高分子論文集
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67 巻, 10 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総合論文
  • 金子 芳郎, 門川 淳一
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 67 巻 10 号 p. 553-559
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    本報では,アミロースと合成高分子からなる包接錯体の新しい創製法として,近年筆者らが展開してきた“つる巻き重合”について紹介する.ホスホリラーゼ酵素を触媒とするアミロース生成重合を,適当な疎水性を有するポリエーテル,ポリエステル,ポリエステル-エーテル,ポリカーボネートなどのゲスト高分子存在下で行ったところ,ゲスト高分子鎖に巻き付くようにアミロース生成重合が進行し,アミロース-高分子包接錯体が得られることを見いだした.また,つる巻き重合の手法では錯体形成が困難である疎水性の強いポリエステルの場合には,2 種類の酵素触媒重合を並列に行うことで,アミロース-強疎水性ポリエステル包接錯体が形成されることがわかった.一方,つる巻き重合において,アミロースが構造の似通った 2 種類の高分子混合物から 1 種類の高分子のみを選択的に包接することも明らかにした.さらに本報では,つる巻き重合の手法を利用したアミロース包接型ヒドロゲルの創製とその酵素的崩壊/再生挙動についても解説する.
  • 亀田 直弘, 増田 光俊, 清水 敏美
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 67 巻 10 号 p. 560-573
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    疎水部メチレン鎖の両端に異なる親水基を有するくさび形脂質分子の自己組織化により,サイズ次元および内外表面官能基の配置が精密に制御された単分子膜構造を基本とするナノチューブの構築に成功した.内径 10-100 nm の親水性に富んだナノチューブ中空シリンダーが生体高分子に対してメゾスケール系ホストとして機能すること,外部刺激により包接と放出の on-off 制御が可能であることを実証した.また,ナノチューブ中空シリンダー内に強く拘束されたタンパク質は,熱および化学的安定性が著しく増大するなど,ナノ空間特有の現象を見いだした.ナノチューブ中空シリンダー内の溶媒物性,ゲストの動的挙動も併せて評価した.さらに,ナノチューブがネットワーク階層化したナノチューブヒドロゲルの創製にも成功し,従来の高分子架橋ヒドロゲルや超分子ヒドロゲルが持ちえないナノ空間特性を有するソフトマテリアルとして機能することを明らかにした.
  • 中川 勝統, 酒井 俊亮, 近藤 政晴, 出羽 毅久, 堀部 智子, 橋本 秀樹, 南後 守
    原稿種別: 総合論文
    2010 年 67 巻 10 号 p. 574-583
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    光合成膜中では,光エネルギー変換機能をもつタンパク質超分子複合体に含まれる色素分子が,タンパク質と相互作用をしてその機能を発揮している.本報では,光合成のアンテナ系タンパク質超分子複合体(LH1 複合体)中のカロテノイド色素分子の構造と機能の関係を調べるために,共役二重結合鎖長の異なるカロテノイドを用いて LH1 複合体の再構成を行った.そして,得られた再構成 LH1 複合体の Stark スペクトル測定を行い,カロテノイドおよびバクテリオクロロフィル a(BChl a)周辺の静電場環境を評価した.さらに,カロテノイド分子の半経験的分子軌道計算を行って,LH1 複合体中のカロテノイド分子の立体構造を解析した.その結果,このカロテノイド分子は,結晶構造が報告されている LH2 複合体中のカロテノイドと同様に,全トランス体のねじれ構造でタンパク質との結合部位に組織化されていると考えられた.
