高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
72 巻, 10 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総合論文
  • 中畑 雅樹, 高島 義徳, 橋爪 章仁, 山口 浩靖, 原田 明
    2015 年 72 巻 10 号 p. 573-581
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/23
    [早期公開] 公開日: 2015/06/09
    ジャーナル フリー
    グルコース単位が環状に繋がったホスト分子シクロデキストリン(CD)および酸化還元応答性ゲスト分子フェロセン(Fc)を側鎖に導入したポリマーや高分子ゲルを用いて,酸化還元応答性超分子材料を創製した.側鎖にCDを修飾したポリマーとFcを修飾したポリマーとの混合により超分子ヒドロゲルが形成された.ホスト–ゲスト相互作用の可逆性に起因する自己修復性を見いだし,Fcの酸化還元に伴うCDとの相互作用の変化を利用してこれをオン・オフ制御した.この超分子ネットワークに化学架橋を導入すると,酸化還元に応じたゲル内部の架橋密度の変化に伴い膨潤・収縮するゲルとなった.さらにCDおよびFcを別々のゲルに導入するとそれらが接着することを見いだし,Fcの特徴を活かして二種類の分子間相互作用を使い分け,配列を制御してマクロな「もの」を自己組織化する新たなシステムを構築した.
  • 直井 優衣, 矢野 弘樹, 澤田 勉, 金井 俊光
    2015 年 72 巻 10 号 p. 582-589
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/23
    [早期公開] 公開日: 2015/08/28
    ジャーナル フリー
    単分散コロイド微粒子の三次元周期配列構造体であるコロイド結晶は,フォトニック結晶への応用が期待でき,注目されている.とくにコロイド結晶を高分子ゲルで固定したゲル固定コロイドフォトニック結晶は,外部刺激によるゲルの体積変化を利用して光学特性をチューニングできる特徴がある.そのためチューナブルフォトニック結晶や,光学ストップバンド波長やブラッグ反射色変化から計測できる各種センサーへの応用が期待されている.本報では,ゲル固定コロイドフォトニック結晶における筆者らの最近の一連の研究成果を紹介する.まず筆者らが開発したエアーパルス流動システムにより,センチメートルサイズで単結晶のコロイド結晶フィルムを作製できることを述べる.得られた結晶は光重合により結晶の品質を保持したままゲル固定できる.その後,ゲル固定コロイドフォトニック結晶フィルムの溶媒置換や温度変化によるチューニング例を示す.とくに共重合ゲルで固定したコロイドフォトニック結晶は,多様なチューニング特性を示すことを述べる.また室温で蒸発しないイオン液体がゲル固定コロイドフォトニック結晶の膨潤溶媒として有用であることを述べる.
  • 関根 智子, 高島 義徳, 橋爪 章仁, 山口 浩靖, 原田 明
    2015 年 72 巻 10 号 p. 590-596
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/23
    [早期公開] 公開日: 2015/08/28
    ジャーナル フリー
    ボロン酸,およびヨードアリールをそれぞれの側鎖に有した高分子ゲルは,金属触媒を添加することにより接着した.これは高分子ゲル界面における鈴木・宮浦クロスカップリング反応によるものであり,ソフトマテリアルの界面で共有結合が形成され,二つの材料を接着することができた.このような材料間の接着は他の化学反応にも適用できる.銅触媒を用いたアジド–アルキン環化付加反応(CuAAC反応)や薗頭クロスカップリング反応を用いても,接触界面における共有結合の形成によって接着できた.この接触界面での共有結合形成は水中および有機溶媒中でも達成できる.さらに難易度の高い異種材料間の接着を試みた.高分子ゲルと無機材料である硬質ガラス基板のそれぞれにボロン酸またはヨードアリールを修飾し,鈴木・宮浦クロスカップリング反応による異種材料間接着を試みた.その結果,適切な組合せの場合のみ,高分子ゲルとガラス基板において,接着を確認した.このような接着は従来の接着剤を用いた接着とは異なり,有機溶媒に浸漬させても接着剤が溶解しないため,安定した接着を実現できた.界面での共有結合形成を利用した接着は有機材料–有機材料間だけでなく,有機–無機の異種材料間の接着においても新たな展開を示した.
