高分子論文集
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64 巻, 5 号
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総合論文
  • 古賀 智之, 本田 幸司, 佐々木 園, 坂田 修身, 高原 淳
    2007 年 64 巻 5 号 p. 269-279
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    ポリアルキルシロキサン超薄膜の二次元凝集構造と分子運動特性について,面内微小角入射 X 線回折(in-plane GIXD)測定を中心に詳細な検討を行った.長鎖アルキル基を有するポリアルキルシロキサン超薄膜の分子凝集状態は,超薄膜の調製法に強く依存した.長鎖アルキル基の融点以上の温度で気相からの化学吸着(CVA 法)によりシリコン基板上に固定化されたポリアルキルシロキサン超薄膜は非晶を形成した.これは,アルキル基の融点以上の温度においてアルコキシシリル基が基板表面で重合・固定化したため,長鎖アルキル鎖の結晶化が妨げられたことに起因する.一方,溶液からの化学吸着,および水面キャスト法により調製した超薄膜の長鎖アルキル基は結晶性を示した.これは,これらの調製法では,温和な条件下において長鎖アルキル基が結晶化を伴いながら,アルコキシシリル基の重合とシリコン基板への固定化が進行したためであると考えられた.
一般論文
  • 浦上 直人, 今田 絢子, 藤岡 千尋, 山本 隆
    2007 年 64 巻 5 号 p. 280-285
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    シクロデキストリン(CD)と高分子鎖の包接化合物の形成過程を分子動力学法により調べる.特に,擬ロタキサンや擬ポリロタキサンの形成,および擬ポリロタキサン間における秩序構造形成の様子を調べる.今回のシミュレーションでは,CD と高分子鎖を粗視化し,環状分子,鎖状分子として扱った.擬ロタキサン形成シミュレーションでは,環状分子と鎖状分子間の非結合相互作用により,包接化合物が形成されることが確認できた.擬ポリロタキサンの形成では,包接化合物を形成する環状分子数の増加にともない,鎖状分子の構造は,ランダムコイル状態から伸長した状態に転移することがわかった.また,擬ポリロタキサンを形成した後,1~2 個の環状分子が鎖状分子と,包接と解離を繰返していることが明らかになった.さらに,今回のシミュレーションでは,擬ポリロタキサン間における配向秩序構造の形成も確認することができた.
  • 山本 勝宏, 南部 孝太, 三輪 洋平, 高木 秀彰, 原 滋郎, 嶋田 繁隆
    2007 年 64 巻 5 号 p. 286-293
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    Polystyrene(PS)-b-poly(methyl acrylate)(PMA)ブロック共重合体が形成するミクロ相分離構造(球状,棒状,板状)における,PS 末端セグメントの分子運動特性を ESR スピンラベル法により評価した.PMA の体積分率は 55 vol%以下とし,PS がマトリックス成分と見なせるブロック共重合体について研究した.相分離構造は小角 X 線散乱から確認し,観測温度範囲内において,相転移がないことを確認した.バルク PS において,末端セグメント近傍の自由体積は平均の自由体積の大きさより大きく運動性が高くなる.ブロック共重合体においても,PS 末端セグメントの運動性は,PS 内部セグメントに比べ高いことがわかった.さらに,内部セグメントと末端セグメントの運動性の差は,バルク PS の場合に比べ大きいものであった.つまりブロック共重合体のミクロ相分離構造内において,末端セグメントの運動性はバルクに比べより活性化されていることが明らかとなった.これは相分離構造内におけるポリマーのコンホメーションに関係すると考えられる.理論的,実験的にも,ミクロドメイン中において末端セグメントはドメイン中心部に多く分布していることがわかっている.この末端セグメントの濃縮効果によりその近傍で分子運動性が高くなったと考えられる.また効果がモルホロジーに強く依存し,末端の分子運動に影響を与えることもわかった.
  • 増永 淳史, 石野 崇, 中西 英行, 宮田 貴章
    2007 年 64 巻 5 号 p. 294-300
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン(PS)とメチルメタクリレート(MMA)の混合溶液を光重合,架橋することにより高分子相互侵入網目(Interpenetrating Polymer Networks ; IPNs)を合成した.その合成過程で誘発された相分離は光反応に伴い促進され,また反応によるモビリティーの低下で抑制される.すなわち最終的なモルホロジーは光重合,架橋反応と相分離の競合により決定される.光反応を巧みに操作し,相分離の動的過程を制御することを目的とし,時空間で光反応を操作できるコンピューター支援光照射法(Computer-Assisted Irradiation Method;以後 CAI 法と呼ぶ)を導入した.均一全面照射に対する MMA の重合反応は自己触媒的な挙動で進行し,光強度の増大にともない促進された.また,構造の特性長 ξ は,光強度の増大とともに大きくなる結果となった.空間変調光としてシングルストリップ(短冊形)パターンを照射し,光強度に依存した特性長を有する相分離構造を誘発でき,パターンを印字することができた.ストリップ幅を数百から数十ミクロンまで変化させると,発現する相分離構造の特性長は小さくなり,粗雑化した,光のストリップ内部に発現した相分離構造と,ストリップ幅との相関関係についても検討した.
