高分子論文集
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65 巻, 1 号
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総合論文
  • 厳 虎, 原 雄介, 奥崎 秀典
    2008 年 65 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    電解重合によって得られるポリピロールマイクロチューブと特異形態を有するポリアルキルピロール膜について,その合成と物性を紹介した.また,エレクトロスピニングによるポリフェニレンビニレンのナノファイバーの作製と物性について紹介した.
  • 伊藤 嘉浩
    2008 年 65 巻 1 号 p. 6-19
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    ナノ・レベルで材料表面を修飾するナノ界面テクノロジーによって,機能性表面の創出を行った.第一は,親水・疎水性の傾斜表面を光分解反応により,定量的に再現性高く創り出し,水滴移動を評価し,考察した.第二には,自励振動高分子を固体表面に固定化し,その振動現象を走査プローブ顕微鏡で観察することができた.第三には,天然あるいは合成の光反応性高分子を新たに合成し,生体成分との相互作用を減じる新しい生体適合性材料の合成に成功した.
  • 中林 宣男
    2008 年 65 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    歯科医療の改革を目的とする研究は歯科材料に偏り,基質側の研究が軽視されてきた.歯の無機質成分が塩基性のヒドロキシアパタイト(HAP)であるため,酸性になる口腔内環境では不安定であり,象牙質を口腔内で安定化するには,HAP を酸に触れさせなくすることが必要である.このために象牙質表層に拡散可能な methacrylate を合成し,研削象牙質表層に樹脂含浸象牙質(IPN)を構築した.IPN はエナメル質と同じように,象牙質と歯髄を保護する機能を有している.IPN を HCl に浸漬しても IPN でカプセル化された HAP は酸で分解されないこと,さらにタンパク質分解試薬 NaOCl に浸漬しても IPN は安定しており,刺激透過性脱灰象牙質の介在も否定された.これは IPN が象牙質のう蝕罹患を防止できることを示し,修復物の脱落と知覚過敏の再発を確実に阻止し,歯科診療の信頼性を格段に向上できることが期待できる.
  • 遠藤 一央
    2008 年 65 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    理論に基づいて計算された高分子モデルの電子スペクトル,NMR スペクトルや質量スペクトルは,実測スペクトルとよく対応させることができるようになっている.これは,量子化学および量子分子動力学計算が,その理論,技法の改良,プログラム開発および計算機の高性能化によって著しく進歩したからである.そこで,筆者らが量子化学計算で行った有機材料の X 線光電子,X 線発光,オージェ電子および NMR スペクトル解析,さらに量子分子動力学計算によるポリマーの熱分解過程とポリマーの SIMS スペクトルとの関連性について述べる.
  • 長谷川 健, 山田 哲弘
    2008 年 65 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    二次元的に稠密に低分子量化合物を配列させて集積し,ネットワークポリマーを形成させる手法として,水素結合・結晶度・分子間のかみ合いの三つのパラメーターを強相関させることのできる化合物を合成した.これは,結晶性と可塑性を併せ持つポリマー薄膜を実現し,階層構造化超分子ポリマーという新しい概念を生み出した.三つのパラメーターのうち,分子間のかみ合いにはロイシンファスナーという機構を導入した.本報では,超分子ポリマー薄膜中での三つのパラメータをすべてとらえるために新たな分光分析法(MAIR 分光法)もあわせて開発した.これは薄膜に平行および垂直方向の構造を二つのスペクトルに表す分光法で,官能基ごとの分子配向が簡単に議論でき,また配向の差異によってバンド分解能も大きく向上する.その結果,ロイシンファスナー・β シート構造・結晶化の程度のバランスを,はじめて明確にとらえて議論することができた.
  • 木村-須田 廣美, Aric OPDAHL, Michael J. TARLOV, Lloyd J. WHITMAN, Dmitri Y. ...
    2008 年 65 巻 1 号 p. 46-57
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    相補的な表面分光法であるフーリエ変換赤外分光法(FTIR)と X 線光電子分光法(XPS)を用い,一本鎖 DNA(ssDNA)の金に対する固定化について検討した.ssDNA の固定化は,塩基配列と緩衝液の組成に依存する.塩濃度が高く,2 価のカチオンを含む緩衝液を使用した場合は,より高い飽和密度の固定化 DNA が得られる.金に対するホモオリゴヌクレオチドの相対的な吸着親和性は,塩基依存性を示し,A>C≥G>T となる.オリゴ(dA)の金に対する高い親和性は,dA・dT ハイブリッドの変性を引き起こし,d(Tm-An)ブロックオリゴヌクレオチドは,d(A)ブロックを介して金に吸着する.その結果,d(T)ブロックは表面から離れてブラシ状のコンホメーションになり,d(Tm-An)のグラフト密度は,d(A)ブロックの長さによって制御される.ブラシ状コンホメーションは,DNA ハイブリダイゼーションに最適なグラフト密度<1013 DNA/cm2 を構築する.
