高分子論文集
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72 巻, 12 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
総合論文
  • 甲田 優太, 寺島 崇矢, 澤本 光男
    2015 年 72 巻 12 号 p. 691-706
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/25
    [早期公開] 公開日: 2015/11/09
    ジャーナル フリー
    近年筆者らは,一般的な親水性や疎水性とは異なる「フルオラス性」に着目して,リビングラジカル重合によりパーフルオロアルキルモノマーで機能化したミクロゲル星型ポリマーと両親媒性ランダムコポリマーを合成し,これらを用いて有機溶媒あるいは水に可溶なフルオラス性ナノ機能空間を創出した.フルオラスミクロゲル星型ポリマーは,有機溶媒や水中にてフルオラス性のフッ素多置換化合物を選択的に捕捉し,溶媒や温度の変化により捕捉ゲスト化合物を放出するナノカプセルとして作用した.また,ポリエチレングリコール鎖とパーフルオロアルキル鎖をもつ両親媒性フルオラスランダムコポリマーは,水中で動的なフルオラス性空間をもつ一分子折りたたみポリマーまたは多分子会合体を形成した.このポリマーは,細胞毒性が低く,タンパク質を固定化することも可能であり,新たなバイオマテリアルとしての応用が期待される.
  • 多田 貴則, 喜多村 曻, 東海林 竜也, 坪井 泰之
    2015 年 72 巻 12 号 p. 707-720
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/25
    [早期公開] 公開日: 2015/11/24
    ジャーナル フリー
    温度応答性高分子の水溶液が示す相分離現象は,基礎的に興味深いだけではなくドラッグデリバリーシステムなどへの応用が期待されるため,これまで精力的に研究されてきた.しかしながら,現象を特徴づける重要なパラメータの一つである相分離速度に関する知見はこれまで十分に得られていなかった.筆者らは独自に開発したレーザー温度ジャンプ型過渡透過光計測装置を用いて温度応答性高分子水溶液の相分離速度を精密に決定してきた.本報では,poly(N-isopropylacrylamide) (PNIPAM)水溶液の相分離速度に対する溶液濃度,高分子の分子量,立体規則性の効果を中心に述べる.また,相分離を高速化するための指針として,①水溶液濃度を高くすること,②最適分子量に設定すること,③立体規則性を高めることの3点を明らかにした.これらの知見は,高速応答を目指した新規機能性材料の開発指針になると期待される.また,相分離機構の解明にも貢献すると思われる.
一般論文
  • 浅井 慎史, 野中 寛, 舩岡 正光
    2015 年 72 巻 12 号 p. 721-725
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/25
    [早期公開] 公開日: 2015/11/02
    ジャーナル フリー
    樹幹内のリグニン量の分布についての報告は少数あるものの,リグニン高分子構造の分布に関する知見は存在しない.本研究では,50年生スギ樹幹の各部位から採取した木粉を用いて,独自の手法によりリグニン一次分子鎖を高度に保持するリグニン誘導体,リグノフェノールを取得し,樹幹内水平方向,繊維方向で,リグニン構造の分布パターン解析を行った.その結果,樹幹内において高分子リグニンのシームレスな構造変化が確認され,樹体中心下部において,一次分子鎖サイズが小さく,縮合型が発達しているが,樹体外層,上部に向かって一次分子鎖サイズが徐々に大きく,線状型へと移行する傾向が示唆された.
  • 大渕 啓矢, 佐藤 葉子, 大崎 佳幸, 刈込 道徳, 木村 隆夫
    2015 年 72 巻 12 号 p. 726-730
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/25
    [早期公開] 公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    自動車フロントガラスに使用されているポリビニルブチラール(PVB)中間膜廃材を出発原料として,ピロメリット酸,フタル酸,あるいはトリメリット酸などの無水物を用いて架橋あるいは化学修飾したPVBゲルを調製した.得られたPVBゲルはN,N-ジメチルホルムアミド,メタノールなど12~15程度の溶解度パラメーターを有する有機溶媒中で高膨潤性を示した.その膨潤度はピロメリット酸二無水物(PMDA)とトリメリット酸無水物を用いて調製したPVBゲルが最も高く,次いでPMDAとフタル酸無水物を用いた系,PMDAのみを用いた系の順に膨潤度が低くなることがわかった.PVBゲルを調製するために添加した塩基触媒であるトリエチルアミンの影響で,ゲル中のカルボキシ基がイオン化することにより膨潤し,その膨潤度はカルボキシ基の導入量の増加に伴い高くなることがわかった.
