ラジカルおよびリビングアニオン重合法によって合成された種々のポリ(
N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPA)の水溶液の相挙動と曇点に関する系統的な調査を行った.アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を開始剤に用いて,4 種類の溶媒(メタノール,
tert-ブタノール,ベンゼン,1,4-ジオキサン)中でラジカル重合により合成された PNIPA 試料は,立体規則度が同じであるにも関わらず,それらの水溶液の曇点が実験誤差を超えて異なることがわかった.曇点が約 1℃ 異なる
tert-ブタノール中とベンゼン中で合成された試料について,メタノール中 25.0℃ において静的光散乱および粘度測定を行い,平均二乗回転半径<
S2>と第二ビリアル係数
A2,固有粘度[η]を決定し,それらの解析の結果から,2 種類の PNIPA 試料は鎖の平均的広がりが異なり,その違いは試料の一次構造の違い,すなわち分枝点の数の違いに起因することを明らかにした.ジフェニルメチルカリウムを開始剤に用いたリビングアニオン重合により合成された直鎖 PNIPA 試料は,疎水性開始末端基の影響により,その水溶液の曇点が分子量の減少とともに急激に低下することがわかった.さらには,PNIPA 試料の水溶液について,曇点近辺における透過光強度の温度依存性を詳細に調査し,また静的および動的光散乱測定を行い,曇点において同水溶液が濁り始めるのは巨視的な液-液相分離によるものではなく,PNIPA の会合体が形成されるためであることを明らかにした.
抄録全体を表示