3 種類のポリマーブレンドの相互作用,分子運動性,構造変化を固体高分解能
13C NMR 法を用いて解析した.側鎖が比較的長く,側鎖の分子運動が活発な poly(2-hydroxyethyl methacrylate)(PHEMA)と側鎖が短く遅い分子運動の poly(methacrylic acid)(PMAA)をブレンドすると,PHEMA 側鎖末端ヒドロキシル基と PMAA 側鎖末端カルボキシル基が強い水素結合を形成する.PHEMA/PMAA ブレンドから観測された回転座標系の
1H 核のスピン-格子緩和時間(
T1ρH)は,PHEMA 単体の
T1ρH と PMAA 単体の
T1ρH から計算される組成比の加重平均値に一致せず,
T1ρH の温度依存性からブレンド中で PHEMA の数十 kHz の分子運動が制限されていることを示した.さらに,PHEMA/PMAA ブレンドを熱処理することで分子間脱水反応をおこし,固体中で分子間架橋させると,分子間架橋した部位の運動性が極端に遅くなることを NMR スペクトルと
T1C 緩和曲線から定量的に示した.PMAA と poly(vinyl acetate)(PVAc)のブレンドでは,側鎖どうしが水素結合して相溶するが,水素結合している側鎖としていない側鎖の分子運動性が異なることを,
13C 核のスピン-格子緩和時間(
T1C)の組成依存性から見いだした.また,PMAA/PVAc ブレンドの相溶性が分子間相互作用の比率に依存していることを見いだした.ガラス転移点が室温より極端に低い poly(vinyl methyl ether)(PVME)と polystyrene(PS)のブレンドでは,相溶であっても
1H スピン拡散の効率が落ち,
T1ρH 緩和曲線が単一の指数関数とはならない.
1H スピン拡散の見かけ上の速さをパラメーターにして,PS/PVME ブレンドの
T1ρH 緩和曲線を 3 スピン系の緩和モデルを用いて定量的にシミュレーションすることができることを示した.
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