高分子論文集
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一般投稿論文
原著論文
  • 和田 理征, 吉田 亮一, 鈴木 一政, 清水 秀信, 岡部 勝
    2019 年 76 巻 4 号 p. 267-275
    発行日: 2019/07/25
    公開日: 2019/07/25
    [早期公開] 公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    シンジオタクチックポリスチレン(sPS)は,トルエンやクロロホルム混合溶媒中で熱可逆性ゲルを形成する.トルエンはsPSに対して貧溶媒的に振舞い,クロロホルムは良溶媒的に振舞うことが知られている.本研究では,トルエンとクロロホルムの割合を変化させ,sPSゲルのキャラクタリゼーションを調べることを目的とした.また,sPSゲルの架橋点の大きさを検討するため,Tanaka-Stockmayerの理論式より架橋長ζ (架橋点に寄与するモノマーの数)と多重度ρ (架橋点に入り込むsPS鎖の数)を算出し,さらに,ゲル化過程を時分割FT-IRにより追跡した.その結果,トルエン–クロロホルム混合溶媒組成(Xchloro)を変化させると,クロロホルム含有量が増加するにつれ,sPSの最低ゲル化濃度C*は高くなった.また,ゲルの架橋点サイズS (ζ×ρ)は,トルエン系では320~420,クロロホルム系では150~200であり,Xchloroが増加するにつれて減少した.このことから,sPSに対して貧溶媒的に振舞う溶媒では,架橋点サイズSは大きくなると考えられる.さらに,時分割FT-IRスペクトルから,sPSゲルはいずれの混合溶媒組成においても,T2G2のコンホメーションを形成し,さらに,そのモルホロジーは繊維状構造であることが明らかとなった.また,繊維状構造の隙間に溶媒を取り込んでいると考えられる.

  • 飯島 道弘, 河田 麻衣子, 佐藤 憂菜, プア ミンリー, 亀山 雅之
    2019 年 76 巻 4 号 p. 276-287
    発行日: 2019/07/25
    公開日: 2019/07/25
    [早期公開] 公開日: 2019/06/04
    ジャーナル フリー

    カルボキシル基をα末端に有するヘテロテレケリックポリエチレングリコール(ヘテロPEG)の精密合成法を検討した.カルボキシル基とヒドロキシ基を分子内に有するヒドロキシピバル酸を出発物質として用いた.カリウムナフタレン溶液にヒドロキシピバル酸溶液を滴下することで生成するカルボン酸塩を微分散させ.エチレンオキシドをアニオン開環重合することにより,定量的にヘテロPEGを合成できることを明らかにした.また,ω末端に重合基を導入したマクロモノマーの定量的な合成にも成功した.さらに,この合成法を利用し,α末端に一つのカルボキシル基を有し,二つのPEG鎖有する分岐型ヘテロPEGの合成方法も確立した.このようなα末端にカルボキシル基を有するヘテロPEGの定量的合成法の確立は,高機能性材料を創製するためにも有用である.

  • 武山 慶久, 上野 真寛, 上島 貢, 藤原 広匡, 西村 伸
    2019 年 76 巻 4 号 p. 288-296
    発行日: 2019/07/25
    公開日: 2019/07/25
    [早期公開] 公開日: 2019/06/10
    ジャーナル フリー

    カーボンナノチューブ(CNT)は,ナノサイズの直径で長さがµm以上と非常に高いアスペクト比の繊維状炭素材料であることから,他の材料との複合材料において少ない添加で高い電気伝導性,熱伝導性や強度特性を発現することができる.本研究では,CNT/ゴム複合材料の高圧水素特性を評価し,CNT,その中でも単層カーボンナノチューブ(SWCNT)をゴム中に均一に分散させることで,高圧水素に曝露後の水素侵入量が低く,かつ,体積変化も小さくすることができることを明らかとした.また,CNTの分散度と高圧水素特性の関係から,水素侵入量は組成が支配的で,体積変化は分散構造が支配的であることが示唆された.本報のカーボンナノチューブ/ゴム複合材料は,その高圧水素特性から高圧水素環境下での変化が小さく,高圧水素環境下における高耐久シール材として期待される.

