高分子論文集
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62 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • ポリ乳酸“LACEA®”の事業開発を通して
    川島 信之, 松尾 充記, 杉 正浩
    2005 年 62 巻 6 号 p. 233-241
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    植物を原料とするポリ乳酸のような材料は, 温室効果ガスの抑制ならびに化石資源の節約に寄与する. ポリ乳酸の用途は, 包装容器分野を中心として, 農業土木資材分野, コンポスト資材分野などで拡大し, 最近では耐久材分野への展開が試みられている. プラスチックや製品中に含まれる植物由来成分の含有量を植物度と表し, 環境負荷低減の尺度とすることが検討されている. この考え方のもとに, 植物由来の材料と化石資源由来の材料との組合せにより多様な物性を実現し, 用途が拡大すると期待される. 三つの課題 (1) 物性改良と安価供給 (2) コンセプトの明確化と啓発, (3) 京都議定書の目標達成に向けた行政・規制との連携, を達成することにより, 石油由来プラスックから植物由来プラスチックへの代替が加速する.
  • 小島 正章, 池田 裕子
    2005 年 62 巻 6 号 p. 242-250
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    使用済みタイヤの環境に優しいケミカルリサイクルを目的として, 超臨界二酸化炭素溶媒中での加硫天然ゴムの脱硫反応を研究した. 超臨界二酸化炭素を溶媒として, 加硫天然ゴムを脱硫試薬であるジフェニルジスルフィドの存在下, 180℃で処理すると, 加硫天然ゴムの架橋点が切断されることがわかった. 得られた再生ゴムは, 天然ゴムの構造と類似の高cis-イソプレン構造から成ることを13CNMRにより確認した. ゴム用充填剤カーボンブラックやシリカが配合された天然ゴム加硫物においても, 本脱硫反応は良好に進行した. 使用済みのトラックトレッドゴムを本方法にて脱硫反応を行い, 得られた再生ゴムを新ゴムとブレンドして得た再加硫体は, もとの天然ゴム加硫体の90%以上の性能を示した. 架橋イソプレンゴムの超臨界二酸化炭素中での膨潤挙動と二酸化炭素の架橋イソプレンゴム中での拡散係数も求めた. 超臨界二酸化炭素が脱硫試薬であるジフェニルジスルフィドを選択的かつ均一に架橋ゴム内部に導入する役割を果たしたことが, 本脱硫反応が良好に進行した大きな要因であった. 本方法は, 天然ゴム以外の他のジエン系ゴム加硫物のケミカルリサイクルにも有用である.
  • 澤口 孝志, 室賀 嘉夫, 石川 英章, 星 徹, 萩原 俊紀, 矢野 彰一郎
    2005 年 62 巻 6 号 p. 251-260
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    シンジオタクチックポリスチレン (sPS) とポリメタクリル酸メチル (PMMA) の非相溶系ブレンドに対し, 超臨界二酸化炭素流体 (scCO2) 中でsPS基質ヘメタクリル酸メチル (MMA) モノマーを含浸・その場重合させることによって, sPS非晶鎖とPMMA鎖が分子分散したsPS/PMMAブレンドの創製を試みた. ガラス状sPS試料はscCO2処理によってγ晶に変化するが, scCO2ブレンド中でもγ晶は保持された. scCO2ブレンドの透過型電子顕微鏡像および小角X線散乱曲線は結晶相と非晶相が数十nmオーダーで比較的均一に分散した構造が形成されたことを示した. 一方, 示差走査型熱量分析 (DSC) および貯蔵弾性率や損失正接に現れる非晶相中のPMMA鎖とsPS鎖のガラス転移は一つの温度 (約100℃) のみで観察され, しかも, sPSがγ晶からα晶に変化する結晶転移温度 (約190℃) はPMMAの増加とともに連動して低下した. これらの結果は, PMMA鎖がsPS非晶鎖と分子レベル (数Å以上) で相溶化したことによると考えられる.
  • 井上 和彦, 山城 緑, 位地 正年
    2005 年 62 巻 6 号 p. 261-267
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ポリ乳酸を, Diels-Alder反応による熱可逆結合で架橋することにより, 書き換え可能な形状記憶を実現するバイオプラスチックを開発した. ポリ乳酸に結晶部や水素結合を導入して固定相をもたせても優れた形状記憶性は得られなかった. ポリ乳酸とソルビトールから分岐状の末端ヒドロキシポリ乳酸誘導体 (前駆体) を合成し, ジイソシアネート化合物を用いて架橋化させると, 優れた形状記憶性および形状復元性をポリ乳酸に付与できることを確認した. さらに, Diels-Alder反応が可能な熱可逆結合をポリ乳酸に導入して架橋化, すなわち, 上記の前駆体にフラン基を導入することにより末端フラン変性分岐状ポリ乳酸誘導体を合成し, トリスマレイミドで熱可逆架橋させることにより, 優れた形状記憶性が得られ, さらに, 加熱溶融による記憶消去とこれに続く注形・冷却による再書き込みが可能であることを明らかにした.
