高分子論文集
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65 巻, 2 号
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総説
  • 白井 正充
    2008 年 65 巻 2 号 p. 113-123
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    光架橋・硬化性樹脂は,塗膜,印刷製版,接着,フォトレジスト,光造形など極めて広範囲に利用されている.硬化樹脂材料の特徴は不溶・不融であり,優れた耐熱性,耐薬品性,機械的強度を有することである.架橋・硬化した樹脂は,一般に,使用後の除去は困難である.架橋・硬化樹脂に分解機能を付与し,使用後に溶解・除去できるようにした樹脂(リワーク型樹脂)は高機能性光架橋・硬化樹脂として,また,廃棄処理過程における環境負荷の小さい硬化樹脂として,関心がもたれている.本報では最近のリワーク型光架橋・硬化樹脂の研究例を中心に紹介するとともに,リワーク型熱架橋・硬化樹脂についても紹介する.リワーク型架橋・硬化樹脂は,架橋反応サイトと分解サイトの両方を同一分子内に含むものである.いろいろな官能基の組合せが検討されており,多官能モノマー型,オリゴマー型,官能基を側鎖に有するポリマー型,架橋剤/ベースポリマーブレンド型などがある.
一般論文
  • 小林 稔, 大内 志保, 佐藤 壽彌
    2008 年 65 巻 2 号 p. 124-131
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    乳化剤として sodium dodecyl sulfate(SDS)を用い種々のモノマー仕込み比および重合条件で乳化重合したスチレンとメチルアクリレート(MA)またはエチルアクリレート(EA)の共重合体の組成および組成分布を 1H NMR と HPLC によって調べバルク重合と比較した.重合初期の乳化共重合体の組成が乳化剤濃度([SDS])に影響することが見いだされた.MA または EA 分率は [SDS] の増加とともに減少し [SDS] をゼロに外挿したとき分配係数(fd)から予測される計算値に収束する傾向を示した.St-MA 系での MA 分率はさらに重合速度(Rp)の影響を受け,Rp の増加とともに減少し Rp をゼロに外挿したとき fd からの計算値に収束する傾向を示した.これらの結果は,親水性モノマーと乳化剤との相互作用および/または拡散律速機構によるものと推測された.HPLC では単独重合体や組成の異なる共重合体の生成は観察されなかった.
  • 白石 浩平, 繁定 哲行, 山本 和彦, 杉山 一男
    2008 年 65 巻 2 号 p. 132-139
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    材料表面の親水性⇔疎水性が可逆的に変化できる温度応答性ヒドロゲル材料を生医学材料へ応用する研究の一環として,大腸菌ランダムペプチドライブラリ(FliTrxTM, Invitrogen)法を応用した表面の評価法を検討した.用いた高分子材料は poly(N-isopropylacrylamide)を Ar プラズマ照射-ポスト重合法によってグラフトしたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(g-PET)である.選択された各クローンの分析から,オリジナル PET 表面で選択されたペプチド鎖は温度変化によってアミノ酸組成に差異は見られなかった.一方,g-PET の場合,37℃では g-PET 表面は疎水性で疎水性アミノ酸,また 25℃ の親水性表面には親水性アミノ酸が多く選択された.解析したクローン中の各アミノ酸の出現率(%)と Kyte & Doolittle パラメーターとの積を算出した.その結果,g-PET の出現率とパラメーターの積は 37℃ では-28.4,25℃ で-67.6,未処理 PET は 37℃で42.2,25℃ では 34.3 であった.つまり,未処理 PET より g-PET 表面に選択されるペプチドは温度変化による親・疎水性の変化が大きいことが確かめられた.
  • 勝又 崇之, 香西 博明
    2008 年 65 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    側鎖にビフェニル基を有するジオールを合成し,鎖延長剤として芳香族ジオールである BPS6 とジイソシアナートとして新規なトリエチレングリコールジイソシアナート(TEGDI)および種々のジイソシアナートから新規ポリウレタンを合成した.その結果,収率 62~82%,極限粘度は [η]=0.36~0.42 の高分子量体が得られた.また,DSC 測定および偏光顕微鏡観察から,いずれのポリマーも降温過程および昇温過程で液晶相を形成するエナンチオトロピックな液晶を示した.一方,ポリマーの特性は,HDI/BPS6/HBHB7 において広いゴム状平坦領域が確認できた.
