高分子化學
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14 巻, 141 号
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  • 第1報球晶の生成過程とクラックの発生について
    増沢 一興
    1957 年 14 巻 141 号 p. 1-6
    発行日: 1957/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    筆者はポリエチレンアジペートの球晶の生成過程を偏光顕微鏡下に詳しく観察した。熔融したポリエチレンアジペート (ポリ縮合度約16) をスライドグラスの上で27℃で放冷すると, まず直線状の分子束の形成が起る。次にその熔融物の冷却速度がわずかに大きいときは, 一般に分子束は棒状のままで成長をやめる。そしてその分子束を中心にして二次的に放射状の排列が起り, それが発達して球晶となる。これに対して, 熔融物の冷却速度が比較的小さいときは, 分子束の両端は開きつつ成長し, あたかも中央で束ねた藁束のような形となり, 次にこれを中心として, 二次的に放射状の排列が発達して球晶となる。また熔融物の冷却速度が非常に遅く, 二次的の排列が起りにくいときは, 分子束はゆっくりと成長をつづけ, その両端の展開はしだいに大きくなり, ついには両端の外側はたがいに相接し, 合して, 分子束は円形または長円形 (球形または回転長円形) となり, 次にそれを中心として, 放射状の排列が発達する。これらの過程は, ここに述べたように, 必ずしも明確に区別できる訳ではなく, 実際には熔融物の冷却速度と周囲温度ならびにそれに伴う応力によって起るものであって, 本質的に異なるものではない。しかしながらいちばん根本になる核は常に直線状の分子束であった。次に熔融物を注意深く徐冷して巨大な球晶をうることができた。またポリエチレンアジペートの球晶にはクラックを生じやすく, その方向はほとんど常に半径方向であつたが, まれに円周方向に生ずることもあった。
  • 第1報低周波電場における繊維の誘電的測定とその解析について
    山口 篤重, 石田 陽一, 高柳 素夫, 入江 冨士男
    1957 年 14 巻 141 号 p. 7-13
    発行日: 1957/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    繊維自体の誘電率と損失率を測定する場合には, 繊維に異方性があること, 吸湿の影響が大きいこと, 空気または他の媒質の存在下でしか測定できないことなどの困難があるので, これらの諸因子を完全に規定して, 繊維自体の誘電的性質を測定するための装置と操作について述べる。また吸湿試料を50c/sから20kc/sの低周波領域で測定する場合には, 伝導電流の影響が大きく, 双極子分極に適用されるCole-Coleの円弧則1) では測定結果を記述しがたい。このような場合には, 複素誘電率の代りに複素比抵抗をプロットする解析方法によりCole-Coleの円弧に相当するものが得られ, 周波数特性を少数の定数で記述することができた。
  • 第1報PVAによるアクジロニトリルの乳化重合について
    鴨川 博美
    1957 年 14 巻 141 号 p. 14-19
    発行日: 1957/01/25
    公開日: 2012/02/20
    ジャーナル フリー
    ANのPVAによる乳化重合は過硫酸アンモンを反応開始剤とした場合, ほぼ〓に従って進行することが認められる。生成ポリマーの平均重合度は (1) モノマー濃度が高く,(2) 重合温度低く,(3) 過硫酸アンモン量が少ない方が高い。重合速度が [I0] に比例すること, PVA濃度増加により最初平均重合度が減少することおよび開始反応の速度, 活性化エネルギーより考察すればPVAとのChain transferを無視することはできないと考えられる。
  • 第1報重合禁止期 (その1)
    山崎 勇
    1957 年 14 巻 141 号 p. 20-27
    発行日: 1957/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリルの過硫酸カリを触媒とする (乳化) 水溶液重合において, その重合禁止期が触媒, 重合阻止剤, 重合温度などによって受ける影響を膨張計法と白濁点測定法の併用により検討した。禁止期は触媒および単量体濃度の逆数に比例し, 重合阻止剤濃度に比例して長くなる。その比例常数を各条件について求めた。
    禁止期と重合開始反応とは非常に密接な関係にあり, また禁止期は主として共存不純物 (重合阻止割) に原因するものと考えられている。現在まで禁止期に関する幾つかの理論的取扱がなされている。著者は再現性の満足すべき各条件下で禁止期を測定した。その重合諸条件との関係を以下, こ報告する。
  • 第2報重合禁止期 (その2)
    山崎 勇
    1957 年 14 巻 141 号 p. 27-32
    発行日: 1957/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    前報告で明らかにした重合禁止期と重合条件問の諸関係を基礎として禁止期の理論的考察を行った。その結果禁止期の温度依存性から得られる開始反応の活性化熱測定法の適用条件や各関係の比例常数の意義も明らかになった。また新しい開始反応の活性化熱測定方法を検討した。前報においては禁止期と重合条件との諸関係を実験によって詳細に検討したが, ここでは主として重合開始反応と禁止期の関係を理論的に検討して前報の諸結果を理解するとともに, さらにその温度依存性について明らかにした。
  • 第1報スチレンの重合
    飯塚 義助, 岡田 陽一
    1957 年 14 巻 141 号 p. 33-37
    発行日: 1957/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    金属ナトリウムによるスチレンの重合反応を研究し, スチレンが気相からでも液相からでもナトリウム表面で比較的すみやかに重合して, 高重合物を与えることを知った。さらにその重合速度を膨張計によって測定し, ハイドロキノン, カテコールなどの重合阻止剤が重合速度に影響しないことを確かめた。
  • 第2報金属ナトリウムの作用機作
    飯塚 義助, 岡田 陽一
    1957 年 14 巻 141 号 p. 37-40
