高分子論文集
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64 巻, 1 号
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総合論文
  • 金井 俊光, 澤田 勉, 下村 政嗣, 北村 健二
    2007 年 64 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/27
    ジャーナル フリー
    粒径がサブミクロン程度のコロイド微粒子は,粒子間の静電的相互作用が大きくなると,分散媒中で自己組織的に三次元周期構造をとるようになる.この状態はコロイド結晶と呼ばれており,近年,フォトニック結晶への応用から注目を集めている.コロイド結晶は,多結晶体は容易に作製できるが,応用の観点から単結晶作製技術の開発が切望されている.本報では,せん断配向法により cm サイズの大面積領域で光学特性の優れたコロイド結晶を作製できることを報告する.コロイド結晶をエアーパルスを駆動力として平板状のキャピラリーセル内で流動させる.ある一定圧力以上で流動させると,セル全面に均一な単一ドメインを得ることができる.イメージング分光測定や透過コッセル解析から流動配向試料は大面積で均一で,単結晶性の高い結晶組織であることが支持された.また流動配向コロイド結晶では結晶表面からの二次元回折が検出され,これを利用すると格子定数を精度良く測定できることもわかった.
  • 畠山 士, 西尾 広介, 中村 光裕, 坂本 聡, 加部 泰明, 和田 忠士, 半田 宏
    2007 年 64 巻 1 号 p. 9-20
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/27
    ジャーナル フリー
    生体分子のアフィニティ精製は生命現象の分離レベルでの解明に不可欠であり,長年にわたりゲルカラム法が用いられてきた.しかしこの方法は高純度のものを得るのが非常に困難であり,純度を高めるために他の方法の併用が不可欠であること,精製で得られるタンパク質濃度が低いこと,精製にかなりの時間を有するなどの問題点が挙げられていた.そこで筆者らは孔をもたず,比表面積が非常に大きいサブミクロンサイズの微粒子を設計し,DNA やペプチド,タンパク質の他,薬剤などの生体にはない物質を固定化して,これらに結合するタンパク質の同定を長年にわたって研究してきた.本報ではこれらのアフィニティ精製に関する特筆すべき結果に関して述べる.また精製操作をさらに簡便化するために,磁石で回収可能な芯に強磁性体のナノフェライト微粒子を含有した磁性体含有高分子微粒子を作製し,それを用いたアフィニティ精製についても報告する.
  • 毛利 恵美子, 吉永 耕二
    2007 年 64 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/27
    ジャーナル フリー
    コロイド粒子が形成する配列構造を材料として用いることを目指し,高分子を粒子表面に修飾した微粒子からなるコロイド結晶を包含する薄膜,および高分子修飾微粒子の単粒子膜を作製した.薄膜については,まず有機溶媒中で高分子修飾シリカ粒子のコロイド結晶を形成させ,その後溶媒交換などにより架橋性モノマーを導入し,2 段階にわたって重合することによりコロイド結晶を包含するフィルムを得た.この際,開始剤・架橋剤濃度,セルの厚みなどの固定化の際の重合条件によって重合前後でのコロイド結晶の配列構造の保持状態が異なることが明らかになった.最適条件下において,非常に高い硬度を有するコロイド結晶が得られた.一方,単粒子膜の作製においては,気水界面の高い表面エネルギーを利用し,高分子修飾微粒子を気水界面に展開することにより単粒子膜を得た.高分子鎖のグラフト密度および重合度は,単粒子膜の形成状況に大きく影響し,特に重合度が高い場合に均一な粒子膜が得られた.
一般論文
  • 石井 昌彦, 原田 雅史, 月ヶ瀬 あずさ, 中村 浩
    2007 年 64 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/27
    ジャーナル フリー
    単分散微粒子が三次元的に規則配列したオパール型コロイド結晶を作製するための単分散微粒子として,シリカ微粒子と並んでポリスチレン微粒子がよく用いられる.しかし,ポリスチレン微粒子を用いた場合にはクラックの発生が多いとの指摘もある.本報では,数 cm2 オーダーの面積にわたって面内での結晶方位が揃ったオパール型コロイド結晶の作製が可能な流体セルを用いて,ポリスチレン微粒子を用いた場合のコロイド結晶形成過程と作製されたコロイド結晶の構造を,シリカ微粒子の場合との比較において調べた.角度分解反射スペクトル測定などの分光的手法により,異なる光学特性を示す三段階の乾燥過程を経てコロイド結晶が形成されること,シリカ微粒子の場合と異なりポリスチレン微粒子の場合には,最後の乾燥段階において約 3%の粒子径収縮が生じることが明らかになった.この粒子径収縮のため,ポリスチレン微粒子からなるコロイド結晶では,シリカ微粒子からなるものに比べて,クラックの発生が多くなるものと考察した.
