高分子論文集
Online ISSN : 1881-5685
Print ISSN : 0386-2186
ISSN-L : 0386-2186
75 巻 , 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
特集論文=医用高分子 II
総合論文
  • 寺村 裕治
    2018 年 75 巻 2 号 p. 103-115
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/01/11
    ジャーナル フリー
    両親媒性高分子に機能性部位(ここでは,粘着ドメインとし作用する機能性部位)を導入した材料は,細胞膜の脂質二重層との弱い疎水性相互作用により細胞表面を修飾できるため,細胞を自在に接着できる細胞接着剤として利用できる.ポリエチレングリコール結合脂質(PEG脂質)へ,短鎖DNA (ssDNA)や膜透過性ペプチド(CPP)を結合させることで,これまでは不可能であった細胞–細胞どうしの接着や細胞–基板間の接着を実現できる.このPEG脂質誘導体は細胞機能を阻害せず,また細胞内部へ取り込まれず,細胞表面上にのみこれらの粘着ドメインを提示できるため,細胞接着剤として有用である.今後,細胞表面工学を応用したこの細胞接着剤は,薬剤のスクリーニングや遺伝子機能解析のハイスループットアッセイのための細胞アレイ作成や1型糖尿病への膵島移植,あるいは再生医療のための三次元組織構築への応用が期待できる.
  • 山之内 翔, 勝山 直哉, 蛭田 勇樹, 綾野 絵理, 金澤 秀子
    2018 年 75 巻 2 号 p. 116-127
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー
    ドラッグデリバリーシステム(DDS)は,長時間にわたって薬剤を治療有効濃度に保つことや,副作用を低減させる技術であり,体内での薬の徐放,病態組織への局所的輸送を制御するシステムである.筆者らは,外部からの温度刺激に鋭敏に応答して相転移するpoly(N-isopropylacrylamide)を基本骨格とした刺激応答性高分子をナノキャリアに応用することで細胞導入や薬の放出制御を達成してきた.本報では,温度およびpHに応答して相転移を示し,細胞導入を制御できる高分子の設計,それらをミセル,リポソームに導入することで,抗がん剤やsiRNAのDDS応用に関し,筆者らの最近の研究成果を中心に紹介する.
  • 中村 奈緒子, 木村 剛, 岸田 晶夫
    2018 年 75 巻 2 号 p. 128-136
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー
    生体組織から細胞成分を除去した細胞外マトリックスである脱細胞化組織は,組織再生のための移植材料として広く利用されている.筆者らは高分子材料複合化による脱細胞化組織の新規応用を目指している.本報では,まず脱細胞化組織の応用の基礎事項である調製法,構造や力学特性についてまとめた.次に,脱細胞組織の組織再生に関して,移植部位に適した組織が再生される場合が多いが,一方で異所性移植では脱細胞化組織の由来となった組織が再構築される場合もある.それぞれの報告を紹介し,組織再生の終着点の違いについて考察した.次に,脱細胞化組織の異所性における移植材料としての応用のため,コンプライアンスに注目し,脱細胞化組織への高分子材料複合化によりコンプライアンスを移植部位に適合させた検討について報告する.さらに,脱細胞化組織の新規の医用応用を目指し,高分子材料複合化による機能性付与について検討した結果を紹介する.
  • 児島 千恵
    2018 年 75 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/02/05
    ジャーナル フリー
    多数のアミノ基をもつポリリシンには,直鎖状ポリリシンと樹木状ポリリシンがあり,これらはバイオ材料として利用されている.本報では,直鎖状ポリリシンと樹木状ポリリシンについて,細胞足場材料および機能性材料としての性能を比較した.まず,神経細胞の足場材料として,ポリグリコール酸繊維の表面をそれぞれのポリリシンで被覆した.直鎖状ポリリシンと比べて,樹木状ポリリシンでは被覆効率は低いものの,多くの神経細胞が接着することがわかった.また,ポリリシンのアミノ基に温度応答性を示すエラスチン様ペプチドを結合したところ,化学組成が同じであるにもかかわらず,形状によって温度応答性が異なった.分子鎖が柔軟な直鎖状ポリリシンは,さまざまな高次構造をとるのに対して,樹木状ポリリシンは剛直な球状構造をとる.このような分子の屈曲性の違いが,材料としての性能に影響を及ぼすことが明らかとなった.
