高分子論文集
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63 巻, 10 号
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総合論文
  • 古賀 裕二, 上野 景太, 松原 公紀
    2006 年 63 巻 10 号 p. 649-655
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    非常に簡便な方法により発光性イリジウム錯体ユニットを担持させたメタロポリマーを合成した. その発光性錯体ユニットは2,2'-biphenyleneによってシクロメタル化されており, 前駆錯体[Ir (III) (cod) (biph) Cl]2 (codとは1,5-cyclooctadiene, biphとはbiphenyl-2,2'-diylを示す) により, 4-styryl-diphenylphosphine (4-SDP) とmethyl methacrylate (MMA) とのコポリマーに担持させることができた. それは, イリジウム原子とリン原子よりなるP-Ir-P結合により高度に架橋されている. このメタロポリマーのイリジウム含量は1gあたり0.06~0.6mmolであり, 固体状態において, 350nmの励起光により597nmの赤色発光が観測された. その発光強度はメタロポリマー中のIr含量が増加するとともに増大し, イリジウム含量が0.2mmol/gを超えると減少していった. さらに, その発光強度は高分子配位子の分子量に依存した.
一般論文
  • 佐藤 守之, 永島 敬介, 山口 勲
    2006 年 63 巻 10 号 p. 656-662
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    内部に2,5-ジフェニル-1,3,4-オキサジアゾール単位をもつ新しいA2+B3型ハイパーブランチ (HB) ポリマーをWilliamsonエーテル合成反応によって合成後, 末端にカルバゾール環 (Cz) を導入し, 得られた電荷輸送性HBポリマーの光学的および電気化学的性質を調べた. 生成HBポリマーの構造は, FT-IRおよび1H NMRスペクトルにより確認した. A2仕込みモル比が過剰の条件下で, 高分子量, 高分岐度 (DB) (98%以上) でかつ, 非晶性が高く, 有機溶媒に対する溶解性が良好なHBポリマーが得られた. これらのHBポリマーは, クロロホルム中およびフィルム状態でのUV-visおよび蛍光スペクトルの測定の結果, UV吸収および青紫色の蛍光発光に基づく最大波長を示すことが確認された. 電気化学的性質をCV測定により調べた結果, 還元側だけに可逆的なピークが観測された. 蛍光の量子収率 (Φ) は, B3モル比が過剰なポリマーで高くなる傾向が見られた.
  • 高木 幸治, 垣内 宏樹, 鈴木 将人
    2006 年 63 巻 10 号 p. 663-669
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    オリゴフルオレンとジメチルシランの両ユニットを交互に含むポリマー (3F-DMSi, 5F-DMSi, 9F-DMSi) を鈴木カップリングにより合成した. GPC測定から, ポリマーの数平均分子量は約14000から27000 (ポリスチレン換算) であり, NMRスペクトルから, ケイ素が仕込み通りの割合で導入できていることが確認できた. ポリ (9,9-ジヘキシル-2,7-フルオレン) (PF) と上記ポリマーについて, クロロホルム溶液中で光学スペクトルを測定した結果, ケイ素でπ共役を切断したことにより, いずれのポリマーもPFと比較して極大吸収, 発光波長共にブルーシフトした. 3F-DMSiの蛍光スペクトルでは, 419nmにσ**相互作用に起因した大きなショルダーピークが観測され, 高い蛍光量子収率 (0.92) が得られた. スピンコート薄膜の蛍光スペクトルを測定した結果, 3F-DMSiでは, 5F-DMSiや9F-DMSiと異なり, 折れ曲がった主鎖により主鎖間でのπスタッキングが効果的に抑制され, アニーリング処理の有無にかかわらず, 安定したスペクトルを与えた. さらに, ポリマーの電気化学特性をCV測定により評価した結果, σ**相互作用のため, 3F-DMSiが最も低いLUMOのエネルギー準位をもつことがわかった.
  • 平本 昌宏, 團野 まり, 横山 正明
    2006 年 63 巻 10 号 p. 670-674
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    直立超格子を用いたナノ構造設計のコンセプトに基づいて, 2.0nmまでの設計を行ったELデバイスを作製した. 電荷分離型と井戸型エネルギー構造を作製し, 2.0nm幅の直立超格子において, 電子-ホールの空間的分離と閉じ込めを実験的に確認した. 今回の技術は, 多種多様な材料からなる設計されたナノ構造をもつ新しいオプトエレクトロニクスデバイスの作製に応用できる.
  • 古酒 慎也, 丸山 純夫, 雀部 博之, 安達 千波矢
    2006 年 63 巻 10 号 p. 675-680
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    本報では, 可溶性トリス (8-キノリノレート) アルミニウム含有デンドリマーの発光特性について報告する. トリス (8-キノリノレート) アルミニウム (Alq3) およびその誘導体は有機ELデバイスにおいて代表的な電荷輸送材料および発光材料として知られているが, 溶解性の低さから真空蒸着法を代表とする乾式法においてのみ用いられてきた. 今回報告するAlq3含有デンドリマーはデンドロン部に可溶性に富む分子骨格を有するため, 塩化メチレンなどの凡用有機溶媒に可溶である特徴を有する. 本研究では, 2種類のデンドリマーおよびデンドリマーを構成するデンドロンおよびコア単体 (AlClq3) について, 希薄溶液中での吸収, PLスペクトルおよび発光寿命を測定した. また, デンドリマーをポリメタクリル酸メチル (PMMA) 中に分散させたスピンコート膜と単独スピンコート膜においても同様な測定を行った. これらの光学特性から発光部位のπ共役系を帰属し, π共役系はAlq3部分からデンドリマー全体には広がらず, デンドロン部からコア部のキノリン配位子部分に局在していることが示された. また, デンドリマーは固体薄膜においてΦPL=20~40%の比較的高いPL量子効率を示したものの, ELデバイスではΦEL~10-2%のEL量子効率に留まった.
