高分子論文集
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60 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 北川 優, 吉野 賢二, 常盤 豊
    2003 年 60 巻 3 号 p. 95-100
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    西洋わさびからペルオキシダーゼを含む粗抽出画分を調製し, フェノールを原料にメタノール/0.1Mリン酸バッファー (pH7) (1/1) 中, 過酸化水素の存在下で重合反応を行った. その結果, 硫安沈殿物でも精製酵素と同様にポリマーの沈殿が生成した. 得られたポリマーはいずれも数平均分子量が1400前後であり, ジメチルホルムアミド (DMF) に対し溶解した. また熱分析から400℃付近に重量変化が見られた. このことから, ペルオキシダーゼとしては精製酵素と同様に安価な硫安沈殿物でも重合用として十分利用できることが確認された.
  • 田近 真吾, 杉田 篤史, 植本 邦彦, 田坂 茂
    2003 年 60 巻 3 号 p. 101-107
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリカーボネート (PC) に油脂を添加し熱分解を行い分子量の変化を測定した. 一般に, 油脂は高い熱安定性をもつため常圧下でも高温処理 (300~400℃) が可能となり, また熱媒体として有効であると同時に低分子の溶剤としての性質をもつ. したがって, PC/大豆油混合物を300~350℃に加熱したところ, PCは分子量数千のオリゴマーに分解し油中に溶解した. PCの分解は高温における主鎖の切断やトリグリセリドとのエステル交換反応により進行し, 油脂から分解生成する水や脂肪酸の影響を大きく受けた. PCにステアリン酸を添加して300~350℃で加熱したところ, PCの分子量が急激に低下し, 一定となった. ステアリン酸による還元雰囲気とアシドリシスの平衡によって, 分解生成オリゴマーは安定化すると考えられる. またステアリン酸添加量の調節することで, 平衡状態における分子量を制御できる可能性が見いだされた.
  • 鈴木 一孝, 森 邦夫, 叶 榮彬, 平原 英俊
    2003 年 60 巻 3 号 p. 108-114
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    真空蒸着法により, 吸着水の付着する未清浄化鉄表面と真空加熱排気処理により除去処理した鉄表面にアルキル基とアリル基を有するトリアジンチオール化合物の被膜を作製し, その吸着性と反応機構について調べた. トリアジンチオール化合物は6-ジブチルアミノ-1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオール (DB) と6-ジアリルアミノ-1, 3, 5-トリアジン-2, 4-ジチオール (DA) である. DA被膜はDBより表面清浄度に関係なく吸着確率が高く, 吸着水が多い未清浄表面ほど, 吸着確率の差が大きくなることがわかった. アリル基を有するDAは未清浄表面で, メタノール溶媒に不溶化する化学吸着・反応生成物を形成しやすいことが膜厚測定とAFMの観察により明らかとなった. 未清浄鉄表面におけるDA被膜には, チオール基間でジスルフィド結合形成や, 鉄表面への化学吸着反応, あるいはアリル基とチオール基との付加反応, およびアリル基間での付加反応が起こっていることがFTIR-RASやXPSの解析からわかった. この反応機構は, 未清浄表面のオキシ水酸化鉄 (FeOOH) と, 蒸着によって飛来するDAとの分子衝突によるラジカル生成に起因し, 基板表面と分子間でのラジカル反応が支配的であると提案された.
  • 名取 至
    2003 年 60 巻 3 号 p. 115-120
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    1, 3-シクロヘキサジエン (1, 3-CHD) のリビングアニオン重合技術を応用して, 架橋性シクロヘキサジエン (CHD) 系ポリマーの合成を検討した. 2官能開始剤/N, N, N', N'-テトラメチルエチレンジアミン (TMEDA) によって1, 3-ブタジエン (1, 3-Bd) と1, 3-CHDの共重合を行い, ジメトキシメチルクロロシラン [ (CH3O) 2SiCH3Cl) ] によって重合反応を停止することにより, ポリマー主鎖の末端にジメトキシメチルシラン (MS) 基を有する1, 3-CHD-1, 3-Bd-1, 3-CHDブロックコポリマー (MS-CHD/Bd/CHD) の合成に成功した. 得られたMS-CHD/Bd/CHDおよび, それを水素化して得られたMS-CHE/BE/CHEにジラウリン酸ジブチルスズ [ (C11H23COO) 2SnBu2] を添加すると架橋反応が進行することを確認し, ポリマー主鎖に六員環を有する種々の架橋性ポリマーを設計し合成できることを示した.
