高分子論文集
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71 巻, 3 号
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総合論文
  • 清水 博, Yongjin LI
    2014 年 71 巻 3 号 p. 69-88
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    筆者らが開発した高せん断成形加工技術の概要を示し,この技術を用いて四つのカテゴリーに分類される系について新規ナノコンポジットを創製した.これらはそれぞれ,1)高分子/高分子系,2)高分子/フィラー系,3)高分子/高分子/フィラー系(三元系),4)高せん断場と反応場との統合,である.これらナノコンポジットにおいて形成されたナノ構造やナノ分散構造を透過型電子顕微鏡(TEM)観察,元素識別型TEM-EDX解析,さらには小角X線散乱(SAXS)解析などから解析した.さらに,これらナノ構造に由来して発現する多様な物性についてもそれぞれ考察した.高せん断成形加工技術は,多様な非相溶性高分子ブレンド系のナノ混合化や相溶化を実現できるだけでなく,CNTや各種ナノサイズフィラーを高分子にナノ分散できる技術でもあるため,多様なナノコンポジット創製技術としての展開が期待される.さらに,本技術がリアクティブプロセシングとしても利用可能であることを示した.
一般論文
  • 鷲﨑 俊朗, 梶原 稔尚, 名嘉山 祥也
    2014 年 71 巻 3 号 p. 89-97
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    カップ形状の圧縮成形解析プログラムを開発して成形荷重を算出した.シミュレーションを利用して成形荷重を低減する方法を追求した所,初期の溶融体の形状が成形荷重に影響があることがわかった.厚み分布をもつ幅広な円盤状シートの圧縮成形荷重は,円筒形の溶融樹脂塊を圧縮した場合と比較して低いことが解析よりわかった.厚み分布をもつ幅広な円盤状シートを圧縮成形するプロセスにおいて,ブランク抑えがコア型の下降に伴う溶融体の引き込みを防ぐ働きがあることがわかった.また,成形の比較的早い段階でシール部が形成されることもわかった.厚み分布をもつ円盤状シートを圧縮成形する方法は,従来の溶融体の塊を用いる方法より,成形荷重が低いことが実験でも実証された.
  • 西辻 祥太郎, 竹中 幹人, 網野 直也, 石川 泰弘
    2014 年 71 巻 3 号 p. 98-103
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    せん断印加下での液状イソプレン中のカーボンブラックの凝集構造の変化について超小角X線散乱法を用いて調べた.せん断印加開始直後の散乱プロファイルにはq=0.07 nm-1にショルダーが現れ,0.004 nm-1q<0.01 nm-1での傾きは2.9であった.これは14 nmの大きさをもったカーボンブラックのaggregateが質量フラクタル次元2.9でネットワーク構造を形成していることを示している.またUnified Guinier/Power-law approachによってせん断印加後の解析を行った結果,agglomerateの大きさは時間とともに増加したが,aggregateの大きさ,質量フラクタル次元,表面フラクタル次元に変化はなかった.これらの結果からせん断を印加することによりaggregateはagglomerateから剥がれるように分散していくということがわかった.
  • 山本 勝宏, 小原 光詞, Guanghui CUI, 田中 諒, 島田 大輝, 永野 修作, 佐野 誠実, 櫻井 伸一, 下北 啓輔, 宮 ...
    2014 年 71 巻 3 号 p. 104-111
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    幾つかのブロック共重合体(BCP)薄膜に形成するシリンダー状およびラメラ状ミクロ相分離構造の垂直配向化について溶媒アニール法を用いて実験を行った.主成分の選択溶媒を用いた溶液からスピンキャストにより薄膜(膜厚500 nm–1 µm)を作製し,薄膜中に球状ミクロ相分離構造を凍結させた状態にした.続いて,BCPの共通両溶媒飽和蒸気に試料を曝す(溶媒アニール)ことにより安定な相分離構造への転移を誘起させた.BCPの両成分に対してより選択溶解性のないニュートラルな溶媒蒸気を用いると,シリンダー状およびラメラ状ミクロ相分離の垂直配向化が効果的に起こることがわかった.
  • 鈴木 健誠, 山登 正文, 廣田 憲之
    2014 年 71 巻 3 号 p. 112-118
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    ナイロン6を13Tの磁場内で溶融結晶化させ,磁場配向と溶融条件との関係を調査した.磁場内熱処理試料の二次元のWAXD測定の結果から,α型結晶の磁場配向が確認され,磁化容易軸はa*軸であることが示唆された.磁場配向した試料の配向度は溶融条件に依存しなかった.偏光顕微鏡観察から結晶核密度は溶融条件に影響を受けなかった.これは,平衡融点以上においても水素結合により緩和しない,融解前に存在した結晶に由来する融け残り構造が存在し,核密度を高めていることが原因だと考えられた.等温結晶化挙動への溶融温度依存性から溶融温度は結晶化誘導期には影響を与えるが,結晶成長には大きな影響を与えていないことが示唆された.磁場配向したナイロン6の配向度が溶融条件に依存しないのは,溶融条件によらず核密度が高い状態となることに加えて,結晶化初期の微結晶が配向しているためであると考えられた.
  • 遠藤 朋美, 片山 文恵, 斎藤 拓, 徳地 一記, 東田 昇
    2014 年 71 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 2014/03/25
    公開日: 2014/03/25
    ジャーナル フリー
    ポリメタクリル酸メチル(PMMA)は負の複屈折,ポリビニルブチラール(PVB)は正の複屈折をもつため,それらをブレンドすれば複屈折をゼロにさせることができる.PMMA/PVBブレンドのゼロ複屈折組成を調べたところ,熱延伸・急冷試料と室温延伸試料ではまったく異なる組成で複屈折がゼロになることが見いだされた.PMMA単体とPVB単体の一軸延伸後の応力・複屈折緩和測定の解析結果から配向複屈折とひずみ複屈折を求めて,それらの加成値によりゼロ複屈折組成を算出した結果,熱延伸・急冷試料の複屈折はガラス状態の配向複屈折に起因するのに対して,室温延伸試料の複屈折は室温の配向複屈折とひずみ複屈折の両者に起因することが明らかになった.
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