重合物を豫め單量體に溶解せしめる事に依つて重合反應の進行がどの樣に變化するかを研究する事は次の點から考へて重要である。即ち (1) 櫻田教授に依り詳細に研究されつゝある異種重合物混合の際の脱混合現象が高分子の存在下に於ける重合で得られる混に於て認められるか否か。(2) 豫め添加した重合體分子が連鎖の停止反應に關與するか否か。(3) 重合體分子が單量體分子と反應結合し得るか否か。此の三つの點に關して詳細な研究を始めようとして我々は先づ次の4種の重合物, 單量體溶液系に就て實驗を開始した。實驗方法の吟味等に未だ不充分な點が多いのであるが, 實驗結果の範圍内で見ると,(1) 重合に依つて生成した重合物が添加溶解した重合物と均一に混合し明瞭な脱混合現象を示さない場合があり,(2) 重合物添加のために生成重合物の粘度が著しくは低下しないから, 重合物は連鎖停止反應には關與しない樣に思はれ, また (3) 生成し一旦安定化された重合體分子は單量體と反應結合しないものと考へられる。此處では實驗結果の1例を豫報的に報告し, 猶詳細な研究は續行したい考へである。
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