高分子論文集
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64 巻, 10 号
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総合論文
  • 竹内 大介, 朴 世訓, 岡田 健史, 松浦 龍一, 小坂田 耕太郎
    2007 年 64 巻 10 号 p. 597-606
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル フリー
    シクロオレフィンポリマーは高い透明性,耐熱性を有することから注目を集めている.本報では,パラジウムをはじめとする後期遷移金属錯体触媒を用いると,ジエンの環化重合が円滑に進行し,主鎖に環構造をもつ高分子生成物の立体構造を精密に制御できることを見いだした.パラジウム錯体触媒によってさまざまな官能基を有するジエンの環化重合が進行した.得られたポリマーの 1,2-二置換シクロペンタン骨格は定量的にトランスに制御されていた.ジエンとエチレンや α-オレフィンとの共重合も可能であり,この場合にも環化は定量的におきた.7-位にアルキル鎖を有する 1,6-ヘプタジエンの反応に同様のパラジウム錯体触媒を用いると,新しい環化—チェーンウォーキング型の重合が進行し,トランス-1,2-二置換シクロペンタン環がオリゴエチレン鎖で連結されたポリマーが得られた.鉄錯体やコバルト錯体を用いると,無置換の1,6-ジエンの環化重合が進行し,1,2-二置換シクロペンタン骨格を有するポリマーが得られた.鉄錯体を用いた場合には五員環の立体構造はシス,コバルト錯体を用いた場合にはトランスに制御されている.
  • 大崎 基史, 高島 義徳, 山口 浩靖, 原田 明
    2007 年 64 巻 10 号 p. 607-616
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル フリー
    シクロデキストリン(CD)と環状エステル(ラクトン,ラクチド)を混合し,加熱することで,助触媒や溶媒なしにポリエステル,ポリラクチドが生成することを見いだした.各 CD を用いた際のポリマーの収率は,β-ブチロラクトンに対して α-CD≌β-CD≫γ-CD>(CD 無添加)の順に高い値を示した.一方,δ-バレロラクトンに対しては,β-CD>γ-CD≫α-CD>(CD 無添加)の順となり,CD の環状エステルに対する重合活性は CD の空孔の大きさとモノマーの構造に依存していた.β-CD と強く相互作用するアダマンタンを用いたところ,β-CD は環状エステルに対して重合活性を示さなかった.このことから,CD がモノマーを空孔内部に取り込むことによって重合がおこっていることがわかった.FT-IR 測定より,空孔に取り込まれたラクトンは,CD のヒドロキシル基と水素結合を形成し,活性化されていることが示唆された.生成したポリマーはポリエステル鎖の末端に CD を有した構造であり,ポリエステルが CD のグルコースの 2 位のヒドロキシル基にエステル結合で結合していることがわかった.生長過程において,ポリマー鎖の末端に結合した CD が空孔内部にモノマーを取り込み,水素結合を介してモノマーを活性化したのち,CD とポリマー鎖の間にモノマーが挿入されていることがわかった.これらの重合挙動を固体 NMR により観測した.
  • 幅上 茂樹, 天間 知久, 高橋 雄介, 閻 培
    2007 年 64 巻 10 号 p. 617-626
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル フリー
    銅(I)-ビスオキサゾリン錯体を触媒として用いた 2-ナフトール類と 3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸エステル類との選択的酸化クロスカップリング反応を応用することにより,クアテルナフチル誘導体,ポリ(ビナフトール)誘導体,ビナフトールユニットを有するハイパーブランチ型ポリマーの高選択的な合成を行った.たとえば,6,6′-ビ-2-ナフトール誘導体をモノマーとして用いた重合では,モノマー上の置換基であるエステル基の構造を選ぶことにより,クロスカップリング選択性は最大で 99%に達し,head-to-tail 構造からなるポリ(ビナフトール)の選択的な合成に成功した.酸化カップリングによる新規な AB2 型モノマーの重合では,数平均分子量 2.0×104,99%以上のクロスカップリング選択性でテトラヒドロフランなどの有機溶媒に可溶なハイパーブランチ型ポリマーが高選択的に得られた.また,以上により得られたポリマーの蛍光特性についても検討を行った.
  • 森川 敦司
    2007 年 64 巻 10 号 p. 627-642
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル フリー
    フェノール性ヒドロキシル基の p 位に電子吸引性のカルボニル基を有する芳香族フルオリドへの芳香族求核置換反応を用いて,以下の 6 種類の分岐構造を有するポリエーテルケトンを合成した.
