高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
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72 巻, 11 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 朝倉 哲郎
    2015 年 72 巻 11 号 p. 653-660
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/11/25
    [早期公開] 公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    ポリオレフィンの 13C NMR立体規則性スペクトルについて,Suter-Floryの5行5列の回転異性状態マトリックスを用いて得られたコンフォメーションの分率と化学シフトのγ-ゴーシュ効果を用いて化学シフト計算を行い,実測結果との良好な一致が得られることを示した.この計算によって立体規則性ピークの起源を解明するとともに,実験的に困難な 13C NMR立体規則性ピークの新たな帰属法として用いることができることがわかった.一方,生体高分子についても,半経験的化学シフト計算が化学シフトと生体高分子の間の構造や水素結合の解明に威力を発揮し,その構造解析に用いることができることを示した.
一般論文
  • 中山 麗, 伊掛 浩輝, 栗田 公夫, 清水 繁, 胡桃 聡, 鈴木 薫, 高橋 弘紀, 渡邉 和雄
    2015 年 72 巻 11 号 p. 661-666
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/11/25
    [早期公開] 公開日: 2015/11/13
    ジャーナル フリー
    結晶性高分子であるポリ-L-乳酸(PLLA)に非晶性高分子であるポリ-DL-乳酸(PDLLA)をブレンドしたフィルムを作製した.熱処理と強磁場照射を同時に適用し,これらのフィルムの結晶配向化を促したところ,単体フィルムに比べ,ブレンドフィルムではX線散乱強度に180°周期で変化がみられた.磁場未照射の単体およびブレンドキャストフィルムでは長周期はそれぞれ26および19 nmとなり,PDLLAをブレンドすることで長周期構造が変化し,融点もわずかながら減少した.磁場照射下での熱処理において低分子量のPDLLAを加えることで,PLLAが低粘度状態に置かれ,結晶部が応答しやすい環境になるため,配向化が進んだものと考えられる.このことから,PLLA配向フィルムの作製にはアモルファス部であるPDLLAの存在が重要であることが明らかになった.
  • 農宗 辰己, 今城 明典, 白石 浩平
    2015 年 72 巻 11 号 p. 667-672
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/11/25
    [早期公開] 公開日: 2015/09/14
    ジャーナル フリー
    O2の選択透過能をもつpoly[1-phenyl-2-(4-trimethylsilyl)phenyl]-acetylene (PTMSDPA)の細胞培養基材への応用を目的に,低温プラズマ照射–ポスト重合により,温度応答性poly(N-isopropylacrylamide) (PNiPAAm)をグラフトしたPTMSDPAフィルム[g-PTMSDPA (PNiPAAmグラフト量: 1.4±0.7×10-2 mg cm-2,重合度: 29±13)]を調製し,PTMSDPAへの接着性改善と細胞の非侵襲的な回収を検討した.ヒト子宮頸ガン細胞(HeLa)を用いて,g-PTMSDPAおよびプラズマ照射処理のみのPTMSDPA/pへの接着を検討した結果,未処理PTMSDPAフィルムには,ほとんど接着しなかったHeLa細胞が接着・増殖した.また,培養温度37℃から温度刺激(20℃,25 min間)によりg-PTMSDPA上の接着細胞(3.3±0.3×104 cells cm-2)の28±0.9% (n=3,p<0.01)がはく離した.さらに,g-PTMSDPAフィルム裏面からO2圧0.01 MPa,流速20 sccm,24 h間供給し,HeLa細胞あるいはヒト神経芽細胞腫(SK-N-SH)を培養した結果,無供給時と比べ,培養後の接着細胞数がそれぞれ約1.4倍,約1.3倍となった.
  • 山本 三郎, 久保園 達也, 小椎尾 謙, 高原 淳
    2015 年 72 巻 11 号 p. 673-680
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/11/25
    [早期公開] 公開日: 2015/10/22
    ジャーナル フリー
    高分子膜のJKR (Johnson-Kendall-Robert)粘着試験中にラマン散乱のその場測定ができる新規な全反射顕微ラマン装置を試作した.光軸上に光学部品を搭載したレーザ入射角制御アームを回転することにより,入射角を変数として臨界角近傍のラマン散乱を測定した.集光レンズと半球プリズムの位置を微調整することにより,集光スポット径を最小にした.その結果,再現性良いラマンスペクトルを得ることができた.s偏光またはp偏光の励起レーザ光を試料に斜めから入射することにより,試料の面内方向および厚さ方向に空間分解能をもつラマン分光が可能になった.さらに,膨潤ポリスチレンブラシに圧力を加えながらラマン分光測定を行うことによりラマン散乱光の偏光解消度が変化することを見いだした.本装置を使用することにより,粘着試験あるいは圧縮変形下で高分子薄膜の面内および厚さ方向の分子鎖配向状態を観測できるようになった.
  • 菅野 翔, 田中 雄介, 香西 博明
    2015 年 72 巻 11 号 p. 681-686
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/11/25
    [早期公開] 公開日: 2015/11/04
    ジャーナル フリー
    ベンジリデンアニリン基を有する新規な一置換アセチレンを合成し,Rh錯体触媒を用いて重合を行った.得られたポリマーの収率は81~96%と良好で,黄色固体であり,重量平均分子量(Mw)は15×104~37×104,分子量分布1.8~2.3であった.ポリマーは,トルエン,クロロホルム,テトラヒドロフランなどの有機溶媒に可溶であった.1H NMR測定より,アセチレン由来の三重結合が開裂し,新たにポリエン由来の二重結合が確認できたことから,重合が起こっていることがわかった.また,液晶相の観察では,スメクチック相の扇状模様と思われる光学模様が確認できた.結果として生じたポリマーの熱重量分析は,良い熱安定性を示した(>350°C).ポリマーのUV-vis測定では,270 nm付近に最大吸光度が見られた.また,紫外光照射することによって,ピークの減少が確認でき,trans-体からcis-体に異性化が起こることがわかった.
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