくジグザグや屈曲した非直線状分子などの多様な形状や対称性をもつ分子が選択できる. 本報では, これらのコオリゴマー材料のバリエーション, 分子配向の特徴およびそれらに関連した光学特性を調べる. とくに, 薄膜や結晶における高度な光学異方性, すなわち, 偏光吸収や偏光発光あるいは自己導波路発光などの研究に重点を置く. コオリゴマー材料のうち, 非直線分子の分子長軸 (あるいは遷移双極子モーメント) は薄膜の基板面あるいは結晶のab面に対して直立し, 高度な光学異方性や遷移双極子モーメント間の強い電気的相互作用の原因となる. さらに, コオリゴマー材料の電界効果型トランジスタなど, 電子デバイスへの応用にも触れる.
  • 河原 恵造, 坂口 佳充, 山田 孝敏, 岡崎 恭行, 今橋 聰
    2003 年 60 巻 12 号 p. 705-711
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    3種の水現像型感光性フレキソ印刷版について, 光化学反応性と反応後の版構造の変化を化学的な視点から分析した. 露光による架橋的光重合の進行は試料のバルクの13CNMRスペクトルより版全体の反応率を, ATRFT-IRスペクトルにより露光面および非露光面表面近傍の反応率を見積もることができた. 光反応は露光側の版表面で優先的に進行し, 露光時間とともに版内部まで反応が進行する傾向が捉えられたが, 版構成に応じてその挙動に差が出ていることがわかった. 露光された試料は試料の深さ方向に反応率分布が生じるので, 反応後に未反応モノマーが非露光面側から露光面側に徐々に拡散し, その様子が経時的に測定したATRFT-IRにより捉えられた. 未反応モノマーの拡散性は, モノマー構造だけでなく版組成や反応の進行状態の影響を受けていた.
  • 谷 俊朗, 山口 義宏, 林 俊秀, 小田 勝
    2003 年 60 巻 12 号 p. 712-724
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    イオン性高分子PVS薄膜および非イオン性のPVA薄膜中で, 擬イソシアニン (PIC) 分子によるJ-会合体の良質なフィブリル構造の作製条件を確立し, 独自の顕微画像計測, 局所分光計測の手法を適用して, サブμm程度の空間分解能で局所反射スペクトルと局所蛍光スペクトルを計測した. また, 局所的な偏光依存性を計測し, 吸収および発光の局所的な遷移双極子のフィブリルの長手方向に対する向きを計測した. 局所反射スペクトルは, 反射強度の増大に伴い, バンドの幅が著しく増大し, 形状も, バルクの吸収スペクトルのピークよりわずかに低エネルギー側にディップ構造が現れるなど複雑な変化を示すことが見いだされた. これらの振舞いは, J-バンドがFrenkel励起子に起因することを基本的に支持し, フィブリル構造のとくに厚みの増大に相関をもち, Frenkel励起子によるポラリトンの形成ないしその初期過程を捉えたものと解釈する. 一方, 局所的な遷移双極子は, 反射率が5%を超えてポラリトン効果が顕著になるのに比例して, フィプリルの長手方向から向きがずれ始め, ほとんど垂直に近いものまで大きな変化を示すことを見いだした. 局所蛍光スペクトルの測定結果も, 現象の一般性とポラリトン描像による解釈を支持する.
  • 西尾 昭徳, 和才 奏子, 堤 直人
    2003 年 60 巻 12 号 p. 725-732
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    新規な光導電性低分子ガラス化合物として分子量が800~1500の範囲にある3種のカルバゾール誘導体を合成した. すべての化合物から, ガラス状透明固体を得ることができた. これら光導電性化合物をホストマトリックスとして, 増感剤, 非線形光学色素ならびに可塑剤を混合してフォトリフラクティブ材料を調整した. その結果, 光導電性化合物の構造の違いはあまり反映されなかった. 回折効率は40~60%, ゲイン定数は50~75cm-1となり, 応答時間は光導電性マトリックスのガラス転移点を反映して顕著に異なった.
  • 小山 俊樹, 岩野 亨, 市川 結, 谷口 彬雄
    2003 年 60 巻 12 号 p. 733-738
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    3種類のポリ (ベンジルエーテル) 系ペリレンデンドリマーが合成され, ぺりレンコアの固体膜中で基底および励起状態における会合体形成に対して, ベンジルエーテル系デンドロンのシールド効果が検討された. その結果, 基底状態では, 低世代のデンドロン導入によってもある程度シールド効果が現れる傾向を示し, 第三世代のデンドリマーにおいては完全に会合体形成がしゃへいされた. ペリレン分子どうしの直接的な接触が, 低世代のデンドロンにおいても, そのかさ高さに応じて阻害されるが, ペリレンコア全体を覆うほどのシールド効果のあるデンドリマーとしては, 第三世代のデンドロンサイズが必要であった. エキサイマー形成には分子間の直接接触が必要ないため, 低世代デンドリマーにおいては, 固体膜でそのコア間距離やペリレン環配向がエキサイマー形成を可能にするものであった. 第三世代においては, ペリレンデンドリマーの固体膜での励起会合体形成をしゃへいし, 高密度ペリレン固体膜からの発光を可能にした.