    発行日: 1957/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    金属ナトリウムによるスチレンの重合反応を特にナトリウムの作用機作に重点をおいて研究した。金属ナトリウムとスチレンとからまず付加化合物を生じ, これが重合開始剤として働いているとの予想のもとにかかる付加化合物をつくり, その触媒作用を検したところ, 極めて顕著な触媒作用のあることを知った。この付加化合物は赤褐色ないし赤紫色を呈し, 化学的に極めて反応性に富みH20, CO2, O2などと瞬間的に反応消失する。しかし熱的には比較的安定で, 210~215℃で黒紫色に変色する。510mμ付近に吸収の極大がある。そしてその構造は, C6H5HNa-CH2Naを主成分とする。
  • 桜田 一郎, 坂口 康義, 伊藤 順夫
    1957 年 14 巻 141 号 p. 41-48
    発行日: 1957/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    分別した酢化度約22, 25, 32モル%の種々の重合度のポリビニルアルコール部分酢化物の水溶液の濃度と相分離温度の関係を実験的に求めた。いずれの場合にもその温度以下では相分離が起らないという最低臨界温度が認められた。臨界濃度の実測値はFloryの理論からの計算値よりやや大きいが, これは熱力学的定数x1がポリマー濃度に依存することに基くと考えられる。臨界温度とポリマーの分子量の関係より熱力学的定数を求め, 従来の関連ある研究結果と比較考察した。
  • 第26報レドックス重合に関する一考察
    片山 将道
    1957 年 14 巻 141 号 p. 49-53
    発行日: 1957/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    第2金属塩 (Fe2 (SO4) 3, FeNH4 (SO4) 3, FeCl3, CuSO4, CuCl2, HgSO4, HgCl2, SnCl4) と還元性の無機スルホキシ化合物 (NaHSO3, Na2SO3, Na2S2O3, Na2S2O4, SO2) との触媒系によるレドックス重合を検討し, 特にFe2 (SO4) 3~NaHSO3系について調べ次の事実を認めた。1) Fe2 (SO4) 3またはFeNH4 (SO4) 3に対するNaHSO3, Na2SO3あるいはNa2S2O4がよい結果を与えた。2)[Fe+++] に対して [HSO3-] あるいは [SO3--] は等モル使用するのが適当である。3) 反応は10~30℃の温度範囲が適当のようである。特に40℃程度の高温では重合率が低い。4) モノマー濃度, 触媒濃度の重合率および重合速度におよぼす影響を調べ, 併せて反応条件による重合度の変化を見た。
  • 第5報ポリメタアクリル酸メチルの高温下での熱分解について
    井上 良三, 大内 重男, 安平 進
    1957 年 14 巻 141 号 p. 54-61
    発行日: 1957/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    比較的温和な温度 (300℃以下) でのポリメタアクリル酸メチルの熱分解においては, 解重合は重合の際生じたポリマー分子の末端にある二重結合に近接したC-C結合の切断によってはじまる。いわゆるend initiationである。ところがより高温 (300℃以上) ではend initiationに加えて, ポリマー分子中の任意のC-C結合の切断, すなわちrandom initiationがならび起る。反応速度式に基いて実験結果を解析し, end initiationならびにrandom initiationに対する速度恒数たk1, k2を分離し計算した。かくしてrandom jaitiationにおける反応の活性化エネルギーとして51kcal/molまた分裂の確率αとして0.9994を得た。後者は温和な温度下で得られた0.9995と全く同様である。同じくrandom initiationに従う場合について, ポリスチレンと比較すれば, ポリメタアクリル酸メチルは連鎖解重合反応の開始はおこりにくく, 逆に分裂の連鎖長は非常に大きい。これを分子構造との関係で考えると, ポリスチレンの-C-C-主鎖が最初切断しやすいことはポリスチレンフリーラジカルの共鳴安定化がより大きいためであり, 連鎖の短かさはポリスチレンにおいてα-位の水素原子の動きやすいことにもとつくであろう。
  • 第6報スチレンーメタクリル酸メチル共重合物の熱分解について
    井上 良三, 大内 重男, 安平 進
    1957 年 14 巻 141 号 p. 61-70
    発行日: 1957/01/25
    公開日: 2010/10/14
    ジャーナル フリー
    スチレン (St) 一メタクリル酸メチル (MMA) 系の共重合物について, 種々のモノマー組成比にわたり, 過酸化ベンゾイルを触媒として重合せしめた共重合物を用い熱分解を行い反応機構を解析した。すなわち, 共重合物中のモノマー組成比は炭素含有率より, 分解率 (モノマー収率) は重量減少法により, 試料および分解残渣の分子量は粘度測定より求めた。分解率の値は共重合物の組成中MMAに少量のStの加わるとともに急速に低下するが, これに反しStに少量のMMAが加わってもその増加はわずかである。分解残渣の炭素含有率より求めた揮発生成モノマーの組成比は分解率に無関係に一定であり, 初期の試料の組成比により定まる。また分解後の試料の分子量はスチレンの組成比の増加とともに著しく減少する。これらの実験結果より, 共重合物のそれぞれの組成比の試料について分子量一粘度関係式を便宜上ポリスチレン, ポリメタクリル酸メチルの粘度式より近似的に求め, random ititiationの仮定のもとに確率論的に導いた熱分解速度式を用い, 分解率および分解後の残渣の極限粘度より, initiationのみにより分裂する確率βと反応の平均の連鎖長lを求め, これらの値を用いてinitiationの平均の速度恒数kを算出した。実験的に見出された反応の平均の連鎖長lは, 共重合物の組成中スチレンの少量の増加とともに急速に減少するが, 他方initiationの速度恒数は組成比とともにほぼ直線的に変化する。
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