高分子論文集
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70 巻, 7 号
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総合論文
  • 檜垣 勇次, 馬 偉, 小林 元康, 高原 淳
    2013 年 70 巻 7 号 p. 301-308
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    植物の葉,昆虫の羽,鳥類の羽毛や魚類の体表など,自然界には表面の濡れ性を制御して自己洗浄性や防汚性を発揮する多くの例が見受けられる.これらの表面構造やその防汚メカニズムは一概に一般化することはできず,生息環境や目的に応じて多種多様である.本報では,電解質高分子鎖を高密度に表面に固定化した親水性ポリマーブラシ,微細凹凸表面にフッ素系高分子を含浸固定化した表面の濡れ性と防汚性に関する筆者らの研究成果を報告する.前者は,とくに双性イオン型電解質からなる親水性ポリマーブラシにおいて,水中で水和した膨潤膜を形成し,膨潤膜と水との低界面張力を駆動力として優れた防汚性を発揮する.また後者は,流動性の高いフッ素系高分子が表面に濡れ拡がることにより分子レベルで均一な低表面自由エネルギー表面を形成するため,大気中においても油分が付着することなく滑落することが明らかとなった.
  • 黒川 孝幸, ムハンマド アナムル ハック, 龔 剣萍
    2013 年 70 巻 7 号 p. 309-316
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    生体には高度に配向した規則構造を有する組織が多く存在し,その規則構造による力学特性,物質透過性,光学特性などさまざまな機能性を活用している.一方でヒドロゲルはソフト&ウェットな性質から生体組織と非常によく似た性質を示すが,構造が等方的であり,生体組織のような高機能はもちえなかった.筆者らは等方的なヒドロゲル中に配向がマクロスコピックにそろったラメラ相を導入することにより,高度に規則的なゲルを創製することに成功した.このゲルは周期的なラメラ二重膜の存在により,単一で鮮やかな構造色を示す,異方的な水の透過性を示す,高い強靭性を示す,強靭性が自己回復するなどの高い機能性を発現する.これらの特性は生物の皮膚がもつ構造や機能と共通するところが多い.そのため,この一軸配向性ラメラ構造ゲルは角質層のモデル材料として,生体組織のもつ機能性を解明するうえで大きな役割を果たすものと期待している.
  • 多田 誠一, 王 偉, 李 吒, 鵜澤 尊規, 伊藤 嘉浩
    2013 年 70 巻 7 号 p. 317-325
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    ランダムな配列のペプチドから構成されるライブラリーから有用な配列の分子を選別する進化分子工学の手法は,生物が環境適応のために採用してきた「進化」という戦略を模倣したものと捉えることができる.本報では,進化分子工学によるペプチドアプタマーの選別法を概観したのち,非天然アミノ酸を導入したランダムペプチドライブラリーから新規機能性ペプチド分子の選別を行った筆者らの研究を中心に解説する.
一般論文
  • 室崎 喬之, 野口 隆矢, 野方 靖行, 龔 剣萍
    2013 年 70 巻 7 号 p. 326-330
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    Agarose,κ-Carrageenanなどの天然由来の高分子ゲル上におけるフジツボキプリス幼生の着生挙動について調べた.24ウェルマルチディッシュを用いた室内着生実験より,多くの天然高分子ゲルにはフジツボの付着に対する防汚効果がある事を見いだした.とくにAgaroseゲルの場合高い防汚効果を示す事がわかった.κ-Carrageenanゲルはキプリス幼生に対する防汚効果は低いが,着生後のフジツボに対し高い剥離効果を示す事がわかった.またAgaroseで側面・全面を覆った系の実験結果より,ゲルの防汚効果にはキプリス幼生に対する忌避作用,抗付着作用,剥離作用がある事が示された.
  • 西山 聖, 横田 裕貴, 山内 健, 坪川 紀夫, 小林 秀敏, 深見 一弘, 作花 哲夫, 尾形 幸男
    2013 年 70 巻 7 号 p. 331-336
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究では生物固有の機能を材料工学の観点から評価して体系化し,革新的問題解決案として提案する技法として知られるBio-TRIZ法を導入することで,新規な高分子ゲルバイオリアクターを開発した.ここではBio-TRIZ法により,高分子ゲルバイオリアクターの改善点を探索して,マイクロロッド構造を有する膜型バイオリアクターを設計した.具体的にはミクロンサイズの孔を多数有するシリコンウェハーを鋳型として用い,酵素を溶解したポリビニルアルコール(PVA)水溶液を凍結と融解を繰返すことにより,PVAゲルに微細な表面構造を転写し,マイクロロッド構造を有する膜型バイオリアクターを開発した.さらに得られたバイオリアクターの性能を評価した.
ノート
  • 三友 秀之, 渡辺 雪江, 松尾 保孝, 新倉 謙一, 居城 邦治
    2013 年 70 巻 7 号 p. 337-340
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    Top-down processes, such as photolithography, have been approaching a limit with regard to the fabrication of fine structures. For the preparation of molecular-scale fine structures, it is important that conventional self-assembly methods should be adapted to a “programmable self-assembly” as a next-generation bottom-up system. We aim to fabricate nano-gap electrodes by sequence-selective metallization of template DNA. We have already reported the fabrication of sequence-selective platinum nano-wires using poly(guanine) and poly(adenine-thymine) diblock DNA, which is enzymatically polymerized as a template. That method, however, cannot be extended to the preparation of oligoblock DNA. In this study, we prepared triblock DNA sequences using guanine as a platinum-binding natural nucleotide and 7-deaza-guanine as a platinum-nonbinding unnatural nucleotide for the construction of platinum nano-wires with nano-gap structures.
展望
  • 古川 柳蔵, 石田 秀輝
    2013 年 70 巻 7 号 p. 341-350
    発行日: 2013/07/25
    公開日: 2013/07/25
    ジャーナル フリー
    心豊かに生きるという人の本質を担保しつつ,この人間活動の肥大化をいかに停止・縮小させることができるかということが,厳しい環境制約下における暮らしの最重要課題である.現在,人間活動の最小単位である個人のライフスタイルを革新的に変えることができるのかどうかが問われている.崩壊しつつある自然の循環のメカニズムやシステムを持続的なものに戻すために,自然を基盤としたテクノロジーに改めて着目し,心豊かなライフスタイルに転換するシステムであるネイチャー・テクノロジー創出システムの構築が急がれる.そのシステムの第一ステップに用いられる,バックキャスティングを用いたライフスタイル・デザイン手法に求められる要件について論じ,ライフスタイル・デザインの実証を試み,課題を抽出した.この手法を用いて技術開発が進む事例に基づき,企業を主体としたイノベーションの可能性を論じる.
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