高分子論文集
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66 巻, 1 号
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総合論文
  • 谷尾 宣久, 小幡 はるな, 岡田 亜弥子, 瀬川 真司, 竹村 祐亮, 金子 倫子
    2009 年 66 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/26
    ジャーナル フリー
    非晶性の透明ポリマー固体に数十ナノメートルのオーダーの屈折率の不均一構造が存在する場合,この不均一構造により光が散乱される.フラットパネルディスプレイ用光学フィルムなど高透明性が要求されるような光学材料に非晶性ポリマーを応用する場合,このような屈折率不均一構造は大きな問題となる.散乱の面からポリマーを高透明化するためには,不均一構造の大きさと屈折率差を小さくさせる構造制御が必要である.ここでは,高純度な透明ポリマー固体を種々の条件で作製し,光散乱法による非晶構造解析と透明性の評価を行った.そして透明性を阻害する屈折率不均一構造の発生は重合条件,熱処理条件に依存することを明らかにした.ポリマーをガラス転移温度以上の温度で熱重合するか,または熱処理することが,光学ポリマーの高透明化のための高次構造制御法であるといえる.
一般論文
  • 工藤 宏人, 渡辺 大輔, 西久保 忠臣
    2009 年 66 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/26
    ジャーナル フリー
    アセタール残基を有する noria(ラダー型環状オリゴマー)誘導体(noria-Acetal)の合成と,その物理的特性,および光脱保護反応性について詳細に検討した.noria のヒドロキシル基のすべてを t-ブチルエステル基,カルボキシル基の順に変換し,最後にアセタール基に変換することで,noria-Acetal を合成した.得られた noria-Acetal は一般的な有機溶媒に容易に溶解し,良好な製膜性と高い耐熱性を有することを明らかとした.noria-Acetal の光脱保護反応は,光酸発生剤を含有させた薄膜に光照射を行い検討した.その結果,アセタール基はカルボキシル基に変換され,光照射後の薄膜は 2.38 wt%のテトラメチルアンモニウムハイドライド水溶液に可溶であった.これらのことは,noria-Acetal は次世代ポジ型レジスト材料として応用展開が可能であることを示唆した.
  • 中井 直也, 福田 誠
    2009 年 66 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/26
    ジャーナル フリー
    He-Cd レーザー(波長 325 nm)による二光束干渉露光を応用した微細加工法によって周期が 403 nm および 272 nm のレリーフ型回折格子を作製した.レーザー媒質として有機色素である rhodamine B および stilbene 420 を,キセロゲルおよびアクリル中に分散して固体化し,それぞれの回折格子表面にコーティングして分布帰還型(Distributed feedback:DFB)固体化色素レーザーを作製した.それぞれのデバイスを Nd:YAG レーザーの第二高調波(波長 532 nm)および第三高調波(波長 355 nm)を用いて励起したところ,中心波長 600.5 nm, 601.1 nm において赤色のレーザー発振を,407.1 nm において青色のレーザー発振をそれぞれ観測した.そのスペクトルを測定したところ,半値全幅がそれぞれ約 0.1 nm のシングルモードのレーザー光であることが確認された.また,回折格子の評価を行ったところ,回折効率および耐久性に関して,DFB 固体化色素レーザー用の共振器として十分な性能を持っていることがわかった.
  • 谷尾 宣久, 桃野 裕介, 細井 敬太, 大倉 雅史, 松原 潤樹
    2009 年 66 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/26
    ジャーナル フリー
    光学ポリマーには非晶性のポリマーが用いられている.筆者らはポリマーの本質的な光学特性と非晶構造との定量的な関係を明らかにし,ポリマーの光物性値を繰返し単位の化学構造のみから定量的に予測するシステムの構築を目指している.ここでは,ポリマーを構成する原子の種類とその数を入力するのみで,屈折率およびその波長依存性(アッベ数)が計算できる屈折率予測システムについて報告する.この屈折率予測システムは,光学ポリマーの屈折率制御・分子設計に有用であり,本システムを用いることにより,光学ポリマーの効率的な材料開発を行うことが可能となる.
  • 谷尾 宣久, 塚原 直樹
    2009 年 66 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/26
    ジャーナル フリー
    ポリメタクリル酸メチル(PMMA),ポリスチレン(PS)などの非晶性光学ポリマーは,ガラス状態では熱力学的に非平衡な状態であり,Tg 付近の温度では体積やエンタルピーなどの熱力学量が緩和し,化学的な変化を伴わない物理的エイジングが起こる.エイジングがポリマーの光学特性に及ぼす影響について研究することは,ポリマーを光学材料へ応用する場合の,光学特性の安定性・信頼性を吟味する上で重要である.筆者らは,エイジングによるわずかな体積変化を,プリズムカップリング法を用いた屈折率測定により評価している.ここでは,PS ガラスのエイジングに伴う屈折率変化について報告する.
  • 丸山 研, 高添 泰地, 工藤 宏人, 西久保 忠臣
    2009 年 66 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/26
    ジャーナル フリー
    ビスフェノール A ビス(クロロホルメート)(BABC)と 1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)との反応をピリジン存在下,THF 中,25℃,3 時間の条件で行い,対応する可溶性のハイパーブランチポリカーボネート(HBPC)を高収率で合成した.次に,得られた HBPC と無水メタクリル酸との反応をピリジン中,25℃,12 時間の条件で行い,末端にメタクリロイル基を有するハイパーブランチポリカーボネート(HBPCMA)を合成した.HBPCMA の光ラジカル重合は,3 wt%の光ラジカル重合開始剤を添加した HBPCMA のフィルムを作製し,光源として 250-W 超高圧水銀灯を用いて光照射を行った.その結果,光ラジカル重合は容易に進行し,光照射 15 分でのメタクリロイル基の反応率は 28%に達した.同様に,末端にメタクリロイル基を有する直鎖状ポリカーボネート(LPCMA)を合成し,その光ラジカル重合についても検討を行った.その結果,同様の光照射条件下での LPCMA 中のメタクリロイル基の反応率は 13%であった.このことは,HBPCMA は LPCMA と比較して優れた光重合特性を有することを示唆している.次に,HBPCMA および LPCMA の光ラジカル重合前後の屈折率測定を行った結果,HBPCMA の光ラジカル重合前後の屈折率変化(ΔnD)は 0.007 あったのに対して,LPCMA は 0.004 であり,光ラジカル重合前後で,HBPCMA は LPCMA と比較して大きな屈折率変化を示すことも判明した.
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