Diethylene glycol maleateを基本構造とし, その一部をプロピレングリコール, フタール酸, アジピン酸で置換した不飽和ポリエステルとスチロールとの共重合物試料の誘電的性質を周波数30c/s~1MC, 温度-60° ~120℃ にわたり測定し, 同時に熱変形温度, 膨潤性などを検討した。(1) 各ポリエステル試料のスチロール (モノマー) との相溶性は飽和酸変性率大なるほど増大し, 固化時の反応熱 (cal/g) は不飽和性の減るほど当然小さくなるが二重結合あたりではかえって大きくなる場合もある。(2) 当量のスチロールモノマーを配合して固化させた試料の誘電率および損失率を周波数-温度に対し, 等高線図として示した。極性基を含むポリエステル鎖がスチロールで架橋されたものである故, その誘電的性質の変化は他の高分子物質より複雑である。(3) 低周波, 高温度で現われる導電損失の他に下記2種の分散が認められる。低温側ではっきり認められる誘電分散は各試料についてその出現周波数範囲および大きさがほとんど等しく, ΔS≠ の値が低い点から, 小さな動きやすい極性基 (末端のOH基など) の配向によるものと推定され, 常温においては本測定周波数範囲より高周波域へ移っている。高温側で認められる分散はより大きなセグメントの配向によるものでその緩和時間の分布は広く, 周波数特性では損失率の極大が判然とは現われ難い。(4) ポリエステル中の飽和酸含有量が増大し架橋がより疎になると高温損失が大となり, その緩和時間は小さくなるが, アジピン酸の場合20mo1%変性のものが例外的な挙動を示す。プロピレングリコールを用いたものはε', ε''ともに低くその温度変化も少ない。耐熱性, 膨潤性などの組成に伴う変化もほぼ同様な傾向を示す。
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