高分子論文集
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72 巻, 2 号
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総説
  • 田之畑 大二郎, 真田 雄介, 望月 慎一, 宮本 寛子, 櫻井 和朗
    2015 年 72 巻 2 号 p. 37-47
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/02/25
    [早期公開] 公開日: 2015/01/28
    ジャーナル フリー
    筆者らは,β-1,3-グルカンの1種であるシゾフィラン(SPG)が核酸と複合体を形成すること,その複合体が核酸医薬の薬物送達システム(Drug delivery system:DDS)の材料として利用できることを見いだした.DDSとしての有効性の検証はもちろんのことながら,その開発の基礎となり,かつ,薬事申請で必要となる複合体の構造や水溶液中での性質など基礎物性を明らかにすることは極めて重要な課題である.本報では,SPGや核酸/SPG複合体の溶液中における分子形態に焦点を当てた最近の研究成果について報告する.この中で,核酸/SPG複合体はもとの三重らせんのSPGと同様に枝分かれのない半屈曲性高分子鎖としてふるまうこと,硬さの指標である持続長はもとのSPGより減少することなどがわかった.さらに,本報ではSPGにカルボキシ基を修飾した新しいカルボン酸SPGについて紹介する.
一般論文
  • 永渕 啓, 樫尾 幹広, 杉崎 俊夫, 守谷 治
    2015 年 72 巻 2 号 p. 48-56
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/02/25
    [早期公開] 公開日: 2014/12/18
    ジャーナル フリー
    機能性ハイブリッド材料の中間体として,スクシンイミド構造を有する新規ポリシルセスキオキサン(PSQ)を合成した.そして,この反応性置換基のアミノ化合物による開環反応を利用した温度応答性機能の付与について検討した.スクシンイミド基を単独の置換基として有し,残存ヒドロキシ基をトリメチルシリル化したPSQは水に難溶,アセトンやクロロホルムなどの有機溶媒には易溶であった.PSQ上のスクシンイミド置換基の開環反応に2-エトキシエチルアミン類を用いたところ,水溶液中で下限臨界溶液温度を,ニトロメタン中では上限臨界溶液温度を示す温度応答性PSQ誘導体が得られた.一方,エタノールアミンや2-メトキシエチルアミンを用いた場合は,水溶性となり両親媒性は示したが温度応答性は発現しなかった.また,この開環反応は,スクシンイミド基に対してこれらのアミンを2当量用いることでほぼ定量的に進行した.
  • 菱川 慶裕, 垣野 由佳理, 古川 英光, 田原 耕平, 竹内 洋文
    2015 年 72 巻 2 号 p. 57-63
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/02/25
    [早期公開] 公開日: 2014/12/22
    ジャーナル フリー
    カンテン(Ag)ゲルおよびキサンタンガム(Xa)-ローカストビーンガム(Lo)混合ゲルを試料として,ゲル物性ならびに網目構造の解析を行った.また,ゲル中にアセトアミノフェンを包含させ,薬物の溶出性を評価した.各ゲルにおいて破断応力と架橋点間距離を測定したところ,破断応力が高くなるに従い,距離が短くなることがわかった.しかし,種類の異なるゲル間での比較においては,破断応力と架橋点間距離に関連性は認められず,ゲルの形成様式の違いが網目構造の緻密さを決定していることがわかった.ゲルからのアセトアミノフェンの溶出特性を評価した結果,AgゲルよりもXa-Lo混合ゲルの方が明らかに溶出速度が遅く,ゲルの網目サイズ(緻密さ)に依存していることがわかった.このゲルの緻密さを調整することにより,天然高分子ゲルでの薬物放出制御ができる可能性が示された.
  • 小川 和郎, 廣見 祐太
    2015 年 72 巻 2 号 p. 64-70
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/02/25
    [早期公開] 公開日: 2015/01/26
    ジャーナル フリー
    シクロデキストリン(CD)の包接能を利用した吸着材を開発するために,グリセリン(Gly)およびエピクロロヒドリン(EPC)を用いて架橋したCDポリマーを合成した.得られたCD-Gly-EPC共重合体は水や有機溶媒に不溶であった.Glyの添加による影響はCDの添加量を増やしたときに認められ,Glyが分枝部分となることでCD導入部分を分散させていることが示唆された.また,CDの導入量はGlyの添加量の増加とともに増え,重合効率の向上にも効果的であることがわかった.さらに,バイオディーゼル燃料(BDF)の製造時に副生される廃Glyを用いた共重合体も市販のGlyを用いた共重合体と同じ結果が得られた.この廃Glyを原料にした共重合体はビスフェノールAや4-ノニルフェノールに対しても高い吸着効果を示したことから,水質浄化材として有効であり,廃Glyの新しいリサイクル方法として利用できる.
