高分子論文集
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73 巻, 6 号
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特集論文=高分子基礎物性
総合論文
  • 篠原 健一
    2016 年 73 巻 6 号 p. 491-504
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2016/11/25
    [早期公開] 公開日: 2016/10/06
    ジャーナル フリー
    電子付録
    1分子の直接観測は,分子の構造と機能に関する理解を深化させる.筆者は,これまでにポリマー1分子のイメージング研究を走査プローブ顕微鏡法や全反射型蛍光顕微鏡法などを駆使して展開している.たとえば高速原子間力顕微鏡法で,低密度ポリエチレン(LDPE)長鎖分岐構造の直接計測,変性SBRポリマー鎖一本の構造とダイナミクスの解析に成功した.また,キラルらせん高分子鎖一本の高次構造と動態を明らかにした.さらに,高分子鎖一本のレールに沿って分子がゆらぎながら歩行する人工生命的機能を発見した.全反射蛍光顕微鏡法では,π共役系主鎖構造を有するポリマー1分子の蛍光スペクトルが秒のオーダーでゆっくりと変化する動的な発光現象を見いだした.
  • 寺尾 憲, 領木 研之
    2016 年 73 巻 6 号 p. 505-513
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2016/11/25
    [早期公開] 公開日: 2016/09/06
    ジャーナル フリー
    アミロースカルバメート誘導体は,隣接した繰返し単位の置換基間の分子内水素結合,そして置換基のかさ高さ,さらには水素結合した溶媒分子によって,さまざまならせん構造や剛直性を発現する.これらのうち,とくに後者の剛直性は,ジメチルスルホキシド中のアミロースの2倍から20倍の範囲にわたる.われわれは最近,溶液中で比較的屈曲性の高い鎖として振舞う環状アミロースを原料としてさまざまな剛直性をもつ環状鎖が合成可能であることを提案した.本報では,アミロースカルバメート誘導体の剛直性の起源,そして剛直な環状アミロースカルバメート誘導体の溶液中での分子形態や分子間相互作用について報告する.剛直環状鎖の分子形態や分子間相互作用には線状鎖のみからは予想できない特徴がみられた.
原著論文
  • 鈴木 航祐, 大園 拓哉
    2016 年 73 巻 6 号 p. 514-519
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2016/11/25
    [早期公開] 公開日: 2016/08/23
    ジャーナル フリー
    リンクル(異方的な表面凹凸構造)の構造不均一性が摩擦に及ぼす影響を検討した.一軸延伸したシリコンゴム表面にポリイミドフィルムを圧着後,延伸を解除してリンクルを作製した.リンクルの平均の波長および高さはひずみの増大に伴ってそれぞれ減少および増大した.その形状は,リンクル一般に見られる正弦波状ではなく,正弦波形状の領域と高い凸部を有する箇所からなる不均一性を示した.ガラス半球圧子を用いた摩擦試験の結果,平均動摩擦力は荷重とともに増大し,また平坦表面上よりも低くなった.摩擦プロファイルと表面形状とを対応させて考えることで,不均一に生じた高い凸部において特徴的な摩擦力の大きな上下動が引き起こされることが明らかになった.平均的には周期的な凹凸領域における接触面積の減少によって低摩擦性を示すことが示唆された.
  • 川上 智教, 下山 直樹, 崎山 庸子, 茂本 勇
    2016 年 73 巻 6 号 p. 520-531
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2016/11/25
    [早期公開] 公開日: 2016/10/13
    ジャーナル フリー
    電子付録
    高効率の固体高分子形燃料電池(PEFC)開発においては,プロトン伝導性が高く,燃料である水素やメタノールをブロックするのに適した高分子電解質膜が求められる.本研究では,高プロトン伝導度と低メタノールクロスオーバー(MCO)の両立に適した電解質膜の設計指針を得るため,種々の含水率,スルホン化度に設定したSPPOおよびNafion®を対象として,分子動力学計算を実施し,ポリマー構造とポリマー中のプロトン,水,メタノールの拡散メカニズムを解析した.その結果,高スルホン化度のSPPOの含水率を抑制することにより,高伝導度と低MCOの両立が可能であることが示された.この設計コンセプト実現のため,エポキシ,シランなどの架橋成分をSPPOにブレンドしたコンポジット膜の検討を行ったところ,含水率抑制を実現するとともに,Nafion®と同等のプロトン伝導度を維持し,MCOを低減することに成功した.