  • 金 全健, 梶井 博武, 大森 裕
    2006 年 63 巻 10 号 p. 681-685
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    フッ化セシウム (CsF) とマグネシウム銀合金 (MgAg) を陰極構成にもつ色素分散型の高分子系有機EL素子の作製と特性評価を行い, 有機層上のCsFとMgAg界面が及ぼす電子注入への影響について検討を行った. 有機層上に島状のCsFとMgAgによる共存層が形成することで, 効率的な電子注入が得られるとの知見を得た. また, 有機層上のCsとCsFの大気曝による影響が異なること, CsあるいはCsFとMgAgの積層順序が及ぼす素子特性への影響が異なることからCsとCsFが及ぼす有機層への電子注入の効果が異なることが示唆された. これらの結果から, CsFによる電子注入特性の改善の機構として, CsFから解離したCsの効果よりCsF自体の効果が大きく影響して効率的な電子注入に寄与しているものと考えられる.
  • 遠藤 礼隆, Jason Brooks, Julie J. Brown, 雀部 博之, 安達 千波矢
    2006 年 63 巻 10 号 p. 686-690
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    筆者らは, 青色リン光材料をゲスト分子として用いた有機EL素子において, 高効率青色発光を得るためにπ共役系の短いシロキサン化合物であるHexaphenylcyclotri siloxane (DPSiO3) をホスト材料として試みた. この材料をEPA溶液に溶解し, T=77Kにおいてリン光スペクトルを測定したところ, DPSiO3のリン光スペクトルはベンゼンのリン光スペクトルとほぼ同じ波長領域 (λonset~350nm) に観測され, これらの化合物は本質的にベンゼン環にπ電子系が局在していることが示唆された. Iridium (III) bis (4,6-di-fluorophenyl) -pyridinato-N, C2) picolinate (FIrpic) をゲスト分子としたEL素子において, DPSiO3をホストとした素子では最大ηext=11.1%の外部EL量子効率を得ることができた.
  • 関 成之, 植田 兼司, 坪川 克秀, 近藤 剛史, 王 美涵, 内田 孝幸, 大塚 正男, 澤田 豊
    2006 年 63 巻 10 号 p. 691-695
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    本研究では独自のスプレーCVD法 (化学的成膜法の一種) でガラス基板に成膜したITO陽極上に, 発光層としてpoly (9-vinylcarbazole) (PVCz), 2,5-di (1-naphthyl) -1,3,4-oxadiazole (BND), 5,6,11,12-tetraphenyltetracene (Rubrene) および4- (dicyanomethylene) -2-t-butyl-6- (1,1,7,7-tetramethyljulolidyl-9-enyl) -4H-pyran (DCJTB) を用いた色素分散型赤色高分子有機EL素子を作製した. Rubreneを発光アシストドーパントに用いることで, DCJTBによるオレンジ色の発光 (最大発光輝度 : 約400cd/m2) を得ることができた. 発光開始電圧は6.5Vであった.
  • 高山 俊雄, 北村 雅季, 小林 恭, 荒川 泰彦, 工藤 一秋
    2006 年 63 巻 10 号 p. 696-703
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    電子輸送性を示すトリス (8-ヒドロキシキノリナト) アルミニウム (Alq3) 部位を側鎖にもつホモポリメタクリラートを合成し, それを用いた有機エレクトロルミネッセンス (EL) 素子の作製・評価を行った. 高分子錯体の配位子交換による架橋・不溶化の抑制を意図して, 7位に2級アルキル基を有する8-ヒドロキシキノリン (8-HQ) 類を設計・合成するとともに, それらをメタクリラートモノマーへと誘導してラジカル重合により高分子配位子を得た. これらの配位子を組み合せていくつかの側鎖Alq3型高分子錯体を合成し, 一部の錯体が可溶性を示すことを見いだした. 可溶性高分子錯体をポリビニルカルバゾールと組み合せて二層型の高分子EL素子を作製し評価を行ったところ, より小さい7位アルキル基を有する8-HQ誘導体を配位子とする高分子錯体を用いた場合に, より高い発光効率を与えることがわかった.
ノート
  • 山田 勝実, 占部 茂治, 川村 仁志, 内田 孝幸, 大塚 正男
    2006 年 63 巻 10 号 p. 704-706
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/09/21
    ジャーナル フリー
    Polyfluorenes have emerged as the most attractive blue-green emitting polymers due to their high efficiency and good thermal stability. It is well known, however, that strong interchain interactions, e.g. excimer formation, in these polymers can lead to luminescence quenching and color change. To improve the color stability, a copolymer has been prepared by coupling of binaphthyl with dialkyl fluorene. Electroluminescence devices were fabricated using the copolymer as a light-emitting layer, and their opto-electric characteristics were evaluated and compared with a device using the homopolymer. Virtually no difference was found in the photoluminescence spectrum of the copolymer film before and after annealing process, indicating improved thermal stability by introducing binaphthyl into the polymer chain. The linearly polarized electroluminescence was observed from the device using the copolymer even without rubbing the substrate.
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