  • 清水 秀信, 川島 由香, 和田 理征, 岡部 勝
    2007 年 64 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/27
    ジャーナル フリー
    スチレン(St)とトリブチル-4-ビニルベンジルホスホニウムクロライド(VBPC)をソープフリー乳化共重合することにより,ホスホニウム基を有するポリスチレン粒子の作製を試みた.本報では,水溶性モノマーである VBPC の仕込み量が,重合速度や粒子径に及ぼす影響について詳細な検討を行った.St の転化率を重量法により求め,重合速度を算出したところ,St に対して VBPC を 0.1 wt%添加しただけで,重合速度は 5.7 倍になった.しかし,これ以上 VBPC の仕込み量を増やしても,重合速度の促進はほとんど認められなかった.次に,得られた粒子の大きさを透過型電子顕微鏡により評価したところ,VBPC の仕込み量が増加するに伴い,粒子径は減少するという結果が得られた.これは,水溶性モノマーである VBPC が粒子核の数を増加させたためであると考えられる.また,重合期間中の粒子の数は,ほぼ一定であった.粒子に導入されたホスホニウム基の量は,VBPC の仕込み量の増加に伴い直線的に増大する傾向が認められた.
  • 豊玉 彰子, 澤田 勉, 山中 淳平, 北村 健二
    2007 年 64 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/27
    ジャーナル フリー
    粒径 198 nm の荷電高分子ラテックス/水分散液(濃度 10 vol%)を用い,せん断配向法により作製した,大面積の薄膜型コロイド単結晶を,結晶構造を保持したまま,アクリルアミド系高分子ゲルにより固定した.本実験に用いたゲルに対してエタノールは貧溶媒であり,エタノール濃度(CE)に応じてゲルマトリックスは膨潤・収縮する.得られたゲル固定結晶を,種々の CE 条件に保ち,ゲルサイズ変化を通して,結晶の Bragg 回折波長を制御した.CE が 100%では,溶媒は試料中にほとんど存在しないことが示された.本手法により,近赤外域から可視光領域(およそ 950~550 nm)にわたる,可逆的な回折波長チューニングが可能であった.ゲルサイズ変化に伴い,結晶中の粒子,ゲル網目濃度も変化するため,ゲル固定結晶の平均屈折率は変化する.この効果を考慮して,回折波長から求めた格子面間隔はゲルサイズに比例した.すなわち,本薄膜ゲルの変形が等方的であることが確認された.
  • 酒井 崇匡, 竹岡 敬和, 関 隆広, 吉田 亮
    2007 年 64 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/27
    ジャーナル フリー
    二段階鋳型重合法を応用した新規な方法により 10 μm 程度のゲル微粒子を二次元配列させることに成功した.第一に,粒径 10 μm のシリカ微粒子のコロイド結晶を溶媒蒸発法によって作製した.この際 O リングを用いることによって,単層で不整の少ない結晶を得ることができた.このコロイド結晶は多孔質ポリスチレンフィルムを作製するための第一の鋳型として用いられた.結晶構造を型取ったポリマーフィルムを第二の鋳型として用い,その孔内においてゲルを作製した.その後,周りのポリマーフィルムを溶かすことによって温度応答性ゲル微粒子の二次元コロイド結晶が得られた.この新規な微粒子集積体作製法はさまざまな種類の微粒子集積体を作製することができる画期的な方法である.この方法によって作製されたゲル微粒子二次元コロイド結晶は機能性表面として光学分野,バイオマテリアル分野などへのさまざまな応用が期待される.