  • 田中 求, 千田 咲良, 遠藤 太佳嗣, 附木 貴行, 仁宮 一章, 高橋 憲司
    2019 年 76 巻 4 号 p. 297-304
    発行日: 2019/07/25
    公開日: 2019/07/25
    [早期公開] 公開日: 2019/06/25
    ジャーナル フリー

    オールバイオマスの繊維強化複合材料として,EFを添加したセルロース誘導体複合材料を開発した.セルロース誘導体にバイオマス繊維であるEFを添加し,なおかつセルロース誘導体の剛性を大幅に改善した(引張弾性率は149%向上).強度は繊維含有量の増加に伴い低下したが,セルロース誘導体の残存ヒドロキシ基を調整することだけで,EF複合材料の引張強度を向上可能であることを明らかにした(引張強度は131%向上).さらに,この複合材料の熱的特性は保持されることを確認した.石油由来のPP/MAPP系複合材料以上の熱的特性と機械的特性を両立したEF添加セルロース誘導体複合材料が作製された.

  • 仲島 浩紀, 梶原 篤
    2019 年 76 巻 4 号 p. 305-311
    発行日: 2019/07/25
    公開日: 2019/07/25
    [早期公開] 公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    メタクリル酸tertブチル(tBMA)を,過酸化ジtertブチルを開始剤としてメシチレン中,超高圧水銀ランプの光を照射するとラジカル重合が起こる.この反応をESRで直接観測すると成長ラジカルのESRスペクトルを検出することができる.150°Cで観測された16本線のスペクトルが示す成長ラジカルの鎖長を調べようとした過程で,成長ラジカルの鎖長とESRスペクトルとの間に関連があることが明らかとなった.原子移動ラジカル重合(ATRP)法で構造や鎖長の明確なモデル成長ラジカルの前駆体を合成し,ラジカルの鎖長とESRスペクトルの間に相関があることを見出した.とくに,2量体モデルラジカルについて詳しく解析した結果を報告する.

  • 荒田 聡恵, 梶原 篤
    2019 年 76 巻 4 号 p. 312-318
    発行日: 2019/07/25
    公開日: 2019/07/25
    [早期公開] 公開日: 2019/05/16
    ジャーナル フリー

    アクリル酸エステル類の成長ラジカルを通常のラジカル重合の条件で60°Cから80°Cくらいの温度にしてESRで測定すると成長ラジカルによるものとは考えられない不思議なスペクトルが観測された.アクリル酸エステルのラジカル重合系ではミッドチェインラジカルが形成することが古くから考察されてきた.本研究では30°C以上の高温で観測されるESRスペクトルがミッドチェインラジカルに基づくものであることの状況証拠を積み上げ,ラジカルの動的挙動を考慮したスペクトルシミュレーションで解析して,アクリル酸エステルのラジカル重合中に存在するラジカル種の同定を行った.

  • 永 直文, 藤岡 駿, 小林 恵, 森山 和正, 古川 英光
    2019 年 76 巻 4 号 p. 319-329
    発行日: 2019/07/25
    公開日: 2019/07/25
    [早期公開] 公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    有機溶媒中での多官能化合物とその間を繋ぐ二官能化合物との付加反応で形成される1stネットワークと,エーテル連鎖を有する二官能エポキシ化合物の開環重合で形成される2ndネットワークとを組合せて,IPNゲルを合成した.1stネットワークには,四官能ビニルシロキサンとアルキルジチオールあるいは多官能チオール化合物とPEGジアクリレートとのチオール–エン反応を用いて,2ndネットワークにはPEGジグリシジルエーテルの開環重合を用いた.IPNゲル化により破断強度と破断ひずみが向上した.また,ヒマシ油–ヘキサメチレンジイソシアネート/エポキシ化大豆油(ESO)反応系を用いたIPNゲルの合成も検討した.本系では,ネットワークの組成比だけでなく,ネットワークの形成順もIPNゲルの力学的特性に影響を及ぼすことが明らかになった.