  • 小柳津 研一, 村田 英則, 吉井 大輔, 石川 剛大, 湯浅 真
    2008 年 65 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    エンジニアリングプラスチックとして知られるポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(PPE)は,2,6-ジメチルフェノールの酸化重合により得られる.筆者らは最近,重合機構の解析により,重合度の異なる 2 種類の PPE 類からブロック共重合体が生成することを見いだした.具体的には,PPE(Mn=2.2×104, Mw/Mn=2.5)とオリゴ(2-エトキシカルボニル-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル)(Mn=7.5×103, Mw/Mn=1.5)を溶解し,酸化剤として酸化銀(I)を添加し反応させた.反応液を任意の時間で採取し,時間経過に伴う分子量変化を GPC により追跡した.反応開始前に見られた GPC ピークの数は反応時間の経過とともに減少し,単一のピークが融合した(Mn=1.5×104, Mw/Mn=2.2).140 時間後に GPC ピークは単峰性を示し,再沈殿精製後の NMR, DSC を用いた解析によりブロック共重合体の生成が示された.トリフルオロ酢酸によりエステルを加水分解し,カルボン酸置換 PPE ブロック共重合体を得た.PPE とオリゴ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレンエーテル)(Mn=8.5×103, Mw/Mn=1.3)を反応させ,得られたブロック共重合体の一方のユニットへ選択的にスルホン酸基を導入し,スルホン酸置換 PPE ブロック共重合体を合成した.固体高分子形燃料電池電解質の膜材料としての応用を期待して,膜劣化やイオン交換容量(IEC)など膜特性を評価した.スルホン酸置換 PPE ブロック共重合体の微細相分離構造を明らかにし,高い IEC を示す膜を得た.
  • 谷川 将行, 白石 浩平, 杉山 一男
    2008 年 65 巻 2 号 p. 150-156
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    静脈注射用のドラッグデリバリーキャリヤーポリマーとして,ポリ(N-α-メタクリルアミド-L-リジン)[poly(LysMA)] セグメントとポリジメチルシロキサン(PDMS)セグメントからなる分子量の異なる両親媒性 AB 型ブロックコポリマー poly(LysMA-b-DMS)を合成した.走査型プローブ顕微鏡測定(SPM)から,poly(LysMA-b-DMS)フィルムは親水・疎水性領域からなるミクロ相分離構造を示した.一方,poly(LysMA-b-DMS)は,水-メタノール系混合溶媒を用いた 1H NMR から,水中で自己組織化してコア-シェル型で粒径が 221 nm~274 nm のミセルを形成することを確認した.臨界ミセル濃度は Mw=1.39×104~3.41×104 と増大するとともに CMC=500~2000 mg L-1 と大きくなった.さらに,poly(LysMA-b-DMS)存在下における D-Phe-Pip-Arg-pNA・2HCl(S-2238)とトロンビンとの酵素反応の最大反応速度(Vmax)は Vmax=1.82×10-2~1.95×10-2 mM min-1 であり,poly(LysMA-b-DMS)はトロンビンの酵素活性を促進しなかった.また,poly(LysMA-b-DMS)存在下における D-Val-Leu-Lys-pNA・2HCl(S-2251)を用いた組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)によるプラスミノーゲン活性化試験から,この酵素反応は Michaels 定数(Km)は Km=0.09 mM と一定であったが,Vmax はコントロールに比べて 1.5~1.7 倍となり,線溶活性を亢進することを認めた.
  • 谷田 雅洋, 川口 泰広, 加計 博志, 大石 勉
    2008 年 65 巻 2 号 p. 157-163
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    熱膨張性マイクロカプセルを成形する場合のポイントはマイクロバルーンをいかに破壊せずに成形品の中に均一分散させるかである.そのためには内包されている発泡剤の蒸気圧,シェルポリマーへの拡散性,シェルポリマーの耐熱性およびガスバリヤー性を最適化する必要がある.
