高分子論文集
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64 巻, 2 号
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総説
  • 蔡 正国, 塩野 毅
    2007 年 64 巻 2 号 p. 77-89
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    本報では,最近進展の著しいシングルサイト触媒による重合について,炭化水素系モノマーの立体特異的リビング重合を中心に概説した.まず,バナジウム,ニッケル,4 族金属錯体触媒による α-オレフィンのリビング重合についてこれまでの研究を位置選択性や立体特異性の観点からまとめた.さらに,各触媒系の特徴を利用したステレオブロック共重合体やレジオブロック共重合体の合成例を紹介した.また,これまで困難であったノルボルネンのビニル付加リビング重合やエチレン,プロピレンとのランダム共重合,ブロック共重合について筆者らの最近の研究を中心に解説した.プロピレンと同様に立体特異性や位置選択性が要求されるブタジエンとスチレンの立体特異的リビング重合ならびにブロック共重合の最近の進展についても解説した.最後に,ポリマー鎖と同量の重合活性種を必要とするリビング重合の欠点を克服しうる,単分散ポリオレフィンやオレフィンブロック共重合体を触媒的に合成する最近の試みについてまとめた.
一般論文
  • 湯浅 真, 小柳津 研一, 村田 英則, 江口 勝哉, 豊田 裕次郎
    2007 年 64 巻 2 号 p. 90-95
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    ブロモ鉄(III)[メソテトラ(3-チエニル)ポルフィリン]([FeBr(ttp)])に 1-メチルイミダゾール(Im)を軸配位させ,6 配位錯体を形成させた.これをグラッシーカーボン電極上に電解重合により修飾し,Fe ポルフィリン修飾電極を作製した.この修飾電極は活性酸素種(ROS)の一種であるスーパーオキシドアニオンラジカル(O2-•)の検出に利用でき,O2-• センサーとして働く.本研究では,この O2-• センサーを用いて,ポテンショメトリーによる O2-• の定量検出を行った.測定系において O2-• を発生させると,電位は卑方向へとシフトした.続いてスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を添加すると O2-• 発生前の電位に戻ることより,O2-• を定性的に検出できることが示された.また,ポテンショメトリーによる O2-• の検出はネルンスト式に従うため,O2-• を定量的に検出できることが明らかとなった.さらに,妨害物質となりうる過酸化水素(H2O2)や尿酸を添加しても電位のシフトはほとんど観測されず測定対象とならないことから,選択度の高い測定法であることが明らかになった.特にアンペロメトリーでは測定が難しい極めて低い O2-• 濃度(7×10-7 M)でも検出可能であることが示された.
  • 季 薇, 杉本 岳彦, 笠崎 敏明, 西田 幸次, 金谷 利治
    2007 年 64 巻 2 号 p. 96-101
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネートをハードセグメントとする熱可塑性ポリウレタンにおいて,熱処理により形成するミクロンオーダーのドメイン構造と力学特性の向上について検討した.多段階の熱処理法(樹脂を融点以上に加熱・溶融して,一旦,ガラス転移点付近に急冷・固化したあと,再び融点付近までの加熱と最終的な熱処理温度への再冷却)を行うことにより,熱可塑性ポリウレタンにおいてミクロンオーダーのドメイン構造が効率的に発現することが見いだされた.また,ミクロンオーダーのドメイン構造が出現した熱可塑性ポリウレタンでは,実用上の融点およびガラス転移点にあたる,貯蔵弾性率(Log E′)の落込み温度および損失正接(tan δ)のピーク温度がそれぞれ高温側へ約 35℃ および低温側へ約 10℃ シフトした.これにより,ポリウレタンに期待されるエラストマー材料としての力学特性を維持できる温度範囲(ゴム状領域)が最大で 45℃ も拡大したことになる.つまり,同じ原材料を用いながらも,多段階の熱処理法を行うことにより,熱可塑性ポリウレタンの耐熱性および耐寒性をともに向上させることができ,用途範囲が広がることが期待される.
