高分子論文集
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60 巻, 7 号
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  • 鈴木 雅雄
    2003 年 60 巻 7 号 p. 321-328
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アルコキシシランを用いたジシアンジアミド (DICY) 硬化エポキシ/シリカハイブリッド材の網目構造とゲル化時間との関係を検討した. 簡単なモデルを想定し, ゲル化時間とアルコキシシラン縮合物の官能基数の関係を求めた. その結果, 用いるエポキシの官能基数とアルコキシシラン添加量からエポキシ/シリカハイブリッド材のゲル化時間を予測することが可能となった. さらに, アルコキシシランとしてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン (GTPMS) およびフェニルトリエトキシシラン (PTES) を用い縮合物の官能基数を半減した系では, ゲル化時間の延長を図ることができ, その値は上記モデルによる予測値とよくあうことを確認した.
  • 増渕 泰之, 前山 勝也, 米澤 宣行, 萩原 時男
    2003 年 60 巻 7 号 p. 329-334
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ヘキサフルオロプロピレンオキシド (HFPO) を開始剤とするテトラヒドロフラン (THF) の重合反応につき重合系中に5員環環状酸無水物を添加剤として加え, その効果について検討を行った. これまでのHFPOによるTHFの重合反応では, HFPOから脱離するフッ素アニオンが重合を停止するため, 得られる重合体の分子量は低く (Mn=1.1×103) 高分子量体の合成は困難であった. しかし無水マレイン酸などの5員環環状酸無水物を添加した条件では, 分子量8.4×104の無色固体状の重合体を得ることができた. 得られた重合体は末端をエステル化することでキャスト法による成膜が可能であった. 生成した膜のTGA測定による10%重量減少温度は211.1℃であった.
  • 石井 敏也, 本郷 忠志, 森田 まち子, 小川 俊夫
    2003 年 60 巻 7 号 p. 335-346
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    低密度ポリエチレン (LDPE) とベーマイト処理アルミニウム箔の接着界面状態の解析を行った. ベーマイト (AlOOH) はアルミニウムを沸騰水で処理することにより生成し, 押出しラミネーシヨンにより貼り合わせたLDPEに対して強い接着力を発現する. これらのはく離強度はべーマイト処理時間の増加とともに増大する. この接着力の増大の機構を解析するためにはLDPEとべーマイト処理アルミニウム箔の接着界面状態を知ることが重要である. しかし通常の場合, はく離試験により得られたはく離面はLDPEの塑性変形による伸びやベーマイトとアルミニウム基材との破壊が生じるため, 接着界面状態は保存されていない. そこで本研究ではLDPEとべーマイトの界面はく離を試みるため, ラミネート試料を水に浸漬してはく離試験を行った. このはく離面に対して超高分解能走査電子顕微鏡 (SEM), 原子間力顕微鏡 (AFM), 透過電子顕微鏡 (TEM) およびX線光電子分光法 (XPS) を用いて分析を行った. その結果, 水浸漬後のラミネート試料LDPEの塑性変形による伸びやベーマイトとアルミニウム基材の破壊を起こさずに接着界面ではく離した. これはLDPEとベーマイトの接着は化学的な水素結合であることを示唆する. また, LDPE側はく離面の形態から両者の接着力は化学的な効果に加え, LDPEのベーマイト構造への侵入深さと凹凸の傾斜角度および両者の接触面積が大きく影響し, これらの値が大きいほど接着力が高くなることが考えられる.
  • 菊地 時雄, 高橋 辰宏, 小山 清人
    2003 年 60 巻 7 号 p. 347-353
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    固化領域から溶融領域の広範囲における高分子材料の熱伝導率 (λ) の温度圧力依存性は, 成形加工におけるComputer Aided Bngineemg (CAE) にとって極めて重要なパラメーターである. 素熱抵抗モデルを用いたEiermannの理論によれば, 加圧による熱伝導率の増加率は等温圧縮率 (β) に比例しその比例定数 (g) はBridgmanパラメーターと呼ばれ, 高分子の種類によらず5.25であるとされている. CAEにおいて熱移動の計算に重要なのは, gの実測値とその温度依存性である. 本報では, 高密度ポリエチレン (HDPE) と低密度ポリエチレン (LDPE) について, 圧力0.1~150 MPa, 温度70~200℃の範囲で熱伝導率の温度・圧力依存性を測定し, gの温度依存性を求めた. 溶融状態におけるgは, HDPE, LDPEとも温度依存性は認められずどちらもほぼ3であった. しかし固化状態におけるgは, Eiermannの理論における5.25よりも大きな値をとり, また大きな負の温度依存性が認められた. gの実則値と理論値が異なる結果であったことの理由の一つに, 多くの欠陥が存在する実際の高分子に, Eiermannの理論解析では理想的な格子モデルを用いていることが考えられる.
