高分子論文集
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65 巻, 5 号
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総説
  • 成田 麻子, 中條 善樹
    2008 年 65 巻 5 号 p. 321-333
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/24
    ジャーナル フリー
    無機ナノ粒子は,分子ともバルク固体とも異なる性質をもち,その小ささゆえに応用方法も非常に多い.その無機ナノ粒子だけでも優れた性質をもつが,さらに有機材料を組合せることで,片方だけでは得られない,新たな機能を持った材料が作製できる.本報では,ナノ粒子に関連した技術の中でも,特に有機材料を用いたことで達成された例について大きく三つの分野に分け,各分野における興味深い報告例を紹介する.第 1 章にてナノ粒子に必要とされる技術の概要を述べた後,第 2 章ではコアシェル型粒子,特殊形状ナノ粒子など有機材料を用いた形状制御について紹介する.第 3 章では有機分子の表面修飾による機能化,あるいは応答性の付与について,第 4 章においてはナノ粒子を規則的に並べる方法や,共有結合で一次元的に繋げた,ナノアレイの作製について紹介する.
総合論文
  • 森山 佳子, 竹田 邦雄
    2008 年 65 巻 5 号 p. 334-341
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/24
    ジャーナル フリー
    陰イオン界面活性剤 sodium dodecyl sulfate が極微量添加されると,タンパク質の構造が尿素変性,熱変性から保護されること,また,この界面活性剤が微量添加されると,尿素変性で壊れた二次構造が再形成されることを紹介する.タンパク質としては,ウシおよびヒト血清アルブミンを使った.タンパク質や高分子と界面活性剤の相互作用において,界面活性剤はタンパク質や高分子鎖上でミセル状の会合体を形成し,それらの構造を変化させるが,界面活性剤による保護と再形成の機能は,界面活性剤が会合体を形成できないくらい低い界面活性剤濃度で起こり,界面活性剤のモノマーによって発揮されている.この現象は,界面活性剤の疎水基の長さや親水基の正負の電荷に依存し,界面活性剤が,その両親媒性の特性を活用して,タンパク質の特定の部位間に架橋を形成することによると考えられる.
一般論文
  • 邱 建輝, 長岡 洋史, 張 敏, 村田 拓哉, 馮 輝霞, 工藤 素, 鎌田 悟
    2008 年 65 巻 5 号 p. 342-348
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/24
    ジャーナル フリー
    本報は豆腐の副産物であるおからの脱脂処理の効果および作製した生分解性高分子複合材料の力学特性などについて検討した.その結果は次のとおりである.(1)エチルアルコールなどの溶剤はおからに含まれている脂質を抽出することが可能である.また,脱脂おからを添加した複合材料は大豆特有の臭いを抑えることができる.(2)おからの脱脂処理はかくはん時間を増加するよりも,処理回数を増やした方が効果的である.(3)脱脂おからを添加した複合材料は未脱脂おからより高い引張強度を有することがわかる.これは,主に脱脂処理によりおから粒子の微細化,分散性の改善および粒子表面に微孔の形成による異相界面の接着性の向上などと考えられる.(4)脱脂おからを 50%まで添加しても複合材料の引張,曲げおよび衝撃強さはそれほど,急激な低下がなかった.これは前述した脱脂処理の効果と関係があると思われる.
  • 湯浅 真, 小柳津 研一, 村田 英則, 豊田 裕次郎, 南波 真広, 設楽 正樹
    2008 年 65 巻 5 号 p. 349-354
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/24
    ジャーナル フリー
    軸配位子が中心金属近傍に必ず存在することで,軸配位子を添加した系よりもエントロピー的に有利に働くと考えられる新規分子内軸塩基ポルフィリンを設計し,活性酸素検出用電極触媒に応用した.ポルフィリン環にイミダゾール軸配位子を直接結合させた新規分子内軸塩基ポルフィリンである鉄(III)5,15-ビス[5-(8-N-イミダゾリル-1-イル)オクタンアミド-2-チエニル]-10,20-ジ(3-チエニル)ポルフィリン(Fe(5-8CIm2T)23T2Por)を合成した.電解重合法により,電極上に高分子膜を形成させ,安定度が高い 6 配位構造を可能とした活性酸素センサーを作製した.作製した修飾電極の in vitro における機能評価として,キサンチン(XAN)/キサンチンオキシダーゼ(XOD)系によりスーパーオキシドアニオンラジカル(O2•)を発生させると,クロノアンペロメトリー(CA)における残余電流からの電流値の上昇が得られた.本センサーを用いた O2• の電気化学的応答は,センサーの作用極に一定電圧を印加することにより,O2• の触媒酸化電流として観測された.さらに XOD 活性から算出した O2• 濃度と電流増加量の間に一次の相関が確認されたことから,O2• を定量的に検出できることが示された.安定な 6 配位構造を有することで,O2• の自己不均化反応から派生する,過酸化水素などの妨害物質の影響も回避することが明らかとなった.
