高分子論文集
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62 巻, 1 号
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  • 大石 勉, 谷口 寛, 李 鎔〓, 鬼村 謙二郎
    2005 年 62 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    高分子系ナノコンポジットは高分子中に分子 (ナノ) レベルで複合剤を分散させたものであり, 通常の複合材料よりも飛躍的な性能の向上, 新たな機能発現が期待されている. 本研究では, 難燃性ABS樹脂の合成を目的とし, 有機化粘土を用いてABS系ナノコンポジットを合成した. 具体的には, モンモリロナイト型粘土鉱物と塩化ベンザルコニウムおよび4-ビニルピリジンを用いて有機化粘土を合成し, この有機化粘土存在下でアクリロニトリル (A) とスチレン (S) を共重合させることによって層はく離型ナノコンポジット (AS-clay) を合成した. XRD測定の結果より合成した有機化粘土の層間 (d=13.07~15.86Å) は, もとのモンモリロナイト型粘土鉱物の層間 (d=12.47Å) より広がっていることが確認された. 有機化粘土のIR測定においても塩化ベンザルコニウムおよび4-ビニルピリジンに起因する吸収がみられた. AS-clayにおいては, XRD測定の結果, 結晶領域に起因するピークの消失がみられ, 粘土の層はく離が起こっていることが確認された. AS-clay, AS樹脂およびABS樹脂を所定の条件下で混練することにより得られるAS-clay/ABS樹脂複合材料は, ABS樹脂に比べ燃焼速度は遅くなり, 難燃性の向上がみられた.
  • 井上 洋, 山中 弘次, 吉田 晃子, 中村 彰, 青木 俊樹, 寺口 昌宏, 金子 隆司
    2005 年 62 巻 1 号 p. 7-16
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    w/oエマルションの重合系を静置重合することで, 細孔分布がシャープな連続細孔構造を有するモノリス型多孔質樹脂を調製し, イオン交換基を定量的に導入した. 得られたモノリス型多孔質イオン交換樹脂は, 母体架橋ポリマーや導入されたイオン交換基の種類が同じ従来の粒子状イオン交換樹脂と比べて以下の特異的なイオン交換挙動を示した. (1) 従来の粒子状アニオン交換樹脂では定量的な濃縮が困難であったフッ化物イオンを, 定量的に濃縮することが可能であった. (2) 電場中におけるイオン交換樹脂中のイオンの排除時間を比較すると, モノリス型多孔質イオン交換樹脂中のイオンの排除時間は, 粒子状イオン交換樹脂のそれに比べ圧倒的に短くなった. (3) 選択係数の小さなフッ化物イオンであっても迅速に吸着し, そのイオン交換帯長さは, 粒子状イオン交換樹脂のそれの約1/3であった. モノリス型多孔質イオン交換樹脂の特異的なイオン交換挙動は, 均一かつ連続的な細孔構造中にイオン交換基が高い割合で導入された新規な構造を反映したものと考えられた.
  • 大西 保志, 福田 徳生, 加藤 正樹, 吉元 昭二
    2005 年 62 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ乳酸 (PLA) 微粒子水分散液と高けん化度のポリビニルアルコール (PVA) 水溶液の混合液を用いた反復凍結解凍法により, 疎水性のPLA含有量がPVAに対して20倍から100倍程度の多量存在しても含水ゲルが得られることを見いだした. 含水ゲルの性状はPVAの配合割合を変化させることによりゴム状弾性体から豆腐状固体のものまで調製できる. 一方, 含水ゲルを室温で乾燥したときの体積収縮率は, PLAの含有率が多いほど低かった. この乾燥ゲルは, 水中への再浸漬により含水ゲルに戻るが, 元の含水ゲルの体積までは復元せず含水率も低下した. また, PLAの含有率が多くなるほど炭化水素などの疎水性溶液も吸収できるようになった. SEMによる観察から, ゲルはPLA粒子の表面をPVAが被覆している多孔構造になっていると推測され, PVAが水素結合などにより物理的に架橋することによってポリ乳酸粒子を内包したゲルとして存在していることが示唆された.
  • 高橋 良彰, 鵜飼 良明, 関 基弘, 松下 裕秀
    2005 年 62 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    アイソタクチックポリプロピレソ (i-PP) とエチレンオクテソゴム (EOR) の重量比で3: 7の混合系の流動下の構造を, 粘弾性測定と流動下の中性子小角散乱測定 (SANS) で検討した. 動的粘弾性測定と静止状態のSANS測定から, この系は220℃までは非相溶系であることが明らかになった. 150と200℃でのずり速度10sec-1までの定常流動粘弾性測定では, ずり速度に比例する, 引き伸ばされた界面由来の第一法線応力差が検出された. 流動下のSANS測定では, 20sec-1までの低ずり速度では引き伸ばされ配向した構造が存在し, 流動停止により分裂すること, 高ずり速度では分裂・微細化した構造の存在が示された. この系は界面張力が低いので, 低いずり速度の流動下では流動による界面の不安定性の抑制効果で引き伸ばされた構造が安定に存在でき, 高ずり速度あるいは流動を停止すると分裂・微細化が起きたと考えられる.