  • 長瀬 健一, 岡野 光夫, 金澤 秀子
    2018 年 75 巻 2 号 p. 143-154
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/02/16
    ジャーナル フリー
    現在の医療ではバイオ医薬品を用いた治療や細胞を生体に移植する再生医療が効果的な治療方法として用いられている.これらの治療法に使用するタンパク質,細胞の重要性が高まってきており,活性を損なうことなく効率的に分離・精製する機能的な分離技術の開発が求められている.そこで筆者らは,外部温度変化のみで分離対象のタンパク質,細胞との相互作用を制御して分離を行う温度応答性高分子ブラシ修飾表面の開発を行っている.本報ではこれらの温度応答性高分子ブラシの特性とバイオセパレーションへの応用について概説する.
    Editor’s picks

  • 木村 剛, 中村 奈緒子, 橋本 良秀, 坂口 志文, 木村 俊作, 岸田 晶夫
    2018 年 75 巻 2 号 p. 155-163
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
    細胞分離は,生命科学研究や医療における強力なツールとなっている.これまでさまざまな細胞分離方法が開発され,細胞分離技術の進歩に伴い幅広い分野での利用性が高まり,各分野での合目的な細胞分離法が提案されている.本報では,各細胞分離法に加え,筆者らが開発を進めている解離性分子を介した抗体固定化表面を用いた標的細胞の選択的な捕獲・回収について概説する.ポリアクリル酸グラフトにより細胞非接着性に表面改質し,抗体を固定化することで標的細胞を選択的に捕獲可能であった.抗体固定化の際にdesthiobiotinおよびDNAを解離性分子として用い,それぞれ,biotin修飾水溶性高分子の添加による交換反応,DNaseの添加による分解反応にて高効率な細胞回収が可能であった.免疫学的アフィニティーを応用した新たな細胞分離法としての可能性が示された.
  • 松垣 あいら, 中野 貴由
    2018 年 75 巻 2 号 p. 164-173
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/01/16
    ジャーナル フリー
    生物の形態は自発的に秩序や対称性を獲得し,自己組織化により生体本来の機能発現を果たす.なかでも有機・無機複合材料として個体レベルで力学機能を発揮する骨は,マルチスケールで緻密に制御された,極めて異方性の強い微細構造により構成される.骨の無機成分であり,六方晶系の結晶構造を有するアパタイト結晶は,生物学的な支配下でその集合組織を形成する.骨系細胞は有機的連携に基づきアパタイト結晶配向性をコントロールするが,とりわけ骨芽細胞による骨形成過程において,その細胞形態,極性や細胞間相互作用の異方性が骨微細構造を決定する.一方で,疾患や損傷により失われたアパタイト結晶配向性の回復には長期間を要し,人為的な制御に基づくアパタイト結晶配向化誘導が骨の健全化には必要不可欠である.本報では,高分子材料や金属材料を用いた人為的な骨配向化誘導のための骨芽細胞制御について概説するとともに,疾患骨を例に,近年筆者らのグループで明らかにしつつある,骨配向化の生物学的制御メカニズムの一端について紹介する.
  • 秋山 義勝, 岡野 光夫
    2018 年 75 巻 2 号 p. 174-186
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/02/13
    ジャーナル フリー
    温度応答性高分子を材料表面に固定化した温度応答性表面は温度変化によって表面の親・疎水性が変化する.温度応答性表面を細胞培養基材として利用した温度応答性細胞培養表面は温度変化で細胞の接脱着能を制御し,細胞をシート状で回収する表面として注目を集めた.温度応答性細胞培養表面の研究を通じ,固定化する温度応答性高分子のナノスケール化が細胞の接脱着能発現に重要であることが示された.本報では,温度応答性細胞培養表面に焦点を当て,温度応答性表面の創生から基材表面に固定化した温度応答性高分子のダイナミクスと表面物性との相関,さらには温度応答性細胞表面における固定化高分子のナノスケール化の重要性について紹介する.また,これまで困難とされてきた,温度応答性細胞培養表面からの細胞接着・剥離過程の定量的評価技術や,近年,細胞シートを作製するために必要な温度応答性細胞培養表面の簡易的な作製技術についても紹介する.