  • 松井 栄樹, 吉田 竜二, 内田 敦之
    2015 年 72 巻 2 号 p. 71-75
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/02/25
    [早期公開] 公開日: 2015/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では水溶性セルロースを誘導体化する方法として,塩基性水溶液中で反応を行うショッテンバウマン反応を選択し,水を用いた反応と後処理による環境負荷の少ない変換法の開発を目指した.まず,水溶性セルロースとしてヒドロキシエチルセルロースを選択し,飽和Na2CO3水溶液中での塩化ベンゾイルとの反応について検討を行った.目的のベンゾイル化生成物の形成についてATR-IR,13C NMRの測定により確認,同定を行った.また,多糖類であるデキストリンへのベンゾイル化,ヒドロキシエチルセルロースへのシンナモイル化,ブチル化も進行することが明らかとなり,水溶性高分子の誘導化反応として広く利用できることが明らかとなった.
  • 内田 希, 香西 博明
    2015 年 72 巻 2 号 p. 76-81
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/02/25
    [早期公開] 公開日: 2015/01/27
    ジャーナル フリー
    2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートとヒマシ油を開始剤とした分枝ポリ乳酸を用いて新規なUV硬化性樹脂を合成した.UV硬化性樹脂は比較的高い収率(90%)で得られた.さらに,UV硬化性樹脂を30分間UV照射により硬化させた.得られた硬化フィルムのガラス転移温度は-5°Cであり,ゴム状平坦領域が動的粘弾性測定において約20°Cの測定値から開始していたことから,エラストマー特性を有していることがわかった.硬化フィルムの熱安定性をTGAにより測定したところ,重量減少は210°Cで開始した.機械的特性として,ヤング率は応力–ひずみ曲線で317.9 MPaであった.硬化フィルムは,ブタ膵臓由来リパーゼにより酵素分解性(最大8.4%,30日間)を示した.分解した硬化フィルムのSEM顕微鏡写真では,フィルム表面に多数の穴を示した.
  • 榎本 航之, 菊地 守也, 鳴海 敦, 川口 正剛
    2015 年 72 巻 2 号 p. 82-89
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/02/25
    [早期公開] 公開日: 2015/01/28
    ジャーナル フリー
    本報は,ビスフェノールAタイプの2官能性エポキシと酸無水物とからなるエポキシ樹脂中に直径約4∼6 nmのZrO2ナノ微粒子を高含有量でナノ分散させ,約1 mmの膜厚においても高透明なハイブリッド材料を得る手法について報告した.これを達成するためには,硬化前のエポキシと酸無水物モノマー中にZrO2微粒子をナノ分散させることと,硬化中,ZrO2微粒子それ自体が硬化反応に関与できる官能基を有することが重要であった.水中にナノ分散しているZrO2微粒子は,さまざまなカルボン酸を表面処理剤に用いた溶媒置換法により表面修飾された.表面修飾されたZrO2ナノ微粒子のエポキシモノマー中への再ナノ分散性を評価したところ,脂肪族カルボン酸よりも安息香酸などの芳香族カルボン酸で修飾された方が良好な結果を示すことがわかった.安息香酸で表面処理されたZrO2微粒子をエポキシと酸無水物からなるモノマー中にナノ分散させ,硬化反応させたところ,硬化中激しく凝集し不透明化した.エポキシ硬化反応に関与する官能基としてヒドロキシ基を有するo-ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)を表面処理剤として用いたところ,ZrO2微粒子は効率的にエポキシネットワーク中にナノ分散化され,約1 mmの膜厚の材料に対しても光学的に高透明なハイブリッド材料が得られることがわかった.ハイブリッド材料の屈折率は,アッベ数をそれほど低下させることなく,加えたZrO2ナノ微粒子の体積分率の増加とともに増加し,エポキシ樹脂の光学特性を制御できる可能性が見いだされた.
ノート
  • 甲加 晃一, 日笠 茂樹
    2015 年 72 巻 2 号 p. 90-92
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/02/25
    [早期公開] 公開日: 2014/12/22
    ジャーナル フリー
    Influence of filler diameter on fatigue resistance of polypropylene (PP)/filler composite was investigated. Several kinds of calcium carbonate having mean diameters from 0.12 to 20 µm were used as fillers. Fillers were surface-treated with fatty acids in order to prevent the aggregation of filler particles. Tensile yield stress of the composite was lower than that of pure PP. That showed little dependence on the filler diameter. Also, it seemed that there is no interfacial adhesion between PP and filler. The fatigue property of PP/filler composite was lower than that of pure PP. The composites including filler with smaller diameter showed better fatigue resistance than the ones with filler with larger diameter. Especially, the composites including fillers having mean diameters of 0.9 and 0.12 µm showed remarkably high fatigue resistance.
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