イオン性高分子PVS薄膜および非イオン性のPVA薄膜中で, 擬イソシアニン (PIC) 分子によるJ-会合体の良質なフィブリル構造の作製条件を確立し, 独自の顕微画像計測, 局所分光計測の手法を適用して, サブμm程度の空間分解能で局所反射スペクトルと局所蛍光スペクトルを計測した. また, 局所的な偏光依存性を計測し, 吸収および発光の局所的な遷移双極子のフィブリルの長手方向に対する向きを計測した. 局所反射スペクトルは, 反射強度の増大に伴い, バンドの幅が著しく増大し, 形状も, バルクの吸収スペクトルのピークよりわずかに低エネルギー側にディップ構造が現れるなど複雑な変化を示すことが見いだされた. これらの振舞いは, J-バンドがFrenkel励起子に起因することを基本的に支持し, フィブリル構造のとくに厚みの増大に相関をもち, Frenkel励起子によるポラリトンの形成ないしその初期過程を捉えたものと解釈する. 一方, 局所的な遷移双極子は, 反射率が5%を超えてポラリトン効果が顕著になるのに比例して, フィプリルの長手方向から向きがずれ始め, ほとんど垂直に近いものまで大きな変化を示すことを見いだした. 局所蛍光スペクトルの測定結果も, 現象の一般性とポラリトン描像による解釈を支持する.
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