  • 梶屋 貴史, 上野 智永, 水野 孝志郎, 石川 朝之, 武田 邦彦
    2007 年 64 巻 2 号 p. 102-107
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    微量な超強酸塩(パーフロロブタンスルホン酸カリウム(FBS))を添加したポリカーボネート(PC)の熱分解と燃焼挙動について検討を行った.100 ppm から 10000 ppm という微量な添加物の影響を見ることから特に再現性に留意して実験を行った.その結果,100 ppm 程度の FBS の添加によって PC の燃焼が抑制され,UL 垂直燃焼実験において再現性よく 5 s 以内で自己消炎することが明らかになった.FBS と類似のパーフロロメタンスルホン酸カリウム(FMS)でも効果が見られた.また熱重量分析を行ったところ FBS を添加することによって 5%および 50%重量減少温度が低下し,700℃ における熱分解残渣の減少が見られた.微量添加の影響,重量減少温度の低下,および熱分解残渣の減少が難燃性に寄与するという従来の知見と異なる結果が得られた.
  • 棚橋 満, 森 真生, 石川 朝之, 東崎 栄造, 小笹 維義, 武田 邦彦
    2007 年 64 巻 2 号 p. 108-114
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    有機溶媒を使用せずにエポキシ樹脂主体の樹脂をガラスクロスに含浸させる電子回路積層板の製造プロセスの研究を行った.本研究では,微細化し水で湿潤化した樹脂微粒子をスプレーによって吹き付けて,親油化処理をしたガラスクロスに衝突させることによって樹脂とガラスクロスの複合体であるプリプレグを作製した.水を用いて樹脂を湿潤化するためには,樹脂の粒径を微細化し,水と混合したものを機械的にかくはんし分散させることが必要である.湿潤化した樹脂をノズルから噴出させ,あらかじめ親油化処理をしたガラスクロスに衝突させた時の衝突現象をレイノルズ数とオーネソージ数の関係にもとづいて整理し,樹脂微粒子の運動エネルギーや表面エネルギーなどの観点から微細なガラスクロスに付着した微粒子が浸透する可能性について明らかにした.
  • 山本 宣之, 首藤 健志郎, 山岸 忠明, 中本 義章
    2007 年 64 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    ホスホリルコリン基含有モノマーと長鎖アルキル基含有モノマーとの共重合により疎水性リン脂質ポリマーを合成した.このポリマーを水中で自己組織化分散させてナノ粒子とした後,乾燥させてフィルムを得た.得られたフィルムの熱物性について検討したところ,DSC により 37℃ 付近に転移温度を示す吸熱ピークが観測され,長鎖アルキル基の凝集が示唆された.X 線構造解析の結果,ポリマーフィルム中には,5.7 nm の長周期構造と約 0.42 nm の側鎖のパッキング間隔をもつ,脂質二分子膜類似のラメラ構造が存在することが明らかとなった.また,ポリマーフィルムの透過型電子顕微鏡(TEM)観察からも,約 6 nm の周期をもつラメラ構造が確認された.ラメラの積層は長距離の配向性に乏しく,連続的に配向方向を屈曲させたモザイク状の構造をもつことが明らかとなった.
  • 小林 稔, 佐藤 壽彌
    2007 年 64 巻 2 号 p. 119-127
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/28
    ジャーナル フリー
    各種のアイソタクチックメタクリル酸メチルのオリゴマーの量子化学計算による立体配座解析(エネルギー比計算)を行い観測結果と比較した.計算は非らせん条件(トランス 2 面角入力値:180°)で行った.3, 7 量体での最安定構造はそれぞれの観測結果とほぼ一致した.末端主鎖の立体配座は末端基のかさ高さに影響を受け,tert-ブチル基ではトランスが,プロトン,メチルまたは n-プロピル基では側鎖の回転を伴いゴーシュが安定であった.7, 9 および 11 量体の最安定構造は,7 量体の観測結果と同様,トランス鎖の中間にゴーシュをもつキンク構造であり,オリゴマーの結晶がポリマー(全トランスの 10/1 らせん)と異なることが推定された.11 量体のみがらせんがキンクした構造であり,らせん条件(-160°入力)で計算した均一らせんとのエネルギー差はわずかであった.この結果はポリマーが 10 モノマー単位のらせんであることを支持している.
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