  • 宇川 仁太, 山本 祥正, 河原 成元
    2007 年 64 巻 5 号 p. 301-308
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    加硫天然ゴムの架橋点の構造をラテックス,溶液および固体 13C NMR 法により解析した.天然ゴムを加硫することによりスペクトルに示されるシグナルを,Distortionless Enhancement by Polarization Transfer (DEPT)や Attached Proton Test (APT)のパルスシーケンスを用いてラテックス 13C NMR 法により解析した.加硫天然ゴムおよび加硫 trans-1,4-ポリイソプレンの NMR スペクトルを比較することにより,加硫反応によって天然ゴムの架橋点の cis-1,4-イソプレン単位が trans 体へ異性化することが示唆された.加硫天然ゴムの架橋点の立体構造はモデルとして加硫スクアレンを用い,DEPT, APT および二次元 NMR スペクトルにより検証された.
  • 猪股 克弘, 坂野 愛, 佐藤 永二郎, 杉本 英樹, 中西 英二
    2007 年 64 巻 5 号 p. 309-316
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    ABA 型のトリブロック共重合体,ポリメチルメタクリレート-block-ポリ(tert-ブチルアクリレート)-block-ポリメチルメタクリレート(PMMA-PtBuA-PMMA)が,中央鎖の選択溶媒中で形成する組み替え網目構造について,小角 X 線散乱(SAXS)と線形・非線形粘弾性測定により検討した.ゲル化濃度近傍の溶液の SAXS プロファイルでは,たとえマクロスコピックにゲル化している系においても,濃度が 5.9 wt%以下の場合には会合コア間の相関を示唆する散乱ピークが観測されず,網目構造に寄与している PMMA 会合コアの割合が少ないことが推測された.ゲル化した 8.0 wt%の試料にせん断流動-静止のサイクルを繰返し行ったところ,その前後での線形動的粘弾性曲線はほぼ一致した.一方 4.4 wt%の試料では,流動後は流動前に比べて平坦域の貯蔵剛性率が半分程度に減少したことから,架橋点から引抜かれた鎖が再び架橋鎖として会合する確率が低く,元の構造に回復できないことが示唆された.これらの結果から,組み替え網目構造にせん断流動を与えた場合の変形および回復挙動は,架橋点における会合力の強さとともに,網目構造の緻密さも影響を及ぼすことがわかった.
  • 安井 章文, 木村 史子, 木吉 司, 木村 恒久, 鄭 然桓, 櫻井 伸一
    2007 年 64 巻 5 号 p. 317-323
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,磁場配向性能をほとんど持たないアモルファス高分子のナノ集合組織を強磁場の作用により配向させることを検討した.この目的のために,非晶性のブロック共重合体が形成するミクロ相分離構造をモデル系として利用した.具体的には,ポリスチレン-ポリエチレンブチレン-ポリスチレントリブロック共重合体である.この試料は熱力学的平衡状態ではポリスチレン(PS)がシリンダーを形成し,ポリエチレンブチレンがマトリックスとなる.これを選択溶媒を用いて溶液キャストすること(溶媒蒸発法)によって,金属キレートを PS ミクロドメイン相に選択的にドープすることに成功した.さらに,この選択溶媒を用いた溶液キャストを強磁場(12 テスラ)中で行うことで,金属キレートを選択的にドープさせることに加え,ラメラ状ミクロドメイン構造を基板に平行に高度に配向させることができた.ラメラ構造は,選択溶媒の作用によってできる非平衡な構造であり,PS 相のガラス化によって凍結されたものである.したがって,得られたラメラ構造を PS のガラス転移温度以上の温度で熱処理すると,熱力学的に安定なシリンダー構造に転移する.本研究では,PS ラメラ相に金属キレートが選択的にドープされているので,これを強磁場(12 テスラ)中で熱処理すると,ラメラが分裂して得られる PS シリンダーが印加磁場に平行に高度に配向した.このように,磁場配向性能をわずかにしか持たないアモルファス高分子であっても,明確な界面によってメソフェーズを形成している場合には,磁化率の大きな添加剤をメソフェーズに選択的にドープするなどの工夫によって,界面と磁場の相互作用の結果,対称性の破れとモードセレクションが起こり,ナノシリンダー構造を印加磁場に平行に配向させることが可能であることを初めて示すことに成功した.この結果は,単に磁場配向を達成したという実用的意義に留まらず,磁場中での対称性の破れとモードセレクションを実証できた点で,「ソフトマターの物理」の観点から有意義である.
  • 西辻 祥太郎, 竹中 幹人, 谷口 貴志, 長谷川 博一
    2007 年 64 巻 5 号 p. 324-327
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/01
    ジャーナル フリー
    一相状態にある高分子準希薄溶液にせん断流動を印加すると流動誘起相分離がおこる.筆者らはこの現象をシミュレーションするために Doi-Onuki の二流体モデルに Ianniruberto-Marrucci モデル(IM モデル)を組み入れた計算法を開発した.IM モデルを用いることによって,流動誘起相分離過程における濃度ゆらぎの時間発展のみならず,今までのモデルではあらわせなかった,応力の時間発展もシミュレーションできることがわかった.特に,応力の時間発展においてからみ合いに由来するオーバーシュート現象,および濃度ゆらぎの緩和によるオーバーシュートがみられ,実験とのよい一致をみた.
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