  • 堀内 伸, Yong-Gui LIAO, 扇澤 敏明
    2008 年 65 巻 1 号 p. 58-66
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    エネルギーフィルター TEM(EFTEM),高分解能 SEM および非対称ダブルビームカンチレバー(ADBC)法による界面破壊強度測定により,ポリメチルメタクリレート/スチレン-アクリロニトリルランダム共重合体(PMMA/SAN)界面の構造と接着特性に関する研究を行った.EFTEM による元素マッピング,電子エネルギー損失分光法により,PMMA/SAN 界面を可視化し,濃度プロファイルを測定した.さらに,ADBC 法による界面接着特性の評価と高分解能 SEM によるはく離表面の観察により,界面破壊機構と界面構造との相関を明らかにした.これらの三つの手法を統合することにより,分子鎖からみ合い構造を含む界面の詳細な構造解析が可能であることを示した.
一般論文
  • 小川 俊夫, 植松 沙耶香, 下條 美由紀
    2008 年 65 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレンシートについて空気雰囲気中および窒素雰囲気中でコロナ放電処理を行って X 線光電子分光法(XPS)により表面状態を評価した.また,表面処理試料についてインクの付着性について調べた.窒素雰囲気の場合,酸素含量は 0.6 atom%であった.空気雰囲気での処理では窒素はシート表面にほとんど結合しないが,窒素雰囲気処理では 4 atom%に達した.また,その場合の水の接触角は空気雰囲気中の処理に比べ 18°低い上,長期間安定であった.官能基については接着に最も関係が深いヒドロキシル基とカルボキシル基の含量と経時変化について化学修飾後の XPS により検討した.その結果,ともに窒素雰囲気中で処理した方が安定であった.さらに,窒素雰囲気中で処理した面ではインクの付着安定性が優れていた.このように,窒素雰囲気中でコロナ放電処理すると,処理効果が持続すると同時にインクの付着性も優れていることが確認された.
  • 宮前 孝行, 西浦 克典, 高木 斗志彦
    2008 年 65 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    Poly(vinyl alcohol)(PVA)と poly(acrylic acid)(PAA)のブレンド高分子にゾル-ゲル法によりシリカをナノ分散させたハイブリッドコート材料について X 線光電子分光(XPS)および和周波発生分光法(SFG)を用いてその表面構造を解析した.PVA と PAA を架橋してブレンドした高分子表面は両方の高分子がバルクのモル比に従い,等しく表面に現れてくるのに対し,これにシリカをナノ分散させた場合には表面は PAA が主成分となり,シリカは表面に析出していない.これは PAA と強く結びついたシリカが膜内に均一に分散し,表面エネルギーを低下させるために最表層は PAA 主鎖が覆うためであると考えられる.また,水蒸気存在下でもその表面は変化せず,ガス透過性とハイブリッド材料の表面構造は直接の相関がないことが明らかになった.
  • 永岡 昭二, 平川 一成, 小林 清太郎, 佐藤 賢, 永田 正典, 高藤 誠, 伊原 博隆
    2008 年 65 巻 1 号 p. 80-89
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    セルロースと硬質無機材料との複合微粒子化により,シリコンウエハなど,精密機械部品を研磨するセルロース複合砥粒材の開発を検討した.セルロースは,セルロースザンテート水溶液(ビスコース)とポリアクリル酸を用いることにより,球状に固化させることができる.その際に,ビスコース中に Al2O3,SiC,ダイヤモンドなど,無機微粒子を混合することにより,セルロース/無機複合球状粒子が得られる.これら粒子中における無機微粒子の分布は,無機微粒子の電気泳動スペクトルを測定することにより,セルロース粒子の表面に分布するか否かの指標となることが示唆された.ゼータ電位がマイナスにシフトし,泳動速度の分布が均一な微粒子ほど,セルロース球状粒子の表面に濃縮されることがわかった.シリコンウエハの平滑化に対して,無機微粒子が表面に濃縮されたセルロース球状粒子を用いたところ,従来の研磨材よりも,優位性のある平滑化能を発現させることができた.
