同数の原子団を有し,なおかつ分子特性の異なる二種類の鎖状分子,ジエチレングリコール鎖と
n-ペンタン鎖をスペーサーに導入した二量体化合物 α,ω-bis(4-cyanobiphenyl-4'-yloxy)diethylene oxide (CBE2)および α,ω-bis(4-cyanobiphenyl-4'-yloxy)pentane (CBA5)に関して,
2H NMR 測定から算出した配向秩序パラメーターをインプットデータに回転異性状態近似解析からネマチック液晶相における平均的な分子配向と分子形態の推定を行った.エナンチオトロピック・ネマチック液晶相を形成する CBA5 では,スペーサーの
n-ペンタン鎖が全液晶温度域にわたってネマチックコンホメーションと呼ばれる一定の分子形態を保持しているのに対して,モノトロピック液晶性を示す CBE2 では,スペーサーであるオキシエチレン鎖の
PhCO-C-C-O 骨格が温度の低下に伴って tgt 優位のコンホメーションに変化し,それに同期して両端のメソゲンの空間的なねじれを増大させることが明らかとなった.これらの結果は,二量体化合物で発現するネマチック液晶相の安定性が,鎖状セグメント(
PhCO-C-C-X)の分子特性に起因するネマチックコンホメーションの安定性と強い相関にあることを示している.
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