高分子論文集
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61 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 小川 俊夫, 中谷 淳志, 青木 大蔵, 大澤 敏
    2004 年 61 巻 3 号 p. 153-159
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    超高分子量ポリエチレン繊維を強化材とし, エポキシ樹脂をマトリックスとした複合材料の力学的性質の改善を目的とした検討を行った. すなわち, ポリエチレン繊維のコロナ放電処理後にシランカップリング剤あるいはイソシアネート化合物による処理を行った. まず, 界面せん断強度を測定した結果, いずれの化合物でもコロナ放電処理だけの場合よりも改善されたが, とくにイソシアネート化合物による表面処理は効果があり, 50MPa以上の値が得られた. この結果を踏まえてエポキシ樹脂と複合化し, 複合材料として評価しても力学的性質は著しく改善された. しかし, 仔細にみると弾性率においては理論値とよく一致したが, 破断強度においては理論値の値には至らなかった. これは超高分子量ポリエチレン繊維の破断伸びが5%以上とかなり大きいために, 破断時点での繊維間での応力伝達が不十分になるためと思われる.
  • 永田 智亮, 川喜田 幸郎, 佐藤 由貴子, 西山 健一, 中村 義之, 山本 保
    2004 年 61 巻 3 号 p. 160-168
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    イソチオシアナト基を有するシランカプラー (ASPI 1) のうち, 3- (Diethoxymethylsilyl) propyl- (1a) および3- (Triethoxysilyl) propyl Isothiocyanates (1b) の低分子第一および第二アミン類およびアルコール類との反応性が追究された. アミン類との反応では, これらのASPIはそのNCS基部位においてのみ迅速に反応し, 一方アルコール類とは, アルコキシシリル基部位において優先的にゆっくりと反応し, ASPIがケモセレクティブな反応性を示すことがわかった. これらの結果を基に, 1とアミンポリマーとくにPolyallylamine (PAA) との反応性が追究されたところ, 温和な条件下において, その低分子モデルとほぼ同じ速さで反応が進行し, 対応する付加体ポリマー (PAASP) が生成することが明らかにされた.
  • 永田 智亮, 小澤 努, 関口 学志, 林 直樹, 中村 義之, 山本 保
    2004 年 61 巻 3 号 p. 169-176
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    イソチオシアナト基を有するシランカプラー [3- (Alkoxysilyl) propyl isothiocyanate (ASPI) ] とPolyethylenimine (PEI) の反応性, 付加体 (PEIASP) 合成, PEIASPの水架橋性を追究した. その結果, ASPIとPEIとは室温においてモデルアミンとほぼ同等の速さで反応し, 相当する付加体ポリマーPEIASPを与えた. 3- (Alkoxysilyl) propyl (ASP) 基導入率 (y) はASPIとPEIの仕込みモル比とともに増大し, 約70%で飽和した. 生成PEIASPの有機溶媒に対する溶解性は, ASP基の導入によって非極性溶媒へと広がりを見せた. PEIASPの成膜性は, ASP基導入率が10%を超えるあたりから次第に良好となることがわかった. PEIASP (y=10, 69%) のアルコール溶液は, 水の存在下で徐々にゲル化し, ゲル化は加熱および塩基触媒の添加によって促進された. また, PEIASPのキャストフィルムまたは液膜は短時間 (10分間) の水蒸気暴露により不溶化または固態膜化し, アルコキシシリル基の加水分解に基づく架橋膜形成を示唆した.
  • 城本 征治, 小山 清人
    2004 年 61 巻 3 号 p. 177-183
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン (PP) と高密度ポリエチレン (PE) からなる非相溶高分子ブレンドの, 縮小部を有するせん断流動下におけるモルホロジー変化について調べた. その結果, 以下のことがわかった. 1) PP/PEのモルホロジーは, せん断速度依存性を考慮した分散相に対するブレンドのせん断粘度比 (ηr*) に依存する. 2) ηr*>1の場合, 分散粒子は変形しにくいため合一できず凝集する、分散粒子の変形は小さくせん断速度に依存せず安定であった. 一方, ηr*<1の場合, 低せん断速度では分散粒子は合一し流動方向へ大きく変形した. せん断速度の増加とともに分散粒子が分裂し微細化した. 3) 分散粒子の変形はηr*と平均場モデルに基づいたキャピラリー数 (Ca*) に依存した. 分散粒子はηr*=1のときもっとも分裂しやすい.
