高分子論文集
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63 巻, 1 号
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総合論文
  • 徳田 浩之, 田畑 誠一郎, 関 志朗, 渡邉 正義
    2006 年 63 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    ポリエーテル系固体電解質を構成するポリエーテルマトリックスおよびリチウム塩の分子 (イオン) 設計により, 高分子中での高いリチウムイオン伝導性と電極/電解質界面での迅速な電子移動反応の実現を図った. 高分岐型ポリエーテルを用いた高分子固体電解質では, 分岐鎖の速い分子運動とイオン輸送がシンクロナイズして起きるために室温で10-4Scm-1以上の高いイオン伝導性が実現した. ポリエーテル骨格へのルイス酸性ホウ酸エステルの固定化や, 高解離性の高分子リチウム塩と分岐型ポリエーテルとの相溶化は, ポリエーテル中での選択的リチウムイオン輸送を可能にした. 分岐構造の導入は金属リチウム負極およびLiCoO2正極と高分子固体電解質界面の電子移動反応にも影響を及ぼし, 分岐鎖密度の増大によって電荷移動抵抗が低下した. ガラス転移温度が低くかつ高解離性のリチウム塩をポリエーテル中に高濃度導入することによる, 高いイオン導電率と迅速な界面電子移動反応を両立できる電解質設計を実証し, リチウムイオン液体を用いた新しい高分子固体電解質を提案した.
  • 氏家 誠司, 田中 優, 矢野 由美, 森 章, 飯村 一賀
    2006 年 63 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    さまざまなイオン化構造を有する液晶システムが合成され, それらの熱的性質および液晶性が調べられた. 非液晶物質どうしのプロトン移動反応によって, 液晶相を形成するイオン性物質が得られた. また, 棒状メソゲン (液晶形成原子団) の構造単位としてイオン基を導入したイオン性液晶も合成された. これらのイオン性液晶は, イオン相互作用とメソゲン基間の相互作用によって, 熱安定性が向上した液晶配向を形成した. 低分子イオン性液晶は, ヨウ化物イオンを対イオンとする場合, イオン相互作用によって, 高分子様の明瞭なガラス転移を示し, 液晶相の分子配向構造をもった液晶ガラスを形成した. 水素結合性高分子鎖をイオン性液晶の親水性副層内に可溶化することによって, 液晶形成能および液晶配向の熱安定性を向上させた. 非液晶性のイオン性メソゲンモノマーは, バルク重合によって液晶相を発現し, 基板との相互作用に対応して, 垂直配向あるいは水平配向をもつ高分子配向薄膜を形成した.
  • 早水 紀久子
    2006 年 63 巻 1 号 p. 19-30
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    リチウムイオンをドープしたポリエチレンオキサイド (PEO) 系高分子電解質のCH2CH2O鎖とイオンの運動性を, 分子量の小さなグライム系液体から架橋した固体PEO電解質までにわたって多核種NMR法で研究した. T1測定から局所的なPEO鎖のセグメント運動とリチウムのホッピング運動の速度を分子量と構造の異なるPEO電解質について明らかにした. パルス磁場勾配法 (PGSE-NMR) でPEO鎖, リチウムイオン, アニオンの拡散挙動を研究した. グライム系では自由拡散であるが, 分子量が大きくなると拡散は束縛を受けた複雑な挙動を示すことがわかった. NMRから求めたセグメント運動の速度はマクロなガラス転移温度と相関する. またアニオンの拡散係数は拡散時間に依存するが時間が長い平衡時の値とイオン伝導度が相関する.