  • 小林 悠, 田口 絵梨佳, 刈込 道徳, 木村 隆夫
    2015 年 72 巻 12 号 p. 731-736
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/25
    [早期公開] 公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    保水材としての利用を目的として,化学架橋型のポリイタコン酸と物理架橋型のポリビニルアルコール(PVA)からなる相互侵入高分子網目(IPN)ヒドロゲルを調製した.まず,PVAの重合度(1000,2000,4000)とその添加量がIPNヒドロゲルの膨潤度,圧縮強度および再膨潤能に及ぼす影響について調査した.膨潤度はPVAの重合度が2000のIPNヒドロゲルで比較的高く,PVAの添加量が増えるほど低下する傾向を示した.また圧縮強度はPVAの重合度に明瞭に依存せず,PVAの添加量が増えるほど向上した.さらに,PVAの重合度が高く,その添加量が多くなるほど再膨潤率の低下を抑制することができた.次に,このIPNヒドロゲルについて保水性,植物育成能を評価した.土壌にIPNヒドロゲルを混ぜることで含水量が増し,土壌の保水性を高めることができた.またカルボキシラートイオンの対イオンをカルシウムイオンに置換したIPNヒドロゲル上でカイワレ大根が良好に成長した.
  • 石崎 拓郎, 上沼 駿太郎, 古海 誓一
    2015 年 72 巻 12 号 p. 737-745
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/25
    [早期公開] 公開日: 2015/10/23
    ジャーナル フリー
    セルロース誘導体であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)に,塩化プロピオニルとクロロギ酸コレステロールの2種類の酸塩化物を用いたエステル化反応を行い,HPC混合エステルを合成した.得られた生成物を1H NMRで測定し,分子構造の定量的な解析を行った.1H NMRの結果から,HPC側鎖に対する官能基の置換度,すなわちエステル化度を算出する方法を提案し,これに従いプロピオニル基とコレステリル基のHPC側鎖への導入量を算出した.これらの官能基を化学修飾したHPC混合エステルは,サーモトロピックなコレステリック液晶性を示した.HPCのヒドロキシ基に対して4.7%コレステリル基を導入し,残りをプロピオニル基で化学修飾したHPC混合エステルについて昇温過程における透過スペクトルを測定したところ,30°Cから80°Cの比較的低い温度においてブラッグ反射が発現し,温度を制御することでブラッグ反射のピーク波長が400 nmから800 nmの全可視波長域でシフトすることを見いだした.
  • 森作 俊紀, 曽原 佑介, 由井 宏治
    2015 年 72 巻 12 号 p. 746-751
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/25
    [早期公開] 公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    筆者らはI型コラーゲン繊維の熱変性過程を振動円二色性(vibrational circular dichroism:VCD)分光法によって追跡した.繊維のVCDスペクトルでは1635 cm-1,1660 cm-1の二つの右円偏光活性ピークからなるアミドIバンドを観測した.このバンドは,繊維のユニットである三重螺旋構造に特徴的なII型ポリ-L-プロリン構造のバンド形状(1620 cm-1,1680 cm-1にそれぞれ右円偏光活性,左円偏光活性バンドを示す)と異なることから,繊維構造と三重螺旋構造がVCDスペクトル上で明瞭に識別可能であることを示した.また繊維の熱変性によるVCDスペクトルの一連の変化から,繊維構造が崩壊後に三重螺旋構造が崩壊し,それから無秩序構造に転移することを立体構造変化から直接示した.さらに,三重螺旋構造から無秩序構造に転移する過程で,1650 cm-1付近のブロードな右円偏光活性バンドで特徴付けられる新しい中間体構造を見いだした.