  • 藤井 敏弘, 池添 のぞみ
    2003 年 60 巻 7 号 p. 354-358
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    信大法と呼ばれている簡便な抽出方法を羊の原毛と毛糸からのタンパク質分離に適用した. 従来法と比べ, 信大法を用いた場合の抽出タンパク質量は約1.5倍多かった. 得られたタンパク質は, 主にα-ケラチンとマトリックスタンパク質から構成されていた. また, 分解はほとんどなく原毛と毛糸の構成タンパク質の差はほとんど見られなかった. リン酸化分子種がケラチンおよびマトリックスタンパク質に含まれているため, 翻訳後の修飾が羊毛タンパク質にも生じていることを強く示唆した. 変性剤を組み合わせて, 既存のガーゼ繊維に羊毛タンパク質をコーティングする新しい方法を開発した. ガーゼ1g当たり最大5mgのタンパク質を吸着していた. 直径1~2μmのケラチンフィラメントがガーゼ繊維を架橋するSEM像が観察された.
  • DNAとジエチルアミノエチル化-デキストランの反応
    大西 靖彦, 菊池 康男
    2003 年 60 巻 7 号 p. 359-364
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ジエチルアミノエチル化 (DEAE) -デキストランとDNAとの複合体の反応は非ウイルスベクターヘの応用として注目されている. DEAE-デキストランとDNAとの反応は収量の点からは理想域は中性域のpH7からpH10であり, また反応時間が長くなるにつれて複合体は密な結晶状態になっていくこともわかった. ベクターとしての細胞に対する形質交換効率の点から考えると最適な反応時間はさらにin vitroな試験が必要となるが, 今回の実験より形質交換効率の向上にはこれら反応時間やpH条件が重要であることがわかる.
  • 魚住 俊也, 近江 靖則, 佐野 庸冶
    2003 年 60 巻 7 号 p. 365-368
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    かさ高い配位子を有する (CH3) 2Si (Fluorenyl) 2ZrCr2-メチルアルモキサン (MAO) 触媒を用いた1, 5-ヘキサジエンの重含を試みた. その結果, 重合温度17℃以上では環化重合が優先的に進行し, cis-tmns連鎖に富むポリマーが高収率で得られることがわかった. さらに, 生成ポリマーの熱的性質については, cis体とtrans体がランダムに並んだポリマーに比べて高い融点ならびに低いガラス転移温度を示すことが明らかになった.
  • 真下 成彦, 若菜 裕一郎, 堀川 泰郎
    2003 年 60 巻 7 号 p. 369-372
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    櫛型構造をもつ熱可塑性高分子と低分子量オイルからなる物理ゲルの形態, 熱的, および粘弾性的性質を調べた. 得られたゲルはμmサイズの網状構造を有する. 本ゲルはガラス転移温度が-55℃の系でさえも20℃においてtanδ=0.58 (10Hz, ひずみ10%) を発現する. その融点は136℃付近であり幅広い温度範囲で使用できる新しい熱可塑性の力学的減衰材料となる可能性がある.
  • 真下 成彦, 南川 直史, 上杉 健太朗, 陣内 浩司
    2003 年 60 巻 7 号 p. 373-376
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    結晶性熱可塑性エラストマーとオイルからなる非水ゲルは, 通常の液体混合系などでは見られない特異な相構造を形成するといわれている. しかし, これまでの汎用の光学顕微鏡, 走査型電子顕微鏡, レーザー共焦点顕微鏡を用いた構造観察では試料の表面付近の画像しか得ることができず, 非水ゲルの3次元相構造に関する知見は限られたものであった. 今回, シンクロトロンX線CT法を用い, 試料と撮影条件を最適化して, 非水ゲルの3次元観察を実施した. 非水ゲルのμmレベルの相構造が初めて3次元的に得られ, その画像から, 非水ゲルの相分離構造は, 球状ドメインが複数の孔を通して連結した“セル状連結構造”とでもいうべき3次元構造をとることが明らかとなった.
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