  • 小山 俊樹, 鈴木 雄介, 市川 結, 谷口 彬雄
    2003 年 60 巻 12 号 p. 739-745
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フロー電解セルを用いた交互電解重合で, ポリピロール (PPy) とポリ-3-シクロヘキシルチオフェン (P3CHT) の薄膜が交互に積層した膜が作製された. 酸化ドープされた状態で生成するP3CHT重含膜はメタノールによりほぼ完全に化学還元脱ドープされ, 蛍光発光活性を示した. また, 電解還元によっても蛍光発光の可能な脱ドープ状態を与えた. 還元脱ドープしたPPy/P3CHT多層積層膜の蛍光発光ピークは, P3CHT単層膜の発光ピークより, 高エネルギーシフトした. さらに, 井戸層であるP3CHTの膜厚が薄くなるに伴い, そのシフト量は増加した. この発光ピークシフトはPPy/P3CHTの超格子構造における量子サイズ効果によることが, Kronig-Pennyモデルによる計算から示された. これにより, フロー電解重合法は高分子半導体薄膜の交互積層技術として有効であることを示した.
  • 泉 謙一, 牛 群, 菊池 裕嗣, 今村 康宏, 海谷 法博, 天谷 直之, 楊 塊, K. RAJES, 木村 礼子, 郡島 友紀, 蓮尾 ...
    2003 年 60 巻 12 号 p. 746-751
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    (高分子/液晶) 複合系は高分子の三次元網目構造の中に低分子の液晶が安定に保持された相分離構造を有し, 電界無印加-印加による光散乱-光透過の光スイッチング機能を有する. (高分子/液晶) 複合系の電気光学特性は高分子ネットワークの凝集構造に強く依存する. 本研究では (一官能性モノマー/二官能性モノマー) の混合モノマーにおいて, 単独では重合しにくいがアクリル酸エステルなどのモノマーとは容易に共重合するビニルエーテルを二官能性モノマーとして導入し, 複合系の調製を行った. 高分子ネットワークの網目のサイズは重合速度の増加に伴い減少する傾向があることが知られている. しかしながら, 本研究では重合速度と高分子ネットワークの三次元網目構造に明確な相関は認められず, 重合の動力学以外の要因が作用していることが示唆された. (一官能性アクリル酸エステル/二官能性ビニルエーテル/液晶) 系から調製される (高分子/液晶) 複合系は, (一官能性アクリル酸エステル/二官能性アクリル酸エステル/液晶) 系や (一官能性フマル酸エステル/二官能性ビニルエーテル/液晶) 系により調製される (高分子/液晶) 複合系と比較して, 網目サイズの大きな高分子ネットワークの形成と顕著な低電圧駆動を示した. さらに (一官能性アクリル酸エステル/二官能性ビニルエーテル/液晶) 系から調製される (高分子/液晶) 複合系において, 低電圧駆動を示す複合系の調製が10Kにわたる広い重合温度範囲で可能となった.
  • 加賀 和明, 岡本 潔, 越前 考弘, カートハウス オラフ, 中嶋 健
    2003 年 60 巻 12 号 p. 752-761
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    自己組織化によりポリスチレンドーム中に取り込まれたシアニン色素の集合状態のコントロールと, 色素濃度とドームサイズを変えたときの集合状態の変化の光学的特性に与える影響を検討した. 固定されたマイカ基板とモーターに接続されたガラスローラーとの間のスペースに希薄なポリマー/色素溶液を滴下することによってサンプルを得た. 溶液の滴下後, 一定の速度でガラスローラーを回転させ, ディウェッティング過程をコントロールすることによって, 二次元配列したポリマードームが得られ, 色素は選択的集合体としてそのなかに取り込まれることを明らかにした. ディウェッティング過程は, 1~100μmの直径と20nmから数μmの高さをもった小さなポリマードームを形成する. 蛍光顕微鏡観察からある色素濃度以上においてポリマードームの縁に色素集合体が形成されることがわかった. 色素分子はナノメートルサイズの集合体を形成し, その集合体がマイクロメートルサイズのポリマードームの縁に局在する. またそのポリマードームは, 基板全体に二次元的に配列することがわかった. サンプル内部には, 分子レベルからメゾスケールレベルまでの階層構造が自己組織的に形成される. さらに蛍光スペクトルのピーク波長は, 色素濃度とポリマードームのサイズに依存することも明らかになった. すなわち色素濃度が高いほど, またポリマードームが大きいほど, ピーク波長は長波長側にシフトする.
  • 高河原 康子, 李 莉, 浜屋 次郎, 寺境 光俊, 柿本 雅明
    2003 年 60 巻 12 号 p. 762-769
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    焦点にテトラエチレンオキシド鎖を1本, 末端に直鎖アルキル基 {- (CH2) 11CH3} を2本, 4本, 6本もつ3種の両親媒性芳香族ポリアミドデンドロン (10a, 10b, 10c) をコンバージェント法によって合成した. 溶媒としてクロロホルムを用い, 3種のデンドロンを気水界面に展開すると, いずれも単分子膜 (L膜) を形成した. 10cのL膜の崩壊圧は43.6mN/mと3種のL膜のうちもっとも大きく, 安定な膜であることがわかった. また, 2種のデンドロンを組合わせて共展開した場合にもL膜を形成したが, 二次元圧縮に伴う膜の崩壊は2段階で起こることを示す表面圧-面積 (π-A) 曲線を得た. デンドロン10bと10cまたは10aと10cの組合せのL膜では, 興味深い繊維状の凝集体が形成することを走査プローブ顕微鏡により観察した. さらにL膜を崩壊圧付近まで二次元圧縮すると, 繊維状の集合体は消失し, かわりに約1μmの穴が生じ, 膜は崩壊することがわかった.
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