  • 山﨑 香奈, 片島 拓弥, 井上 正志, 中村 綾野, 那須 昭夫
    2016 年 73 巻 6 号 p. 532-538
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2016/11/25
    [早期公開] 公開日: 2016/10/13
    ジャーナル フリー
    本報ではゲル微粒子分散系に種々の分子量の線状高分子を導入することで,そのレオロジー特性がどのように影響を受けるか,とくに線形と非線形レオロジーの関係性を評価した.動的粘弾性測定よりゲル微粒子と高分子間のからみ合いの発生,および高分子量線状高分子の場合には高分子の偏析による微粒子の脱膨潤が示唆された.大振幅振動測定から,ひずみの非線形性がみられる臨界ひずみは分子量の増加とともに増加し,高分子は線形領域の拡大に寄与していることが示された.また,定常流測定ではシェアシニングが観察されたが,その程度は高分子の導入に伴い抑制された.定常流挙動はBKZモデルを用いてある程度予測可能であり,シェアシニングは系の非線形性が抑制されたと考えることで記述できた.これらの結果は高分子の導入により,線形領域が拡大されたことを示しており,ソフト微粒子分散系と高分子混合系のレオロジー特性の理解の基盤となるものである.
  • 酒井 和幸, 熊谷 大慧, 阿部 五月, 渡邉 洋輔, 山田 直也, 古川 英光, 藤本 拓, 南 絵里菜, 光上 義朗, 足立 芳史
    2016 年 73 巻 6 号 p. 539-546
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2016/11/25
    [早期公開] 公開日: 2016/11/07
    ジャーナル フリー
    走査型顕微光散乱装置(Scanning Microscopic Light Scattering:通称SMILS)によって,代表的な吸水性高分子ゲルであるポリアクリル酸ナトリウム(PSA)ゲル,PSAゲルを酸型にしたポリアクリル酸(PAA)ゲルの内部構造評価を行った.SMILSによって得られる動的ゆらぎの緩和時間分布関数を基準に膨潤率・ヤング率を併用し,ゲルの内部構造を評価した.とくに,動的ゆらぎから得られるスケールをFluctuation Size (FS)とし,FSから算出される架橋密度(νS),膨潤率から算出される架橋密度(νW),ヤング率から算出される架橋密度(νY)を比較することにより,総合的にゲル内部の網目構造を評価した.PSAゲルにおいては,νW ,νY に対してνSは非常に大きな値となったため,SMILSで測定されるFSの値はゲルの網目サイズを直接示唆していない可能性がわかった.さらに,PSAゲルではνYWとなり,さらに,被吸収液の塩濃度が低くなるにつれてその差が大きくなることから,ネットワーク主鎖上のイオン基どうしの静電反発が増えるほど主鎖の剛直性が増していることが明らかになった.また,それに伴ってνSが増大する事から,今回の動的光散乱測定においてもネットワーク主鎖の剛直性がνSに影響を及ぼしていることが推察された.そのため,PSAゲルの内部構造を動的光散乱によって解析する場合には,FSの減少を考慮した適切な補正手法が必要になることが判明した.
  • 藤本 麻里, 佐藤 尚弘
    2016 年 73 巻 6 号 p. 547-555
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2016/11/25
    [早期公開] 公開日: 2016/09/13
    ジャーナル フリー
    さまざまな疎水基をポリアクリル酸に高分子反応で導入した6種類の両親媒性ランダム共重合体の0.05 M NaCl水溶液に対して,沈降平衡,動的光散乱,および蛍光寿命測定を行い,ランダム共重合体の会合・ミセル化挙動に及ぼす疎水基の疎水性の強さおよび疎水基含量依存性を調べた.会合し始める疎水基含量は,疎水基の疎水性の強さの順に低かった.ドデシル基とヘキシル基を疎水基にもつ両親媒性ランダム共重合体では,疎水基含量の増加に伴い,会合数は1から一旦10以上に増加したのち再び1に戻り,粒子当たりの疎水性ミクロドメインの数は0から1以上に増加してのちに1に漸近した.以上の結果より,これらの両親媒性ランダム共重合体は,中間の疎水基含量では複数の疎水性ミクロドメインをもつランダムな分岐構造の会合体を形成し,疎水基含量が十分高くなると単核花形のユニマーミセルを形成するようになると結論した.