      (1) 合成単位として,3,5-ビス(4-フルオロベンゾイル)アニソール 1 を用いる Convergent 法によるポリ(エーテルケトン)デンドロン
      (2) 1 から誘導したフェニレン基の数の異なる 4 種類の AB2 型モノマー,4-ヒドロキシ-3′,5′-ビス(4-フルオロベンゾイル)-ビフェニル 2, 4-ヒドロキシ-3″,5″-ビス(4-フルオロベンゾイル)-p-テルフェニル 3, 4-ヒドロキシ-3′′′,5′′′-ビス(4-フルオロベンゾイル)-p-クアテルフェニル 4, 4-ヒドロキシ-3′′′′,5′′′′-ビス(4-フルオロベンゾイル)-p-キンクフェニル 5 の自己重合によるハイパーブランチポリ(エーテルケトン)
      (3) 2, 3, 4 のヒドロキシル基をメチル基で保護した化合物 6, 7, 8 を合成単位として用い,それらを Convergent 法で段階的に反応させることによる傾斜構造を有するポリ(エーテルケトン)デンドロン
      (4) 3,5-ジメトキシ-4′-(4-フルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル 9 を合成単とする Divergent 法によるポリ(エーテルエーテルケトン)デンドリマー
      (5) 3,5-ジヒドロキシベンジルアルコール 109 から誘導した 3,5-ジヒドロキシ-4′-(4-フルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル 11 を交互に段階的に反応させることによる交互共重合ポリ[(エーテル)-(エーテルケトン)]デンドリマー
      (6) 1 から誘導した 4-カルボキシル-3,5-ビス(4-フルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル 12, 4,4′-ジアミノ-4″-ヒドロキシ-トリフェニルメタン 13 を交互に用いる Orthogonal 法によるポリ[(エーテルケトン)-(アミド)]デンドリマー
      これらの分岐高分子の合成法と性質について概説する.
  • 塩月 雅士, Irfan SAEED, Wei ZHANG, 増田 俊夫
    2007 年 64 巻 10 号 p. 643-654
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル フリー
    精密に制御された置換ポリアセチレンを得るための新しいリビング重合触媒開発を目的とし,代表的な置換アセチレンモノマーであるフェニルアセチレン(PA)に関して新規 Rh 触媒系の設計を行った.強 π 酸性を示すテトラフルオロベンゾバレレンを配位子とする Rh 触媒に,ビニルリチウム化合物ならびに Ph3P を加え PA の重合反応を行うと,これまで報告されている例の中で最も狭い多分散度(MWD=1.04)を示すポリ(フェニルアセチレン)(PPA)が得られた.この 3 成分触媒系からは,重合開始種であるビニル Rh 錯体も単離可能であり,実際に単離された錯体を触媒とした場合にも PA のリビング重合が進行した.また,この触媒を応用し,アセチレン末端を有するポリスチレンあるいはポリメタクリル酸メチルのマクロモノマーを重合することによって,ポリアセチレンを主鎖に有する円筒形ポリマーブラシの合成を行った.これまで一般的に用いられてきた ill-defined 触媒である[(nbd)RhCl]2/Et3N を用いてマクロモノマーの重合を行った場合には高重合度を示すグラフトポリマーが得られたが,その多分散度は 2.0 以上と大きかった.一方,well-defined 触媒であるビニル Rh 誘導体を用いた際には多分散度の小さいポリマーブラシが得られることが明らかとなった.
  • 森 秀晴, 遠藤 剛
    2007 年 64 巻 10 号 p. 655-664
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル フリー
    可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT : Reversible Addition-Fragmentation Chain Transfer)重合は,適応できるモノマーや重合条件が幅広く,また多様な分子設計が可能なことから,最も有用なリビングラジカル重合の一つとみなすことができる.本報では,この RAFT 重合法を用いた機能性高分子の精密合成に関する近年の筆者らの研究をまとめた.とくに,アミノ酸系機能性材料として,光学活性を有し,かつ高分子弱電解質や温度応答性といった機能を併せもつポリマーの精密合成に着目した.また,カルバゾール,インドール,アントラセンなどの光・電子機能を有する高分子材料の合成・機能について述べる.これらの官能基を有するブロック共重合体や星型ポリマーの合成についても紹介する.
  • 杉山 賢次, 横山 英明, 平尾 明
    2007 年 64 巻 10 号 p. 665-675
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル フリー
    本報では,リビングアニオン重合法と定量的かつ選択的な末端官能基化反応を用いた,鎖末端にパーフルオロアルキル(Rf)基を有するポリマーの精密合成,ならびに得られたポリマーフィルムの表面構造解析に関する一連の研究をまとめた.まず,リビングポリマーと Rf 基含有ハロゲン化アルキルとの反応において,リビングポリマーの種類,ハロゲン化アルキルの構造が定量的な末端への Rf 基導入に重要であることが見いだされた.ここで得られた末端 Rf 基化ポリ(メタクリル酸 2-ヒドロキシエチル)のフィルムは,主鎖ポリマーが親水性であるにもかかわらず,乾燥状態で Rf 基の表面濃縮により撥水性を示すこと,さらに,水に浸漬すると表面が親水性,乾燥すれば再び疎水性を示す環境応答性フィルムになることが観察された.さらに,定量的な末端官能基化反応と繰返し法を用いることで,1, 2, 3, 4, 6, 8, 10, 16,そして 32 個の Rf 基を末端に導入したポリマーの系統的な合成に成功した.これによって,末端に導入された Rf 基の個数,さらには,Rf 基と主鎖の間の化学結合や Rf 基の導入様式がフィルム表面の構造形成に与える影響が明らかとなった.