原著論文
  • 中塚 恵理, 柿木 佐知朗, 平野 義明
    2018 年 75 巻 2 号 p. 187-194
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/02/23
    ジャーナル フリー
    本研究では,バチルス菌種N系(CP001407)の培養上清からの抽出物として発見された抗菌活性を示すジケトピペラジン(DKP)であるCyclic(D-Tyr-D-Phe)に注目し,ガラスならびにSUS316L表面にDKPの自己組織化膜を構築,抗菌活性表面を設計した.その後E. coli (グラム陰性菌)およびB. subtilis (グラム陽性菌)を使用し,材料表面の抗菌活性試験を行った.また,マウス線維芽細胞(L929細胞)を用いて細胞毒性の評価を行った.その結果,Cyclic(D-Tyr-D-Phe)の自己組織化膜をAFMを用いて観察したところ,ロッド状のナノ構造体を形成していることが明らかになった.自己組織化層を構築した表面では,未処理の表面よりもE. coliおよびB. subtilisに対して抗菌活性を示すことが明らかになった.また,Cyclic(D-Tyr-D-Phe)は細胞毒性ももたないことが合わせて明らかになり,抗菌活性をもつ金属バイオマテリアル表面の構築の可能性を有している.
  • 飯島 一智, 鈴木 彩未, 橋詰 峰雄
    2018 年 75 巻 2 号 p. 195-202
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/02/06
    ジャーナル フリー
    熱プレス法を用いてコンドロイチン硫酸Cナトリウムとキトサンのポリイオンコンプレックスと支持基材からなる複合フィルムを作製した.UV照射により親水化したポリエチレンテレフタラート(PET)シートおよびシルクメッシュを支持基材とし,それらに多糖層を複合化したフィルムは,どちらもリン酸緩衝生理食塩水(PBS)へ浸漬後も自己支持性を有しており,その多糖部分は支持基材を有しないフィルムと同様の膨潤挙動を示した.PET支持フィルムは,多糖側を他の基材に接着させたのちPETフィルムを引きはがすことで多糖フィルム部分を他の基材に転写可能であった.シルクメッシュ支持フィルムの多糖部分は薬物モデル化合物として用いたメチレンブルーの担持および放出が可能であった.シルクメッシュに関しては,低温でのプレスにより作製したフィルムやヒアルロン酸とキトサンからなるフィルムとの複合化も可能であった.
  • 畑口 健太, 高橋 将輝, 矢森 克己, 刈込 道徳, 木村 隆夫, 小林 史典, 鈴木 義紀
    2018 年 75 巻 2 号 p. 203-211
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/02/05
    ジャーナル フリー
    経口投与向けの薬物担体としての利用を目的として,架橋剤に多分岐型のポリエチレングリコール(PEG),連結剤にピロメリット酸二無水物を用いて,開環付加反応とエステル交換反応によって,ポリグリコール酸(PGA)からゲルを調製した.PGA鎖がゲルの架橋点間外に多く存在するアウターリッチタイプおよび架橋点間内に多く存在するインナーリッチタイプの二種類,使用したPEGが四分岐型のものと三分岐型のものの二種類,そしてPGAの導入率が45,60,75 wt%の三種類から成るゲルを調製した.各調製条件で得られたPGAゲルについて,脱イオン水中およびpH 7.4のリン酸緩衝液中で膨潤試験と加水分解試験を実施した.また,調製したPGAゲルに塩基性染料のメチレンブルーおよび酸性染料のアシッドブラックをダミー薬物として内包させ,ヒトの消化器官を意識した模擬胃液中および模擬小腸液中で放出挙動を評価した.pH応答性と易加水分解性を示すPGAゲルは,経口投与向けの薬物担体として有効であることがわかった.