  • 松本 和秋, 平山 忠一, 伊原 博隆, 本里 義明
    2005 年 62 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    プルランから得られた橋かけプルラン球状粒子を基体として, 各種プルラン球状イオン交換体を調製した. これら基体に2-クロロエチルジエチルアミン塩酸塩を反応させたジエチルアミノエチル (DEAE) プルラン, (3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル) トリメチルアンモニウムクロリドを反応させた2-ヒドロキシ-3-トリメチルプロピルアンモニオ (HTMPA) プルラン, トリエタノールアミンとエピクロロヒドリンを反応させた2-ヒドロキシ-3- {2- [ビス (2-ヒドロキシエチル) アミノ] エトキシ} プロピル (ECTEO-LA) プルランを調製した. 得られたアニオン交換体の交換容量はそれぞれ≈2.13, ≈0.78, ≈0.62meq/g, 膨潤度はそれぞれ≈10.0, ≈6.5, ≈8.5cm3/gであった. 一方, これら基体にクロロ酢酸, クロロメタンスルホンナトリウムをそれぞれ反応させ, カルボキシメチル (CM) プルラン, スルポメチル (SM) プルランを調製した. 得られたカチオン交換体の交換容量はそれぞれ≈1.60, ≈1.52meq/g, 膨潤度はそれぞれ≈11.0, ≈5.8cm3/gであった. プルラン球状イオン交換体はタンパク質, ヌクレオチドの分離に利用できることが判明した.
  • 川口 泰広, 板村 陽介, 鬼村 謙二郎, 大石 勉
    2005 年 62 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性向上として, 強い分子間力を利用して凝集エネルギーを増加させることが有効であると考えられ, イオン性分子に作用する静電相互作用の利用を検討した. 具体的には, アクリロニトリル系モノマーを主成分とした熱膨張性マイクロカプセルにおいて, 第二成分として, イオン性モノマーであるアクリル酸やメタクリル酸の共重合および, それらイオン性モノマーと金属塩との相互作用について検討し, 得られた熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性および熱膨張性との関係を考察した. 凝集エネルギー密度 (ecoh) およびガラス転移温度 (Tg) の比較的高いメタクリル酸を共重合させることにより, またさらに, 最適化量の金属塩と相互作用させることにより, 耐熱性の向上を認めた. Na+塩の場合, 中和度82%においてイオン凝集体の形成が確認された. また金属塩種の耐熱性と熱膨張性との関係については, Zn2+添加において耐熱性が高く, かつ熱膨張性も良好な熱膨張性マイクロカプセルが得られた. メタクリル酸 (MAA) のイオン反発による分子鎖の拡大と金属塩におけるイオン架橋構造による分子鎖拡大の抑制とのバランスおよび加熱発泡時のイオン架橋物の解離状態によって熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性や熱膨張性が変化することが示唆された.
  • 神林 信太郎
    2005 年 62 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    錠剤中に薬物が均一に分散しているモノリシック型 (Mo型) 錠剤は, 胃液中で初期バーストによる薬物放出を起こす. これを抑制するためにアルギン酸ナトリウムとメチルグリコールキトサンの混合粉末で薬物層を挟み込んだサンドイッチ型 (Sw型) 錠剤を調製した. モデル薬物にテオフィリン (TH) を用いて, 錠剤構造の違いによる放出挙動を検討した. 錠剤を人工胃液 (pH 1.2) から所定時間後に人工腸液中 (pH 6.8) へ移し替えながら錠剤からのTH放出量を吸光光度法 (271nm) で測定した. 人工胃液から人工腸液へ錠剤を移し替えたとき, 放出速度が急激に上昇する 「絞り出し現象」 が観察された. この放出速度の上昇は, Mo型が1.9倍なのに対し, Sw型では11倍にもなった. 錠剤構造をSw型にすることで, 胃液中での薬物放出率を10%程度にまで効果的に抑制できた.
  • 邱 建輝
    2005 年 62 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2005/01/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本研究では射出成形したポリプロピレン (PP) の流れ方向における内部構造および引張力学特性の変化について調べた. その結果をまとめると, 流動距離の増加につれて, (1) 試料の厚さと幅が減少し, 断面積が小さくなる. (2) スキン, 中間およびコア層の硬さが低下し, ゲートの遠い側の硬さは各層とも最も低い. (3) 結晶化度および分子配向度が低下する. (4) コア層に二次流動層の形成認められ, 流れ方向に向かって, その区域における結晶が大きくなり, 分子配向度では次第に低下する. (5) 上記の内部構造などの変化により試料の引張強度が低下し, 延性特性が上昇する. 以上の結果により, 流れ方向における射出成形した試料の内部構造の変化は材料の力学特性に強い影響を与えることがわかった. 細長い射出成形部品では流動距離が長いため, 特に注意する必要がある.
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