高分子論文集
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69 巻, 2 号
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一般論文
  • 伊藤 岩, 坂田 秀行, 古田 元信, 西辻 祥太郎, 井上 隆
    2012 年 69 巻 2 号 p. 55-59
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    ポリプロピレン(PP)に微量(1 wt%以下)のフェノール樹脂と有機過酸化物を添加して溶融混練すると,高流動性と高延性を兼ね備えたフェノール修飾 PP を作製できることを見いだした.高流動化(低分子量化)すれば延性が低下するという二律背反の関係から逸脱できたわけである.延性が向上した理由を明らかにすべく,DSC 曲線・広角 X 線回折パターン・小角 X 線プロフィールなどを観察したが,修飾の前後でまったく差が認められなかった.Hv 光散乱プロフィールの解析により,修飾 PP は著しく秩序性の低い球晶組織であることがわかった.低秩序の球晶組織が形成されることにより変形時に構造欠陥が発生しにくくなり,それが高延性の発現につながっていると考えられる.
  • 佐藤 浩幸, 小林 史典, 市川 幸男, 大石 好行
    2012 年 69 巻 2 号 p. 60-70
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    工業的な高分子量ポリグリコール酸(PGA)の製造方法として,グリコリド(GL)の開環重合による連続的溶融-固相重合法を考案し,種々の重合条件における速度論的解析と重合物のキャラクタリゼーションを行った.本報において,触媒として SnCl2・2H2O,開始剤として 1-ドデカノールを用いて 170℃ で重合を行ったところ,Mw が 280,000,Mw/Mn が 2.0 の PGA を得た.これは既存の文献や縫合糸として市販されている PGA と同等以上の高分子量体であった.140~170℃ の範囲における重合速度の活性化エネルギーが 110±3 kJ/mol で,触媒濃度と重合速度は一次の関係にあった.開始剤が反応速度に及ぼす度合いは,H2O と一級アルコール類に差が認められたが,アルコール化合物間の速度差は小さかった.また,開始剤として使用した H2O と GL との反応により生成するカルボン酸が重合速度を低下させた.重合触媒は PGA の構造に影響しないが,熱安定性に影響した.開始剤は PGA の末端構造と分子量に影響し,開始剤に H2O を用いると PGA の末端構造はカルボン酸基,一級アルコールを用いるとそれに相当するエステル基が導入された.また,PGA の分子量は基本的には開始剤濃度で制御されるが,重合温度は相変化に影響し重要な因子であることがわかった.
  • 小川 俊夫, 沖野 英二郎, 大藪 又茂
    2012 年 69 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    漆はさまざまな優れた物性をもつため,昔から日本各地で使われてきた.しかしながら,漆の硬化は通常酵素に関係しているため長時間を要し,用途が限定されている.そこで,漆の主成分であるウルシオールについて基礎的観点から高温における速い硬化反応を検討した.ウルシオールの硬化反応は 100~200℃ の温度範囲で空気および窒素雰囲気下で行った.次に反応機構を理解するためにスチレンとウルシオールについて高温で粘度の時間依存性を調べた.硬化速度や粘度は温度の上昇とともに増加したが,ウルシオールの粘度上昇は窒素雰囲気よりも空気雰囲気下で著しかった.また,硬化速度も粘度と同様に窒素雰囲気よりも空気雰囲気下において速かった.さらに,膜の酸化も空気雰囲気下での硬化でより著しかった.ところが,スチレンの粘度は雰囲気の影響はなく,ウルシオールはスチレンのような純粋なラジカル重合だけで硬化しているのではないことを示した.
  • 石黒 啓太, 河野 昭彦, 関口 淳, 谷口 克人, 田中 初幸, 堀邊 英夫
    2012 年 69 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    ノボラック系ポジ型レジストにおけるプリベーク(PB)温度と現像特性との関係を検討した.レジストの初期膜厚とレジストの感度(Eth)との関係を Swing Curve より評価し,レジストの現像特性に対する多重干渉波効果(Swing Curve の振幅)とバルク効果(Swing Curve の傾き)の影響を検討した.PB 温度が 80℃ から 130℃ の範囲において,PB 温度が高いほどレジストは低感度となり,特に PB 温度が 120℃ 以上で感度低下が顕著であった.多重干渉効果とバルク効果は PB 温度に依存しなかった.PB 温度の異なるレジストの感光パラメータの評価により,PB 温度 140℃ 以下では,PAC の光吸収,PAC の光分解速度ともに変化がなく,樹脂の光吸収も変化がなかった.さらに,PAC,ノボラック樹脂ともに,140℃ 以下の PB 温度では熱的に変質しないことが,DSC や FT-IR 測定より判明した.一方,PB 温度が高いほど膜中の残留溶媒量が少ないことが TGA 測定より判明した.とくに,PB 温度が 120℃ 以上では残留溶媒量は顕著に減少した.以上より,PB 温度を上げることによりレジスト感度が低下したのは,レジスト膜中の残留溶媒量が減少しレジストが硬化したためであると考えられる.
  • 飯野 智絵, 櫻木 美菜, 増永 啓康, 櫻井 和朗
    2012 年 69 巻 2 号 p. 84-88
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/24
    ジャーナル フリー
    遺伝子送達のための輸送媒体(ベクター)として,一級アミンを有する芳香族カチオン性脂質と,zwitter 型の中性脂質である DLPC(2-Dilauroyl-sn-glycero-3-phosphocoline)を混合して脂質ミセルを準備した.この脂質と 3 量体から 20 量体までの異なる塩基数をもつ一本鎖 DNA を混合して DNA/脂質複合体(リポプレックス)を作製した.これらリポプレックスの構造解析を小角 X 線散乱にて行った.DNA 添加前の脂質ミセルは球状であり,DNA と複合化させると層状のラメラ構造へと変化した.dA と dT でラメラ構造が形成され始める塩基数が異なり,塩基数が多い場合の層間隔にも違いがあった.また円偏光二色性測定よりリポプレックス中の DNA のコンフォメーションが異なり,dA は水中におけるコンフォメーションが変化することなくリポプレックス中に存在しており,dT は水中でのコンフォメーションが維持できず,カウンターイオンや水分子との配位または水素結合が優先され,分子内でのスタッキングが難しく新たな規則性が生まれていることが示唆された.
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