  • 名取 至
    2003 年 60 巻 3 号 p. 121-127
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    シクロヘキサジエン系ポリマーを, 環境に優しい工業的な光学材料として使用するために, 水素化が実用的な光学的特性に与える影響を調べた. 非晶性のシクロヘキサジエンホモポリマー (PCHD) とPCHD-ポリブタジエン (PBd) -PCHDトリブロックコポリマーは, リビングアニオン重合によって合成された. 非晶性のシクロヘキサンホモポリマー (PCHE) とPCHE-ポリ (エチレン/ブチレン) (PEB) -PCHEトリブロックコポリマーは, PCHDとPCHD-PBd-PCHDトリブロックコポリマーを水素化することによって合成した. PCHDの屈折率とガラス転移温度 (Tg) は, 水素化によって上昇した. PCHD, PCHEはいずれも高い光線透過率を示した. PCHD-PBd-PCHDトリブロックコポリマー, PCHE-PFB-PCHEトリブロックコポリマーも, ポリマー鎖の組成にかかわらず高い光線透過率を示した. PCHEは非常に優れた光線透過率の波長依存性を発現し, 新しい光学材料としての可能性が確認された.
  • 石井 敏也, 本郷 忠志, 森田 まち子, 小川 俊夫
    2003 年 60 巻 3 号 p. 128-137
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ベーマイト処理アルミニウムと押出しラミネーションにより貼り合わせた低密度ポリエチレン (LDPE) の接着において, LDPEの溶融押出し温度の接着に対する影響を検討した. ベーマイト (AlOOH) はアルミニウムを沸騰水で処理することにより生成し, 接着性や耐食性に優れていることが知られている. 一方, 低密度ポリエチレンは本来極性基が存在しないために不活性であり接着には不利である. そこで接着性を付与するために押出しラミネーションでは溶融押出し温度をできるだけ高くして熱酸化させる方法がとられる. 本研究ではLDPEの溶融押出し温度を280℃から340℃まで変化させて押出しラミネーションによりベーマイト処理アルミニウムに接着しはく離強度を測定した. その結果, 溶融押出し温度320℃がもっとも高い値を示し, はく離強度は約800N/mに達した. LDPEの溶融押出し温度を分解温度近傍まで上げると酸化度は高くなるが, その反面LDPE表層の分解が進むためベーマイトと接するLDPE表面の凝集強度が低下する. このため, 溶融押出し温度340℃はベーマイトと接着しているLDPE表面の凝集強度が低く, LDPEの凝集破壊が起こっていた. 押出しラミネーションによりLDPEを接着させる場合, 表面酸化, 表面凝集力およびアンカー効果のバランスによって最適な溶融押出し温度条件が存在することが明らかになった.
  • 名取 至, 山岸 秀之
    2003 年 60 巻 3 号 p. 138-140
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2010/07/27
    ジャーナル フリー
    ノルマルブチルリチウム (n-BuLi) /テトラメチルエチレンジアミン (TMEDA) システムを開始剤としたアニオン重合で得られる, ポリ (1, 3-シクロヘキサジエン) の重合条件とポリマー鎖構造の関係について調べた. TMFDA/n-BuLiのモル比が1以上の場合, ポリマー鎖中の1, 2-単位/1, 4-単位のモル比は重合温度に影響されず約50/50 (%) であった. TMEDA/n-BuLiのモル比が1未満では, 低温で重合した方が1, 2-単位の割合は多くなった.
  • 呉 馳飛
    2003 年 60 巻 3 号 p. 141-144
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    塩素化ポリエチレン (CPE) とヒンダードアミン系低分子化合物 (LA-57) のブレンドについて, 熱処理過程における動的粘弾性の変化を調べた. 160℃で10分間プレスしたCPE/LA-57 (55/45) は動的粘弾性に二つの緩和を示すため, 非相溶系である. この試料を50℃で熱処理すると, 低温側の緩和がさらに二つの緩和に分かれた. これは, 熱処理過程におけるCPEリッチ相のさらなる相分離によるものである. 熱処理により2相以上の多相構造を形成することにより広い温度域にわたって高い制振性を保つ高性能制振材料の設計が期待できる.
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