  • 眞弓 皓一, 成田 哲治, Costantino CRETON
    2015 年 72 巻 10 号 p. 597-605
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/23
    [早期公開] 公開日: 2015/09/11
    ジャーナル フリー
    高分子ゲルを高強度化する有効な分子設計として,共有結合などの強い結合と水素結合などの弱い結合を架橋点として導入する手法が提唱されている.弱い可逆な架橋点はゲルが変形した際に解離し,その時のエネルギー散逸によってゲルのマクロな破壊を防ぐことができる.また,変形したゲルから外力を取り除くと,強い結合に由来するネットワークの弾性によって,ゲルは元の形状まで復元し,可逆架橋点も再結合して元の状態まで戻る.筆者らは,このような自己回復性高強度ゲルのモデル系として,ポリビニルアルコール(PVA)を共有結合とホウ酸イオンによる可逆結合で同時架橋したDual Crosslink (DC)ゲルを開発し,その力学特性を調べてきた.本報では,可逆架橋点の解離・再結合ダイナミクスがDCゲルの線形粘弾性,ヒステリシスループを含む大変形挙動,および破壊挙動とどのように相関しているのかについて解説する.
一般論文
  • 山﨑 博人, 德永 光, 福永 公寿
    2015 年 72 巻 10 号 p. 606-616
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/23
    [早期公開] 公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    ソフトマテリアルであるポリビニルアルコール(PVA)球状含水ゲルの一つとして,有機物の包接能をもつβ-シクロデキストリン(βCyD)の存在下,PVAのホルマール化をHCHO濃度80 g/L,反応温度80°C,反応時間3 hの条件に供することで,βCyD含有量10~110 µmol/gのβCyD結合型PVA球状含水ゲル(PVA-bonded-βCyD)を調製した.βCyD含有量0,10,33,41,そして74 µmol/gのPVA球状含水ゲルに,それぞれフェノール(PhOH)分解菌を吸着固定化して生体固定化触媒を調製した.次に,初期濃度500 mg/LのPhOHを含むモデル排水500 mLに,生体固定化担体10 wt%量添加し,回分式で,室温でばっ気した際のPhOH残留濃度をGC法でモニターした.PVA球状含水ゲルに比べ,PhOH除去速度を約2倍に加速することができた.
  • 三宅 雅也, 佐藤 満
    2015 年 72 巻 10 号 p. 617-623
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/23
    [早期公開] 公開日: 2015/09/09
    ジャーナル フリー
    ドライウォーター,ドライポリマー水溶液,ドライゲルなどのドライ物質の調製をさまざまな条件で試みるとともに,調製に及ぼす諸条件について検討した.内部液相の表面張力や粘度と調製の際のかくはん時間(機械的エネルギー)が複雑にからみ合って調製の可否が左右されることが明らかとなった.また,表面張力の低さが原因でドライポリマー水溶液が調製されない系では,ポリマー水溶液相をゲル化することでドライ物質を調製可能な高分子種の選択領域を広げることが可能となることを見いだした.
  • 藤田 正博, 島田 健佑, 竹岡 裕子, 陸川 政弘
    2015 年 72 巻 10 号 p. 624-629
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/23
    [早期公開] 公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    Methacryloyl oligo(ethylene oxide) (MEO)とp-chloromethylstyrene (CMS)をラジカル重合法により共重合し[P(MEO-co-CMS)],これをイミダゾール誘導体と反応させることで双性イオン部位を有するランダム共重合体[P(MEO-co-Zw)]を得た.P(MEO-co-CMS)の質量平均モル質量は200,000 g mol-1程度であり,P(MEO-co-Zw)はフィルム形成能を示した.P(MEO-co-Zw)/LiTFSA複合体は-70°Cと-10°C付近に二つのガラス転移温度を示した.P(MEO-co-Zw)/LiTFSA複合体のイオン伝導度およびリチウムイオン輸率は高塩濃度領域においても低下せず,従来のポリエーテル系電解質とは異なる傾向を示した.