      そこで多変量解析の手法を用いて熱膨張性マイクロカプセルの発泡特性を解析した結果,コア•シェル構造を有するマイクロカプセルの原材料物性値,粒径分布および重合槽のかくはん条件により発泡開始温度 Ts,最大発泡温度 Tmax の統計モデルを作成した.
      統計モデルにより発泡開始温度 Ts,最大発泡温度 Tmax に対して定量的に影響を与える因子を特定することができた.高温領域で発泡させるのは拡散係数を小さくできるコア•シェル組成を使用し,コア量アップ,低官能基の架橋剤と水酸化ナトリウムを併用することが必要であり,粒度分布は狭くかつ平均径が小さい方が高温領域で発泡できることが示唆された.また,重合条件として重要な重合槽回転数が発泡性能へ影響することがわかった.
  • 水野 孝志郎, 山下 武彦, 渡邉 佑典, 上野 智永, 石川 朝之, 武田 邦彦
    2008 年 65 巻 2 号 p. 164-170
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリブテン(PB)の 3 種のポリオレフィンおよびポリスチレン(PS)の燃焼炎の位置と熱分解生成物の関係について燃焼状態観察ならびに熱分解生成物の分析とそれら相互の関係から研究を行った.垂直燃焼の場合,燃焼時の炎は PE で下方に移動し,PS では上方に移動した.PP と PB は PE と PS の中間の状態であった.熱分解の状態と生成物分布を測定したところ,PE では低分子量に特徴的な分解生成物が観測されたが,全体としては高分子量の生成物が多かった.これに対して PS では熱分解生成物の種類が限定され,沸点が 170℃ である単量体がモル比で 0.73,燃焼熱の割合で 54%を占めていた.燃焼熱加重平均沸点(CHWABP)と垂直燃焼の炎の位置の関係を求めたところ,上限平均位置は燃焼熱加重平均沸点に比例しており,下限平均位置は PE と PS に明確な差が見られた.炎の位置と高分子材料を使用した場合の火災に対しての安全性は密接に関係し,熱分解生成物の分布によってより安全な設計が可能になると考えられた.
  • 水野 孝志郎, 山下 武彦, 渡邉 佑典, 上野 智永, 石川 朝之, 武田 邦彦
    2008 年 65 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    パラフィンおよびポリエチレン(PE)を用いて,高分子材料の分子量と燃焼との関係について検討した.パラフィンから超高分子量 PE までの分子量の大きく異なる飽和炭化水素の垂直燃焼実験の結果から,揮発ガス比率が 1 wt%程度とほとんど揮発ガス成分が生成せず,全く燃焼継続しない分子量の領域が存在することがわかり,しかも,その範囲はパラフィンの 240 から PE の一部である 35000 程度にまで及ぶことがわかった.PE の高分子のからみ合いと粘度および温度の関係について検討した結果,Mw が 35000 程度の場合,融点 130℃ から分解開始温度である 400℃ までの比較的広い温度帯で液体として存在しうることがわかった.PE は粘度の温度依存性が小さく,分子量依存性が大きいため,Mw 50000 以上になると燃焼表面温度の 530℃ に達して激しく熱分解し,溶融しながら燃焼する.このことから,分子量の制御によって燃焼性を抑制できる可能性が示唆された.
  • 橋本 保, 三澤 蔵充, 漆崎 美智遠
    2008 年 65 巻 2 号 p. 178-184
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    4-ヒドロキシブチルビニルエーテルの重付加により得られるポリアセタール(PHBVE)をソフトセグメントとして有するポリウレタンエラストマー(PHBVE-PU)を合成し,PHBVE-PU の熱的性質と力学的性質に及ぼすソフトセグメント鎖長の影響を検討した.PHBVE-PU の弾性率やゴム弾性を示す温度領域は,ソフトセグメントである PHBVE 鎖長により制御でき,従来の汎用的なポリエーテル系熱可塑性エラストマーと同程度の物性を有していた.PHBVE-PU は,熱的に安定であるが,塩酸を作用させると,ポリアセタールソフトセグメントが室温で速やかに加水分解し,分解生成物として 1,4-ブタンジオールを定量的に生成した.