  • 中谷 英樹, 小林 永幸, 今堀 裕司, 塚本 充郎, 斎藤 秀哉, 平賀 義之
    2005 年 62 巻 6 号 p. 268-274
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    フッ素系ポリマー中の低分子量成分は超臨界CO2によって抽出され, その抽出量は水をエントレーナーとして用いることで増加することが明らかとなった. 低分子量成分の抽出に影響を及ぼす因子としては, CO2密度, CO2流通量, 初期水分濃度があり, 特に, CO2の臨界密度付近以上で抽出が促進される傾向が見られた. 最適条件下では分子量が約1万以下の低分子量成分が抽出され, 精製したポリマーのMw/Mnを1.86から1.16まで下げることができた. 超臨界フルオロホルム, 超臨界フルオロエタンについても同様な抽出実験を試みたところ, 超臨界CO2が最も抽出効果が高いことがわかった.
  • 佐古 猛, 佐橋 良太郎, 藤田 昌弘
    2005 年 62 巻 6 号 p. 275-282
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    連続槽型反応装置を用いて, 超臨界二酸化炭素を原料および反応溶媒として2-メチルオキシランと反応させて, 環状カーボネートの4-メチル-1, 3ージオキソラン-2-オンの連続合成を行ったところ, 80~90℃, 15~20MPa, 反応時間30分で, 反応転化率70%以上, 4-メチル-1, 3-ジオキソラン-2-オンの選択率90%以上という良好な結果が得られた. また連続槽形反応モデルを用いて, 実験データから主反応と副反応の速度定数を決定し, それらの温度, 圧力, 触媒量依存性を明らかにした. さらに反応後の, 生成物と未反応物を溶解した超臨界二酸化炭素中から, 温度および圧力を下げて目的生成物の4-メチル-1, 3-ジオキソラン-2-オンのみを選択的に凝縮させる分離・精製法を検討した. その結果, 反応器から留出した80~90℃, 15~20MPaの超臨界二酸化炭素を35~40℃, 4~6MPaに冷却, 減圧することにより, 純度90%以上の4-メチル-1, 3-ジオキソラン-2-オンを70%以上の回収率で得られることが明らかになった.
  • 青柳 充, 舩岡 正光
    2005 年 62 巻 6 号 p. 283-290
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    溶媒可溶で分子設計が可能な森林資源由来の天然リグニン誘導体ポリマーであるリグノフェノール (LP) とナノ多孔質酸化チタン電極を組合せた光電変換デバイスは, 可視光照射下, 安定した光電変換能力を示した. UV-vis分光の結果, 各LPはそれぞれ可視光領域で固有の波長を吸収し, ヒドロキシル基が重要な役割を果たした. LP二次誘導体は可視光吸収が大幅に増大した. LPは光照射により一重項励起し, 蛍光を発した. 分子内に複雑な内部変換などの緩和機構を有し, 導入フェノールによっては項間交差も見られた. CV分析の結果, 比較的安定なカチオンラジカルを生じる構造を有し, 電荷分離が可能な物質であった. さまざまなLPを用いて比較した結果, LP/酸化チタン錯体が重要な電子注入ルートであり, ヒドロキシル基以外にも1, 1-ビス (アリル) プロパン型ユニットが重要な相互作用をしていることが示唆された. ヒノキリグノ-p-クレゾール二次誘導体-I (HKLC413) を用いたセルで0.5V, 4.0mAcm-2, η=0.8%の光電変換能力を示した. 天然に豊富に存在する未利用炭素資源誘導体ポリマーと酸化チタンを組合せることで光励起による電荷分離が生じ, 色素増感太陽電池として機能した.
  • 廣瀬 美紀子, 高橋 誠, 森 憲一, 荻野 賢司
    2005 年 62 巻 6 号 p. 291-296
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    超臨界二酸化炭素を希釈剤として用いて直接HPLCカラム内に多孔性高分子を合成することで, モノリス型のHPLCカラムを作製した. モノマーとしてstyrene (St), methyl methacrylate (MMA), 架橋剤にはdivinylbenzene (DVB), ethylene dimethacrylate (EDMA) をそれぞれ用いて, モノマー濃度, CO2圧力, 重合時間などを変えて重合を行った. 細孔の特性, 充填の均一性は, 溶離液にTHFを用いた場合の, tolueneおよび標準ポリスチレンの溶出挙動から評価した. St-DVB系では, 体積排除機構で試料の分離を行うための細孔を有するモノリスカラムを, 重合条件を選ぶことで作製することができた. 一方, MMA-EDMA系では, 溶出時間の分子量依存性が小さかったが, 均一性が高いカラムが得られた. CO2に親和性の高いフッ素化アルキル基を有するメタクリル酸エステルを添加すると, 一次粒子の粒径が小さくなり, 理論段数も向上した. 重合中に温度を変える2段階重合により, 体積排除機構による分離に必要な細孔が形成することがわかった.
  • 冨田 耕右, 白浜 博幸, 中島 知宏, 上野 阿弓
    2005 年 62 巻 6 号 p. 297-300
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    Copolyesters of L-lactide (LA) were synthesized from LA and caprolactone (CL) or 4-t-butylcaprolactone (48CL). Their biodegradability against a thermophile capable of degrading poly (L-lactide) was investigated. The strain grew in a medium containing copolyesters, accompanied by decreases in their residual weight and molecular weight and an increase in their enthalpies of fusion, which showed the progress of their biodegradation. The copolymer including 4BCL was suggested to be superior in biodegradability to that of copolymer including CL, contrary to the former's inertia to such an enzyme as proteinase K.
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