一般論文
  • 杉本 裕, 山崎 瞳
    2007 年 64 巻 10 号 p. 676-682
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル フリー
    二酸化炭素の有機化学的な利用の一つに,エポキシドとの交互共重合によるポリカルボナートの生成がある.この反応は競合する副反応も多く,その成否には適切な触媒の選択が重要である.最近,筆者らは二酸化炭素-エポキシド交互共重合のための触媒探索の過程において,亜鉛 N 置換ポルフィリン錯体が優れた触媒となることを見いだした.亜鉛-炭素結合を有する錯体を用い,二酸化炭素とシクロヘキセンオキシドの交互共重合を行うと,定量的にポリカルボナートが得られ,その分子量は仕込み比から計算される値によく一致していた.したがって仕込み比を変えることで望みの分子量のコポリマーを合成できた.また本重合は用いる溶媒の種類により結果が大きく異なり,THF 中では交互共重合体が得られるのに対し,1,4-ジオキサン,ジクロロメタン,トルエン中ではエーテル結合に富むコポリマーが得られた.
  • 渡辺 眞次, 岡崎 一喜, 鬼塚 郁男, 村田 美樹, 増田 弦
    2007 年 64 巻 10 号 p. 683-687
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル フリー
    ヘキサメチレンジアミン(HDA)と α,α′-ジクロロ-p-キシレン(XCl)をポリスチレン-N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド微粒子(PS-HMA)存在下で重縮合することにより,アミノ基をもつ高分子微粒子を合成した.得られた微粒子中のアミノ基は,モノマーの種類やモノマーのモル比,重合後の微粒子の回収率の影響も受けるが,添加したジアミンの添加量とともに増える傾向が見られた.得られた粒子はへこんだ形状をしており,へこみの程度はシード粒子に対するモノマー量の増加とともに大きくなった.モノマーに HDA の代わりに第三級アミンであるテトラメチルエチレンジアミンを用いても,へこんだ粒子が得られた.一方,XCl を加えず,重縮合と同一条件下で HDA で処理した PS-HMA にはへこみは観察されなかった.このことからポリアミンの生成が粒子をへこませていると考えられる.透過型電子顕微鏡観察より,重縮合で生成するポリアミンはへこんだ縁の部分に多く存在することがわかった.
  • 小林 真盛, 内野 健太郎, 石曽根 隆
    2007 年 64 巻 10 号 p. 688-696
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル フリー
    本報では,新規の高分子-高分子ネットワークからなる粘着剤組成物の構築を目的として,側鎖または鎖末端に反応性のアジリジニル基を有する一次構造の規制されたポリマー類(単独重合体,ブロック共重合体,ランダム共重合体,末端アジリジニル化ポリマー)をリビングアニオン重合により合成した.続いて,得られた含アジリジン環ポリマーと主成分であるアクリル酸-アクリル酸 n-ブチル共重合体とを混合,架橋することにより粘着剤組成物を調製し,その加工特性や粘着特性に関する物性評価を行った.使用したアジリジニル基含有ポリマーは,官能基の導入数と導入位置が制御され,設計通りの分子量と狭い分子量分布をもっている.上記の高分子架橋剤と低分子架橋剤である多価アジリジン化合物の反応性や粘着物性などを比較した結果,高分子架橋剤においても,適度な加工特性と架橋反応性,さらに高い粘着特性が発現できることを見いだした.
  • 小俣 貴嗣, 砂田 潔, 竹下 宏樹, 宮 正光, 竹中 克彦, 塩見 友雄
    2007 年 64 巻 10 号 p. 697-704
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/25
    ジャーナル フリー
    モノビニルアセチレン(MVA)のアセチレン水素をトリメチルシリル基で置換した 4-トリメチルシリル-1-ブテン-3-イン(MVA-Si)のアニオン重合を行い,溶媒が重合挙動と生成ポリマーのミクロ構造に及ぼす影響を検討した.ヘプタン中で sec-ブチルリチウムを開始剤として 40℃ で重合を行うと,重合時間 1 時間で設計どおりの分子量と狭い分子量分布をもったポリ(MVA-Si)が得られたが,重合時間が長くなると分子量分布が広くなる傾向が見られた.生成ポリマーのミクロ構造を NMR と脱シリル化反応後の SEC 溶出曲線から解析したところ,THF 中ではビニル基のみが重合した 1,2-構造のみからなるポリマーが生成すること,ヘプタン中では三重結合も重合に関与した 1,4-構造も含まれていること,およびシリルメチル基への連鎖移動により主鎖中へシリルエチニル基が導入されることが示唆された.
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