一般投稿論文
総合論文
  • 岡田 きよみ, 室賀 駿, 大嶋 正裕
    2018 年 75 巻 2 号 p. 212-220
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/02/06
    ジャーナル フリー
    筆者らはフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)イメージング法を用いた高分子中に分散するマイクロオーダの大きさの添加物・フィラーの分散性の評価法を提案した.提案法は,二次元平面で空間的に濃度分布を有するように添加剤・フィラーが分散した高分子コンポジットから,FT-IRの高分解能測定で空間的位置情報をもった吸収スペクトルデータを取得し,そのデータに窓幅の異なる複数の平均化フィルタをかけ,窓枠に応じた変動係数を求め,その変動係数の窓幅依存性から添加剤やフィラーの高分子中での分散性を評価するものである.提案法を現在,用途拡大が期待されているセルロースナノファイバー(CNF)とポリプロピレン(PP)のナノコンポジットに適用し,CNFの分散性を評価した.PP中のCNFの分散性は,CNFを疎水変性することによって向上するが,それだけでなく,混練機のクリアランスの狭いセグメントセルを使用した方が分散性がよいこと,および分散性と力学試験結果は相関があることを確認した.また,成形機を使用して作成した成形品の評価から,シリンダー回転数よりもシリンダー温度の方が本研究使用のCNF分散には大きく影響することがわかった.このように可視化だけでは評価しづらかったCNFのPP中での明確な分散比較が可能となり,本手法の有効性が確認できた.
原著論文
  • 日笠 茂樹, 甲加 晃一
    2018 年 75 巻 2 号 p. 221-231
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2017/12/28
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレン(HDPE)/炭酸カルシウム(CaCO3)複合材料に関して,フィラーの内包は,衝撃破壊挙動を変化させる.フィラー添加が衝撃強度に及ぼす効果が温度によってどう影響されるかを,計装化シャルピー衝撃試験によって検討した.衝撃強度に及ぼすフィラーの添加効果は試験温度,マトリックスの種類およびフィラー粒子径の影響を受けていた.試験温度が高温あるいはマトリックスの衝撃強度が高いことからマトリックスの衝撃破壊が延性破壊である時,フィラー添加は衝撃強度を大きく向上させた.このとき,粒子径約1 µmのCaCO3が衝撃強度の向上に最も有効であった.一方,試験温度が低温あるいはマトリックスの衝撃強度が低いことからマトリックスの衝撃破壊が脆性破壊である時,フィラー添加は衝撃強度をわずかに低下させた.このとき,粒子径のより大きなCaCO3が衝撃強度をより顕著に低下させた.
  • 野脇 淳行, 大内 章史, 松本 健太郎, 附木 貴行, 西田 治男
    2018 年 75 巻 2 号 p. 232-239
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/03/23
    [早期公開] 公開日: 2018/02/21
    ジャーナル フリー
    竹繊維を含む竹粉末(BP)とポリプロピレン(PP)複合体の難燃化と機械的物性の両立を目的として,BP/PP複合体に各種難燃剤を添加し,それらの難燃性と機械的特性について検討した.その結果,BP/PP (50:50 wt/wt)に対して膨張性黒鉛(EG)を10~30 wt%添加することでUL-94規格V-0~V-1という高い難燃性が見いだされた.さらに,BPとPP,EG間の界面接着性を高めるため,BP/PP/EG (40:40:20 wt/wt/wt)複合体に,相溶化剤として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)を1 wt%添加することで,優れた難燃性を損なうことなく,複合体の機械的強度が,PP単独に比べて,引張弾性率,曲げ強度,および曲げ弾性率でそれぞれ209%,104%,および146%向上した.これらの結果から,難燃性と機械的物性が両立するBP/PP難燃性複合体が作製された.
feedback
Top