  • 瀧川 裕貴, 大里 英士, 三尋木 里美, 和田 理征, 今泉 光博, 清水 秀信, 岡部 勝
    2004 年 61 巻 3 号 p. 184-189
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリブチレンサクシネート (PBS) は, 分子内にエステル結合をもつ生分解性ポリマーである. このポリマーは結晶性であるため, 適当な溶媒中で熱可逆性ゲルを形成することが期待される. この研究では, 多くの溶媒を用い, PBS/有機溶媒間の相互作用パラメーター (Flory-Hugginsのχ12パラメーター) を実測し, χ12の大きさとPBS溶液のゲル形成能について実験的に検討した. その結果, ゾル→ゲル転移をひき起こした系は, 高温領域 (150℃近傍) でχ12が0.5より小さい値を示し, 温度が低下していくとχ12=0.5を横切って上昇し, 室温近傍でχ12≧0.5となるようなメチルエチルケトンなどのケトン類やトルエンなどの芳香族であった. また, ゲルのモルホロジーを観察したところ, PBSのゲル中には球晶が確認された.
  • 井出 裕介, 藤井 敏弘
    2004 年 61 巻 3 号 p. 190-193
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    医療関連材料の重要な要因に「生分解性」がある. ヒト毛髪タンパク質溶液およびそのフィルムの分解性を調べるため, 6種類のプロテアーゼを用いた. この中で, trypsin, chymotrypsin, proteinase K, pronase Eを用いた場合, 有意な分解が見られた. SEM観察は, 直径1~2μmの粒子と粒子間を結合させる成分とこれらを覆う成分からなる構造を示した. プロテアーゼ処理後のフィルム表面は, 粒子あるいは粒子間の結合成分が残存していることから, これら3成分間の分解の差がフィルム形状の崩壊に関係していることが示された. これらの結果, ヒト毛髪タンパク質溶液およびそのフィルムは分解性を有する基材になりうることが示された.
  • 林 静恵, 今泉 公夫, 名取 至
    2004 年 61 巻 3 号 p. 194-196
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    シクロヘキサジエン系ポリマーの酸素透過性について検討した. ポリ (1, 3-シクロヘキサンジエン) (PCHD) -ポリブタジエン (PBd) -PCHDブロックコポリマーでは, ポリマー鎖の組成が酸素透過性に大きな影響を及ぼした. ポリシクロヘキサン (PCHE) -ポリ (エチレン/ブチレン) (PEB) -PCHEブロックコポリマーは, 広い組成範囲において低い酸素透過性を示した. それぞれのポリマーブロックの相溶性が, 酸素透過性を決める重要な因子の一つであると思われる.
  • 名取 至, 数乗 幸, 山岸 秀之
    2004 年 61 巻 3 号 p. 197-199
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ (1, 3-シクロヘキサジエン) (PCHD) のNMRスペクトルについて調ベた. PCHDは, ノルマルブチルリチウム (n-BuLi) /テトラメチルエチレンジアミン (TMEDA) (4/5) システムを開始剤としたリビングアニオン重合によって合成した. ポリマー鎖が1, 2-単位と1, 4-単位で構成されるPCHDの複雑な1H NMRスペクトルの各ピークの帰属を行うために, PCHDのDEPTNMRと二次元 (2D) NMRの測定を行った.
  • 名取 至
    2004 年 61 巻 3 号 p. 200-202
    発行日: 2004/03/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ノルマルブチルリチウム (n-BuLi) /テトラメチルエチレンジアミン (TMEDA) (4/5) システムを開始剤としたアニオン重合で得られる, ポリ (1, 3-シクロヘキサジエン) (PCHD) の1, 2-単位と1, 4-単位の配列について調べた. ポリマー鎖中の1, 2-単位/1, 4-単位のモル比はPCHDの重合度にかかわらず常に約1であり, ガラス転移温度 (Tg) はいずれのサンプルにおいても一つであることから, ポリマー鎖は1, 2-単位と1, 4-単位が交互に存在していることが示唆された.
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