一般論文
  • 三浦 佳子, 横山 義之, 柴田 千絵里
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 67 巻 10 号 p. 584-589
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    (Val-Pro-Gly-Val-Gly)2 のシーケンスを持つ,エラスチンモデルペプチドとジスルフィド結合を持つリポ酸を結合させた,Lipo-VPGVG2 を合成した.この分子は,水溶液中,水中でコンホメーションの変化,水溶性の変化を示した.DSC によって観察すると,温度応答的な相転移が示唆された.また,金基板を Lipo-VPGVG2 溶液に浸漬すると,自己組織化膜(SAM)を生成した.SAM の形成は FTIR, XPS, QCM を用いて確認を行った.得られた Lipo-VPGVG2 の SAM 上に NIH 3T3 線維芽細胞を播種すると,20-80 nM で SAM を形成した場合に,細胞の接着が認められた.この SAM を 4℃ に冷却すると細胞の剥離が認められ,Lipo-VPGVG2 が温度応答的な生体機能を発揮することが明らかとなった.
  • 小野田 光宣, 阿部 弥生, 多田 和也, 川北 悠介, 藤里 俊哉, 宇戸 禎仁
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 67 巻 10 号 p. 590-595
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ポリピロール(PPy)やポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)のような導電性高分子を用いて生体との親和性が高い神経刺激電極を作製することである.ここでは,マウスの線維芽細胞や筋芽細胞を用いた生体親和性の評価を行った.ポリピロール膜やポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)膜上に細胞を培養した結果,培養細胞は突起を伸展して成長し 1 週間以上にわたって生存した.これらの実験結果は,PPy や PEDOT のような導電性高分子が,高い生体親和性を持ち,神経刺激電極に利用できることが示唆された.
  • 平野 義明, 田宮 伸剛, 岡 勝仁
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 67 巻 10 号 p. 596-604
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    β-シート構造を構築する RAD16 ペプチド分子間の水素結合,疎水性相互作用や静電的相互作用の効果を高める手法として,「分岐型ペプチド」に着目した.分岐型ペプチドの設計方法として,分岐の中心部に Lys を用いて,Lys, 2Lys-1Lys の α 位のアミノ基,α 位のカルボキシル基および側鎖の ε 位のアミノ基のそれぞれ三方向に,ペプチドフラグメントを導入した.その際に,DPro-Pro 残基および Gly-Gly-Gly 残基をスペーサーとして,分岐の三方向にそれぞれ導入した.
      本研究では,このように分子設計したペプチドを,Fmoc 固相合成法により合成した.CD で二次構造を解析した結果,RAD16 および bRAD8/8/16G は水溶液中で β-シート構造を構築したが,その他のペプチドはランダム構造であった.ペプチドの自己組織化を AFM で観察したところ,水溶液中で β-シート構造を構築した RAD16 および bRAD8/8/16G は,ナノファイバーを形成した.また,水溶液中でランダム構造であった bRAD16/16/8G もナノファイバーを形成した.しかし,ナノファイバーを形成した分岐型ペプチドは MALDI-TOF-MS で測定できなかった.このことは,ペプチド分子間に強い分子間相互作用が働いたためと推察できる.
  • 野口 威照, 浦上 直人, 今井 正幸, 山本 隆
    原稿種別: 一般論文
    2010 年 67 巻 10 号 p. 605-610
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/25
    ジャーナル フリー
    脂質二分子膜で構成されるベシクルは,内外の浸透圧の違いにより,球状,prolate 型,oblate 型,stomatocyte 型など,さまざまな形態に変化することが実験的に観察されている.このようなベシクルの形態変化を,散逸粒子動力学法によりシミュレーションを行うことで調べた.ベシクル内部の水分子数の減少にともない,球状ベシクルから prolate 型と oblate 型にベシクルの形態が変化する様子が確認できた.この形態変化を詳しく調べるために,ベシクル内外の脂質分子数を変化させ,シミュレーションを行った.その結果,prolate 型から oblate 型,oblate 型から prolate 型へ形態変化する様子がシミュレーションで観察することができた.このことから,prolate 型と oblate 型の分岐はベシクル内外での脂質分子数の違いが原因であることがわかる.この結果は,ADE モデルの結果と非常によく一致していると言える.
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