高分子論文集
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67 巻, 4 号
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総説
  • 奥山 健二, 川口 辰也
    2010 年 67 巻 4 号 p. 229-247
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    Triple helix は,すべてのコラーゲンで見られるタンパク質のユニークな構造モチーフである. コラーゲンらせんにおいては,そのアミノ酸配列中で Gly が必ず 3 残基ごとに存在し,イミノ酸含量が多いという厳密な制約が必要である.繊維状コラーゲンの X 線回折パターンは,1920 年代から研究されてきたが,回折データが少ないために繊維回折像だけからではユニークならせんモデルは得られていない.一方,最近 15 年間に,多くのコラーゲンモデルペプチドの単結晶解析が行われ,平均のらせん対称,水素結合ネットワーク,triple helix 周りの水の分布,ヒドロキシプロリンによる triple helix の安定化に対する構造論的な知見など,物理化学的に重要な情報を提供してきた.
一般論文
  • 岩村 武, 坂口 眞人
    2010 年 67 巻 4 号 p. 248-253
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    PVA に TEMPO 骨格を導入した高分子スピンプローブ剤 PVA-TEMPO を合成し,アガロースゲルに導入した.PVA-TEMPO を導入したアガロースゲルの ESR スペクトルを測定したところ,7~60℃ の温度領域で PVA-TEMPO の分子運動性が PVA-TEMPO 水溶液と比較して低下していることが明らかになった.一方,PEG に TEMPO 骨格を導入した高分子スピンプローブ剤 PEG-TEMPO を導入したアガロースゲルの ESR スペクトルを測定したところ,PEG-TEMPO 水溶液と比較して,PEG-TEMPO の分子運動性の低下は認められなかった.本報では,ESR スペクトルと FT-IR スペクトルより,アガロースゲルの内部環境について論じた.
  • 比江島 俊浩
    2010 年 67 巻 4 号 p. 254-262
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    同数の原子団を有し,なおかつ分子特性の異なる二種類の鎖状分子,ジエチレングリコール鎖と n-ペンタン鎖をスペーサーに導入した二量体化合物 α,ω-bis(4-cyanobiphenyl-4'-yloxy)diethylene oxide (CBE2)および α,ω-bis(4-cyanobiphenyl-4'-yloxy)pentane (CBA5)に関して,2H NMR 測定から算出した配向秩序パラメーターをインプットデータに回転異性状態近似解析からネマチック液晶相における平均的な分子配向と分子形態の推定を行った.エナンチオトロピック・ネマチック液晶相を形成する CBA5 では,スペーサーの n-ペンタン鎖が全液晶温度域にわたってネマチックコンホメーションと呼ばれる一定の分子形態を保持しているのに対して,モノトロピック液晶性を示す CBE2 では,スペーサーであるオキシエチレン鎖の PhCO-C-C-O 骨格が温度の低下に伴って tgt 優位のコンホメーションに変化し,それに同期して両端のメソゲンの空間的なねじれを増大させることが明らかとなった.これらの結果は,二量体化合物で発現するネマチック液晶相の安定性が,鎖状セグメント(PhCO-C-C-X)の分子特性に起因するネマチックコンホメーションの安定性と強い相関にあることを示している.
  • 日笠 茂樹, 永田 員也, 中村 吉伸
    2010 年 67 巻 4 号 p. 263-269
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    PP/エラストマー/フィラー三元コンポジットにおいて,二種類の熱可塑性エラストマーを併用し,モルホロジーと力学特性に及ぼす効果を検討した.エラストマーとしてエチレン-オクテン共重合体(EOR)とポリスチレン-block-ポリ(エチレン-ブテン)-block-ポリスチレン トリブロック共重合体(SEBS)あるいはカルボキシル基変性 SEBS(C-SEBS)を併用した.フィラーとして平均粒子径 160 nm の炭酸カルシウム(CaCO3)を用いた.
      EOR と SEBS を併用した場合,EOR がコア,SEBS がシェルのコア-シェル構造のエラストマー粒子と CaCO3 粒子とが各々独立にマトリクス PP 中に分散していた.一方,EOR と C-SEBS を併用した場合,エラストマー相は C-SEBS が EOR 中に分散した粒子となった.CaCO3 の一部はこの複合エラストマー粒子に内包され,他は PP 中に分散していた.
      衝撃強度は CaCO3 粒子の添加によって大きく向上した.エラストマーの影響は,SEBS ≧ SEBS/EOR > EOR = C-SEBS/EOR > C-SEBS の順であった.衝撃特性には,エラストマーと CaCO3 粒子によるモルホロジーが大きく影響していた.
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