  • 田中 芳浩, 後藤 浩一, 松本 陽子, 上岡 龍一
    2008 年 65 巻 1 号 p. 90-97
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    ラクトース骨格を有する界面活性剤(LactC10)を合成し,ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)およびポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20)を構成成分とするハイブリッドリポソーム(HL)に LactC10 を組込み,三成分系ハイブリッドリポソーム(THL)を創製した.THL の物性およびヒト肝臓がん細胞(Hep-G2, Huh-7)に対する制がん効果について検討し,次のような興味ある知見が得られた.1) NMR, IR 測定,元素分析などから,LactC10 が高純度で合成できた.2) Hep-G2 および Huh-7 に対する IC50 値は HL に比べ小さく,THL による増殖抑制効果の向上が明らかとなった.3) THL の固定水層は HL の約 2 倍に増大し,THL の増殖抑制効果に糖の水和が関与している可能性を初めて明らかにした.4) THL は Hep-G2 および Huh-7 にアポトーシスを誘導し,正常肝細胞には毒性がないことを確認した.
  • 深沢 義人, 奥田 暢, 島田 智子, 服部 真貴子, 斎藤 拓
    2008 年 65 巻 1 号 p. 98-103
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    界面活性剤をブレンドしたポリエチレンフィルムを熱処理することによる表面構造の変化を調べた.全反射赤外吸収スペクトル(ATR-IR)法および微小角 X 線回折(GIXD)測定によりフィルム表面の構造を調べたところ,フィルム表面に存在する界面活性剤の量が熱処理に伴い増加したことから,熱処理によりフィルム表面へ界面活性剤がブリードアウトすることがわかった.ブリードアウトさせたフィルム表面を原子間力顕微鏡(AFM)により観察したところ,界面活性剤 4 から 20 分子の長さに相当する階段状のモザイク形状をした界面活性剤の結晶析出物が見いだされた.また,得られたフィルム表面は親水性を示すことが接触角測定により明らかになった.このような界面活性剤のブリードアウトによる表面構造の変化が,フィルム試料のガス透過性を大きく変化させることが示唆された.
ノート
  • 佐藤 えりか, 田村 鮎美, 川越 潤一, 市村 葉子, 西 健次郎, 山田 和典
    2008 年 65 巻 1 号 p. 104-107
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    We investigated the covalent immobilization of mushroom tyrosinase on an anion-exchange resin with a water-soluble carbodiimide and removal of a phenol compound, p-cresol, by using two columns packed with immobilized tyrosinase and chitosan beads. An increase in the immobilization time led to an increase in the amount of immobilized tyrosinase. Tyrosinase molecules were covalently immobilized on chitosan beads through the covalent multipoint attachment. Tyrosinase immobilized on anion-exchange resins for 72 h had an almost constant activity for 5-time repetitive p-cresol removal experiments. p-Cresol was also effectively removed by use of chitosan beads prepared with epichlorohydrin in a shortened treatment time. These results made clear that the stability and reusability of tyrosinase was improved by covalent immobilization on the resins and that p-cresol was effectively removed by using two columns packed with tyrosinase-immobilized resins and chitosan beads.
  • 杉山 立樹, 武蔵 絵里子, 柏田 歩, 松田 清美, 平田 光男, 山田 和典
    2008 年 65 巻 1 号 p. 108-111
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/24
    ジャーナル フリー
    Removal of bisphenol A (2,2-bis(4-hydroxyphenyl)propane, BPA) was investigated through the hydrogen peroxide (H2O2)-dependent tyrosinase catalyzed quinone conversion and subsequent quinone adsorption on chitosan beads. The activity of mushroom tyrosinase to BPA increased by adding H2O2; BPA was thus effectively converted into quinone derivatives. The optimum conditions for quinone conversion were determined in the presence of H2O2 at 0.3-0.4 mM at pH 6.0-7.0 and 40-45°C. When chitosan beads were added to BPA solutions containing BPA and H2O2, quinone conversion was enhanced; the quinone derivatives generated were adsorbed on chitosan beads. An increase in the amount of chitosan beads added to BPA solutions accelerated adsorption of quinone derivatives. BPA was completely removed at the amount of added chitosan beads of 0.050 mL/mL or more. This procedure is more effective than the homogeneous removal procedure using chitosan solutions, giving higher removal rates in shorter reaction times.
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