  • 藤田 正博, 英 秀樹, 竹岡 裕子, 陸川 政弘
    2019 年 76 巻 4 号 p. 330-334
    発行日: 2019/07/25
    公開日: 2019/07/25
    [早期公開] 公開日: 2019/05/24
    ジャーナル フリー

    アミジンとカルボン酸(酢酸,プロピオン酸,酪酸)の中和反応により,五種類のプロトン性イオン液体(PIL)を合成し,それらPIL中において無水酢酸を用いたセルロースのエステル化反応を行った.得られたセルロース誘導体はDMSOに溶解した.セルロース誘導体の1H NMRスペクトルにおいて,無水酢酸由来のアセチル基だけでなく,PILのアニオンに基づく化学シフトも観測された.セルロースのエステル置換度は,PILの構造により変化した.得られたセルロース誘導体は270°C以上に熱分解温度を示し,170°C以下にガラス転移温度を示した.

  • 玉田 健太, 鳥飼 直也, 川口 正美
    2019 年 76 巻 4 号 p. 335-340
    発行日: 2019/07/25
    公開日: 2019/07/25
    [早期公開] 公開日: 2019/06/04
    ジャーナル フリー

    交互ラメラ構造を形成するポリスチレン–ポリ(1,4付加richイソプレン)二元ブロック共重合体に,ドメインサイズと比べ,大きな粒径をもつジビニルベンゼン架橋粒子を添加することによるラメラ状ミクロ相分離構造への影響を調べた.トルエン溶液中における粒子の分散性が低いために,添加した粒子のほとんどはブロック共重合体のミクロドメイン中に分散せず,溶媒キャスト膜の下方に局在した.溶媒キャストにより作り出されたラメラ層は,膜表面に対して平行な方向に優先的に配向した.その配向度は,粒子の添加量が少ない場合は低下したが,添加量が増えるとブロック共重合体単独と同程度にまで回復した.粒子の添加によって配向度が低下すると,ラメラ構造のドメインサイズは高い値を示す傾向にあった.また,添加された粒子が大きい方が,粒子添加に伴うラメラ構造の配向度が低いにもかかわらず,ドメインサイズは低い値を示した.

  • 鄭 京模, 金 善求, 柳 政庸, 李 鎔奎, 小関 健一
    2019 年 76 巻 4 号 p. 341-348
    発行日: 2019/07/25
    公開日: 2019/07/25
    [早期公開] 公開日: 2019/07/03
    ジャーナル フリー

    オリゴマー,多官能モノマー,単官能モノマーを使用する多少複雑なUV硬化型インキの系を設計し,それらの化学的・物理的な諸性質の違いがインキの接着特性にどのような影響を及ぼすかについて評価などを行っている.先行研究においては三官能モノマーと二官能モノマーとの影響を中心に報告したことであり,本研究ではインキの接着性に対する単官能モノマーの影響について検討した.その結果,メタクリレート系モノマー(CHMA,HEMA)を用いて作製したインキは,アクリレート系モノマーを用いて作製したインキに比べて硬化膜の架橋密度が低くて,収縮によって発生した内部ひずみを十分に緩和させることが可能な皮膜構造を形成した.とくに,このような皮膜構造は接着性の改善に効果的であることがわかった.モノマーの構造にも依存するが,単官能モノマーは重合してリニヤーなポリマーを形成するので,架橋密度への効果は低く,柔軟な構造体を形成するといわれている.ただし,オリゴマー,多官能モノマー,単官能モノマーを使用する多少複雑なUV硬化型インキ系の場合,反応性が早い単官能モノマー系の添加量が多くなると架橋点間距離が短く柔軟性が十分ではない硬化膜を形成する可能性が高くなる.そして,収縮によって発生した内部ひずみを十分に緩和することができないので,接着性を低下させる可能性が高いと考えられるが,表面張力や収縮率が低い単官能モノマー(CHA,HBA)を使用することは,内部ひずみの発生を抑える効果があり,接着性の改善に寄与することがわかった.

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