  • 川野 竜司, 徳田 浩之, 片伯部 貫, 中本 博文, 小久保 尚, 今林 慎一郎, 渡邉 正義
    2006 年 63 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    イオン液体はイオンのみから構成される液体で, 水, 有機溶媒に並ぶ第三の溶媒として近年注目を浴びてきている. 本報では, イオン液体の基礎的な物性のうち, そのイオン輸送についてイオン導電率測定および自己拡散係数測定から検討を行った. その知見を元に特異的な高速電荷輸送が起こる2種類の機能性イオン液体の創製を図った. 一方はプロトン伝導性イオン液体である. 酸性水溶液中でのプロトンホッピングと同じような電荷輸送現象がイオン液体中でも観察でき, 非水系のプロトン伝導体として燃料電池の電解質への展開が可能であった. 他方は電子輸送性イオン液体である. ヨウ素レドックス対 (I-/I3-) を対アニオンとして含むイオン液体は, 通常の物理拡散と共役して交換反応を伴う高速な電子輸送を起こし, 色素増感太陽電池の電解質へと展開できた. さらにイオン液体中でモノマーを重合することによって高分子ゲルを得た. このゲルはイオン液体の不揮発性, 耐熱性を反映し, 開放条件下, 高温下でもその特性を保持しうる新しいゲルであり「イオンゲル」と命名した. イオンゲル中におけるイオン輸送についても検討を行い, ポリエーテル系固体電解質と比較することによりその輸送現象の特徴を明らかにした.
  • 齋藤 唯理亜
    2006 年 63 巻 1 号 p. 41-53
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    イオン伝導機構の解明に基づいたリチウムイオン電解質材料の設計を目指して, NMR分光技術を基本とするダイナミクス, スタティクス物性値を測定解析する技術を確立した. 新たに開発した磁場と電場とを組合せた電場印加型磁場勾配NMR測定とモデル理論とを融合することにより, 電解質中のイオン種ごとの易動度, 塩の解離度, イオンと媒体との相互作用力などを個別に求めることが可能になった. これらを指標として, (1) 解離を促しアニオン易動度を抑制する構造をもつポリマーゲル電解質, (2) 分子配向性をもつ液晶電解質など特徴的な構造をもつ電解質設計を行い, 各構造の可能性を検討した. また, (3) セパレータ材料に対してイオン拡散測定から孔径分布の評価を行い, 多孔体材料設計のための定量的指標を示した. これらの成果は, 伝導機構の知見をもとに, ナノレベルで導電体材料の設計を行う新たなアプローチといえる.
  • 錦谷 禎範, 南 昌樹, 朝野 剛, 久保 貴哉
    2006 年 63 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    PVDF-HFP (poly (vinylidenefluoride-co-hexafluoropropylene)) 誘導体をマトリックスポリマーとしたゲル状イオン伝導性ポリマーを用いて, 色素増感太陽電池の固体化検討を行った. そのなかで, 基礎検討項目として, 電流-電圧特性の等価回路解析を行った. その結果, TiO2からI3-への逆電子移動のみでなく, 色素酸化体への逆電子移動も考慮することで, 電流と電圧の関係を良好にシミュレーションできることが明らかになった. また, 電極間距離を20μm以下にすることで, 光電変換効率が液体電解質なみの良好な色素増感太陽電池を作製できた. さらに, ジアミン誘導体を架橋剤とした, より耐熱性の高い化学架橋型PVDF-HFP系PSEを用いて, 色素増感太陽電池の固体化を行った. そのセルの光電変換効率は, AM1.5Gで4.8%であった.
一般論文
ノート
  • ―バイオカソード用触媒としての利用を目指して
    松村 洋寿, 中村 暢文, 養王田 正文, 大野 弘幸
    2006 年 63 巻 1 号 p. 68-70
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    Cytochrome P450s are heme-thiolate enzymes found in organisms from all domains of life. They are involved in a wide variety of biological oxidation reactions. We reported overexpression and purification of cytochrome P450 from a thermoacidophilic crenarchaeon, Sulfolobus tokodaii strain 7 (P450st), previously. In this study, P450st has been modified with poly (ethylene oxide) (PEO) to dissolve in PEO200. The electron transfer reaction between PEO2000 modified P450st (PEO2000-P450st) and a plastic formed carbon electrode in PEO200 containing 0.5 M KCl was investigated. A clear redox couple was observed at -114 mV vs. Ag. This was assigned to the FeII/FeIII. In PEO200 containing 0.5 M KBr, the redox potential for PEO2000-P450st was 52 mV vs. Ag wire. The results show that anions are important to control the redox potential for cytochrome P450.
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