  • 舘 秀樹, 浅尾 勝哉, 山元 和彦, 吉岡 弥生
    2007 年 64 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/27
    ジャーナル フリー
    ポリイミドは耐熱性・電気絶縁性に優れるスーパーエンプラの一つである.その優れた特性からポリイミドに関する研究は数多くなされているが,ポリイミド微粒子に関する報告は数えるほどしかない.これまでは酸無水物とジアミンから作製されるポリイミド微粒子がほとんどであった.一般に酸無水物とイソシアネートは触媒存在下,比較的低温で七員環中間体を経由して,脱二酸化炭素を起こすことでイミド環を与えることが知られている.この反応を応用してアミド酸中間体を経由しないポリイミドが作製されている.本研究は酸無水物とイソシアネートの反応を用いて,ポリイミド微粒子ならびに多孔性ポリイミド微粒子の作製を行った.その結果を報告する.
  • 石井 崇之, 二瓶 栄輔, 川口 春馬
    2007 年 64 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/27
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン粒子,あるいはスチレン-アクリル酸エチル共重合体粒子をシード粒子としてアニリンを酸化シード重合することにより,ポリアニリンをシェル層とするポリアニリン複合粒子を作製した.シード粒子の種類,酸とアニリンの比率を変化させることにより,重合速度と吸着速度のバランスを変化させることができ,それにより,ポリアニリン複合粒子の構造を,平滑な表面をもつコア-シェル構造からラズベリー構造まで変化させること,さらには導電性を変化させることができた.ポリアニリン複合粒子分散液に硝酸銀を加えると,銀イオンが自動的に還元され銀ナノ粒子が複合粒子上に析出した.得られた銀ナノ粒子担持ポリアニリン複合粒子は,水中に安定に分散し,還元反応触媒として働き,反応後媒体中から簡単に回収される特長を有する.
  • 川口 正剛, 伊奈 孝昭, 百瀬 俊瑛, 菊地 武紀, 小長谷 龍, 菊地 守也, 長井 勝利
    2007 年 64 巻 1 号 p. 62-73
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/27
    ジャーナル フリー
    不揮発性・非極性溶媒であるシリコーンオイル中,屈折率の高い結晶性ビニルモノマーである 2-ビニルナフタレン(2-VNp)とポリジメチルシロキサンマクロモノマー(PDMS-MA)との分散共重合を行うことによって,0.4~1.7 μm サイズの比較的単分散なポリ 2-ビニルナフタレン(PVNp)微粒子(n=1.68)を合成した.さまざまな重合条件下,たとえば,開始剤の種類や濃度,マクロモノマーおよびモノマー濃度,重合温度における分散共重合について詳細に検討を行い,微粒子径や重合率に及ぼす効果を検討した.その結果,開始剤として過酸化ラウロイルを用い,重合温度 65℃,仕込みモノマー濃度が高い場合,高重合率(~90%)で単分散な微粒子が得られることが見いだされた.また,微粒子直径(d)は仕込みマクロモノマー濃度[PDMS-MA]の増加とともに減少し,d ∝[PDMS-MA]-0.52 の依存性が得られた.これは以前に報告したマクロモノマーを用いた分散共重合の理論式と良く対応する結果であり,PVNp 微粒子径がマクロモノマー濃度によって制御可能であることを示した.PVNp 微粒子分散液の反射率は同濃度および同粒子径サイズのポリスチレン(PST)微粒子のそれに比べおよそ 5%程度高く,高い反射率あるいは隠ぺい性を示した.PVNp 微粒子と黒色微粒子を含んだ分散液の液セル中での電場応答性は高い白黒反転コントラストを示し,合成した微粒子は非泳動の白色微粒子として高いポテンシャルを有していることが明らかとなった.
ノート
  • 白石 幸英, 林 美帆, 戸嶋 直樹
    2007 年 64 巻 1 号 p. 74-76
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/27
    ジャーナル フリー
    Interests in colloidal dispersions of nanoscopic materials and their application to catalyses have greatly stimulated research on metal nanoparticles. Stabilizers, often used to prevent metal nanoparticles from aggregation, can also promote some special properties of metal nanoparticles. Cyclodextrins (CyD) are known to form inclusion complexes with organic compounds in solution. Palladium nanoparticles can be well stabilized not by CyD, but by poly(β-cyclodextrin) (PCyD). PCyD-stabilized Pd nanoparticles, prepared by refluxing an alcohol/water solution of palladium acetate in the presence of PCyD, act as highly active catalysts for hydrogenation of olefins. The catalytic activity for 10-undecenoic acid was higher than that for 2-undecenoic acid, suggesting a steric effect on the catalytic activity due to inclusion complex formation of Pd nanoparticle-containing PCyD with the substrates. A similar effect was observed for 4- and 3-vinylbenzoic acids.
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