高分子論文集
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65 巻, 4 号
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一般論文
  • 村田 英則, 伊藤 裕二, 新保 智幸, 小柳津 研一, 湯浅 真
    2008 年 65 巻 4 号 p. 277-282
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/23
    ジャーナル フリー
    ヘモグロビンのアポタンパク質を薬物担体とする新規抗酸化剤として,高分子化再構成ヘモグロビン(Cross-link PEGrHb)を合成した.抗酸化作用を有するマンガン 5,10,15,20-テトラキス(N-メチルピリジニウム-2-イル)ポルフィリン(MnT2MePyP)は低分子量体であるため体外に排出されやすい.このためヘモグロビンからグロビン鎖を抽出し,MnT2MePyPを導入することで得た再構成ヘモグロビン(rHb)に,ポリエチレングリコール(PEG)の修飾および架橋により,高分子化した.GPCおよびSDS-PAGEより,分子量増加およびPEG修飾を確認した.また抗酸化剤としての性質を,ストップトフロー法および過酸化水素耐性試験により評価した.Cross-link PEGrHbはMnT2MePyP単体と同程度の抗酸化能を有しており抗酸化剤として期待できることがわかった.またマウスにおいて125Iを用いて標識したCross-link PEGrHbの体内動態分布試験を行った.抗酸化剤としての特性評価としては,パラコート障害マウスを用いた実験を行った.Cross-link PEGrHb投与群では,コントロール群に比べ生存率が向上した.合成したCross-link PEGrHbは血中内で安定に存在し,in vivoにおいて効果的にO2-・を消去する抗酸化剤としての可能性が示唆された.
  • 阿部 四郎, 工藤 孝廣, 大石 好行, 森 邦夫
    2008 年 65 巻 4 号 p. 283-287
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/23
    ジャーナル フリー
    樹脂めっきにおける密着強度の発現は接着現象であることに注目し,ABS樹脂めっきに対する分子接着技術の応用展開を試みた.分子接着剤として1分子中にジチオールトリアジニル基とトリエトキシシリル基を有する6-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオールモノソジウム塩(TES)を用いた.TESがABS樹脂と反応できるようにコロナ放電処理を行い,ABS樹脂表面をOH化した.ABS樹脂のOH化濃度はコロナ放電中の湿度とともに増加した.得られたOH化ABS樹脂はTES溶液中で処理すると,樹脂表面に接着性が付与された.TES結合ABS樹脂は触媒担持の過程でS-Pd結合が生成した.触媒担持ABS樹脂は無電解銅めっきおよび電気銅めっきを経て銅はくが形成された.はく離強度はTES処理条件と結合構造の影響を受け,樹脂層破壊が起こるほど高い値が得られた.
  • 山下 武彦, 水野 孝志郎, 上野 智永, 石川 朝之, 武田 邦彦
    2008 年 65 巻 4 号 p. 288-294
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/23
    ジャーナル フリー
    ポリ乳酸(PLA; Polylactic acid)の燃焼抑制について,金属酸化物を添加した際の熱分解との関係から検討を行った.その結果,数種の金属酸化物を添加した試料において燃焼が抑制される結果が得られた.燃焼時に溶融して落ちたDripの分子量を解析したところ,燃焼したNeatのMw 10000程度に比してMw 20000程度と分子量は大きかった.この結果から,揮発ガス成分となるような低分子量の生成物を生成することなく,高分子鎖が切断されてMwが低下したため,燃えないで垂れるのみのPLAになったと考えられる.熱重量分析の結果がほとんど変化しないものが燃えないということが見られた.それに対して,激しく分解を促進することが知られている触媒を添加した場合は熱重量曲線が低温に移動し,燃焼が激しくなって炎が上方へ大きく成長した.このことから,触媒による燃焼抑制においては,1)重量減少温度をあまり激しく低下させることなく,2)高分子の主鎖のみを選択的に切断し低分子量の可燃性ガス成分を出さない触媒を添加すること,により燃焼抑制が期待できることが得られた.
  • 葛西 裕, 赤平 亮, 角田 世治, 阿布 里提, 浦山 健治, 瀧川 敏算
    2008 年 65 巻 4 号 p. 295-300
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/23
    ジャーナル フリー
    アルギン酸を硫酸化することにより硫酸化アルギン酸(AS)電解質膜を作製し,導入された硫酸基の置換度(DS),プロトン伝導度,メタノール水溶液に対する含溶媒率,およびメタノール透過係数(PM)を調べた.硫酸化反応に用いた三酸化硫黄ピリジン錯体の量に応じてDSが増加したが,ASが水中でも溶解せずにゲルとして存在できるDSの上限値があることがわかった.AS電解質膜のプロトン伝導度はDSとともに増加した.AS電解質膜の含溶媒率はメタノール濃度が増大するにつれて減少し,PMはメタノール濃度によらずほぼ一定であった.AS電解質膜は高メタノール濃度においてNafion 112®よりメタノール透過抑制に優れていた.AS膜中の親水性の官能基が水と強く水和するためと考えられる.また,ASを架橋することにより含溶媒率が減少しPMを低減させることができた.
  • 畦地 利夫, 一ノ瀬 博明, 吉川 宏美, 行本 直人, 大原 利一郎
    2008 年 65 巻 4 号 p. 301-308
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/04/23
    ジャーナル フリー
    ゴム材料は製品化における成形,加硫といった過程を考えた際,表面,特にゴム特有の状態である未加硫ゴムにおける表面が重要となり,ゴムのぬれ性や接着性の議論には,その表面状態の詳細の把握が重要である.しかし,表面処理としてプラズマ処理を用いた報告は樹脂材料,オレフィン,金属表面への適用効果の報告は数多いが,エラストマーの中でも特にゴム表面への適用した報告事例は極めて少ない.そこで本報では,加硫操作を行う前の状態である未加硫ゴム表面のプラズマ処理による挙動,およびその加硫物性に対する影響に関して報告する.未加硫ゴム表面に対するプラズマ処理は,そのゴム表面の粗面化といった物理的な状態変化を引き起こし,ゴム表面での架橋効率に影響する低分子量表面層を形成するとともに,ゴム表面に存在する加硫剤の存在状態を変化させ,加硫物性に影響する.詳細には,プラズマ処理により,酸素官能基が付加,さらにゴム表面に存在する硫黄原子と酸素が結合を形成し,その結果プラズマ処理ゴム面の加硫効率に影響を及ぼすことが示唆される.
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