高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
69 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総合論文
  • 瀬 和則
    2012 年 69 巻 5 号 p. 185-197
    発行日: 2012/05/25
    公開日: 2012/05/25
    ジャーナル フリー
    低角度光散乱光度計付きGPC (GPC-LALLS)を用いて,新たに導出した解析式により非線状ブロック共重合体の絶対分子特性化を行った.ブロック共重合体の二つの組成分布を考慮してこの解析式を求めた.一つ目は異なった分子量におけるそれであり,二つ目は同じ分子量内でのそれである.スチレン基を片末端にもつポリスチレンマクロモノマーとポリイソプレンマクロモノマーを逐次リビングアニオン重合して(PSt)n-star-(PIs)mヘテロアーム星型共重合体を合成した.PSt-graft-ポリ(n-ヘキシルイソシアナート)グラフト共重合体を逐次分解して,グラフト鎖数が異なるグラフト共重合体を合成した.これら非線状ブロック共重合体の絶対分子量をGPC-LALLSにより決定し,組成分布をRIとUV検出器の併用により決定した.(PSt)n-star-(PIs)mの三次元分子量分布や腕鎖数分布も決定した.
  • 笹沼 裕二
    2012 年 69 巻 5 号 p. 198-212
    発行日: 2012/05/25
    公開日: 2012/05/25
    ジャーナル フリー
    高分子の一次構造,すなわち分子鎖を構成する元素と化学結合の並びから,モデル化合物の分子軌道法(MO)計算に高分子鎖の統計力学(rotational isomeric state:RIS法)を組合せ,高分子の二次構造,結晶構造,結晶化挙動,溶液・融液物性,熱物性を評価・予測する方法論を築いた.密度汎関数法やMøller-Presset法の電子相関を含む高精度MO計算でモデル化合物の構造を最適化し,幾何パラメータ,コンホマー自由エネルギーを算出し,RIS法の計算で高分子鎖の基礎物性,諸熱力学量を評価する.幾何パラメータの隣接結合の配座依存性を導入した高精度RIS法,窒素を主鎖に含む高分子のための窒素反転現象を取り入れた反転–回転異性状態(inversional-rotational isomeric state:IRIS)法の統計力学も開発した.窒素,酸素,ケイ素,リン,硫黄,セレンのヘテロ元素を含む高分子鎖のコンホメーション解析を行い,これらヘテロ元素に起因するさまざまな引力的分子内相互作用が分子特性を支配していることを明らかにした.ここでは,理論と計算法の概要とコンホメーションとコンフィギュレーションの解析法を実例で紹介する.
  • 田代 孝二, 山元 博子, 吉岡 太陽, Tran Hai NINH, 嶋田 茂, 中谷 剛, 岩本 裕之, 太田 昇, 増永 啓康
    2012 年 69 巻 5 号 p. 213-227
    発行日: 2012/05/25
    公開日: 2012/05/25
    ジャーナル フリー
    種々の外部条件変化に伴う高分子の静的,動的構造変化解明を目的として筆者らが開発してきた広角X線回折(WAXD),小角X線散乱(SAXS),ラマンスペクトルあるいは透過赤外スペクトル同時測定システムについて,その内容を記述するとともに,長所,短所を議論した.これらのシステムを利用したケーススタディーとして,a軸配向ポリエチレンの延伸に伴う再配向現象,ムコン酸エステルモノマー単結晶の光誘起固相重合反応における構造変化,脂肪族ナイロンの二段階高温相転移における構造変化,ポリテトラメチレンテレフタラート配向試料の張力誘起結晶相転移における結晶構造変化と高次構造変化の関わり,ポリ乳酸メゾ相からの等温結晶化現象における構造規則化過程について,それぞれ実験データの解析結果をレビューした.そして,高分子の階層構造変化解明における同時測定システムの有用性を明らかにした.
一般論文
  • 角 紀行, Suksawad PATJAREE, 赤堀 敬一, 山本 祥正, 河原 成元
    2012 年 69 巻 5 号 p. 228-234
    発行日: 2012/05/25
    公開日: 2012/05/25
    ジャーナル フリー
    プロトン伝導性に優れる高分子電解質を作製するためには,より効率良くプロトンを輸送できるパスを形成するための新規概念の確立が必要である.本研究ではプロトン輸送能を有する高分子電解質において連続なプロトン伝導パスを形成するための検討を行った.脱タンパク質化天然ゴム–ポリスチレングラフト共重合体(DPNR-graft-PS)を調製し,クロロホルムに浸漬後,クロロスルホン酸を用いてスルホン化を行うことによりスルホン化DPNR-graft-PSを調製した.浸漬時間60分および5分で調製したスルホン化DPNR-graft-PSのプロトン伝導率は9.8×10-2および3.1×10-2 S/cmであった.TEM観察により浸漬時間60分で調製したスルホン化DPNR-graft-PSではナノマトリックスチャネル構造を形成していることが確認されたが,浸漬時間5分で調製したスルホン化DPNR-graft-PSではナノマトリックスチャネル構造は確認されなかった.このことより,ナノマトリックスチャネル構造を形成することによりスルホン化DPNR-graft-PSのプロトン伝導率は飛躍的に向上することが明らかとなった.
  • 山延 健, 撹上 将規, 宮崎 紀明, 森田 翔, 上原 宏樹
    2012 年 69 巻 5 号 p. 235-241
    発行日: 2012/05/25
    公開日: 2012/05/25
    ジャーナル フリー
    高分子材料の延伸過程における構造変化を検討するために延伸in situパルスNMR観測システムを開発した.この観測システムでは一軸二方向延伸を行うことにより,延伸に伴う延伸部位の移動をなくし,温度制御方法を改良することで延伸部位のみの温度制御を可能にした.この観測システムを分子量分布の異なる超高分子量ポリエチレンの溶融延伸に適用した.その結果,溶融延伸の初期において運動状態の異なる三成分が観測された.これらの成分の割合および緩和時間の変化から溶融延伸の初期において分子鎖からみ合いの解きほぐしの状態が分子量分布により異なることが明らかになった.また,ポリプロピレンの溶融延伸にも適用した結果,延伸温度により配向結晶化が影響されることが明らかになった.これらの結果より,本研究で開発した測定法の有効性が示された.
ノート
Notice
feedback
Top