  • 川久保 利恵, 中西 英行, 則末 智久, Qui TRAN-CONG-MIYATA
    2015 年 72 巻 10 号 p. 630-641
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/23
    [早期公開] 公開日: 2015/08/27
    ジャーナル フリー
    異なるアルキル鎖長を有する4種類のメタクリレート(ホストモノマー)を含む高分子混合系において,光重合で誘発した相分離過程におよぼす自己促進(Trommsdorff-Norrish)効果の影響を検証した.ホストモノマーに,スチレン–エチレン–ブチレン–スチレンブロック共重合体(ゲストポリマー)を溶解させた混合溶液に,紫外光を照射して重合反応を誘起し相分離を誘発した.FT-IRで重合反応を計測した結果,3種のブレンド系では,ある照射時間で急激に重合が進む自己促進性を示したが,最もモビリティーの高い系ではそのような反応挙動は見られなかった.また光照射による反応–相分離で形成した系のモルフォロジーは,ホストポリマーのTgによって大きく異なった.これらの結果によりモノマーのアルキル鎖長は重合の自己促進挙動を決定づけ,その結果,混合系の反応–相分離の動力学に大きく影響することがわかった.
  • 清水 秀信, 長岡 洋樹, 和田 理征, 岡部 勝
    2015 年 72 巻 10 号 p. 642-647
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/23
    [早期公開] 公開日: 2015/08/20
    ジャーナル フリー
    pHに対してシャープな応答性を示すヒドロゲル粒子を作製するために,酸不溶性カルボン酸モノマーであるN-パラカルボキシフェニルアクリルアミド(NCPAM)を,アクリルアミド,N,N′-メチレンビスアクリルアミドとエタノール中で沈殿共重合させた.NCPAMの合成は,p-アミノ安息香酸と塩化アクリロイルを反応させることにより行い,NCPAMがpH 4.5付近で可溶不溶転移挙動を示すことを透過率測定の結果から確認した.重合はモノマーの仕込み組成にかかわらず,ほぼ定量的に進行した.粒子径のpH依存性を動的光散乱により評価したところ,NCPAMを含むヒドロゲル粒子は,汎用性モノマーであるメタクリル酸(MAc)に比べて,pHに対してシャープに応答する傾向を示した.NCPAMの含量が高いほど粒子径が変化するpHの幅は狭くなり,40 wt%の粒子では約0.5となった.MAcを含む粒子では,解離度が0.1から徐々に粒子径の変化が起こるが,NCPAMでは疎水性相互作用がはたらくため,カルボキシ基が約半分解離したときにはじめて粒子径が大きく変化した.
ノート
  • 湯川 美穂, 池田 浩人, 萩原 里美, 黒田 菜月, 川原 光喜, 湯川 栄二, 安藝 初美
    2015 年 72 巻 10 号 p. 648-651
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/10/23
    [早期公開] 公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    The mechanical properties of moderately dilute solution of Konjac powder (KP) and its hydrolysates (hKP) were characterized by viscosity and texture profile analysis. hKP was prepared by partial acid hydrolysis of KP in 70% ethanol solution at 130°C. The viscosities of 0.3%~0.5% KP solutions and 0.6%~1.0% hKP solutions were about 50~500 mPa·s and 80~400 mPa·s respectively. The hKP solution moved around the mouth more slowly and allowed better control of swallowing than KP solution. This indicates that hKP may be useful as a thickener to take medicine due to its low adhesiveness.
feedback
Top