ノート
  • 亀田 純一, 柴田 泰裕, 香西 博明
    2008 年 65 巻 2 号 p. 185-187
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    We have investigated the oxidation decomposition of vulcanized rubber using hydrogen peroxide (H2O2)/carboxylic acids such as formic acid (HCOOH), acetic acid, acetic acid anhydride and propanoic acid. The optimum conditions were H2O2 5.0 mL, HCOOH 10 mL, 60°C, and 6 hours against a 0.5 g sample. Suitable results were obtained for residue portions of 0.15 g and product portions of 0.25 g. The product portion was found to be soluble in DMF or DMSO.
  • 蔵谷 和英, 長谷川 聡, 勝又 崇之, 香西 博明
    2008 年 65 巻 2 号 p. 188-191
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    Liquid crystalline poly(phosphate ester)s were synthesized by polycondensation of bis(2-hydroxyethyl)terephthalate and 4-[6-(ω-biphenyl-4-yloxy)-hexyl]-phenyloxy-phosphorodichloridate. The polymers were obtained with high yield, i.e., 49-57%. The molecular weights of the polymers were Mn=14300, Mw=16500, Mw/Mn=1.15. The liquid crystallinity of these polymers was studied by differential scanning calorimety, polarizing optical photomicrography, and X-ray diffractometry. It was found that most of the polymers had enantiotropic liquid crystallinity having a smectic phase.
  • 荒井 博樹, 粟野 宏, 高橋 辰宏, 米竹 孝一郎, 羽場 修
    2008 年 65 巻 2 号 p. 192-195
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    To improve interfacial adhesion between multi-walled carbon nanotubes (MWCNT) and polymers, the quantitative analysis of MWCNT and its chemical modifications becomes important. MWCNTs are mainly categorized into two structures. One is a tubular type, and many layers of graphite sheets are rolled; this type is commercially available as VGCF®. The other is a cup-stacked type, and six-membered rings arranged like cups are stacked up, this type is commercially available as Carbere®. In this study, the quantitative surface analysis for the two MWCNTs, which are already graphitized (no residual of metal catalyst), by neutralization titration was carried out. COOH groups are introduced by using the Friedel-Crafts reaction on the defect parts of the two MWCNTs. The introduced amounts of carboxyl groups were determined by neutralization titration. The results suggested that about 17 carboxyl groups per 100 carbons on VGCF® surface, and about 22 carboxyl groups on Carbere® were introduced, respectively.
  • 鬼村 謙二郎, 川島 昌之, 山吹 一大, 磯部 行夫, 大石 勉
    2008 年 65 巻 2 号 p. 196-198
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    α,ω-Dimesyl-terminated poly(ethylene glycol) (PEG-Ms2) and α,ω-ditosyl-terminated PEG (PEG-Ts2) were prepared from PEG (PEG1000; Mn=1000 and PEG4000; Mn=4000) and methanesulfonyl chloride or p-toluenesulfonyl chloride. α,ω-Ditosyl-terminated PEG4000 pseudorotaxane (PEG4000-TS2-pseudorotaxa-α-cyclodextrin (α-CD) was prepared from PEG4000-TS2 and α-CD in H2O. (S)-(-)-1,1′-Bi(2-naphthol) ((S)-BINOL) was added to the pseudorotaxanes in the presence of sodium hydride to give PEG-rotaxa-α-CDs end-capping (S)-BINOL (PEG-BINOL2-rotaxa-α-CD). The purified PEG4000-BINOL2-rotaxa-α-CD was isolated in 38% yield. For a PEG4000-TS2, the average number of α-CD's per chain is 29, which corresponds to 64% coverage. After end-capping reaction, the average number of α-CD's per chain is 14, which corresponds to 31% coverage. The threading level in the polyrotaxane is limited by the coverage of the polypseudorotaxane and by the competition between the end blocking reaction and dethreading. In DMF a rapid dethreading occurs.
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