  • 王 涛, 副田 征幹, 李 丞祐
    2015 年 72 巻 12 号 p. 752-759
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/25
    [早期公開] 公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,クエン酸修飾金ナノ粒子(c-AuNPs)の独特な吸光特性を利用し,ポリアミンの検知を試みた.ポリアミンのアミノ基とc-AuNPsの表面カルボキシ基との酸塩基相互作用によってc-AuNPsが凝集し,700 nm付近においてc-AuNPsの局在表面プラズモン共鳴(SPR)カップリングによる新しい光吸収バンドが観察できた.直径20 nmの平均粒径をもつc-AuNPsは,スペルミンに対して素早く反応し(10秒以内),5 µM以下の検知限界を示した.c-AuNPsはポリアミンの中でもスペルミンに最も選択的に反応し,スペルミジンやジアミン化合物より高い検知感度と迅速な反応を示した.さらに,平均粒径が5 nmより20 nmのc-AuNPsの反応性が高く,c-AuNPsの粒径はポリアミンの検知に欠かせない重要なパラメーターであった.実尿に対しても,スペルミンの検知で見られた同様なSPR吸収バンドの変化が見られ,c-AuNPsによる尿中ポリアミンの検知可能性が確認できた.
  • 佐々木 沙織, 鎗光 清道, 村上 輝夫, 鈴木 淳史
    2015 年 72 巻 12 号 p. 760-764
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/04
    ジャーナル フリー
    作製条件の異なるポリビニルアルコールキャストドライゲル(PVA CDゲル)について,往復動摩擦試験による摩擦特性の評価を行った.ゲル作製時の乾燥湿度の上昇および乾燥温度の低下によって,ゲルの繰返し往復動摩擦時の摩擦係数を低下させることが可能であることが示された.湿度を上昇させた時にはゲルの表面が均一かつ平滑となったことで,一方温度を低下させた時には,ゲルから未架橋ポリマーが多く溶出されて潤滑特性が向上したことで,それぞれ摩擦係数が低下した.積層化による摩擦係数の低下は見られなかったが,すべり距離が増加しても優れた摩擦特性を維持できた.以上の結果より,作製条件を制御することによって,低摩擦を維持できるPVA CDゲルを作製できることが示された.
  • 陸 偉, 三村 耕司
    2015 年 72 巻 12 号 p. 765-772
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/25
    [早期公開] 公開日: 2015/10/19
    ジャーナル フリー
    超高強度Double Networkゲル(DNゲル)は二重網目構造をもつ超高強度ゲルであるため,生物医工学および高分子ネットワークの物理に関する基礎研究への応用が期待されている.より一層DNゲルの高強度化メカニズムを活かし,その使途を広げるために,本研究では,非アフィン分子鎖網目モデルを用い,メゾスケールでのネットワークの構造変化を考慮したDNゲルの力学モデルの構築を試みた.その結果,8鎖アフィンモデルを用いることで,DNゲルの均一材のアフィン的な変形応答を再現する可能性が示唆された.また,幾何学的な不均一性を有するDNゲルを単軸引張ると,微視領域における分子鎖のセグメント数分布と応力分布は局所的・層状的・局所的の順にその様相が変化することを明らかにした.
ノート
  • 西村 直剛, 平野 義明
    2015 年 72 巻 12 号 p. 773-776
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2015/12/25
    [早期公開] 公開日: 2015/11/25
    ジャーナル フリー
    Polysaccharides such as alginate or chitosan have gained increasing attention for applications as soft biomaterials. In particular, alginate-Ca2+ hydrogel has been applied to food chemistry and as a tissue engineering scaffold. In this study, we prepared an alginate nanofiber without Ca2+ ions that utilizes self-assembling β-sheet peptides as the cross-linker for the hydrogel. We designed this cross-linker from a sequence of hydrophilic and hydrophobic amino acids, such as (KLVFF)4, and immobilized the self-assembled β-sheet peptides to the -COOH group of the alginate to form cross-links. We then investigated the molecular conformation of the self-assembled β-sheet peptides in solution by circular dichroism and infrared spectroscopy.
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