  • 種谷 出, 中村 洋
    2016 年 73 巻 6 号 p. 556-561
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2016/11/25
    [早期公開] 公開日: 2016/10/05
    ジャーナル フリー
    アニオン重合法により,両末端基にn-ブチル基をもつポリスチレン(bu-PS-bu) 4試料を合成した.重合停止末端へのブチル基導入率fbuは68%以上であった.重量平均分子量Mwは3,000≤Mw≤17,500の間をわたる.各試料をシータ溶媒であるシクロヘキサン(34.5°C)に溶解し,光散乱測定により第二,第三ビリアル係数(それぞれA2A3)を決定した.分子量が低くなるとともにbu-PS-buのA2は正となって増大した.これらのデータはシータ状態にある,らせんみみず鎖のA2に鎖の末端効果による寄与を加えた理論にfbuを考慮することで説明することができた.bu-PS-buのA3A2同様にMwが小さくなるとともに増大した.しかしながら,この挙動はシータ点におけるA3の値に鎖の末端からの寄与を加えても説明することができず,他の相互作用を考慮する必要性を示唆した.
一般投稿論文
原著論文
  • 谷田 育宏, 吉澤 学, 桂 正則, 大澤 敏
    2016 年 73 巻 6 号 p. 562-569
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2016/11/25
    [早期公開] 公開日: 2016/10/26
    ジャーナル フリー
    生分解性高分子であるポリブチレンサクシネート・アジペート表面に,撥水性を有する植物の葉の表面構造を模倣した微細構造を付与し,撥水性と細菌の付着抑制効果を得る方法を考案した.高い撥水性を有するサトイモの葉より抽出したワックス成分を分析したところ,ケトンを含む長鎖のアルカンが含まれていることが推定された.そこで,マイクロスケールの微小凹凸を有するワイヤメッシュシートの表面構造を溶融転写した生分解性高分子表面を作製し,この表面に既存のワックスとしてケトンを含む長鎖のアルカンである12-トリコサノンを塗布したところ110°の高撥水性表面が得られた.さらに,ワックスを塗布したこれらの表面では大腸菌の付着を抑制する効果が認められた.
  • 松井 栄樹, 吉田 竜二, 辻 大介, 木本 雄一朗, 大塚 雄市
    2016 年 73 巻 6 号 p. 570-574
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2016/11/25
    [早期公開] 公開日: 2016/09/14
    ジャーナル フリー
    本研究ではでんぷん(アミロース)をエステル化する方法として,水を溶媒として用い,環境負荷の少ない変換法であるショッテンバウマン反応を選択し検討を行った.まず,アミロースを飽和Na2CO3水溶液中で塩化ベンゾイルと反応を行ったところ,目的のベンゾイル化が進行し,得られた生成物を 1H NMR,13C NMR,IR,MALDI測定により詳細な同定を行った.また,アミロースは同様の反応条件にてシンナモイル化およびp-tブチルベンゾイル化が進行し,他の多糖類であるペクチンのベンゾイル化,シンナモイル化も進行することが明らかとなった.以上より,本手法は水溶性多糖類のエステル化反応として広く利用できることが明らかとなった.
  • 水﨑 真伸, 中村 公昭
    2016 年 73 巻 6 号 p. 575-580
    発行日: 2016/11/25
    公開日: 2016/11/25
    [早期公開] 公開日: 2016/10/21
    ジャーナル フリー
    液晶中に溶存しているイオンがポリイミド膜表面に吸着することで,残留DC電圧が発生する.筆者らは,ラジカル重合性モノマーを用いたポリマー(ラジカル重合性ポリマー)をポリイミド膜表面に形成させることで,残留DC電圧が低下することを確認した.さらに残留DC電圧の低下は,ラジカル重合性ポリマーを形成することによるポリイミド膜,およびラジカル重合性ポリマーへのイオンの吸着エネルギーの増加,および吸着イオンの離脱エネルギーの低下によることを明らかにした.
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