高分子論文集
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66 巻, 6 号
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総説
  • 須磨岡 淳, 小宮山 眞
    2009 年 66 巻 6 号 p. 191-201
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/25
    ジャーナル フリー
    水溶液系で機能するペプチドやタンパク質などの生体分子に対する人工レセプターは,分離・検出材料や医薬などのさまざまな分野においてその応用が期待されている.ホスト-ゲスト化学の発展につれ,厳密な分子設計に基づいた人工レセプターがこれまでに数多く開発されてきた.しかし,天然に存在するさまざまなゲスト分子に対応し,テーラーメイド性をもつ人工レセプターの設計方法も必須であり,これを解決する手段として分子鋳型(モレキュラー・インプリント)法が発展してきた.従来の分子鋳型法では,ゲストの認識に水素結合を利用していることが多く,水系で十分な機能をもつインプリント高分子の報告は限られていた.本稿では,ペプチド類をターゲットとした人工レセプターの現状と,筆者らが最近開発した生理活性オリゴペプチドを認識するシクロデキストリン・インプリント高分子について紹介する.
一般論文
  • 宮川 栄一, 神澤 岳史, 徳満 勝久, 田中 皓
    2009 年 66 巻 6 号 p. 202-210
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/25
    ジャーナル フリー
    低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムにガンマ線照射および電子線照射することによる構造変化と力学的性質の変化について研究を行った.電子線照射を行った LDPE 試料では,熱分析による融解熱の変化から,電子線照射初期に結晶構造の一部が崩壊し結晶の割合(結晶度)の低下が認められるが,その後非晶鎖部の分子鎖が再結晶化することにより結晶度は増加する傾向が認められた.また,GPC による分子量測定結果より,電子線照射試料では架橋によるゲル化反応が優先的に進行し,電子線照射による分子鎖切断,低分子量化の反応がほとんど生じていないことを示唆する結果が得られた.一方,ガンマ線照射 LDPE 試料においては,ガンマ線の照射に伴って初期の段階では急激に架橋反応が生じるが,照射量の増大に伴って分子鎖の切断反応が進行し低分子量化する傾向を示したことより,ガンマ線照射と電子線照射では分子量分布に与える影響は全く異なることがわかった.しかしながら,電子線およびガンマ線などの放射線照射で引き起こされる架橋反応は,分子鎖末端構造がトランス型構造を経由して進行しており,光劣化の反応機構とは異なる結果が得られた.
  • 上原 周一郎, 櫻木 美菜, 櫻井 和朗
    2009 年 66 巻 6 号 p. 211-216
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/25
    ジャーナル フリー
    カリウムイオンの存在下で 5′-GMP にポリアリルアミン(PAA)を加えると,極めて低い 5′-GMP 濃度(0.01 wt%以下)において誘起円偏光 2 色性スペクトルを観測した.このスペクトルは G-カルテット構造に特徴的な形状を示した.G-カルテット構造を形成するためには 15 wt%以上の 5′-GMP 濃度を要するという従来報告されてきた研究結果と比較すると,本研究の 5′-GMP 濃度はその 1000 分の 1 以下という極めて低い濃度である.CD スペクトルの変化は,PAA のモル平均分子量,N/P 比,カチオン種,カチオン濃度に大きく依存することがわかった.比較としてモノマーであるアリルアミン(AA)を 5′-GMP に加えた場合にはほとんど CD スペクトルに変化が見られなかったことから,5′-GMP が PAA のアミノ基と静電的に結合し,高分子鎖状で協同的に G-カルテット構造を形成していることが示唆された.また,粉末 X 線散乱の実験を行ったところ,5′-GMP に PAA を加えた場合カリウムイオン存在下で約 3.1 Å の距離でスタッキングした塩基が連なっていることが示されたが,カチオン非存在下およびナトリウムイオン存在下では連続した塩基のスタッキングは観測されなかった.
  • 篠﨑 裕樹, 大山 俊幸, 高橋 昭雄
    2009 年 66 巻 6 号 p. 217-224
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/25
    ジャーナル フリー
    ベンジルメタクリレート(BzMA),およびエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を 4,4′-ジアミノジフェニルスルホン(DDS)硬化エポキシ樹脂の硬化時に in situ 重合させ,エポキシ樹脂の熱的,機械的特性を損なうことなく靭性を向上させることを試みた.改質剤モノマー(BzMA+EGDMA)の添加量を 14 wt%,改質剤中の EGDMA 導入量を 5 mol%とした系において,曲げ強度の低下を抑制しつつ破壊靭性値(KIC)を 70%向上させることができた.このとき曲げ強度は未改質系と同等であり,曲げ弾性率は未改質系を上回った.ガラス転移温度は未改質系より約 30℃低下した.改質硬化物の動的粘弾性試験(DVA)から,in situ 法による改質剤とマトリックスの相溶性の向上,および EGDMA の導入による相溶性のさらなる向上が示された.DVA および走査型電子顕微鏡(SEM),透過型電子顕微鏡(TEM)による観察結果から,改質剤とマトリックスの界面が一部相互侵入高分子網目(IPN)を形成したことにより曲げ強度を維持しつつ強靭化が達成されたと考えられる.
  • 平田 博志, 萩原 時男
    2009 年 66 巻 6 号 p. 225-229
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/25
    ジャーナル フリー
    ポリスチレン(PS)にポリマレイミドスチレン(PMS)をコーティングおよび/またはブレンドした材料の酵素固定化高分子材料としての機能を,材料フィルムに成形して評価した.架橋ポリスチレン(CLPS)を含む PS に PMS をコーティングおよび/またはブレンドするとウレアーゼを十分な活性を維持したまま固定化できた.PS フィルムでは PMS コーティングを行ってもウレアーゼを材料表面に安定に固定化できなかったのに対し,CLPS を含んだフィルムは,超音波照射後も十分な活性を維持しているほどにウレアーゼを安定に固定化できた.また,CLPS/PS/PMS 組成の材料はグルコースオキシダーゼを安定に固定化可能で,グルコースセンサー材料となる可能性があることが明らかとなった.
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