  • 境 英一, 川越 誠
    2008 年 65 巻 5 号 p. 355-361
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/24
    ジャーナル フリー
    延伸ポリアミド(PA)6 試料における水の拡散と運動性について,未延伸のものと比較して調査を行った.まず試料を蒸留水中に完全に浸漬させ,重量の経時変化を計測した.また,示差走査熱量計(DSC)により,20℃ から-70℃ に降温させたときの吸収水の凍結挙動を分析することで,吸収水の運動性を評価した.その結果,延伸によって拡散係数および平衡吸水率はともに増大した.さらに,おそらくアミド基との強い相互作用により,未延伸試料中の吸収水は不凍水として存在しているのに対し,高度に延伸した試料においては凍結可能な束縛水の存在を明確に検出した.これらの結果は,延伸した試料中において,高分子相との弱い相互作用下で水分子が凝集して存在できるような不均質領域,もしくは内部欠陥の形成を水分子の動きから検知したことを示している.
  • 水田 健一, 谷田 雅洋, 川口 泰広, 磯部 行夫, 鬼村 謙二郎, 大石 勉
    2008 年 65 巻 5 号 p. 362-368
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/24
    ジャーナル フリー
    重合に水相/有機相/水相(W/O/W)系を用い,難燃性の水を内包することで,安全性に配慮した熱膨張性マイクロカプセルの合成を,開環メタセシス重合(ROMP)により試みた.重合は ROMP の代表的なモノマーであるノルボルネン(NBE)と架橋モノマーとしてジシクロペンタジエン(DCP)をモノマー成分とし,ルテニウム開始剤(PCy3)2(Cl)2Ru=CHPh を用いて行った.
      エチルビニルエーテル(EVE)による反応停止後,メタノール中に分散させることにより,平均粒径 10~40 μm の粒子を得ることができた.加熱観察からは粒子の膨張を確認することはできなかったが,SEM による断面観察の結果から,一部に多中空構造を有する粒子の存在が示唆された.
  • 船津 惇司, 伊藤 眞義
    2008 年 65 巻 5 号 p. 369-374
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/24
    ジャーナル フリー
    電子スピン共鳴(ESR)法により加硫ゴム試料中でひずみにより発生するラジカル種の同定を行った後,架橋形態の異なる(モノスルフィド架橋,ポリスルフィド架橋および過酸化物架橋)加硫ゴム試料について,ひずみにより発生するラジカル濃度の定量化を行った.その結果,加硫促進剤に N-cyclohexyl-2-benzothiazol-sulfenamide(CZ)を用いた場合,g 値として 2.004 を有する吸収は,硫黄ラジカルと炭素ラジカルの両方が関与していること,加硫促進剤に Tetramethyl thiuram disulfide(TMTD)を用いた場合,g 値として 2.014, 2.004 を有する吸収を確認し,このうち g 値として 2.014 を有する吸収は,硫黄ラジカルのみが関与しており,炭素ラジカルと区別できることが確認された.また,架橋形態の異なる試料について印加した力学的エネルギーの増加に伴い g 値として 2.004 を有するラジカル濃度は連続的に増加し,その程度はモノスルフィド架橋>ポリスルフィド架橋>過酸化物架橋となった.これらのこととラジカルのライフタイムが加硫ゴムの力学的疲労に与える影響について検討を行った.
  • 黒木 和志, 宮内 俊幸, 高橋 誠, 田中 渥夫, 盛 秀彦
    2008 年 65 巻 5 号 p. 375-380
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/24
    ジャーナル フリー
    スギおが屑を濃塩酸処理後ポリアミンを導入し,木質バイオマス系機能性材料を合成し,メチルオレンジに対する吸着特性の評価を行った.スギおが屑に濃塩酸を加え,約 100℃ で 4 時間処理したのち,洗浄乾燥後ポリアミンと約 100℃ で反応させてポリアミンを導入した.ポリアミンの種類によってその導入割合は変化(窒素含有量:3.6~8.2%)し,トリエチレンテトラミンでもっとも高い値となった.メチルオレンジ吸着の最適 pH 領域は pH=2~7 であった.吸着等温線は Langmuir 式で表すことができ,飽和吸着量は 1.4 mmol g-1 と高い値であった.吸着速度は速く約 20 分以内で平衡に達し,カラム操作にも十分に対応できる機能材料であった.カラム法により,0.1 w/v%メチルオレンジ水溶液を展開したところ,62 B.V(Bed volume)まで吸着処理が可能であった.さらに,ポリアミン系スギおが屑におけるメチルオレンジの吸着活性点についても検討した.
  • 後藤 恵美子, 岡崎 義光
    2008 年 65 巻 5 号 p. 381-386
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/24
    ジャーナル フリー
    高分子系インプラントの材料劣化評価試験に関して,最適な試験溶液および試験条件を検討することを目的とし,ポリエステル製(PET)人工血管を用いて溶出成分の分析を行った.ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,エチレングリコール,ジエチレングリコールなど生体毒性が懸念される成分の溶出はみられなかった.PET モノマーおよびオリゴマーに関しては,溶液の種類により溶出量が変化し,テレフタル酸(TPA),モノヒドロキシエチレンテレフタレート(MHET),ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)などのモノマーの溶出量は,3%過酸化水素(3%H2O2),生理食塩水(0.9%NaCl),5%エタノールの順で増加した.モノマーおよびオリゴマーの溶出量の合計は,5%エタノールで最も多く,3%H2O2, 0.9%NaCl,超純水の順となった.分析感度が高く,モノマーおよびオリゴマーを多く溶出する溶液として,5%エタノール水溶液を選定した.
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